第 4 章 考察
4.1 プロトン水和物の同定
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図4-1 室温時における4つの塩の赤外吸収スペクトル
2000 2500 3000 3500
① ③
2.54Å 2.61Å
2.56Å
Li塩
② ③
①
2.64Å 2.58Å
H塩 2.53Å
① ③
2.54Å 2.62Å
Wavenumber (cm
-1)
K塩
①
② ③
2.6Å 2.53Å
Na塩
Δ A (arb.u n it)
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図4-2 O-O間距離とOH伸縮振動数の関係[22]
すべての塩における低波数域のスペクトル変化を確認するために、室温のス ペクトルから100 ℃の結果を引いたスペクトルを図4-3に示す。ここで、100 ℃ は骨格のみの分子振動に相当する。図3-2にも明確に現れているが、H塩の1030 cm-1付近に水分子に起因する吸収バンドがある。このバンドのO-O間距離を算 出すると、2.45 Åになる。このように短いO-O間距離に関連した水分子として は、プロトン水和物以外に考えられない。ただし、このバンドは40 ℃まで加熱 すると消失する。2000~3070 cm-1のバンドも、40 ℃へ加熱するとバンド②、
③が大きく変化することから、こうしたバンドもプロトン水和物に起因する。
いろいろな系で蓄積された水素原子と酸素原子との共有結合距離(RO-H)と水 素結合距離(RO…H)の関係を図 4-4 に示す[23]。また、O-O 間距離(RO-O)より
が定義される。この値は、O-O間の中心からどれだけずれ
た位置にプロトンが配置しているかを表す。これらの値を計算した結果を、表
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4-1にまとめて示す。プロトン水和物の分類として、 0.1 Åのときにツンデ ル型、 0.1 Åのときにアイゲン型とされている[24]。表4-1から、H塩で1030 cm-1に観測したバンドは、ツンデル型プロトン水和物に帰着される。また、バ ンド②、③は、O-O間距離2.56~2.64 Åのアイゲン型プロトン水和物に帰属で きる。バンド①は、アイゲン型プロトン水和物に起因するはずだが、アンダー ソン型ポリ酸に非常に強く水和した水分子の寄与も考えられる。図 4-5 にツン デル型とアイゲン型プロトン水和物の構造を示す。
図4-3 1030 cm-1付近のバンド
1000 1050 1100 1150
Wavenumber (cm-1)
ΔA (arb.unit)
H塩 Li塩 Na塩 K塩
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図4-4 RO-HとRO…Hの関係[23]
frequency (cm-1) RO-O (Å) RO-H (Å) RO…H (Å) δ (Å)
H 塩 1034 2.45 1.2 1.25 0.025
2072 2.53 1.04 1.49 0.225
2612 2.58 1.02 1.56 0.27
2925 2.64 1.01 1.63 0.31
Li 塩 2158 2.54 1.04 1.5 0.23
2796 2.61 1.01 1.6 0.295
Na 塩 2075 2.53 1.04 1.49 0.225
2240 2.56 1.03 1.53 0.25
2758 2.6 1.01 1.59 0.29
K 塩 2142 2.54 1.04 1.5 0.23
2830 2.62 1.01 1.61 0.3
表4-1 低波数バンドの各種パラメーター
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図4-5 ツンデル型(a)、アイゲン型(b)プロトン水和物の構造
アイゲン型プロトン水和物の存在は、{[CoⅢ(H2bim)3](TMA)・20H2O}nなどの 分子性ナノ多孔質結晶中の水ナノチューブにおいても観測されている。ツンデ ル型プロトン水和物を明確に水分子ネットワークで観測したのは、今回が初め てである。
H 塩にのみツンデル型プロトン水和物を観測した原因として、アルカリ金属 イオンが導入されていないことが挙げられる。ツンデル型の配置を実現するに は水分子ネットワークを局所的に大きく歪ませる必要がある。アルカリ金属イ オンは、水素結合を強めているのだろう。
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