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第 3 章 実験結果

3.1 赤外吸収スペクトルの温度変化

3.1.1 H 塩の赤外吸収スペクトル

図3-1にH 塩の赤外吸収スペクトルの温度変化を示す。このスペクトルには 骨格分子と水分子の分子振動による赤外吸収が現れている。260 ℃まで加熱す ると水分子は全て脱水する。それぞれの温度に対するスペクトルから260 ℃の スペクトルを差し引き、水分子ネットワークの寄与だけを求めたものを、図3-2 に示す。

図3-2で1030 cm-1付近に現れるバンドと、2000 cm-1付近から3070 cm-1付 近に現れるバンドは60 ℃へ加熱すると大きく変化する。このため、これらは同 じ分子による吸収を示唆する。1700 cm-1付近に現れるバンドは、主にHOH変 角振動である。3070 cm-1から3800 cm-1までに現れるバンドは水分子のOH伸 縮振動によるものである。5150 cm-1付近に現れるバンドはOH伸縮振動とHOH 変角振動の結合音吸収によるものである。これら全てのバンドは高温にすると、

脱水する。

図3-3 に、H 塩の差分スペクトルのOH 伸縮振動による吸収バンドの温度変 化を示す。赤線は 6 つのローレンツ曲線で再現した結果である。緑色で示した

2000 cm-1付近の低波数バンド①は、60 ℃まで加熱すると半値幅が広がる。こ

のことから、加熱によって水分子が乱れることが分る。青色で示した2600 cm-1 付近にあるバンド②は室温時に非常に広い半値幅をもっている。また、60 ℃ま で加熱すると強度が小さくなる。それに対し、水色で示した2900 cm-1付近にあ るバンド③は60 ℃まで加熱すると強度が大きくなる。このため、バンド②の寄 与がバンド③へ移動したことが考えられる。このことから、二つのバンドは同

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じ起源の分子振動に起因することが分る。バンド③は、バンド①と②に比べ高 温でも強度を失わない。

ピンク色で示した3300 cm-1のバンド④は氷Ⅰhの伸縮振動の波数に近い[21]。

そのため、H 塩は正四面体配位をとる水分子をもつことが分る。また、液相の 自由水のO-H伸縮モードが3400 cm-1付近に現れることが分っている。オレン ジ色で示した3470 cm-1にあるバンド⑤は、水素結合距離が液相の自由水とほぼ 同じ水分子による。紫色で示した 3600 cm-1のバンド⑥は水蒸気の OH 伸縮振 動の値に近いため、クラスター構造の形成を表している。

図3-4に、6つのバンドの共振周波数と半値幅の温度変化を示す。共振周波数 は加熱により変化しないことから、平均的なO-O間距離が変わらないことを示 す。バンド①は、80 ℃に加熱すると半値幅がブロードになる。これは O-O 間 距離に乱れが生じるためである。より高温に加熱すると、水分子が脱水するた めに半値幅は小さくなる。バンド②は加熱により、半値幅が減少する。それに 対し、40 ℃へ加熱するとバンド③の半値幅は増加する。

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図3-1 H塩の赤外吸収スペクトル

1000 2000 3000 4000 5000 6000

Wavenumber (cm

-1

)

Δ

A ( ar b .unit)

260℃

180℃

140℃

100℃

60℃

20℃

29

図3-2 H塩の差分スペクトル

1000 2000 3000 4000 5000 6000

180℃

Wavenumber (cm

-1

)

Δ

A ( ar b .unit)

140℃

100℃

60℃

20℃

30

図3-3 H塩のOH伸縮振動スペクトル

2000 2500 3000 3500

Wavenumber (cm

-1

)

Δ

A ( ar b .unit)

④ ⑤

180℃

140℃

100℃

60℃

③ ⑥

① ②

20℃

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図3-4 H塩の伸縮振動のローレンツ曲線の共振周波数と半値幅の温度変化

0 50 100 150 200

0 200 400 600 800

FW HM (cm

-1

)

2000 2500 3000 3500 4000

① Wa venumb er ( cm

-1

)

Temperature (℃)

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