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8 日本冷凍空調工業会の取組み

8.3 チラーSGW 進捗:チラーのリスクアセスメントとガイドライン作成

8.3.11 IEC60079-10-1 を考慮したガイドライン計画

8.3.11.1 IEC60079-10-1の原則

「可燃性物質の放出およびその結果として危険区域の範囲が頻度・持続時間および量の点で最小限となるよ うに設計,操作を行う」と記載される原則は非常に重要である.

可燃性ガスによって危険が生じる可能性がある危険区域の分類についてはIEC60079-10-1(IEC, 2008)で定め られており,可燃性ガスの放出源を 3 つの放出等級で分類し,換気条件の有効性を表す 2つの指標“換気度”,及び

“換気の有効度”を用いて 3 つの危険区域に分類している(Table.8.3.11).また,国内では,JISC60079-10(JIS,

2008)として制定されており,危険区域の分類に差異はなく,チラーSWGではJISを用いて検討を行った.

8.3.11.2 IEC60079-10を考慮したガイドライン計画

国内では可燃性ガスをチラーで使用する場合,冷凍則(七条十四号)を遵守し,防爆仕様の電気機器を適用 する必要があり,技術規格JISC60079s(JIS, 2008)に従う.しかし,機器設置基準KHK0302-3(KHK, 2011)や 参照されるISO5149(ISO, 1993)とJISC60079s(JIS, 2008)の関係は明示されていない.JISC60079s(JIS, 2008)

では,前述する換気条件の有効性により防爆機器は不要となる非危険区域が示されているが,冷凍則を考える と微燃性冷媒を可燃性ガスと掲名しないことと整合が取れる.

自己シナリオ ライフス テージ確

確率

(回/年・台) 評価 輸送・物流時の着火 0.0564 3.22x10-7 X 可燃空間確率 安全 据付・試運転時の着火 0.0564 5.01x10-7 X 可燃空間確率 安全

使用時の着火 0.7809 3.82x10-6 X 可燃空間確率 ほぼ安全 修理時の着火 0.2523 2.73x10-6 X 可燃空間確率 ほぼ安全 廃棄時の着火 0.0565 1.38x10-6 X 可燃空間確率 安全

Table.8.3.11換気度及び有効度による危険区分の分類

そこでSWGでは検討したRA実施条件,手法,結果を報告するとともに,機器の本質安全設計要求事項に反 映し,さらにJISC60079s(JIS, 2008)の原則に従い危険区域を設定する必要のない機器設置要件をGLに反映す る.以下に作成中のGLの基本方針と、課題についてまとめる.

8.3.11.3 ガイドライン基本方針

KHKS 0302-3に対して,RAにて抽出したリスクに対する処置の追記,及びISO 5149-1,3から項目が不足する

項目を補完する形でGLを作成している.GLの基本方針は下記の通りである.

・対象冷媒として微燃性冷媒(A2L)限定として,その他冷媒の適用表現を削除する .

・機械室内は,冷媒漏えい時も危険区域とならないよう,IEC60079を参照し,下記措置を必須とする.

①機械式換気の設置,及び点検

(必要に応じて複数台設置によるバックアップを含む)

②冷媒検知器(UPS,定期検査を含む)

※SWG内にて継続議論中

・屋外設置については,解析により,非危険区域となることを担保する.

・これより,電気機器は非防爆仕様とし,IEC/ISOと整合させる.

・解析結果を受けて,数値(換気回数2回/H以上,危険区域の範囲)を決定する.

・火器については、工事用の火器とそれ以外の火器に分類し(ISOと合致),リスクアセスメントから工事期 間は除いて考える.

8.3.11.4 ガイドライン策定時の課題

GL には次に示す課題があり,これらに起因するリスクを低減する手段について記載して 2014 年度中の制定 を目指す.

1)長期停止時の復帰時の規定について

・機械換気停止状態で、長期停止時に漏えいした場合と復帰操作時のリスク評価について検討中.

2)IEC60079を考慮した屋外設置の規定について

可燃域が着火源の想定される領域に形成されることがなく、想定した製造メーカの条件の設置制限をGLと して規定する必要があるか否かを含め検討中.

3)自然着火温度の考え方について

ISO5149に相当する機械室内の直火の持ち込み制限と、機器表面温度の制限により、適正な規制となるよう

に検討中.

4)冷媒検知器の規定について

・GL-13をベースにISOと比較し,適正なGLとする.

①電源(警報機、検知器)

UPSや独立性電源が望ましいとする。

②検知対象

酸素濃度ではなく冷媒濃度(RCL基準)とする。

③設定値 ISOとGL-13に整合させる.

良/可/弱

連続 非危険

区域 Zone 2 Zone 1 Zone 0 Zone 0 + Zone 2

Zone 0 + Zone 2 Zone 0

第一 非危険

区域 Zone 2 Zone 2 Zone 1 Zone 1 + Zone 2

Zone 1 + Zone 2

Zone 1 or Zone 0

第二 非危険

区域

非危険

区域 Zone 2 Zone 2 Zone 2 Zone 2

Zone 1 and even

Zone 0 放出等級

換気 換気度

有効度

④インターロック

IEC60079を考慮し,採用検討しているが,リスクが小さければ設定しない.

5)冷媒濃度管理(充填量規制)について

・ KHKSでは限界濃度以下になるように機械室体積,冷媒充填量を管理することが要求しているが,GLで は換気を前提としているため,緩和を検討中.

・定常解析結果より,機械室体制の最小値のみの規制を検討(充填量規制なし).

謝辞

本報告は10名の委員,相山真之氏,伊藤幹雄氏,井場功氏,七種哲二氏,隅田嘉裕氏,仙田守氏,平原卓穂氏,

深野修司氏,山口広一氏,田下友和氏との研究成果を向井洋介氏とともに筆者がまとめたものである.感謝申 し上げる.

文献

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Part2) Design, construction, testing, marking and documentation Part3) Installation site

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Part 2-40) Particular requirements for electrical heat pumps, air conditioners and dehumidifiers.

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