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GLOCOL 共同研究

ドキュメント内 GLOCOL 年報 2008 (ページ 39-96)

II. 研究活動

3. GLOCOL 共同研究

2008年度より、GLOCOLの新しい研究活動の一つとして共同研究を発足させた。GLOCOL 内部で公募を行い、外部審査員を交えた公開審査を行い、7つの研究課題を共同研究として採択 した。実施状況と成果は以下の通りである。

1)大学教育における体験的な学習プログラム評価手法開発に向けた準備研究 実施年度:2008年度

[代表者]

和栗百恵(GLOCOL特任助教)

[メンバー]

大橋正明(恵泉女学園大学人間社会学部学部長・教授)

新垣 誠(沖縄キリスト教学院大学英語コミュニケーション学科准教授)

中井俊樹(名古屋大学高等教育研究センター准教授)

[趣旨と目的]

過去 10 年来、大学教育における体験的な学習の重要性が中央教育審議会の答申等で語 られてきた。しかし、インターンシップやフィールド実習、ボランティア実習、サービス・

ラーニング、スタディ・アブロードなどを冠する教育プログラムが増加するなか、その教 育効果や、組織内の人員配置・現場との関係を含む運営体制作りについては、未だ実践者 が試行錯誤を続けているところである。一方、大学教育における体験的な学習に関する海 外(特に米国)の研究では、優れたプログラムが、学生、現場、研究者/大学等さまざま な関係者に「academic, social, civic, economic」等の便益を生むことが確認されているが、

全てのプログラムがそれら関係者に互恵的になっているとは限らない。

このような背景のもとで、大学教育における体験的な学習のプログラム評価のための基 準や手法を開発することが重要性であると認識している。プログラム評価を行うための基 準や手法を開発することによって、プログラムについて多角的な検証を行うことでき、そ の研究成果をもって優れたプログラムの開発や既存のプログラムの改善に寄与することで きる。

本研究では、「体験」や「社会参加」がもつとされる教育効果を整理すると同時に、教育

「プログラム」として体験的な学習手法が導入される際にもたらされる「現場」(課題を抱 える当事者や実務者)へのインパクトを考察することで、教育・研究・社会貢献というミ

[2008年度の研究実施状況]

2008年度の科研費申請に向けた準備のために、2008年度前半に研究会を2度開催した。

二度の研究会では、米国の実践についての情報収集・分析を行ったほか、研究協力者の所 属大学における実践について情報を交換した。

科研費申請後には、米国National Society for Experiential Education(NSEE)が開催 したNortheast Regional Workshopに研究代表者が参加した。これは、サービス・ラーニ ングやインターンシップ、コオプ教育など「体験学習」実践者向けの研修であるが、米国 北東部にある諸大学の実践者とのネットワーキングの機会にもなった。アセスメント(評 価)やプログラム作りなどについて、異なる学問分野・職種(教員・職員)からなる 30 名ほどのグループで集中的に討議した。また研修中には、ホスト校である University of New Havenの Center for Experiential Educationを訪問し、センターの機能やNSEE との連携について話を聞いた。

本研究のスピンオフとして、研究協力者(大橋正明氏)の所属大学(恵泉女学園大学)

における海外体験学習プログラムの外部評価委員を研究代表者およびもう一名の研究協力 者(中井俊樹氏)が務めた。本共同研究研究会での活動後、実際のプログラム評価の機会 を経てさらに議論を深めることができた。

[2008年度の成果の概要]

上記の外部評価委員としての活動にあたって、本共同研究の成果が活かされたのは言う までもないが、平成20年9月に開催された「大学教育における『海外体験学習』研究会」

全国大会(全国から約40大学100名が参加)の企画・発表においても、本共同研究であ つかった米国の実践から一定程度の示唆を得て取り組むことができた。特に、体験学習を カリキュラムのなかに構造化する重要性に関する米国の知見は役に立った。また、それを きっかけに依頼された、お茶の水大学グローバル文化学環の FD「海外体験学習を、大学 カリキュラムにどう位置づけるか」での講演にも、本共同研究が活かされている。

さらには、本共同研究でえた情報(特にsoft skillsに関する議論)などを活かし、2009

年度にはGLOCOL副プログラムの一科目として提供する科目「フィールド実践・調査推

進入門」を研究代表者とホーキンス特任助教が協働で開発、担当した。これは実際に現場 に出る前に必要なスキルや志向性の涵養を目ざすもので、テキスト化された「手法系」科 目とは一線を画するものとなっている。

2)食糧の安全保障に関する学際的研究:食糧確保のセイフティネットの事例の比較を中心に 実施期間:2008年度~2009年度

[代表者]

上田晶子(GLOCOL特任准教授)

[メンバー]

岸上伸啓(国立民族学博物館教授)

阿良田麻里子(摂南大学外国語学部非常勤講師)

湖中真哉(静岡県立大学国際関係学研究科准教授)

住村欣範(GLOCOL准教授)

中川 理(GLOCOL特任講師)

思沁夫(GLOCOL特任助教)

[趣旨と目的]

本研究プロジェクトでは草の根レベルでの食糧の安全保障を高めるための方策を通文化 的に比較検討することにより、人間の安全保障の研究に寄与することを目的としている。

具体的には、人間の生存の根幹の一つである食糧確保の問題をとりあげ、世界各地から事 例をもちより、食糧確保の「セイフティネット」として機能しているような社会的な「し くみ」や草の根レベルの人びとの「対処法(coping strategy)」について、学際的に解明 を試みる。そのうえで、食糧の確保が充分ではない地域において、セイフティネットのシ ステムを生かした草の根レベルの食糧安全保障を高める効果的な政策や援助方法(外部か らの支援がそもそも有効かどうかを含めて)、また、セイフティネットが何らかの理由で機 能していない場合における人びとの対処法などについて議論する。

[2008年度の研究実施状況]

2008年度は3回の共同研究会を行い、12月6日には、一般公開シンポジウム「世界各 地の食事情に学ぶフード・セキュリティの未来」を、静岡県立大学グローバル・スタディ ーズ・センター(CEGLOS)との共催で開催した。本シンポジウムでは、共同研究のメン バーそれぞれのフィールドからのデータをもとに、地域社会のなかでどのようにフード・

セキュリティが維持されているかを紹介し、それらを比較することによって、世界各地の 地域社会の食事情に根ざしたフード・セキュリティについて議論した。

[2008年度の成果の概要]

(2)自己調達の確保:家菜園、ダーチャ(菜園がついた別荘)などを通じて

(3)親戚、地域の人びとのネットワーク:相互扶助組織、日常的な交換や贈与、非常時の扶 助など

このなかで、明らかになったのは、これらのセイフティネットではカバーしきれない状 況や人びとの存在である。一つは、さまざまな社会、経済、自然、政治的状況の変化によ って、従来のセイフティネットでは対応しきれない状況が生まれていること、もう一つは、

セイフティネットのネットワークに入るためには、ある程度の生活水準が必要であり、共 同体の最貧層の人びとがそのネットワークに入ることができないことがある現実である。

3)日本における司法通訳翻訳教育のための教材開発 実施期間:2008年度~2010年度

[代表者]

津田 守(GLOCOL教授)

[メンバー]

上 富夫(大阪外国語大学名誉教授)

松本 正(言語文化研究科非常勤講師)

陳 美姫(言語文化研究科非常勤講師)

佐野通夫(四国学院大学教授)

関口智子(GLOCOL私学研修員)

思沁夫(GLOCOL特任助教)

高畑 幸(広島国際学院大学専任講師)

[趣旨と目的]

(1)世界の大学・大学院における司法通訳翻訳学プログラムの調査

これまで2回の調査(2005年および2007年)で、12ヶ国25の機関の通訳翻訳教育 の実態が報告されているが、この種の調査を継続することにより、通訳翻訳教育研究の 場にさらに広範なデータを提供する。特に本調査では、世界でも数少ない司法通訳翻訳 教育研究を行っている大学・大学院を調査の対象とし、各機関でどのような教材を使用、

または開発しているのかを明らかにすることを主眼とする。

(2)司法通訳翻訳教育のための教材開発

日本の大学・大学院および民間の通訳学校で開講されている通訳コースの多くは、一 般的通訳能力の向上が主眼であるため、各分野に特化した教授法、教材の開発がのぞま れている。今後ますます需要が高まるとされる司法通訳翻訳の指導および訓練が、より

[2008年度の研究実施状況]

上記の「趣旨と目的」のうち、(1) については、代表者が国際会議発表のため、中国の 広東外貿大学と台湾の文藻大学を訪問した際に、両大学の状況についての情報収集を行っ た。

また、(2) については、5 回ほど行われた研究会およびメイリングリストを活用した意 見交換などにより、いくつかの方針と方法論が検討された。ちょうど、2009 年 5 月から の「裁判員裁判」制度導入に向けて、司法(とりわけ法廷)通訳翻訳人およびその候補者 のために、緊急かつ必要性の高い新制度特有の用語や言い回しの各国語版の作成が急務で あることが確認された。そこで、本研究会として、それぞれの言語ごとにサブグループを 組み、対訳集を作成することとした。英語グループには名古屋外国語大学浅野輝子専任講 師、タイ語グループに、GLOCOL石高真吾特任助教に加わっていただいた。

また、法廷通訳翻訳人にとどまらず法曹三者や裁判員候補者に視聴してもらえる DVD 教材の開発にも取り組むこととなった。

[2008年度の成果の概要]

(1)研究代表者は中国広東(10月)、台湾高雄(3月)、フィリピンマニラ(3月)における

3 つの国際会議の場で、本共同研究プロジェクトの概要、経過、中間的成果等について 諸外国の研究者との意見交換を行った。

(2)研究代表者は、日本通訳翻訳学会(9 月)において発表し、『法律時報』(2009 年 1月

号)に論文を掲載した。

(3)「裁判員裁判における通訳翻訳人」のためのDVD教材(中国語版)を完成し、同英語

版および韓国・朝鮮語版の製作を進めた。1 月下旬には、その映像をユーチューブにア ップした。その前後に各方面からの関心が集まり、『産経新聞』、『神戸新聞』、『共同通 信』および『共同通信英語版』(The Daily Yomiuri)に掲載された。他のメディアから の取材も続いている。

ドキュメント内 GLOCOL 年報 2008 (ページ 39-96)

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