第 3 章 環境配慮行動推薦手法の提案
3.2 PEB マッチングモデル
3.2.5 PEB 適応指数
3.2.5.1 PEB 適応指数算出方法の構築
本手法ではあらかじめ設定したユーザの回答した外的・内的要因への回答を数値デー タとして入力し、PEB適応指数を算出する方法をとる。算出式としては、最も単純な 関係である線形式を利用する。
ここで式内の係数項を設定する必要がある。そこで基礎データを元にして従属変数 を「そのPEBを実行しているかどうか」、独立変数を「各外的・内的要因への回答」と して重回帰分析を行った。ただし重回帰分析を行う際には前もって独立変数間の相関を 調べる必要がある。独立変数に強い相関がある場合、それら両方の係数を分析に投入 することに意味が薄くなるため、統合したり片方を削除する方が望ましい場合もある からである。よってまず各変数の相関係数を導出した。対象となる外的・内的要因は、
外的要因のうち「性別、年齢、学歴、消費財の購入決定権、家電の購入決定権、自由 時間、年収」の7項目および内的要因の全13項目である。表3.15に各外的・内的要因 間の単相関係数および無相関の検定結果を示す。右上の三角領域に単相関係数、左下 の三角領域に無相関の検定結果を示す。左下の三角領域の*は有意水準を表す。*なし は両変数間には相関がないという仮説が採択されたことを示す。*が5%有意傾向、**
が1%有意でそれぞれ仮説が棄却されたことを示す。
表3.15:各外的・内的要因間の単相関係数および無相関の検定結果 性別年齢学歴消費財の家電の自由世帯DMTPPI快適さ所有品手間の判断の新しいこと知識節約社交性粘り結果の行動 購入決定権購入決定権時間年収への執着への執着の忌避忌避への興味欲意識強さ認知欲顕示欲 性別1.000-0.155-0.1410.392-0.135-0.0130.013-0.097-0.137-0.069-0.097-0.024-0.093-0.024-0.0580.0290.024-0.075-0.1200.110 年齢**1.000-0.020-0.1350.0500.1390.2570.2440.1830.1190.1600.1680.091-0.073-0.094-0.044-0.0930.0350.140-0.217 学歴**1.000-0.0960.0210.0080.3280.1180.259-0.1550.099-0.0470.1610.1010.145-0.0090.1000.0840.0150.007 消費財の購入決定権******1.0000.5260.049-0.256-0.102-0.066-0.068-0.030-0.015-0.0320.0480.0290.1000.039-0.011-0.0510.092 家電の購入決定権****1.0000.080-0.2070.0100.141-0.0550.0330.0530.1430.1480.1300.0850.0480.047-0.0220.031 自由時間***1.000-0.0580.0140.1150.0030.0490.0410.0570.0280.023-0.016-0.0480.0000.040-0.099 世帯年収********1.0000.3780.343-0.1600.052-0.0010.1000.0840.051-0.0840.1350.060-0.0200.000 DMTP**********1.0000.520-0.0810.0450.0120.1120.0560.047-0.1290.1060.054-0.0090.022 PI***************1.000-0.0540.1750.0190.2040.0900.126-0.1000.0370.0130.047-0.020 快適さへの執着**********1.0000.1780.103-0.037-0.166-0.172-0.051-0.143-0.0650.126-0.182 所有品への執着**********1.0000.2090.1390.0720.0200.0130.0000.0430.181-0.220 手間の忌避******1.0000.2270.1440.1080.1000.0980.0920.142-0.109 判断の忌避******************1.0000.2570.3030.0320.1890.159-0.001-0.056 新しいことへの興味****************1.0000.6810.1820.3990.256-0.0840.079 知識欲****************1.0000.1820.3370.221-0.1140.077 節約意識****************1.0000.1350.242-0.0180.089 社交性********************1.0000.173-0.0780.293 粘り強さ****************1.0000.0290.034 結果の認知欲***************1.000-0.455 行動顕示欲**********************1.000 (*:p<.05 **:p<.01)
表3.15に示すように、多くの要因間に相関があることがわかった。この中で特に相 関係数の大きかったのが
・ 「消費財の購入決定権」と「家電の購入決定権」
・ 「DMTP」と「PI」
・ 「新しいことへの興味」と「知識欲」
・ 「結果の認知欲」と「行動顕示欲」
である。前者3項目は正の相関を示し、後者1項目は負の相関を示した。
消費財と家電の購入決定権はいずれも購買に関する外的要因であり、相関があること は妥当である。しかし工業国である日本では環境に優しい物品、特に家電製品が随時市 場に現れるため家電に関するPEB実行の機会は多く、本手法でもen10,en11,dn11,dn16 の4項目を設定している。「家電の購入決定権」項目はこれらのPEBの実行能力に大 きく影響すると考えられるため、消費財の購入決定権と別にたずねる必要があると考 えられる。
DMTPとPIもいずれも支払いに関する感覚をたずねているため、相関があること は妥当である。
新しいことへの興味と知識欲は質問文に問題があった可能性がある。つまり、「新し いことへの興味」をたずねる質問文は「今まで知らなかった、実行してなかったこと に新しく取り組むこと」であり、「知識欲」をたずねる質問文は「新しい知識を取り入 れること」とした。意図としては、前者は行動や活動、後者は知識に対する欲求をた ずねたものである。しかし前者において明確に行動や活動に限定していないため、回 答者は同じような質問が並んでいると受け取った可能性が高い。また質問文構成上の ミスを除いても、新しい何かに対する欲求をたずねるという点では共通しているため、
相関があることは妥当である。
結果の認知欲と行動顕示欲の相関は行動顕示欲を逆転項目としているため、「結果を すぐ知りたい人は自分の行動を他人に見て貰いたがる」ということを示している。両 者とも自分の行動に関して社会的な報酬を欲する気持ちをたずねているため、相関が あることは妥当である。
後者3項目は重複する可能性が高いことを考慮し、重回帰分析の過程で重複の多い 項目だと判断すれば、どちらかを削除することとした。判断基準は後述の重回帰分析 の結果を用いて、より多くのPEBに有意な係数を持つ方の項目を残す。