病院における人間関係
司会 中川恭一(いすず病院長〉 本日は多勢ご 参集をいただきありがとうございます。早速勉強 会をはじめます。はじめに、事務長の山本さんか
ら当院の沿革をお話し願います。
山本(葛飾赤卜字産院事務部長〉 この産院は1113
和28年2月10日に木造モルタル二階建で、職員も20 数名で発足いたしました。円赤系の病院は全国で 93ございますが、そのうち産科のみを標傍してい るのは都内にも 3か所しかございません。病床数 は未熟児室も合めまして105床、職員140名、内 外、そのほかに医務嘱託 5~6 名応医してくれて ます。この医師jの方々は主として小児科を担当し ております。外来数は産婦人科1日180名内外、
小児科340~350名で 1 日の外米総数は 500 名内外 となっております。非常に忙しい産院でございま して、過去4年間の分娩数も相当数にあがってお ります。現在の建物は円筒型でございますが、こ の円い建物は最初は良いモダンな建物のようにみ えますが、実際使用しますと使いづらく、将来は やはり円筒型のものをこわして普通の角型の建物 にした方がいいという説もでております。何分に も現在は病院経営の非常にむずかしいところでご ざいまして、例えば、この産院を建てかえるにし ましても、日赤というところはどこの日赤関係も 独立採算でございまして、その収入に見合わぜま して、事務長なりがどこからか融資を受けてやら ねばならないという状況でございます。
この本館はJf数からいいますと、一応鉄筋の3 階、総建坪680坪です。当初は資金難でございま
して窓枠もサッシでなく、木の枠を使っている仕 末でございます。宿舎は、敷地の関係で旧産院の 建物を改造いたしまして約33名位の助産婦、看護
葛飾赤十字病院において
病院管理総合部会(中小病院〉
婦が入寮しておりましたが、ご承知のように看護 婦、助産婦を獲得するのに困難になりまして、そ の希望者が本館をみて大体いいだろうということ で、宿舎の方を案内しますと, 、一寸考えさせて 欲しいグとか、都合によりましてグということで す。つまり、自分達の常時住まうところがきたな い、ということで敬遠するのではないかと思いま す。そこで寄宿舎を建てかえしたわけでございま す。これは4階建で380坪伎でございます。その 外に社宅2棟がございます。
以上簡単に概略を申しあげましたが、見学をさ れますのに若干のご参考になるかも知れません。
司会 どうもありがとうございました。それで は今日のテーマでございます「病院に於ける人間 関係についてJをはじめたいと思います。人間関 係についての理論的、基礎的なものは非常にむず かしいものでございます。病院に於ける人間関係 もまた同じように非常にむずかしいわけです。人 間関係がよければ能率はあがるということがいえ るわけですが、特に病院というところはそれぞれ 免許をもつものの集りで、物の考え方も違いま す。そこでテーマの病院の中の人間関係をつぎの ように分けてみました。
1) 同一職種内の人間関係 2) 相異する職種間の人間関係 3) 上と下の人間関係
4) 病院職員と患者さんとの人間関係
こういう分類で考えてみたら、如何かと存じま す。人間関係が悪化する原因が考えられ、人間関 係を向上させるということが当然でてくると思い ます。それから人間関係がどういう状態になって いるかということ、チェックポイシトはどこかと 82 日本病院協会雑誌 Vo1.17.No. 1. 1970
いうことがいえます。それから病院管理者側から の考え方、中間管理者、病院全体としての考え方 等が問題点だと思います。如何でしょうか、こん なところを軸にいたしまして話をすすめてみたい と思います。理論的なこと、又体験されたこと等 をお話していただければ結構でございます。
山本 この人間関係ということは数年来から問 題になりまして、近頃では企業体のみでなく、一 般の家庭生活におきましても、人間関係いわゆる Human relationという言葉が多く使われている ようでございます。このHumanrelationが特に とりあげられるようになったのはアメリカでござ いまして 1929~1932年の 5 年間に亘りまして電気 メーカーのホーソン工場で目的は生産能力を如何 に高めるかという問題からハーパード.大学のエル トンメーヨという教授が
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年聞かかって行なった ホーソン工場の実験の結果、人間関係ということ がでたわけでございます。先ず最初にやりましたのが、その工場内の或る 一部を整備し非常に環境をよくして同じ仕事をや らせたところが非常に能率があがった、というこ とでございます。ところが環境を整備されないそ の他の部門におきましてどうかといいますと、や はり同じように成果があがってきた、それからそ の次の実験段階におきまして環境整備を完備して もとのような状態に服したところ生産能率はちっ とも変らない。同じように上っている。これは環 境的面ばかりではなく、要するに人間関係だろう
という結論に達したわけでございます。特に病院 の経営状態においてこれを公式的にとりあげます と各病院におきましてはそれぞれ職制というもの があり、就業規則がございます。これらの問題に よって病院が運営されているかの如く見えるので ございますが、現実には人間のいろいろな感情、
その動きを通して行なわれているものであると思 います。
要するに経営の能率化、簡素化の効果を│二げる には職員の態度や感情、そういうものに大きく作 用しているということです。一口に能率化、簡素 化といっても所詮人聞がやるものである、人間の 感情問題或いは態度にふれてくるものである、そ ういう問題に依存しているのではないかと思いま
す。
そこで病院の経営者なり、企業の経営者は従業 者に対する人間完成論というものが大きな問題に なってくると思います。病院はご承知のように人 間の疾病の治療、或はこの産院のように適正なる 助産、これを目的としている企業体であります。
或程度生産性と申しますか利潤の追求というもの を考えなければ病院の経営はなりたたないという のが現在の病院の実態ではないかと思います。然
し病院の経営につきましては基本的にはいろいろ な法律にしばられている、その例としては第1に 現行の診療点数制、これを是正しなければ完全な るサーピスはできない、第2に医療法に基づいて 病院の広告というものは制限され、したがって病 院の運営は制約される。こういう時点に於て正常 なる経営は高度な技術の提供もさることながら、
その職場に於ける人間関係の協調性を無視しては 考えられないもので、こういうことは職員の態度、
感情を緩和し、対外的には患者さんに対し親切丁 寧という行動があらわれてそこで患者の吸収を獲 得する。如何に病院の技術が優秀であっても受付 がっつけんどんでは、先生の腕はいいが、受付が 不親切だからというので、外の病院に行くように なる。ただサーピス面が逆に過剰になりますと経 営者として注意しなければならないことは職員の 労働の過重でございます。病院の職種は多種多様 で医局から、看護婦、助産婦、レントゲン、薬剤 師、栄養士等でそれぞれ一国一城の主で自分の主 張をまげない、それをどう調節したらよいかが問 題であると思います。職場の人間関係は最初に安 全管理、衛生管理、厚生福祉、教育訓練に重点を 置いていることは論をまたないところで、私達の 産院におきましても、一年に1回乃至2回6か月 以内に採用したものを集めて、日赤精神はじめそ れぞれの教育をいたしますが、なかなかうまくい かないのが常でございます。事務長の立場から人 間関係をよくいうのですが、中堅幹部あたりは特 に社会的に名の通った人を招いて話しをしてもら うようにすると、みんな一生懸命にきいてくれま す。そういうことを考えまして学会等に発表しま すと自然に吾が病院で人間関係をテーマにやって ることを、おろそかにできない、というように自
日本病院協会雑誌Vo1.17.No. 1. 1970 83
然に改まって協力がでてくるようです。そんなこ とで一歩一歩すすめていくより仕方がないと思い ます。私共は朝の出勤から、お早ょうグというこ とを自分の方から挨拶をするようにしている。 2
~3 回やっているうちに先方から挨拶をするよう
になる。私共の院長は常に自分のドアーはだまっ てあけろといっております。
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自分のドアーはだまってあけて相談ごとはいつでも来なさい」とい うことをいってやっております。部下から挨拶が なくても上司から挨拶をするようにすればよい人 間関係が自然に生れるということで朝の挨拶を励 行いたしております。そうし、いながらも私達と正 反対の人もいるわけですが、これらの人に対して は自分の考え方態度、気持を一緒にしてもらうた めにはやさしく注意したり、時にはきびしくした り、或いはご機嫌をとるわけでございます。どう しても同じ職場で性が合わない人との人間関係は むしろこちらが相手の心に合わせるようにもって いったらどうかと考えてみる。これはその人を責 めるのではなく、冷たい心持と反対に相手を抱擁 するおおらかな柔い心持をもってすれば、自然に とけ込んでくるのではないかと考えております。
上司というものは、昔の諺のように実れば実る程 頭を下げるという気持で部下を包容すればいいの ではないかということです。
それからよく低姿勢といわれますが、理由のな い低姿勢はよくないことでございますが、相手の 人格を尊重しての低姿勢であれば大いにやるべき だと思います。自分の都合での低姿勢はつつしま なくてはいけません。もう一つ大切なことは言葉 の働きで日常使っている言葉の作用が大きく左右 されますが、或る時は立腹した人をなだめ、力の 尽きた人を勇気づけ、働く気力のない人、健康同復 に復帰させるとか言葉の働きによって左右される ものでございます。病院は病気をなおすところで ございますが、大病院の医師は技術はよくて病気 をなおしても気持の方をなおすまでにいかないの が実状で、 一方開業の医師は家庭までとけ込んで いくので気持までもやわらげる言葉も知ってると いうことになります。これは白'12;と勤務の違いで すが、でき得ればやさしい言葉のーつも余分にか けることが必要ではないかと思います。いなかの
民者が大都会の先生よりも案外病気をなおしてし まうというのは、言葉の使い方で気持の上で病気 もなおってしまうようでございます。
そこで現在の職場の現状は、どうかといいます と、どこの病院でもくせのある職員がいることは 事実だと思いますが、そういう人がいるために院 長と下とのパイプがつまってしまうだろうと思い ます。それでは病院全体の機能がストップし、全 体の評判が悪くなる仔JIがあるわけです。そういう 場合には性の合わない人間には上司からあまりき っくいわないで、やわらかくもっていって自然に 白分の方にとけ込むようにしなければいけないと いうことです。外に向って広告するよりも院内の 人間関係の調和をはかるのがいちばん効果があが ると考えております。管理者は先頭に立って部下 を引張っていく、カーネーギーは第一に相手に関 心をもてといわれました。第二には人に接するに 微笑をもて、第三には患者さんの名前を覚える。
そしてよい話の聞き手になってやること、相手の 話の腰を折つてはならない等、一番大切なことは 相手の職業も尊重することです。与えられた仕事 をこつこつと常に下積みの仕事をしている人を大 切にしてやることが肝要であることをお忘れにな らないでいただきたい。たいへん長くなりました が、ご参考になれば幸いと存じます。
司会 どうもありがとうござし、ました、山本事 務長さんは病院に於ける人間関係ということで常 日頃から勉強されている方でございます。只今の お話についての関連質問、又は追加のご発言をい ただきたいと存じます。
柏戸正英(柏戸病院長〕 なかなかむずかしい問 題で現在私のところでもいろいろ頭をいためてお ります。特に最近の若い人述と経験を積んだ人達 との問の関係等にはつとめて訴しあいの機会をも つようにやらせております。
司会 どうもありがとうごさ、いました。例えば ある病院で病院の目標のレールにのらない人をど ういうふうにのせているか具体例がありましたら ご披語願いたいと思い士す。特に医師、看護婦さ んで大事な技術をもっている場企にレールにのせ るのにはどうするか、院長の前に呼ぴよせて文句 をいえぼやめてしまうこともあるわけです。私は
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