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PLE 測定結果

第 6 章 励起スペクトルによる K 2 SiF 6 :Mn 4+ 赤色蛍光体の 3d 3 電子の励起状態の解析

6.4 実験結果

6.4.2 PLE 測定結果

Figure 6.3の青線で示したのは、K2SiF6:Mn4+の300 K時のPLE測定の結果である。PLモ ニター波長はStokes光ので測定を行った。~2.7、~3.5、~4.8 eVにブロードな励起帯が観 測された。さらに、~2.1 eV付近のPLと重なる波長にシャープな励起帯が観測された。観 測された励起帯はそれぞれ、~2.7 eV:4A24T2、~3.5 eV:4A24T1、~4.8 eV:4A24T1、~2.1 eV:4A22Eの遷移に対応している。300 Kと20 KのPLEを比較すると、本質的に観測さ れるピーク位置は同じであるが、~2.7 eV:4A24T2の励起帯は20 K時に複数の振動ピーク が観測されている。観測された振動モードについての解析は後に示す。

2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 300

400 500

Photon energy (eV)

PL, PLE (arb. units)

T=300 K

Wavelength (nm)

700 250

4A2g 2Eg

4A2g4T2g

4A2g4T1g

PL

PLE

4A2g4T1g

2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 300

400 500

Photon energy (eV)

PL, PLE (arb. units)

T=20 K

700

Wavelength (nm) 250

4A2g 2Eg

4A2g4T2g

4A2g4T1g

PL

PLE

4A2g4T1g

Figure 6.3 PLE測定結果(300 K)

Figure 6.4 PLE測定結果(20 K)

94 6.4.3 4A22E遷移

3dnの電子状態(電子遷移)及び結晶場パラメータ等を説明するには、田辺-菅野ダイア

グラムを用いることで説明できる。9,10 Figure 6.5は3d3(Mn4+)エネルギーのダイアグラ ム(田辺-菅野ダイアグラム)を表したものである。Figure 6.1及びFigure 6.2に示したよう に、K2SiF6:Mn4+赤色蛍光体のスペクトルはMnF62−八面体の分子振動によるシャープな線ス ペクトルが観測される。観測されるシャープなスペクトル(PL)はFigure 6.5に示す2E→4A2

遷移によるものである。Figure 6.1及びFigure 6.2の黒線で示したのはK2SiF6:Mn4+赤色蛍光 体のPLE測定結果である。ZPLは300 Kで1.9934 eV、20 Kで1.9982 eVとなっている。300、

20 K共にZPLより高エネルギー側に注目すると、PLEとPL(anti-Stokes光)スペクトルが ほとんど一致している(ストークスシフトが小さい)ことが確認できる。この結果から、

PLE及び PL の遷移プロセスが同じであることがわかり、3d3(Mn4+)エネルギーのダイア グラムによると4A22Eの遷移に相当する。

3d3(Mn4+)の発光遷移は2E→4A2であるが、2E準位の~0.1 eV上の準位に2T1準位が存在 している(Figure 6.5)。この2T1準位については、正確なことは知られていない。本研究に おいては、Figure 6.1及びFigure 6.2から、~2.12 eVに示すPLEは、発光遷移である2E→4A2

と一致しているという結果しか得られていない。つまり、2T1準位に関連したピークは観測 されていない。したがって、3d3(Mn4+)の4A22Eの吸収発光遷移が追いこる際、2T1準位 に励起された電子は、高い確率で2E準位に捕えられ、2E→4A2の遷移が起こると予想できる。

3d3(Mn4+)の遷移を2T1を関連させて表すと、4A22E(2T1)とも表せる。

Figure 6.5 田辺-菅野ダイアグラム(3d3

95 6.4.4 4A24T2遷移

Figure 6.3及びFigure 6.4に示すように、~2.7 eVの励起帯は4A24T2遷移に相当し、許容 遷移である。さらに、20 Kでは4A24T2遷移の励起帯は、微細構造が観測されている。Figure 6.4に示すフォノンレプリカ構造は、電子遷移(4A24T2)とMnF62−八面体のある分子振動が カップリングすることで得られた振動連鎖であると考えられる。フランク・コンドンの解 析によるとn番目の振動サイドバンドの強度𝐼𝑛𝑒𝑥は、以下の式に示すZPLの強度𝐼0𝑒𝑥を決める ことで表すことができる。11

𝐼𝑛ex = 𝐼0exS0(n) …(6.1) S0(n) ≡ exp(-S)𝑆𝑛!𝑛 …(6.2)

ここで、S0(n)はポアソン分布関数、S は光学遷移に伴って放出されるフォノンの数である。

Figure 6.6はK2SiF6:Mn4+赤色蛍光体の20 K時のPLEスペクトルを表している。図中の棒グ

ラフは式(6.1)に示すポアソン分布によりフィッティングしたものである。4A24T2遷移の励 起帯は、S = 2として計算した。ZPLのエネルギーEZPLは2.676 eVとされ、結晶場パラメー タ(Dq)2159 cm-1が得られた。また振動のエネルギー間隔(ZPLのサイドバンド)は65 meV で計算したところ、最もスペクトルと一致した。得られた65 meV(~524 cm-1)の値は、MnF62−

八面体における2(~525 cm-1)の振動エネルギーと一致する。12,13

3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 350

400 450

Photon energy (eV)

P L E ( a rb. uni ts )

T = 20 K

ZPL (4A2g4T2g)

Wavelength (nm)

ZPL (4A2g4T1g)

ZPL (4A2g4T1g)

×10

Figure 6.6 PLEスペクトル(20 K)

96