IV. 実践支援活動
1. JICA 連携事業
2)JICA地域別研修
「持続的な人間の安全保障とキャパシティ・ディベロップメント」セミナー
【研修の概要】
人間の安全保障の考え方は、1994年にUNDP(国連開発計画)によって提唱された。その後、
2003年の人間の安全保障委員会最終報告書(「緒方・セン報告書」)で練り上げられ、現在では 日本政府のODA政策の柱としても位置づけられている。こうした背景のもと、GLOCOLは2007 年度より地域別研修「持続的な人間の安全保障とキャパシティ・ディベロップメントセミナー(英 語名:Seminar on Sustainable Human Security and Capacity Development)」をJICAから 受託し、研修コースのデザインをし、運営を行った。本研修は、人間の安全保障の考え方をアジ アやアフリカの文脈と「キャパシティ・ディベロップメント」の考え方とも結びつけて、いっそ う実践的なものにしていく試みである。深刻なダウンサイド・リスクを乗り越えていくためには、
「上からの保護」を提供するだけでなく、草の根の人びと、NGO、そして地方自治体やさまざ まな公共機関が「下からの問題解決能力」を身につけていくことが不可欠である。本研修では、
「人間の安全保障」に関する課題に取り組む政府、地方自治体、NGOの問題解決能力を高める ことを目ざしている。第2回目である2008年度の研修には、アフリカの5カ国(エチオピア、
ナイジェリア、南アフリカ、ルワンダ、コートジボワール)の7名(行政職員及びNGO職員)
が参加した。
研修は大きく分けて3つの段階(「1次研修」「アクションプランの実施」「2次研修」)で構成 された。日本で行われた「1次研修」(2008年10月9日~31日)では、はじめに、JICA大阪 および大阪大学において人間の安全保障に関する現状と課題を学習した。次に、広島市および熊 本県水俣市を訪問した。広島市では、広島における復興と平和構築について学習した。水俣市で は、水俣病事件で生じた健康被害、環境破壊、社会分断に関する問題への対応にみられる考え方 や社会開発のスキルを、市と住民の取り組みを中心に学んだ。日本での研修の終盤では、主にア クションプラン作成にあてられた。
研修員は、日本での「1次研修」で学んだことを踏まえてアクションプランを作成し、それを 帰国後にそれぞれの出身国で4ヶ月間にわたって実施した。
「2次研修」をケニアで実施し、研修員全員が再集合した。研修員はアクションリプランの実 施報告を行い、それぞれの取り組みのプロセスと結果や教訓を互いに共有し合った。またナイロ ビ近郊にある青少年更生院を訪問し、ストリートチルドレンの問題や施設が直面する課題などに ついて学んだ。保健行政についてのセッションも開かれた。
[研修員]
アディノン・ステファン・ジスレイン(コートジボワール)
教育省 教育分野相互扶助・社会問題部保健教育課課長(政策立案)・医師 ヤオ・エティエンヌ(コートジボワール)
保健公衆衛生省 ディボ地方病院院長(経営管理)
アッシュビル・テクリ(エチオピア)
教育省 アディス・アババ市教育局企画・計画部専門官 オルフミロラ・ジャネット・アラカ(ナイジェリア)
アブジャ保健省 保健計画・調査統計部保健人材部門保健計画官 ヌガディ・サンプソン・チゴズィ(ナイジェリア)
アブジャ教育省 基礎・中等教育部成人・非公式教育課上級教育官 ステラ・フォード・ムガボ(ルワンダ)
公務・労働省 人材・組織能力開発庁人材開発部人材・組織開発専門官 モコロア・マツァツィ・エレン(南アフリカ)
KOREMA開発事務所(教育研修部)所長
研修は、次の流れで実施した。
活動とモニタ リングの継続
2.広島・水俣:フィールドワーク
3.大阪:アクションプラン作成
1.成果発表セッション
2.フィールドワーク・講義セッション 日本での
「1 次研修」
ケニアでの
「2 次研修」
アクション プランの実施
2008 年 10 月
2009 年 3 月 2008 年 11 月
2009 年 2 月
~
1.大阪・講義セッション
【研修内容】
(1)1次研修 [日本における研修:2008年10月9日~31日]
①大阪での研修では、次の講義等を実施した。
(ア)エンパワメント評価第1回ワークショップ
(イ)現状レポート(研修員が来日前に準備したレポート)の発表
(ウ)人間の安全保障の概念や動向に関するセッション(国際公共政策研究科と連 携)
(エ)紛争と社会に関するセッション
(オ)人間の安全保障の問題に関するセッション(人間科学研究科と連携)
②広島の平和構築をテーマに広島市訪問。平和記念公園および平和記念資料館を訪問し、
戦後の日本と広島の平和構築に関するセッションを行った(NGOピースビルダーズお よび広島大学平和科学研究センターと連携)。
③熊本県水俣市を訪問し、戦後の産業化の過程で引き起こされた水俣病に起因する社会及 び環境への影響と、コミュニティ再興のための実践手法を学ぶために、以下の研修を行 った。
(ア)集落の祭に参加し、農村地区のコミュニティの現状について理解を深めた。
(イ)水俣市立水俣病資料館見学、講義、語り部の話を通じて水俣病の被害とリス クについての理解を深めた。
(ウ)水俣病患者が数多く発生した海辺の集落を訪問し、漁業を通したコミュニテ ィ再生の事例を学ぶとともに、海から水俣を見学した。
(エ)市民の連携による水俣再生のための「もやい直し」のこれまでの取り組みと 今後の取り組みについて学習した。
(オ)NPOを訪問し、市民による取り組み事例を学んだ。
(カ)小学校を訪問し、教育現場の取り組みを学んだ。
(キ)チッソの工場見学をし、企業の取り組みを学んだ。
(ク)水俣市越小場地区にて、民泊体験および地元学実習を行い、地区住民と交流 し、コミュニティ再生の方法としての地元学を体験した。実践ワークショッ プでは、「あるもの探し」を体験し、研修員の目から見た発見やアイデアをま とめ、地元住民に還元した。
(ケ)水俣市で実践されているスキルをまとめるセッションおよびエンパワメント 評価の第2回ワークショップを実施した。
④広島・水俣訪問の後、研修員は大阪に戻り、今回の研修における学びを元にして、各自
[研修員のアクションプラン課題]
病院の信頼回復のための改善計画
(ヤオ エティエンヌ、コートジボワール)
学校教員を対象としたHIV/AIDS関連知識普及啓発
(アディノン ステファン ジスレイン、コートジボワール)
中央政府公務員のキャパシティ強化のための組織づくり
(ステラ フォード ムガボ、ルワンダ)
保健省医療従事者人員配置の適正化案策定
(オルフミロラ ジャネット アラカ、ナイジェリア)
既婚女性に学校復帰を促す普及啓発
(ヌガディ サンプソン チゴズィ、ナイジェリア)
小学校の環境衛生改善を目的とした日本の小学校との連携
(アッシュビル テクリ、エチオピア)、 エンパワメント評価を用いたNGOキャパシティ強化
(モコロア マツァツィ エレン、南アフリカ)
(2)アクションプラン実施期間 [2008年11月1日~2009年2月29日]
①2008年11月から2009年2月の4ヶ月間をかけて、研修員はそれぞれの国の所属機関 に戻り、「1次研修」で学んだことを応用し、アクションプランの実行に取り組んだ。
②この期間中、GLOCOLのスタッフが研修員に対して、電子メールや電話により助言を
続けた。GLOCOLのウェブサイトに、本研修用のページを開設し、第一次研修で活用
した資料をダウンロードできるようにした。必要に応じて、これらの資料活用を促す などして支援を進めた。
③アクションプラン実施の総括として、各研修員から、報告書および 2 次研修での発表 用パワーポイント原稿の提出を課した。
(3)2次研修 [ケニア:2009年3月3日~6日]
①2次研修の目的は、アクションプランの実施プロセスおよび結果を共有し将来的な活動 へとつなげるための更なる検討をすることと、ケニアを例にとりアフリカにおける人間 の安全保障に関する問題への理解を深めることとであった。
②アクションプランの発表は、一人 80分間とし、口頭発表の後、GLOCOLスタッフと 研修員およびコメンテーター(大学研究者と実務者)を交えて意見交換を行った。
③ナイロビ近郊にあるゲタスル更生院を訪問し、青少年やストリートチルドレンが直面す る問題や施設の直面する課題などについて学んだ。更正院の生徒および職員と研修員が 交流をした。ケニア政府の保健行政ついてのセッションも開かれた。
【成果】
①研修員全員が、人間の安全保障上の課題をあつかう職場で実現可能なアクションプラン を策定することができ、4ヶ月間の期間で実際に試行するに至った。
②各講義や見学、実習には講師とは別にファシリテーターを配置し、講義や見学には「ふ りかえり」の時間を設けることにより、研修員の理解を促進させつつ、日本での学びを アフリカの文脈で理解・応用することへとつなげることができた。その結果、現実的な アクションプラン作成・実施へと展開することができた。
③エンパワメント評価を研修マネジメントツールとして活用したことにより、研修員自ら が研修の目標や活動を設定し、当事者性を高める研修とすることができた。
④研修員同士およびGLOCOLとアフリカ5カ国で人間の安全保障に取り組む実務者との 間でネットワークが構築された。
⑤本研修事業は大阪大学の研究・教育活動を実践的活動に結びつける場であるとともに、
直接的に国際貢献活動に携わる場となった。
3)青年海外協力隊特別募集説明会
JICAとの連携協力協定にもとづき、大阪大学の学生に対して青年海外協力隊募集説明会を2 回実施した。説明会では帰国隊員の体験談などが紹介された。
●2008年5月30日 [場所]
大阪大学待兼山会館(豊中キャンパス)
[プログラム]