第 4 章 追跡調査実験による環境配慮行動推薦手 法の有用性評価
4.5 追跡調査実験の結果分析
4.5.1 母集団の特徴比較
まず、ランダム群と指数群の母集団間における外的・内的要因項目の差がないこと を検定する。ユーザをランダム群と指数群に振り分ける際に特に条件を設けなかった ため、差はないと考えられる。しかし、仮に何らかの外的・内的要因項目に有意差が 見られた場合、両者の違いはPEBマッチングモデルを用いたか否かのみである、とい う対照実験の前提が成立しない。
4.5.1.1 一次調査実験の母集団の特徴比較
まず一次調査実験のランダム群と指数群の母集団の外的・内的要因項目の特徴を比 較する。
外的・内的要因への回答は順序尺度で回答されているため、F検定を用いて等分散性 を確認した上でマンホイットニーのU検定を用いて有意差の検定を行った。ただし年 齢項目のみ比例尺度であるため正規分布に従うことを確認した上でt検定を用いて検 定を行った。なお「新しいことへの興味」「節約意識」「知識欲」に関しては、F検定の 結果、分散が等しくないと検定されたため、U検定を用いることは妥当ではない。そ のため検定を行わなかった。U検定およびt検定の結果としてp値を表4.3に示す。
表 4.3: 一次調査実験の母集団の外的・内的要因項目の特徴比較 U検定結果
項目 p値 項目 p値
性別 0.810 DMTP 0.521
年齢 0.732 新しいことへの興味 —–
世帯年収 0.361 粘り強さ 0.815
節約意識 —– 消費財の購入決定権 0.899 知識欲 —– 家電の購入決定権 0.469
社交性 0.207 自由時間 0.397
判断の忌避 0.115 快適さへの執着 0.245 所有品への執着 0.297 結果の認知欲 0.896 手間の忌避 0.604 行動顕示欲 0.801
結果として検定可能であった全ての項目でランダム群と指数群間に有意差が無いこ とを確認した。続いてU検定を用いることができなかった3項目の回答分布を確認し たが、肯定的な回答と否定的な回答の比率の差が最大で7%程度であり、影響は小さい と判断した。よって、一次調査実験においてランダム群と指数群間の外的・内的要因 項目の差はないため、対照実験を用いた評価が可能である。
続いて、再び平成17年国勢調査の結果[18]を引用し、一次調査実験のユーザが日本 人全体と比較してどのような人口統計学的特徴を持っているのかを比較する。比較項 目には性別・年代・世帯年収を用いる。比較結果を図4.4に示す。
一次調査実験のユーザの男女比はほぼ均等で、日本人全体と比較して差は見られな かった。一次調査実験のユーザの年齢層は20〜49歳が全体の8割を占めた。一次調査 実験のユーザの世帯年収は300〜700万円の世帯が国全体の平均より多く、日本人全体 と比較して経済的に困窮している層は少ないと考えられる。したがって、日本人全体 と比べると一次調査実験のユーザは「男女比に差は無いが20-49歳の人が多く、経済 的に困窮している層は少ない」と考えられる。この結果は、3.2.4.2で述べたインター ネットユーザの特徴と合致し、また3.2.4.9で述べた基礎アンケート収集アンケートの 対象母集がの持つ外的・内的要因の特徴と似通っている。つまり、特に説得活動、金 銭活動、市民活動および学習活動におけるPEB実行率は、日本人全体のPEB実行率 と比較して高いと予想される。
図 4.4: 一次調査実験のユーザと日本人全体の性別・年代・世帯年収の比較
4.5.1.2 二次調査実験の母集団
続いて二次調査実験のランダム群と指数群の母集団の外的・内的要因項目の特徴を 比較する。
一次調査実験と同様にF検定を用いて等分散性を確認した上でマンホイットニーの U検定を用いて有意差の検定を行った。ただし年齢項目のみ比例尺度であるため正規 分布に従うことを確認した上でt検定を用いて検定を行った。なお「新しいことへの興 味」「知識欲」に関してはF検定の結果等分散性が等しくないと検定されたため、U検 定を用いることは妥当ではない。そのため検定を行わなかった。検定結果としてp値 を表4.4に示す。
結果として検定可能であった全ての項目でランダム群と指数群間に有意差が無いこ とを確認した。続いてU検定を用いることができなかった2項目の回答分布を確認し、
否定的な回答の比率の差が最大で約7%のため、影響は少ないと判断した。よって、二 次調査実験においてもランダム群と指数群間の外的・内的要因項目の差はないため、対 照実験を用いた評価が可能である。