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第 3 章 実験結果

3.1 赤外吸収スペクトルの温度変化

3.1.4 K 塩の赤外吸収スペクトル

43

44

図3-13 K塩の赤外吸収スペクトル

1000 2000 3000 4000 5000 6000

Wavenumber (cm

-1

)

Δ

A ( ar b .unit)

260℃

180℃

140℃

100℃

60℃

20℃

45

図3-14 K塩の差分スペクトル

1000 2000 3000 4000 5000 6000

180℃

Wavenumber (cm

-1

)

Δ

A ( ar b .unit)

140℃

100℃

60℃

20℃

46

図3-15 K塩のOH伸縮振動スペクトル

2000 2500 3000 3500

180℃

140℃

100℃

60℃

Wavenumber (cm

-1

)

Δ

A ( ar b .unit)

④ ⑤

20℃

47

図3-16 K塩の伸縮振動のローレンツ曲線の共振周波数と半値幅の温度変化

0 50 100 150 200

0 200 400 600 800

FW HM (cm

-1

)

2000 2500 3000 3500 4000

③ Wa venumb er ( cm

-1

)

Temperature (℃)

48

3.2 マイクロ波伝導率の温度変化

図 3-17 に 4 つの塩と重水置換した塩のマイクロ波伝導率の測定結果を示す。

図中□と△は c 軸方向、および垂直方向のマイクロ波伝導率を示している。ま た、重水置換した試料における c 軸方向のマイクロ波伝導率を○で示す。すべ ての塩のc軸方向のマイクロ波伝導率を図3-18にまとめた。

283 Kで、H塩は1.5×10-2 [Ωcm-1]、Li塩は6.7×10-3 [Ωcm-1]、 Na塩は 9.3×10-3 [Ωcm-1]、K塩は5.1×10-3 [Ωcm-1] のマイクロ波伝導率をもつ。マイ クロ波伝導率はH >Na >Li >K塩の順に高い。また、重水置換したD塩のc軸 方向のマイクロ波伝導率(○)は1.08×10-2 [Ωcm-1]であり、H塩はその1.379倍 である。これは、伝導率に同位体効果が現れている証拠である。すべての試料 において、c軸に垂直なマイクロ波伝導率(△)はc軸方向のマイクロ波伝導率(□) よりも小さく、大きな異方性がある。つまり、今回観測した熱活性型のマイク ロ波伝導率は、プロトン伝導に起因すると結論できる。

アルカリ金属イオンに依存して、マイクロ波伝導率には大きな違いが現れて いる。これは、水分子ネットワークの構造、およびキャリア数の違いが原因と 考えられる。

49

図3-17 4つの塩のマイクロ波伝導率

0.000 0.005 0.010 0.015 0.000 0.005 0.010 0.015

100 150 200 250 300

0.000 0.005 0.010 0.015 0.000 0.005 0.010 0.015

Li塩 Eac//c Li塩 Eac⊥c H塩 Eac//c D塩 Eac//c H塩 Eac⊥c

Temperature (K)

K塩 Eac//c K塩 Eac⊥c

1

(  cm )

-1

Na塩 Eac//c Na塩 Eac⊥c

50

図3-18 4つの塩のc軸方向のマイクロ波伝導率

100 150 200 250 300

0.000 0.005 0.010 0.015 0.020

1 (cm)-1

Temperature (K) H塩

Li塩 Na塩 K塩

51

3.3 活性化エネルギーとプロトン移動度

マイクロ波伝導率測定の温度変化から活性化エネルギーを見積もった。また、

格子定数を使ってプロトン移動度を計算した。ただし、X 線結晶構造解析が行 われている最高温度(H塩:20 ℃、Li塩:-100 ℃、Na塩:-20 ℃、K塩:-100 ℃) の結果に基づき、単位胞の体積を計算した。また、マイクロ波伝導率は18.5 ℃ の値を用いた。計算で求めた結果を表3-1にまとめる。

活性化エネルギーはアレニウスの式

より求めている。σ1はマイクロ波伝導率、T は温度、Eaは活性化エネルギー、

kBはボルツマン定数、Aは定数である。

アンダーソン型ポリ酸は弱い酸に属し、プロトンを解離する。単位体積当た りのアンダーソン型ポリ酸が全て解離したと仮定して計算する。キャリア数は H塩を14とし、Li、Na、K塩は12とした。プロトン移動度μは

から求められる。Nはキャリア数、eは電気素量を表している。

表 3-1 に計算に使用したパラメーターの値をまとめてある。計算した活性化 エネルギーに、塩による違いは小さく、アルカリ金属イオンに対する依存性が あまりないことが分る。また、表3-1から、プロトン移動度はH >Na >Li >K 塩の順に高いことが分る。これはマイクロ波伝導率の順と一致する。この差は、

アルカリ金属イオンにより、伝導経路が相違することに関連するのだろう。な ぜなら、アルカリ金属イオンが中心に存在するLi塩とK塩では、プロトン移動 度が低く、側面に接近したNa塩ではプロトン移動度が大きくなっているためで

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ある。H 塩では局在したイオンが存在しないので散乱が少なくなる。計算では キャリア数を最大と仮定した。プロトン平衡濃度は分らないが、実際のプロト ン移動度は計算値よりも大きくなる可能性が高いことを指摘しておく。自由水 のプロトン移動度は3.62×10-3 [cm2V-1s-1]、氷は0.08 [cm2V-1s-1]と報告されて おり[21]、4つの塩について最大のキャリア数のとき、水や氷よりもプロトン移 動度は小さい。

H 塩 Li 塩 Na 塩 K 塩

活性化エネルギーEa (eV) 0.21241 0.19891 0.20089 0.18723 電気伝導率σ (1/Ω cm) 0.01731 0.0064 0.01001 0.00506 単位体積V0 (x10-24cm3) 7736.8 7545.5 7415 7420 キャリア密度n (x1021/cm3) 1.810 1.590 1.618 1.617 プロトン移動度μ (x10-5cm2/Vs) 5.97 2.51 3.86 1.95

表3-1 各パラメーター一覧

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