本研究では、4種類の分子性ナノ多孔質結晶[Cu2(phen)2(AcO)2(H2O)2] [Al(OH)6Mo6O18] (MⅠ)・nH2O(M=H+,Li+,Na+,K+)のナノチャンネル中に閉ざさ れた水分子ネットワークにおいて、アルカリ金属イオンの水和状態、および水 分子ネットワークに生じるプロトン水和物、プロトン伝導機構を明らかにした。
以下に、赤外分光測定とマイクロ波測定から明らかにした事項をまとめる。
1. 4種類の水分子ネットワークについて、赤外吸収スペクトルを得ることがで
きた。2000~3070 cm-1に見出した吸収バンドは、アイゲン型プロトン水和物
H3O+(H2O)3に起因することを明らかにした。また、H塩に対してのみ観測 した1030 cm-1の吸収バンドが、ツンデル型プロトン水和物H5O2+による吸 収であることを明らかにした。水分子ネットワークでツンデル型プロトン水 和物を明確に検出したのは、これが初めてである。
2. 空胴共振器摂動法によるマイクロ波伝導率測定から、同位体効果と異方性効 果を確認し、熱活性型の温度変化がプロトン伝導に起因することを明らかに した。
3. プロトン伝導率はH >Na >Li >K塩の順に高く、ナノチャンネル中における アルカリ金属イオンの配置に依存することを明らかにした。これは、アルカ リ金属イオンにより水和状態が異なることを反映して、プロトン伝導に影響 することを示す初めての結果である。
4. H塩のプロトン伝導率が最も高いが、その理由としてH塩ではアイゲン型プ ロトン水和物のみならず、ツンデル型プロトン水和物も寄与することが考え
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られる。また、H塩では散乱体となる局在イオンが存在しないこと、および 水分子ネットワークが柔らかいことが関係することが分った。
5. Li塩とK塩のプロトン伝導性は最も低い。これは、ナノチャンネル中央に アルカリ金属イオンが存在することで、水分子ネットワーク全体が固くなっ たことによる。また、Na塩のプロトン伝導性は、Li塩とK塩に比べて高い。
Na+が骨格近くに存在するため、ナノチャンネル中心部にある水分子の水素 結合が弱まり、柔らかくなったためである。イオンの配置は、Li+、Na+、 K+における水和状態の違いを反映している。
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