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他の炭素材料の硝酸還流

Temperature (℃)

3.4 他の炭素材料の硝酸還流

銅内包CNTを還流した場合との比較のため、様々な炭素物質(多層CNT、多 層 CNT と銅粉末を混ぜたもの、熱処理した銅内包 CNT、炭素粒子、硫化銅内

包 CNT)を用いて還流を行った。その結果を以下の 3.4.1‐5 に示す。還流の条

件はいずれも仕込み量50 mg、還流時間1時間、還流温度140℃、濃硝酸の濃 度60 %とした。

3.4.1 多層CNTを還流した場合

市販の多層CNTのTEM像を図3.51(a)、直径分布を図3.51(b)に示す。多層 CNTをもちいて還流を行った場合のTEM像を図3.51(c)、直径分布を図3.51(d) に示す。

市販の多層CNT(図3.51(a))をもちいて還流を行った。市販の多層 CNTの直 径を測定したところ、直径分布は12‐40 nmであり、平均直径は21 nmであっ た(図3.51(b))。この多層CNTを、銅内包CNTの場合と同様に仕込み量50 mg として、濃度60 %の濃硝酸50 mL、還流時間1時間、還流温度140℃の条件で 還流を行った。還流後のTEM像(図3.51(c))から、銅内包CNTと比べて直径の 変化が少なく、従来の研究と同様に還流によって多層CNTの先端が開口してい ることがわかった。還流後の直径を測定したところ、直径分布は11‐38 nmで あり、平均直径は20 nmであった(図3.51(d))。直径変化がない理由として、CNT 層の結晶性が銅内包CNTと比べて高いことが考えられる。

図3.51:市販の多層CNTと多層CNTを還流した場合のTEM像と直径分布

(a, b) 還流前 (c, d) 還流後

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70

Fraction (%)

Diameter (nm)

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70

Fraction (%)

Diameter (nm)

直径分布:12‐40 nm 平均直径:21 nm

直径分布:11‐38 nm 平均直径:20 nm

(a) (b)

(c) (d)

3.4.2 多層CNTと銅粉末を還流した場合

3.4.1と同様の多層CNT 50 mgに銅粉末を50 mg混ぜたものをもちいて還流 を行った場合のTEM像を図3.52(a)、直径分布を図3.52(b)、また、市販の多層

CNT、還流した多層 CNT、銅粉末とともに還流した多層 CNTの XRD パター

ンを図3.53、ラマンスペクトルを図3.54に示す。

多層CNT 50 mgとともに銅粉末50 mgをもちいて還流を行った場合の試料

のTEM像(図3.52(a))から、銅粉末を加えなかった場合と同様に、直径変化が少

ないことがわかった。直径分布を測定したところ、直径分布は 9‐51 nm であ り、平均直径は20 nmであった(図3.52(b))。銅粉末を加えなかった場合と比べ、

分布の広がりは見られたが、平均直径は変化がなく、多層CNTを用いた還流後 では銅内包 CNT でみられたような大きな直径変化は起こらないことがわかっ た。

市販の多層CNT、還流した多層CNT、銅粉末とともに還流した銅内包CNT のXRD パターン(図 3.53)から、グラファイト由来の(002)面、(101)面が確認で きた。ピーク位置はそれぞれ 2θ=26.1°、2θ=42.9°であった。各試料の半 値幅を以下に示す(表 3.8)。還流の前後でピークの大きな変化は観察できなかっ た。

C(002) C(101)

還流後多層CNT +Cu 2.3 2.1 還流後 多層CNT 2.3 2.0

多層CNT 2.4 ‐

表3.8:各試料のXRDピークの半値幅 (°)

市販の多層CNT、還流した多層CNT、銅粉末とともに還流した銅内包CNT のラマンスペクトル(図3.54)から、1358 cm-1付近のD-band、1585 cm-1付近の G-band、2722 cm-1付近の2D-bandがそれぞれ確認できた。各スペクトルの半 値幅を以下に示す(表 3.9)。銅内包 CNT を用いた場合とは異なり、各条件にお いてピークに変化は見られなかった。

D-band G-band 2D-band

Acid-treated (多層CNT +Cu) 97 80 126

Acid-treated 多層CNT 99 84 131

MWCNT 86 76 124

表3.9:各試料のラマンスペクトルの半値幅 (cm-1)

図3.52:多層CNTとCu粉末を混ぜて還流した場合のTEM像と直径分布

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70

Fraction (%)

Diameter (nm)

20 30 40 50 60 70 80

Int ensity (a . u.)

2theta (degree)

(b)

(a) (c) 直径分布:9‐51 nm

平均直径:20 nm

C (002)

C (101)

(a) (b)

C (002)

C (101)

C (002)

図3.54:多層CNTを用いた時のラマンスペクトル(a)as-grown (b)多層CNTの み還流(c)銅粉末とともに還流

1200 1400 1600 2600 2800 3000

Int ensity (a . u.)

Raman Shift

(b)

(a) (c) D-band G-band

2D-band

(cm

-1

)

3.4.3 熱処理した銅内包CNTを還流した場合

水素アーク放電法で作製した銅内包CNTを1000 ℃、5時間で真空熱処理し た。熱処理後の銅内包CNTのTEM像を図3.55(a, b)、直径分布を図3.55(c)に 示す。この中空CNTを用いて還流した後の試料のTEM像を図3.55(d, e)、直 径分布を図3.55(f)に示す。また、水素アーク放電法で作製した銅内包CNT、熱 処理後の中空 CNT、熱処理後の中空 CNT を還流した後の XRD パターンを図 3.56、ラマンスペクトルを図3.57に示す。

熱処理した銅内包CNTのTEM像(図3.55(a, b))から、内包していた銅が抜け 出し中空のCNTになっていることがわかった。副生成物として抜け出した銅が 大きな粒子となっているものや、内包されていた銅が抜け出していないものが みられた。直径を測定したところ、直径分布は 8‐23 nm であり、平均直径は 12 nmであった(図3.55(c))。熱処理後、還流した試料のTEM像(図3.55(d, e)) から、熱処理をしていないas-grown銅内包CNTを還流した場合と同様に、直 径の変化が観察された。直径を測定したところ、直径分布は19‐65 nmであり、

平均直径は30 nm であった(図3.55(f))。市販の多層CNT に銅粉末を加えた場 合と同様、溶液中に銅が存在している場合に直径の変化が起こったため、

as-grown の状態の CNT 構造の結晶性が直径変化に影響を与えていることが示

唆される。

図3.55:熱処理した銅内包CNTの還流前後のTEM像と直径分布

(a‐c)還流前 (d‐f)還流後

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

Fraction (%)

Diameter (nm)

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70

Fraction (%)

Diameter (nm)

直径分布:8‐23 nm 平均直径:12 nm

直径分布:19‐65 nm 平均直径:30 nm

(a) (b)

(d) (e)

(c)

(f)

熱処理した銅内包CNTのXRDパターン(図 3.56(b))から、銅由来の(111)面、

(200)面、(220)面が観察できた。ピーク位置はそれぞれ(111)面=43.3°、(200) 面=50.4°、(220)面=74.1°であった。また、各ピークの半値幅はそれぞれ(111) 面=0.2°、(200)面=0.2°、(220)面=0.2°であった。熱処理後、銅のピークが シャープになり、結晶性が向上していることがわかった。熱処理後還流した銅 内包CNTのXRDパターン(図3.56(c))から、グラファイト由来の(002)面が2θ

=26.2°に確認できた。半値幅は0.8°であった。熱処理していない銅内包CNT を還流した場合と同様に銅由来のピークの減少がみられ、グラファイトのピー クが現れたことから、CNTの結晶性が向上していることがわかった。

熱処理した銅内包CNTのラマンスペクトル(図3.57(b))から、1361 cm-1付近 のD-band、1590 cm-1付近のG-band、2710 cm-1付近の2D-bandがそれぞれ 確認できた。また、熱処理後還流した銅内包CNTのラマンスペクトル(図3.57(c)) から、1361 cm-1付近のD-band、1590 cm-1付近のG-band、2732 cm-1付近の

2D-bandがそれぞれ確認できた。各試料のピークの半値幅を以下に示す(表3.10)。

熱処理後、as-grown銅内包CNTに比べ、G-bandがシャープになり、結晶性が 向上していることがわかった。その後、還流を行ったところ、熱処理した銅内 包CNTに比べ、還流した銅内包CNTのD-bandが増加しており、欠陥が増加 していることがわかった。また、2D-band が還流後のみ 22 cm-1程度高波数側 にシフトしていることがわかった。

表3.10:各試料のラマンスペクトルの半値幅 (cm-1)

D-band G-band 2D-band

熱処理+還流 88 69 91

熱処理 123 79 76

図3.56:熱処理した銅内包CNTを用いた時のXRDパターン(a)as-grown 銅内 包CNT (b)熱処理した銅内包CNT (c)熱処理と還流した銅内包CNT

図 3.57:熱処理した銅内包 CNT を用いた時のラマンスペクトル (a)as-grown

銅内包 CNT (b)熱処理した銅内包 CNT (c)熱処理と還流した銅内包

CNT

20 30 40 50 60 70 80

Int ensity (a . u.)

2theta (degree)

1200 1400 1600 2600 2800 3000

Int ensity (a. u.)

Raman Shift (cm

-1

)

C (002)

Cu (111)

Cu (200)

Cu (220)

Cu (111)

Cu (200) Cu (220)

D-band G-band

2D-band

(b)

(a) (c)

(b)

(a) (c)

3.4.4 炭素粒子を還流した場合

アルコールアーク放電法で作製した炭素粒子(図3.58(a, b))を還流した場合の TEM像を図 3.58(c, d)、XRDパターンを図 3.59、ラマンスペクトルを図 3.60 に示す。

アルコールアーク放電法で作製した炭素粒子のTEM 像(図3.58(a, b))から、

当研究室の従来の研究と同様に、GP 粒子、バルーン状粒子、GNP、アモルフ ァス炭素粒子が生成されたことが確認できた。それぞれのおよその生成割合は グラファイト性多面体(GP)粒子40 %、バルーン状粒子10 %、グラファイトナ ノプレートレット(GNP) 30 %、アモルファス炭素20 %であった。これらの炭素 粒子を還流したところ、TEM像(図3.58(c, d))で示されるように、大きな変化は 観察できなかった。

アルコールアーク放電法で作製した炭素粒子、この炭素粒子を還流した試料 のXRDパターン(図3.59)から、グラファイト由来の(002)面、(101)面が確認で きた。ピーク位置はそれぞれ2θ=26.0°、2θ=42.9°であった。各試料の半 値幅を以下に示す(表3.11)。TEM像と同様に大きな変化は観察されなかった。

C(002) C(101)

炭素粒子(還流後) 0.6 1.4

炭素粒子(還流前) 0.6 ‐

表3.11:各試料のXRDピークの半値幅(°)

アルコールアーク放電法で作製した炭素粒子のラマンスペクトル(図 3.60(a))か ら、1357 cm-1付近の D-band、1593 cm-1付近の G-band、2714 cm-1付近の

2D-band がそれぞれ確認できた。炭素粒子のラマンスペクトルにおいて、

G-band の高波数側に欠陥を示す D´-band が存在することがわかった。一方、

還流した炭素粒子のラマンスペクトル(図 3.60(b))から、1358 cm-1 付近の D-band、1588 cm-1付近のG-band、2722 cm-1付近の2D-bandがそれぞれ確認 できた。還流後のG-bandのピーク位置が低波数側にシフトした原因として、

D´-bandの減少が考えられる。2D-bandは還流後わずかに高波数側にシフトし

たことがわかった。各試料のピークの半値幅を以下に示す(表3.12)。

表3.12:各試料のラマンスペクトルの半値幅 (cm-1)

図3.58:炭素粒子の還流前後のTEM像(a, b)還流前 (c, d)還流後

D-band G-band 2D-band

炭素粒子(還流後) 80 56 68 炭素粒子(還流前) 71 63 70

(a)

(c)

(b)

(d)

図3.59:炭素粒子の還流前後のXRDパターン(a)還流前 (b)還流後

20 30 40 50 60 70 80

Int ensity (a . u.)

2theta (degree)

1200 1400 1600 2600 2800 3000

Int ensity (a . u.)

Raman Shift

C (002)

C (101)

(cm

-1

)

D-band

G-band

2D-band

(b)

(a) (b)

(a) C (002)

3.4.5 硫化銅内包CNTを還流した場合

エタノールと二硫化炭素を体積比9:1で混合し、アルゴンガスでバブリング したガスをもちいたアーク放電法で作製した硫化銅内包CNT (図3.61(a‐d))を もちいて還流を行った場合のTEM 像を図3.61(e‐g)、直径分布を図 3.61(h)、

XRDパターンを図3.62、ラマンスペクトルを図3.63に示す。

アルコールアーク放電法によって得られた試料のTEM像(図3.61(a‐c))から、

当研究室の従来の研究と同様に、高効率で硫化銅内包CNTが作製できたことが 確認でき、全体的に銅内包CNTに比べ直径が大きなものが多数存在することが わかった。この硫化銅内包CNTの直径を測定したところ、幅広い分布ではある が、直径分布は13‐91 nmであり、平均直径は40 nmであることがわかった(図 3.61(d))。この硫化銅内包CNTを還流した後のTEM像(図3.61(e‐g))から、硫 化銅の溶出が観察できた。しかし、内包物が銅の時と比べ、硫化銅は溶出して いない割合が多く、1割程度の硫化銅は内包されたままであった。これは、CNT と銅または硫化銅の界面の相互作用の違いに原因があると考えられる。溶出し た硫化銅は粒子として観察された。還流後の直径を測定したところ、直径分布 は17‐93 nmであり、平均直径は46 nmであることがわかった(図3.61(h))。

平均直径の変化は小さいが、比較的直径の小さいものが減少していることがわ かった。銅内包CNTの時のような劇的な変化は起こっていないことがわかった。

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70

Fraction (%)

Diameter (nm)

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60 70

Fraction(%)

Diameter (nm) 平均直径: 40 nm

直径分布:13‐91 nm 平均直径:40 nm

直径分布:17‐93 nm 平均直径:46 nm

(a)

(c)

(b)

(e) (f)

(g)

(d)

(h)

アルコールアーク放電法で作製した硫化銅内包 CNT の XRD パターン(図 3.62(a))から、硫化銅由来の(111)面、(200)面、(220)面、酸化銅由来の(111)面、

銅由来の(111)面が観察できた。ピーク位置はそれぞれ Cu2S(111)面=27.8°、

Cu2S (200)面=32.4°、CuO(111)面=39.0°、Cu(111)面=43.2°、Cu2S (220) 面=46.2°であり、半値幅はそれぞれCu2S(111)面=0.5°、Cu2S (200)面=0.8°、

CuO(111)面=0.4°、Cu(111)面=0.4°、Cu2S (220)面=0.6°であった。一方、

アルコールアーク放電法で作製した硫化銅内包CNTを還流した試料のXRDパ ターン(図3.62(b))から、2θ=26.1°の位置にグラファイトの(002)面が観察でき た。半値幅は1.2であった。通常のピーク位置より低波数側にシフトしているこ とがわかった。他のピークに関しては、銅内包CNTを用いた場合と同様、硝酸 によって銅に関連する物質が溶解されたため、還流前観察されたピークが消失 したと考えられる。

アルコールアーク放電法で作製した硫化銅内包 CNT ラマンスペクトル(図 3.63)から、1360 cm-1付近のD-band、1590 cm-1付近のG-band、2714 cm-1

近の2D-band がそれぞれ確認できた。また、硫化銅内包CNT を還流した試料

のラマンスペクトルから1356 cm-1付近のD-band、1588 cm-1付近のG-band、

2718 cm-1付近の 2D-band がそれぞれ確認できた。各試料の半値幅を以下に示

す(表3.13)。還流後、D-bandがシャープになっていることから欠陥が増加して

いることがわかった。

表3.13:各試料のラマンスペクトルの半値幅 (cm-1)

D-band G-band 2D-band

硫化銅内包CNT(還流後) 93 74 175 硫化銅内包CNT(還流前) 112 75 178

図3.62:硫化銅内包CNTの還流前後のパターン(a)還流前 (b)還流後

20 30 40 50 60 70 80

Int ensity (a . u.)

2theta (degree)

1200 1400 1600 2600 2800 3000

Int ensity (a . u.)

Raman Shift (cm

-1

)

Cu2S (111) Cu2S (200) Cu (111) CuO (111) Cu2S (220) C (002)

C (101)

D-band G-band

2D-band

(b)

(a)

(b)

(a)

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