• 検索結果がありません。

本章の概要

第5章で得られた知見を基に,PBL前に事前学修を実施した.本研究では,PBLの事 前学修の内容に対する考え方,事前学修の重点指導事項の内容,実際のPBLに適用した 効果について論じる.結果として,各種手法の適用状況と最終成果順位に相関は見られな かったが,学生は,プロセス重視から成果重視に変わり,プロジェクトタイプを判断して 活動し,実社会でのプロジェクトマネジメントの重要性を認識した,などの変化が見ら れ,PBLをプロジェクトとして認識し活動できる学修成果が得られた.さらに,プロジェ クトタイプに対するWBS作成の方法の課題が明確になり,WBSの作成に関して考え方を 整理し,WBS作成方法の明確化と,これに伴うDDMの改善も行い,PBLにおける統一 的な日程計画作成手法を確立した.

159

第5章で論じたように,PBLにおいて開発型プロジェクトに対するM-IScMとDDMの 有効性が確認できた[除村2017b].さらに,PBLの学修効果をより高めるために,学生は事 前に,PBLの全体構造を理解することや,PBLを構成するプロジェクトタイプやそのタイ プに適した手法や思考法を学ぶことで,PBLの学修効果を高め,実際のPBLを効率的に進 めることができる可能性を指摘した[除村2017a].本研究は,これら知見を実際のPBLに 適用し,評価を行ったものである[Yokemura2018].本研究の目的は以下の通りである.

(1) PBLの構造やプロジェクトタイプ,思考方法,WBS作成,などのプロジェクトマネジ メント手法などを教える事前学修が学修成果に与える影響を検証すること.

(2) 事前学修は学生にどのような影響を与えたかを検証すること.

(3) 今回の事前学修から新たな知見や課題を得て対応を考察すること.

本章では,PBL の事前学修の内容に対する考え方,事前学修の重点指導事項の内容,実 際のPBLに適用した状況と効果について論じる.

6.1 事前学修の概要

6.1.1 事前学修内容の考え方

学生は,PBLのプロジェクトタイプ構造や,各プロジェクトタイプにおける,思考方法,

WBS作成などのプロジェクトマネジメント手法などを理解し,これらを適切に活用できる ようになることで,PBL をプロジェクトとして効率的に運用し,成果を上げることが期待 できる.そして,このことは,「2.6.1 PBLに関する先行研究」で述べたPBL課題の(4),

(5),(6)の課題解決につながることが期待される.これを実現するために,PBL実施の前に

何をどのように教えると効果的であるかの考え方を明確化することは,学修成果向上に重 要な要因となる.事前学修内容は以下のような考え方で構成し,理解の促進を狙った.

(1) 実社会のプロジェクトで求められることは成果であり,PBL においても独創的なアイ デア創出し,それをプロトタイプとして開発し成果を上げることが重要であること.

(2) PBL を経験することは,授業としてだけでなく実社会におけるプロジェクトの進め方 を経験する点でも重要であり,企業でのプロジェクトは会社組織を一気通貫で貫き,企 業業績にとって重要であること.

(3) 説明はPBLの活動の流れに沿って行い,図6.1に示すように活動のフェーズによって 異なるプロジェクトタイプと思考方法や,WBSや日程計画の作成手法の考え方とそれ らを使用する適切な状況や活動の進め方,システム工学の各種技法との関係などにつ いて,実践的な説明を行う.

(4) 演習を取り入れ,学生に考えさせ,その上で説明することで,理解の促進と気づきを促 すこと.

(5) 時間の関係もあり,全ての事項ではなく,優先度の高い事項に絞って事前学修を実施す ること.

160

DR3:最終報告 DR1:企画提案

その目標達成を達成し、成果を生 み出す。

成果を生み出す、優れた目的、

目標、コンセプト、ゴールを創造 する。

DR2:設計・開発提案 開始

目標達成型プロジェクト 目標探索型プロジェクト

思考方法 仮説思考 目標思考

プロジェクト タイプ

開発型プロジェクト 価値創出型プロジェクト

プロジェクト の目的

図6.1 プロジェクトタイプと思考方法

PBLで期待されるWBS及び日程計画作成手法を図6.2に示す.これを理解し,PBLで 実践できるように事前学修を実施することが求められる.

PBL開始 -> DR1

(1) DR1 において企画提案とするプロジェクト目標を生み出すために,実施すべき活動を 活動要素に分解しWBSを作成する.

(2) 分解した活動要素をアクティビティーに分解し,活動要素またはアクティビティーを メンバーに割り当て,さらに,アクティビティーの依存関係として日程計画を作成する.

(3) 日程計画に沿いDR1に向けて活動し,プロジェクト目標を設定し,DR1で企画提案と して発表する.

DR1 -> DR3

(1) 開発型プロジェクトに対し,DR3 において生み出す最終成果物を構成要素に分解する 考え方で成果物分解しWBSを作成する.

(2) 分解した要素成果物に対しメンバーを割り当て,DDMを作成し,分解した要素成果物 のメンバー間の受け渡しで日程計画を作成する.さらに,受け渡しにおけるメンバー間 の認識の差異を洗い出し,必要なら日程の圧縮を行い,日程計画を作成する.日程計画 作成において,各メンバーは要素成果物を生み出すアクティビティーを洗い出す必要 がある.

(3) 日程計画には,DR2に向けた設計・開発提案とDR3に向けて成果報告を達成するため の活動計画が含まれる.

161

DR3:最終報告 DR1:企画提案

活動要素に分解

DR2:設計・開発提案 開始

WBS成果物 分解方法

アクティビ ティーの扱い 日程計画作成 方法

成果物要素に分解

WBS作成で分解した活 動要素をアクティビティー に分解

アクティビティーの依存関 係として日程計画を作成

要素成果物を生み出すアクティビ ティーを洗い出す

DDMを作成し、分解した成果物の 受け渡しで日程計画を作成 目標達成型プロジェクト 目標探索型プロジェクト

プロジェクト

タイプ 開発型プロジェクト

図6.2 WBS及び日程計画作成手法

実際の試行では,上記教育に課題があることが明らかになり,WBS作成に関してきちん とした考え方を整理する必要性を認識し,「6.4 新たな課題に対する考察」で述べるWBSの 考え方の整理につながった.

6.1.2 事前学修内容の構成

先に述べた考え方を基に,以下のように事前学習資料を構成した.

1. はじめに: PBLで成果を生み出すために

PBL では成果を生み出すことが重要であり,そのために重要な,独創的なアイ デアの創造,良いチームを作ること,日程計画を作成して成果を生み出すこと,

について説明した.

2. プロジェクトタイプと思考方法

PBLの全体構造は図6.1,図6.2で示したよう構造となっており,各DRで要求 される事や各ステップで何を実施すべきか,また,実施における思考方法につい て説明した.

3. 仮説思考による企画案創出

PBL 開始から DR1 での企画提案を行うために実施される目標探索型プロジェ クトと,そのプロジェクトを進める上での思考方法である仮説思考を説明した.

4. 目標思考による開発計画作成

DR1~DR3 までの期間で実施される目標達成型プロジェクトの中の開発型プロ

ジェクトと,そのプロジェクトを進める上での思考方法を説明する.

162 (a) プロジェクトの基本

プロジェクトマネジメントとは何か,また,プロジェクトマネジメントで重 要な概念について説明する.さらに,WBS作成の考え方,方法について説 明する.

(b) プロジェクト開発日程計画作成手順

開発型プロジェクトで日程計画作成に使用するM-IScMやDDM の考え方 や使い方の説明を行う.

6.1.3 事前教育の重点指導事項

PBLプロセスと教育内容の全体像を図6.3に示す.

DR3:

最終報告 DR1:

企画提案 DR2:

設計・開発提案 開始

目標探索型プロジェクト プロジェクト

タイプ

効率的に 成果を生む手法

思考法

WBS

仮説検証思考

ロジカルシンキング

発想法

目標思考

目標達成型プロジェクト

開発型プロジェクト

価値創出型プロジェクト 全体プロジェクトマネジメント

目標を満たす優れた 成果をあげる 成果を生み出す、優れた

目的、目標、コンセプト、

ゴールを創造する。

5 5

2 2

6 2

2,6

5 2 6

X 第X章に記述。

日程計画作成

目標達成型プロジェクトマネジメント

6 本章に記述。

図6.3 PBLプロセスと教育内容の全体像

教育内容の内,目標探索型プロジェクトと目標達成型プロジェクト,M-IScMとDDMを 使った日程計画作成手法については第5章で説明した.ロジカルシンキング,発想法,WBS の一部,狭義のプロジェクトマネジメント,目標思考については第2章で説明した.本節で は,全体プロジェクトマネジメント,仮説思考,WBSによる仕事の割り当て方法について,

事前指導において実施した重点ポイントを述べる.

(1) 全体プロジェクトマネジメント

全体プロジェクトマネジメントは,開かれた目標探索空間の中から最適な目標を選択し 目標を設定する目標探索型プロジェクトと,その目標を達成するための目標達成型プロジ

関連したドキュメント