﹁ じ
A.2 Moks.adharma-Parvan 第 203 章
Yudhis.t.hira uv¯aca —
ユディシュティラは語った。
1
yogam. me paramam. t¯ata moks.asya vada bh¯arata/
tam aham. tattvato jñ¯atum icch¯ami vadat¯am. vara//MBh 12.203.1
敬愛する人よ。解脱に関しての最高のヨーガを私に語れ。バラタ族の者よ。それを私は 正しく知りたいと思う。語って下さい。優れた者よ。
B¯ıs.ma uv¯aca —
ビーシュマは語った。
2
atr¯apy ud¯aharant¯ımam itih¯asam. pur¯atanam/
sam. v¯adam. moks.asam. yuktam. ´sis.yasya gurun.¯a saha//MBh 12.203.2
32この世に留めるような好ましいこと、すなわち束縛。
33ここは文法的に齟齬が見られる。主語は“ye”だが、述語の動詞は2人称である。内容的にも、世間を正 しく見ることができる人が、世間を正しく見なければならないということであり、矛盾している。それ らを鑑みれば、“ye”を両数の対格ととり、「それら2つのこと(内容)を知る者、その2つの側面を常に
〔知っている〕。」とも訳せるかもしれない。
ここにおいても、この古の伝承(itih¯asa)を〔人々は〕語る。弟子と師匠との解脱に関 連した問答を。
3
ka´scid br¯ahman.am ¯as¯ınam ¯ac¯aryam r.s.isattamam/
´sis.yah. paramamedh¯av¯ı ´sreyorth¯ı susam¯ahitah./
caran.¯av upasam.gr.hya sthitah. pr¯añjalir abrav¯ıt//MBh 12.203.3
師匠であり、最上の聖仙である座しているバラモンに、極めて聡明で、幸福を求め、と ても熱心なある弟子は、両足に触れ、立ち上がり合掌して語った。
4
up¯asan¯at prasanno ’si yadi vai bhagavan mama/
sam´sayo me mah¯an ka´scit tan me vy¯akhy¯atum arhasi//MBh 12.203.4
尊者よ。もし、私の敬礼により喜んだならば、私にはある大きな疑問があるが、〔あな たは〕それを私のために詳細に語って欲しい。
5
kuta´s c¯aham. kuta´s ca tvam. tat samyag br¯uhi yat param/ katham. ca sarvabh¯utes.u sames.u dvijasattama/
samyagvr.tt¯a nivartante vipar¯ıt¯ah. ks.ayoday¯ah.//MBh 12.203.5
私はどこから〔生じ〕、そしてあなたはどこから〔生じるのか〕、最高であるところのそ れを正しく語れ。再生族の最上の者よ。そして、あらゆる存在物は等しいのに、正しく生 起する消滅(死)と誕生が相反して生じる34のはなぜか35。
6
vedes.u c¯api yad v¯akyam. laukikam. vy¯apakam. ca yat/
etad vidvan yath¯atattvam. sarvam. vy¯akhy¯atum arhasi//MBh 12.203.6
そしてまた、諸々のヴェーダにおいて説かれた文句、そして世間的に広まった文句、こ の全てを、真実の通りに、〔あなたは〕語って欲しい。知者よ。
34茂木氏に従い[茂木1998a: p. 67]、“nivartante”を「生じる」と解した。中村氏[中村1998b: p. 169]、 Gunguli[Ganguli 1975b: p. 88]も同様に考えている。ニーラカンタの註には、“nivartante nitar¯am. vartante”
とある。
35すなわち、全ての存在物は等しいはずがなぜ不平等なのか、という意味である。
Gurur uv ¯aca—
師は語った。
7
´sr.n.u ´sis.ya mah¯apr¯ajña brahmaguhyam idam. param/
adhy¯atmam. sarvabh¯ut¯an¯am ¯agam¯an¯am. ca yad vasu//MBh 12.203.7
弟子よ。偉大な知者よ。この最高のブラフマンの秘密、〔すなわち〕あらゆる存在物と 諸々の聖典(アーガマ)にとっての内なるアートマンを聞け。優れた者よ。
8
v¯asudevah. sarvam idam. vi´svasya brahman.o mukham/
satyam. d¯anam atho yajñas titiks.¯a dama ¯arjavam//MBh 12.203.8
ヴァースデーヴァ(クリシュナ)は、この一切であり、すべてのヴェーダの口(brahman.o
mukham)36であり、真実、布施、そして、供犠であり、忍耐、抑制、誠実さである。
9
purus.am. san¯atanam. vis.n.um. yat tad vedavido viduh./ sargapralayakart¯aram avyaktam. brahma ´s¯a´svatam/
tad idam. brahma v¯ars.n.eyam itih¯asam. ´sr.n.us.va me//MBh 12.203.9
ヴェーダを知るものたちは、彼を、プルシャであり、永遠なるものであり、ヴィシュヌ、
創造と帰滅を行う者、未顕現(avyakta)、永遠のブラフマンであると知っている。このブ ラフマンがヴリシュニ族の者(ヴァースデーヴァ)であるという私の〔語る〕伝承を聞け。
10
br¯ahman.o br¯ahman.aih. ´sr¯avyo r¯ajanyah. ks.atriyais tath¯a/ m¯ah¯atmyam. devadevasya vis.n.or amitatejasah./
arhas tvam asi kaly¯an.a v¯ars.n.eyam ´sr.n.u yat param//MBh 12.203.10
バラモンはバラモンたちによって聞くことができ、同様に王族はクシャトリヤたちに よって〔聞くことができる〕。神のなかの神であり、無量の光であるヴィシュヌの偉大さ を、あなたは〔聞くに〕値する。幸福なる者よ。最高であるところのヴリシュニ族の者
〔の伝承〕を聞け。
36中村氏は、ニーラカンタ註の“brahman.o mukham. ved¯adih. pran.avah.”を参照し、「ヴェーダの冒頭〔の聖音 オーム〕」と訳している[中村1998b: p. 170]。
11
k¯alacakram an¯adyantam. bh¯av¯abh¯avasvalaks.an.am/
trailokyam. sarvabh¯utes.u cakravat parivartate//MBh 12.203.11
〔それは〕時間の輪(カーラチャクラ)であり、始まりも終わりもなく、存在(形・状 態のあるもの)と非存在(形・状態のないもの)を自己の相とする三界である。あらゆる 存在物において、チャクラ(車輪)のごとくに回転する37。
12
yat tad aks.aram avyaktam amr.tam. brahma ´s¯a´svatam/
vadanti purus.avy¯aghram. ke´savam. purus.ars.abham//MBh 12.203.12
不滅のもの、未顕現(avyakta)、不死のもの、永遠のブラフマンであるものを、〔人々 は〕人中の虎、ケーシャヴァ(豊かな髪を持つ者)、人中の雄牛と言う。
13
pit¯r.n dev¯an r.s.¯ım.´s caiva tath¯a vai yaks.ad¯anav¯an/
n¯ag¯asuramanus.y¯am.´s ca sr.jate paramo ’vyayah.//MBh 12.203.13
最高である不変のものは、祖先たち、神々、聖仙たち、そしてさらに、ヤクシャとダー ナヴァたち、また、ナーガとアスラと人間たちを創造する。
14
tathaiva veda´s¯as.t.r¯an.i lokadharm¯am.´s ca ´s¯a´svat¯an/
pralaye prakr.tim. pr¯apya yug¯adau sr.jate prabhuh.//MBh 12.203.14
同様に、威光あるもの(神)は、〔世界の〕還滅のときにプラクリティを得て、ユガの始 まりにヴェーダ聖典と永遠である世間のダルマを創造する38。
15
yath¯artus.v r.tuli˙ng¯ani n¯an¯ar¯up¯an.i paryaye/
dr.´syante t¯ani t¯any eva tath¯a brahm¯ahar¯atris.u//MBh 12.203.15
季節に従って、様々な姿の季節の特徴が変化の中で見られる。同様に、まさにそのすべ て39は、ブラフマンの昼と夜〔の変化〕の中に〔見られる〕。
37すなわち、あらゆるものの中に存在するということである。
38世界がプラクリティへと還滅し、そのプラクリティが最高神へと帰することにより現象世界が終わり、そ して新たな世界の始まりに、ヴェーダとダルマを創造するのである。
39前偈などで説かれている創造のことと考えられる。
16
atha yad yad yad¯a bh¯avi k¯alayog¯ad yug¯adis.u/
tat tad utpadyate jñ¯anam. lokay¯atr¯avidh¯anajam//MBh 12.203.16
さて、それぞれのユガの始まるときに、時間と結びつくことにより存在するすべての慣 習的規範から生まれた認識が、生起する。
17
yug¯ante ’ntarhit¯an ved¯an setih¯as¯an mahars.ayah./
lebhire tapas¯a p¯urvam anujñ¯at¯ah. svayam.bhuv¯a//MBh 12.203.17
スヴァヤンブーによって認められた偉大な聖仙たちは、ユガの終わりにおいて隠れた 諸々のヴェーダを、古事(itih¯asa)と共に、タパス(熱力)によって最初に獲得した。
18
vedavid veda bhagav¯an ved¯a˙ng¯ani br.haspatih./
bh¯argavo n¯ıti´s¯astram. ca jag¯ada jagato hitam//MBh 12.203.18
ヴェーダを知る尊者ブリハスパティは、諸々のヴェーダーンガ(ヴェーダ補助学)を 知った。そして、ブリグの息子は、世間の利益のために、ニーティシャーストラ(処世の 論書)を語った。
19
g¯andharvam. n¯arado vedam. bharadv¯ajo dhanurgraham/
devars.icaritam g¯argyah. kr.s.n.¯atreya´s cikitsitam//MBh 12.203.19
ナーラダ40はガンダルヴァの知識(音楽)を、バラドヴァージャ41は弓術を、ガールギ ヤ42は神仙の行為を、クリシュナートレーヤ43は医術を〔語った〕。
20
40偉大な聖者で、ブラフマーの息子とされ、彼の膝から生まれたとされる。他の伝説では、ブラフマーに
よってUpabarhan.aというガンダルヴァに生まれ変わるという呪いをかけられたという[Mani 1975: p.
526]。
41有名な聖仙で多くの箇所でその名が現れる。アトリ仙の息子とされ、数千年間生きたとされる[Mani 1975: p. 117]。
42ヴィシュヴァーミトラの息子の一人。『ガルガ・スムリティ』の著者といわれる。MBh Anu´s¯asana篇には 彼によって規定されたダルマが見られる。それは、(1)客人をもてなすために常に注意を払わなければな らない、(2)肉を食べてはならない、(3)牛とバラモンを傷つけてはならない、(4)清らかな心と体で祭祀
(yajña)を行わなければならない、というものである[Mani 1975: p. 280]。
43古代インドの偉大な聖者とされる。この聖者はアーユルヴェーダの全てを理解し、苦行に勤しんだという [Mani 1975: p. 430]。
ny¯ayatantr¯an.y anek¯ani tais tair ukt¯ani v¯adibhih./
hetv¯agamasad¯ac¯arair yad uktam tad up¯asyate//MBh 12.203.20
数多くの論理の聖典は、それぞれの論者によって、語られた。議論(hetu)、伝承(¯agama)、
善行(sad¯ac¯ara)として語られたもの(聖典)は尊ばれている。
21
an¯adyam. yat param. brahma na dev¯a nars.ayo viduh./
ekas tad veda bhagav¯an dh¯at¯a n¯ar¯ayan.ah. prabhuh.//MBh 12.203.21
無始であり、最高のものであるブラフマンを神々も聖仙たちも知らない。そのもの(ブ ラフマン)を、唯一であり、尊者であり、創造者(保持する者)であり、支配者であるナー ラーヤナは知った。
22
n¯ar¯ayan.¯ad r.s.igan.¯as tath¯a mukhy¯ah. sur¯asur¯ah./
r¯ajars.ayah. pur¯an.¯a´s ca paramam. duh.khabhes.ajam//MBh 12.203.22
ナーラーヤナから、聖仙の一群、および主要な神々とアスラたち、古の王仙たち、そし て苦の治療の最高のものが〔生じた〕。
23
purus.¯adhis.t.hitam. bh¯avam. prakr.tih. s¯uyate sad¯a/
hetuyuktam atah. sarvam. jagat sam.parivartate//MBh 12.203.23
プラクリティは、常に、プルシャに依拠した状態を生み出す。それ故、原因と結びつい ているあらゆる世界は展開する。
24
d¯ıp¯ad anye yath¯a d¯ıp¯ah. pravartante sahasra´sah./
prakr.tih. sr.jate tadvad ¯ananty¯an n¯apac¯ıyate//MBh 12.203.24
〔一つの〕灯明から、他の灯明が何千と生じるように、〔唯一の〕プラクリティはその ように〔世界を〕創造し、永遠である故に減少しない。
25
avyaktakarmaj¯a buddhir aham. k¯aram. pras¯uyate/
¯ak¯a´sam. c¯apy aham. k¯ar¯ad v¯ayur ¯ak¯a´sasambhavah.//MBh 12.203.25
未顕現(avyakta)の行為によって生じたブッディがアハンカーラを生み出す。そして また、アハンカーラから虚空が生じ、風は虚空から生じるものである。
26
v¯ayos tejas tata´s c¯apas tv adbhyo hi vasudhodgat¯a/
m¯ulaprakr.tayo ’s.t.au t¯a jagad et¯asv avasthitam//MBh 12.203.26
風から火が、そしてそれ(火)から水が、また水から地が生じる。ムーラプラクリティ
(根本原因)はそれら8種44である。これらの中に世界は存在している。
27
jñ¯anendriy¯an.y atah. pañca pañca karmendriy¯an.y api/
vis.ay¯ah. pañca caikam. ca vik¯are s.od.a´sam. manah.//MBh 12.203.27
また、知覚器官は5種であり、行為器官も5種である。そして、対象は5種であり、さ らに、変異したもの(vik¯ara)における第16番目に、マナスが1種ある。
28
´srotram. tvak caks.us.¯ı jihv¯a ghr¯an.am. pañcendriy¯an.y api/
p¯adau p¯ayur upastha´s ca hastau v¯ak karman.¯am api//MBh 12.203.28
耳、皮膚、目、舌、鼻が5種の感覚器官であり、そして、両足、肛門、生殖器、両手、
発声器官が行為の〔器官〕である。
29
´sabdah. spar´so ’tha r¯upam. ca raso gandhas tathaiva ca/
vijñeyam. vy¯apakam. cittam. tes.u sarvagatam. manah.//MBh 12.203.29
そして、音声、接触、色、味、そして香り〔が対象〕である。それらにおいて、遍在す
る心(citta)は行き渡るマナスであると理解すべし45。
30
rasajñ¯ane tu jihveyam. vy¯ahr.te v¯ak tathaiva ca/
indriyair vividhair yuktam sarvam. vyastam. manas tath¯a//MBh 12.203.30
44未顕現(avyakta)、ブッディ(buddhi)、アハンカーラ(aham. k¯ara)、虚空(¯ak¯a´sa)、風(v¯ayu)、火(tejas)、 水(¯apas)、地(vasudh¯a)である。
45対象にまでマナスは行き渡る。さらに、マナス=チッタと考えられている。