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OSCE の実際とその問題点

ドキュメント内 <955C8E862E706466> (ページ 59-63)

司会:明 治 鍼 灸 大 学 名 誉 教 授 丹澤 章八 東海医療学園専門学校校長 杉山 誠一

鍼灸師が身につけておくべき能力として、知的能力(知識)・操作能力(技能)・人間性(態度・習慣)

の3つが必要とされている。鍼灸教育機関では、学習者にこれら3つの能力を習得させるべく教育目標を 設定し方略を立て、学習者の目標への到達度並びに設定した目標や方略が適切であったかどうかを確認 することを目的として評価を行う。

はり師きゅう師国家試験は、教育課程の修了者が社会にて業を行う上での能力を評価する、いわばバ リアとしての意義を有するものであることは云うまでもないが、現在行われている国家試験では3つの 能力のうちの「知識」の領域しか評価していないのが実情であり、従って鍼灸師として習得すべき「技 能」並びに「態度・習慣」の領域については、各教育機関が社会に保証すべく責任をもって評価しなけ ればならない。

OSCE(客観的臨床能力試験)は、筆記試験では評価できない技能や情意領域を評価する上でその有用 性が期待され、鍼灸教育機関でも近年導入・試行されつつあるが、評価としての客観性や妥当性など、

まだまだ様々な問題を抱えているといえよう。

そこで本セッションでは、既にOSCEを実施している教育機関に各々の実施状況とその成果や問題点な どについて明示して頂き、評価としての妥当性・信頼性について考えてみたいと思う。

パネルディスカッション Ⅰ OSCE の実際とその問題点

東海医療学園専門学校における OSCE 実施の問題点と今後の課題

東海医療学園専門学校 木村 博吉

【導入の目的】

東海医療学園専門学校(以下当学園)の臨床能力に関する従来までの教育は、カリキュラムに沿った 担当教員主導によるものであった。また、その到達度は担当教員の主観的尺度をもって評価してきたが、

これらの教育・評価方法には普遍性を欠く数多くの問題点があった。そこで、この問題点を解消するた め、卒前教育における臨床能力教育の質的向上及びその客観化を目指して、段階的にOSCE導入に関する 検討を開始し、平成12年度から14年度までの3年間、卒業判定実技試験においてOSCEを実施した。

【実施状況の紹介】

平成12年度の対象は、最終学年(3年生)43名。ステーション(以下ST)は、3つのSTを2列設けて 実施した。ST1は、標準模擬患者(以下SP)参加型の医療面接(制限時間10分)。ST2は、医療面接の情 報理解を問う筆記試験。ST3は、身体診察(制限時間10分)。課題数は4題。内容はバイタルサイン(脈 拍数測定)、上腕二頭筋腱反射、腹部触診、アレンテスト、ならびに課題関連の口頭試問を行なった。

平成13年度の対象は、最終学年41名。STは、3つのSTを2列設けて実施した。ST1は、SP参加型の医 療面接(制限時間10分)。ST2は、身体診察(制限時間10分)。課題数は6題。内容はバイタルサイン(血 圧測定)、膝蓋腱反射、SLR、MMT、ならびに舌診、脈診とした。ST3は、医療面接の情報理解を問う筆記 試験とした。

平成14年度の対象は、最終学年43名。6つのSTを2列設けて実施した。ST1は、SP参加型の医療面接 (制限時間10分)。ST2は、身体診察(制限時間10分)。課題数は6題。内容はバイタルサイン(脈拍数測 定)、上腕二頭筋腱反射、SLR、MMT、ならびに舌診、腹診とした。ST3は、医療面接の情報理解を問う筆 記試験とした。ST4は取穴試験(口頭試問2題、取穴3題)。ST5は鍼実技試験(腹部指定3経穴に直刺)。 ST6は灸実技試験(腰部2点に透熱灸)とした。

【実施上の問題点】

第1に、マンパワーの問題が挙げられる。当学園ではOSCE実施に必要な人員を確保するために、東京 衛生学園専門学校臨床教育専攻科の学生や当学園の学生に協力を仰いでいる。人員については単に人数 を集めるだけではなく、OSCE実施内容をどの程度まで理解してもらうべきなのか、今後の検討課題とし て挙げられる。

第2に、施設の問題が挙げられる。当学園ではOSCE実施日は施設全体を利用し行なっているが、全施 設を利用しても隣接する試験会場の声漏れや動線の交わり、交代要員の待機場所や出入り口の確保など が問題点として挙げられている。

第3に、時間の問題が挙げられる。当学園でのOSCE実施時間は、ひとつのST当り4時間程度となって いる。試験開始時間が後半にあたる学生は、長い待機時間が負担となり、評価者にとっては集中力の低 下が問題になってくる。従って、学生、評価者とも負担が少なくなるような実施方法を検討していかな ければならない。

第4に、評価の問題が挙げられる。評価項目の標準化と配点比重について、各STで評価目的を明確に していかなければならない。

【今後に向けての提言】

OSCEの実施は、マンパワーや設備の問題を考えると、養成校単独での実施は大変困難である。養成校 でのOSCE導入を円滑に実施するためには、OSCE実施支援を行なう人員の養成と確保が望まれる。また、

より客観的な評価を行なうためには、評価方法のみに着目して、その客観性を高めるだけではなく、学 習の目標―方略―評価方法についても、今後十分な検討が必要と思われる。

パネルディスカッション Ⅰ OSCE の実際とその問題点

森ノ宮医療学園専門学校の OSCE 導入への歩み

森ノ宮医療学園専門学校 小島 賢久

【実施(導入)しようとした意図(目的)】

従来、本校での実技評価は教員個人が基準を設けて実施してきた。それらの評価は1人の教員が行っ ていたため、評価のバラツキについてもあまり意識する必要がなかった。しかし、本校の定員の増加に 伴い、1人の教員によって評価することが難しくなり、標準化した評価表の作成および複数評価者によ る評価の統一が必要になってきた。

加えて、OSCE調査研究会への参加を機に実技評価法の見直しとOSCE導入の研究が始まり、2年前、実 験的に3年生希望者にOSCEを実施した結果、多くの課題や問題点を改善することで有用であろうと判断 した。

【実施への障害となった問題】

各実技の評価者とその評価時間の確保、学生の長時間拘束あるいは、教員の抱く、「これまでの評価へ の否定的なイメージ」や「新しいことへの拒絶、不安」など様々な要因から、これまで本格的な導入ま で進展できなかった。

【実施状況の具体的な紹介と実施上の問題点】

今年度は、2年学年末試験において、OSCEを実施した。今回の目的は、来年度の卒業試験に導入する ため、教員への意識づけ、ST構成と誘導の確認および評価法の妥当性を確認するものであった。

対象は2年生昼間部57名、夜間部59名で、試験は4つのSTを2日間で行った。各STとも制限時間は課 題理解を含め、8分間とした。ST1の身体診察は、課題が4問(神経学的検査、めまい・頭痛・視覚異 常の症候に対する検査)であった。ST2の筆記試験はST1に基づいた症例や陽性判定に関する問題であっ た。ST3の鍼実技は課題が1問(腰部への刺鍼)、ST4の灸実技は課題が2問(上肢および下肢への施灸)

を実施した。

結果として、当初の目的であったOSCEをこれまで知らなかった教員への理解および意識づけができ、ST 構成および基本的な誘導に関してはスムーズに行えた。また、評価者からは「各教員間のコミュニケー ションがとれた」、学生からは「公平性があって良い」などのOSCEに対し、好意的な意見があった。

問題点として、「学生の待機時間が長かった」、「学生への理解が不十分」、「教員間での評価基準のすり 合わせが不十分」など以前からOSCE実施で問題となっていた課題を克服することはできず、今回の実施 が定期試験内の平日であったため、対象者以外の学生が校内におり、誘導に少し支障があった。

また、カリキュラム上、医療面接のSTを設定できなかった。臨床能力を評価する本試験において、患者 対応を重点的に観察できる医療面接は必要不可欠で、今後実施するOSCEでは医療面接STを設置したい。

【今後に向けての実施方針】

本校での今後の方針は、医療面接や身体診察のST運営や評価項目は鍼灸OSCEの報告および医学教育や 看護教育などを基に、本校に適した運営や評価方法を検討していくことにある。

鍼灸実技のSTは当然、鍼灸教育のオリジナリティーが要求され、医療面接や身体診察と比較し、課題 を多く残す。特にSPの確保およびSPの身体的負担への配慮、課題設定、評価項目などである。

今回、本校OSCEの評価項目は、刺鍼・施灸の基本動作、および刺入した鍼の深度、角度や艾 の大き さや作る速度などで、それらをSPへの施術によって評価した。ただ、鍼灸治療の特徴は、施術時に患者 の受ける感覚も重要な要素であり、「何を、どの様に評価するか」を引き続き検討しなければならない。

ドキュメント内 <955C8E862E706466> (ページ 59-63)

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