3. 光ルミネッセンスによる食品照射履歴の検知 13)
3.2 PSL による香辛料乾燥野菜の計測
食品照射履歴の検知精度を明らかにするため,表 1 に示す香辛料・乾燥野菜を 食品総合研究所内コバルト 60 にて 1 kGy 照射し,1 週間暗所に保管した後,既 存 PSL 装置(SURRC 製)および開発 PSL 装置(JREC 製)で分析した(図 8)。
PSL 測定は,試料(香辛料,乾燥野菜)からの遅延発光の影響も考え,試料を 装置にセットし 1 分間暗順化させた後,計測した。既存 PSL の分析結果は,基 準積算発光量を元に自動的に,「Positive」,「Intermediate」,「Negative」と表さ れる。開発 PSL 装置では,PSL シグナルの強度変化が明確だったものを「++」,
図 9 開発 PSL 装置によるパプリカの PSL 発光
(2004/08/22 照射処理,2006/09/08 測定)
0 0 0 1
0 0 2
0 0 3
0 0 4
0 0 5
0 0 6
0 0 7
0 0 8
0 0 9
0 0 0 1
0 0 1 0
8 0
6 0
4 0
2 0
) s
( 間 時 測 計
発光量(cps : count. / s )
射 照 y G k 0 1
射 照 y G k 5
射 照 非 L
S P 光 発 発 自
図 10 PSL 強度変化に基づく照射履歴判別方法(新規 PSL 判別法)
照射試料は光励起後発光量が増加し徐々に減衰する 非照射試料は光励起後発光量は変化しない
0
0
0 1
0 0 2
0 0 3
0 0 4
0 0 5
0 0 6
0 0 7
0 0 1 0
8 0
6 0
4 0
2
0 計測時間(s)
発光量(CPS)
A -B
=
) 加 増
( 1 標 指
C -B
=
) 少 減
( 2 標 指
A Σ -) C -B ( Σ
=
) 算 積
( 3 標 指
B A
C 積算
減少 増加
照射試料
非照射試料
強度変化が確認できたものを「+」,判定不可能であったものを「−」と表記し た。PSL 計測の結果,新規 PSL 判定法でも,既存 PSL と同等の結果が得られた
(表 1)。新規 PSL では判別基準となる発光量を設定する必要がないため,より 客観的な判別方法と考えられる。
岩塩やナツメグなどの一部の試料の判定結果には,良好ではないものもあっ た。岩塩に関しては,自然放射線の影響で非照射であってもわずかに PSL が生 じる。1 kGy 照射後の岩塩の発光量は,非照射に比べて数 10 倍以上多いことか ら,照射履歴の判別は可能である。このように一部の食品では,自然放射線でも PSL が生じるものもある。一方,ナツメグは照射試料で PSL 発光が生じないた めに PSL では分析できない試料である。これは,ナツメグの生産工程で発光の 主要因である鉱物が混入することが少なく,試料中の鉱物量が少ないことが原因 である。このように,PSL の応答は食品の種類や産地によって異なるが,一切 前処理なく迅速に照射履歴を分析できる PSL 法は食品照射のスクリーニングに は十分利用できる。さらに,食品関連企業等では,取り扱う原料(食材)に対し て放射線照射(標準照射)後の PSL の応答を事前に調べることで,照射の疑い のある食品の流通を防止するという目的は十分達成できる。
5. まとめ
食品からの自発極微弱発光は,品質の良いものほど発光量が多くなるもの(ポ
テトチップ,焙煎ゴマ油の初期反応等),逆に劣化に伴い発光量が増加するもの
(精米,リノール酸等)があり,品質評価に使用するためには,食品毎に品質変 化と発光現象の関係を事前に明らかにする必要がある。計測装置や操作は非常に 簡単であることから,流通過程での品質管理用の簡易計測技術としては非常に有 表 1 1kGy 照射された食品の PSL による検知の可能性 (ガンマ線照射1週間後)
品 名 新規 PSL
判別法 既存 PSL 法
(EN 法*) 備 考
オレガノ ++ Positive
ガーリック(あらびき) + Intermediate サンプリングにより感度不均一
岩塩 ± ※ Positive 非照射試料も発光量が多い
クミンシード ++ Positive クミンパウダー ++ Positive
粉わさび ++ Positive 遅延発光の影響大
コリアンダー + Intermediate シナモン + Intermediate スペアミント ++ Positive
食塩 ++ Positive
セージ ++ Positive
ターメリック ++ Intermediate ターメリックパウダー ++ Positive
タイム ++ Positive 遅延発光の影響大
タラゴン ++ Positive
チリーペッパー ++ Positive チリパウダー ++ Intermediate 唐辛子 ++ Intermediate
ナツメグ − Negative 鉱物少ない
バジル ++ Positive
パセリ ++ Positive
パプリカ ++ Intermediate ブラックペッパー + Intermediate ペパーミント ++ Positive
乾しいたけ + Positive
ホワイトペッパー + Intermediate
マスタード + Positive 遅延発光の影響大
緑茶 ++ Positive
ローズマリー ++ Positive
* EN-13751(2002)推奨装置:SURRC 製 PPSL 基準発光量 T1=700, T2=500 Count. / 60 s Negative(非照射)< T1< Intermediate(疑有)< T2< Positive(照射)
効な計測方法となることが期待される。光ルミネッセンス(PSL)法は,1 〜 2 分と非常に短時間に,食品への放射線照射履歴を検出できる方法である。特に,
海外から輸入される原料の照射履歴検査のスクリーニングには十分な能力を有し ていた。
このように,微弱発光計測を利用する迅速で簡易なスクリーニング技術を食品 流通過程に提供できるよう,今後も引き続き研究に取り組みたい。
(食品工学研究領域 反応分離工学ユニット 蘒原 昌司,鍋谷 浩志)
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dl/100330̲02.pdf(最終アクセス日 2010.11.1)