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4. 微燃性冷媒の安全性研究・九州大学の進捗

4.2 HFO-1234ze(Z)の熱物性および伝熱特性測定試験

4.2.1 HFO-1234ze(Z)の熱力学的性質

メニスカスの消滅を観察する方法により,気液共存曲線(飽和密度)および臨界点を測定する装置と,事前 に内容積を計測している圧力容器に試料を封入して,圧力と容積(密度)と温度の関係(PρT 性質)および飽和蒸 気圧を測定する装置を用いて、HFO-1234ze(Z) の熱力学性質の測定を行った。飽和密度に関しては、密度範囲 223.7 kg/m3 から 833.2 kg/m3,温度範囲 403 K から423.3 Kの10 点,飽和蒸気圧に関しては,温度範囲 310 K か

ら420 K,圧力範囲 263 kPa から 3333 kPaで19点の実測値を得た.また,PρT性質に関しては,圧力範囲 263

kPa から 6 MPa、密度範囲 45 kg/m3 から 1002 kg/m3,温度範囲 310 K から440 Kで,11本の等容線に沿って,計 236 点の実測値を得た.

HFO-1234ze(Z) に関して,メニスカスの消滅と臨界タンパク光による着色の様子,そして飽和蒸気圧曲線の補 外から,臨界定数を実験的に以下のように決定した.

Tc = 423.27 ± 0.03 K (4.1)

c = 470 ± 5 kg/m3 (4.2) Pc = 3533 ± 10 kPa (4.3)

平成 24年度に作成した HFO-1234ze(Z)の簡易型ヘルムホルツ状態方程式を改良し,実測値の再現性を高めた 新たな状態方程式を開発した.図4.2に作成したHFO-1234ze(Z) のP-h線図を示す。この状態方程式の適用範囲

は温度が273 Kから 430 Kまで,圧力が6 MPaまでである.この範囲内における実測値の平均的な再現性は,

飽和蒸気圧に対して 0.15%,蒸気密度に対して 0.4%,液体密度に対して 0.2%,気体音速に対して 0.05%である.

また,適用範囲外においても熱力学的に妥当な挙動を示すことが確認されている.図4.3は状態方程式からの飽 和蒸気圧の計算値に対する実測値の偏差の温度依存性を示したものである.また,図4.4は気液共存曲線の計算 値および実測値をT-ρ線図上にプロットしたものである.いずれの図からも,本研究で開発した状態方程式が実 用上十分な再現性を持っていることが確認できる.

本研究で開発した状態方程式に基づくHFO-1234ze(Z)のFLDファイル(REFPROPの物質定義ファイル)は,

2013年12月からNISTのサイトで全世界に公開されている.

図4.1 HFO-1234ze(Z)のPρT性質測定結果 図 4.2 HFO-1234ze(Z)のP-h線図

4.2.2 HFO-1234ze(Z)の輸送的性質

HFO-1234ze(Z)の熱伝導率を長さの異なる2本の白金細線(直径:15μm)を用いた非定常細線法によって測定

した.昨年度は HFO-1234ze(Z),HFO-1234ze(E),および HFC-32 およびの飽和液熱伝導率の測定を実施し,今

年度は HFO-1234ze(Z)の蒸気熱伝導率,および HFO-1234ze(E)と HFO-1234ze(Z)の液粘度について測定を行った.

図 4.5(a)に気体熱伝導率の測定条件を,図 4.5(b)にその測定結果を示す.測定は、図 4.5(a)に示すような密度

一定の条件で行った.図 4.5(b)中,線で示すのは,REFPROP9.1 で求めた値である.ただし,HFO-1234ze(Z)の 値は,本プロジェクトで開発された拡張対応状態原理(ECS)モデルを用いた求められた値で,これは Akasaka の提供するFLDファイルに組込まれているモデルである.図に示される通り,HFC-32およびHFO-1234ze(E)の 値は,REFPROPの予測する値とよく一致しており,新規冷媒HFO-1234ze(Z)の値はECSモデルの予測する値と

300 350 400 450

0 2000 4000

6000 ρ ≒ 1002 kg/m3 ρ ≒ 901 kg/m3 ρ ≒ 752 kg/m3 ρ ≒ 670 kg/m3 ρ ≒ 570 kg/m3 ρ ≒ 470 kg/m3 ρ ≒ 340 kg/m3 ρ ≒ 240 kg/m3 ρ ≒ 140 kg/m3 ρ ≒ 106 kg/m3

ρ ≒ 45 kg/m3

T/K

P/kPa

HFO-1234ze(Z)

250 300 350 400 450

−2.0

−1.0 0.0 1.0 2.0

T (K) 100(ps,exp / ps,cal1)

Tc 3000 200 400 600 800 1000 1200 320

340 360 380 400 420 440

(kg·m−3)

T (K)

Saturated vapor

Satu rate

d liquid

図4.3 飽和蒸気圧の計算値に対する実測値の偏差:

(□●)Kayukawa et al. (2012),

(×)Higashi et al. (2013),

(▷)Tanaka et al. (2013),

(■+)Fedele et al. (2013),

(—)Higashi et al. (2013)による飽和蒸気圧相関式

図4.4 HFO-1234ze(Z)の気液共存曲線:

(●)Kayukawa et al. (2012),

(×)Higashi et al. (2013),

(◎)Raabe (2012),

(▷)Tanaka et al. (2013),

(—)状態方程式からの計算値,

(○)状態方程式から求めた臨界点

(470.615 kg/ m3,423.27 K)

よく一致している.

図 4.6(a)および(b)はそれぞれ,HFO-1234ze(E)の液(圧縮液)粘度の測定条件および測定結果である.また,

図 4.7(a)および(b)は同様に HFO-1234ze(Z)の液粘度の測定条件および結果を示す.測定は飽和温度 99.5,90,

70 °C となる圧力の下,図の様に温度を変化させて行った.図中の線は REFPROP9.1 および本プロジェクトの

ECSモデルによる予測値を示す.図より,HFO-1234ze(E)の HFO-1234ze(Z)のいずれの液冷媒も,温度が上昇す るにつれて粘度は著しく低下する.また,同じ飽和温度に対応する圧力条件では,HFO-1234ze(Z)の液粘度の方 が,HFO-1234ze(E)に比して著しく高いことが分かる.この様な傾向は,線に示す予測によって良くとらえられ ており,特に HFO-1234ze(E)の測定結果と予測値は良い一致を示す.HFO-1234ze(Z)の液粘度に関しては,本実 験結果を基に,今後,ECSモデルを修正する予定である.

4.2.3 HFO-1234ze(Z)の伝熱特性

(a) 水平ら旋溝付管内伝熱特性 蒸気圧縮式ヒートポンプループを用いて,HFO-1234ze(Z)のら旋溝付管内で の蒸発および凝縮伝熱特性を測定した.ここに,試験に用いたら旋溝付管の仕様は,外径 6.08 mm,最大内径

(a) 測定条件 (b) 測定結果

図4.5 蒸気熱伝導率の測定

2800 300 320 340 360

1 2 3 4 5 6

Pressure [MPa]

Temperature [K]

Exp.Data R32R1234ze(Z) R1234ze(E) VLE R32

R1234ze(Z) R1234ze(E)

280 300 320 340 360

10 12 14 16 18 20

Thermal conductivity [mW/mK]

Temperature [K]

Exp.Data HFC-32 HFO-1234ze(Z) HFO-1234ze(E) REFPROPVer9.1

HFC-32 HFO-1234ze(E) ECS model

HFO-1234ze(Z)

(a) 測定条件 (b) 測定結果

図4.6 HFO-1234ze(E)の液粘度の測定

2800 300 320 340 360 380

1 2 3 4

Pressure [MPa]

Temperature [K]

Gas

Liquid HFO-1234ze(E)

3.02MPa 2.49MPa 1.61MPa VLE

280 300 320 340 360

100 150 200 250

Viscosity [Pa·s]

Temperature [K]

HFC-1234ze(E) Exp.Data

3.02MPa 2.49MPa 1.61MPa REFPROP Ver9.1

3.02MPa 2.49MPa 1.61MPa

(a) 測定条件 (b) 測定結果

図4.7 HFO-1234ze(Z)の液粘度の測定

2800 300 320 340 360 380

1 2 3 4

Pressure [MPa]

Temperature [K]

Gas

Liquid HFO-1234ze(E)

3.02MPa 2.49MPa 1.61MPa VLE

280 300 320 340 360

160 200 240 280 320 360

Viscosity [Pa·s]

Temperature[K]

HFO-1234ze(Z) Exp.Data

1.35MPa 1.08MPa 0.67MPa ECS model

1.35MPa 1.08MPa 0.67MPa

5.49 mm,平均内径5.34 mm,フィン高さ0.255 mm,リード角20.1度,フィン数48,面積拡大率2.24である.

また,4つのサブセクションから構成された全長2216 mmのテストセクションを用いて,溝付管の長さ554 mm ごとの圧力損失と溝付管の長さ414 mmごとの平均熱伝達率を測定した.

図4.8はHFO-1234ze(Z)の蒸発および凝縮熱伝達率である.条件は,質量速度200 kg/(m2s),熱流束10 kW/m2 である.蒸発の場合の飽和温度は30 °Cで,横軸に乾き度を示しており,凝縮の場合の飽和温度は65 °Cで,横 軸に湿り度を示している.なお,比較のため,HFC-134aおよび HFO-1234ze(E)の実験結果も同図に示す.また,

図中の線は,蒸発伝達率に対して提案された森らの式(2002),および凝縮熱伝達率に対して提案された Cavalliniらの式(2009)を示す.

蒸発過程において,乾き度 0.3以下では HFO-1234ze(Z)の熱伝達率は HFC-134aおよび HFO-1234ze(E)に比し て低い値を取る.しかし,それを除く範囲では,HFO-1234ze(Z)の蒸発および凝縮過程の熱伝達率は他の 2 冷媒 よりもいく分高い.これらの傾向は、Akasaka ら(2013)の提供する FLDファイルを用いて予測された物性値 を用いることで,蒸発では森らの式(2002),凝縮では Cavalliniらの式(2009)など,これまでに提案されて いる式によって十分に捉えられる.

図4.9へ,同様に,HFC-134a,HFO-1234ze(E) およびHFO-1234ze(Z)の,蒸発および凝縮過程の圧力損失を示 す.図中の線は,蒸発に対して提案された久保田らの式(2001),凝縮に対して提案された米本-小山の式

(2007)を示す.

HFO-R1234ze(Z)の圧力損失は,HFC-134aおよび HFO-1234ze(E)に比して3倍程高い.この主な原因としては,

HFO-1234ze(Z)の蒸気密度が小さいため蒸気速度が高くなることが挙げられる.同様の理由から,飽和温度

30 °Cの蒸発過程の圧力損失と,飽和温度 65 °Cの凝縮過程の圧力損失とを比較すると,凝縮過程の方が約 1/3

と低い.飽和温度が上昇するに従い,蒸気密度が増し蒸気速度が低下することから,圧力損失が低くなる.こ れらの特性は,久保田らの式(2001)や,米本-小山の式(2007)など,従来の式によって十分精度よく予測さ れる.

図4.8 ら旋溝付管内熱伝達率(蒸発/凝縮) 図4.9 ら旋溝付管内圧力損失(蒸発/凝縮)

(b) 水平平滑円管外の伝熱特性 自然循環式試験ループを用いて,水平平滑円管外の凝縮およびプール沸騰熱 伝達率を測定した.ここに,試験に用いた平滑円管の仕様は,外径19.12 mm,有効伝熱区間400 ㎜である.

図 4.10 に HFC-134a,HFO-1234ze(E)および HFO-1234ze(Z)の過冷却度に対する凝縮熱伝達率変化を示す.図

中のシンボルは凝縮熱伝達率の実験値,シンボルから伸びるバーは不確かさを示している.また,実線および

破線は Nusseltの理論解(1916)を示しており,物性データの確かさが最も良く検証されている HFC-134a の結

果は,理論値に対して不確かさ以内で良く一致している.このことより,本実験手法の信頼性が確認できる.

図4.10(b)および(c)に示すHFO-1234ze(E)およびHFO-1234ze(Z)の実験値は,Akasakaら(2013)によって提案 された物性を用いて算出した理論値に対し,約 10%以内で一致する.また,凝縮熱伝達率は HFO-1234ze(E),

HFC-134a,HFO-1234ze(Z)の順に高い値を示す.このことは HFC-134a および HFO-1234ze(Z)の液熱伝導率が

HFO-1234ze(E)に比して約8 ~ 20% 高く,凝縮潜熱は約6 ~ 24% 高いことなどで説明ができる.これら物性の影

響を加味することにより,新冷媒 HFO-1234ze(Z)に対しても,Nusselt の理論解(1916)で精度良く熱伝達率が 予測できる.

図 4.11 に HFC-134a,HFO-1234ze(E)および HFO-1234ze(Z)の壁面熱流束に対するプール沸騰熱伝達率の変化

を示す.図中の実線および破線は Stephan-Abdelsalam(1978)の冷媒に関する相関式である.HFO-1234ze(Z)の プール沸騰熱伝達率は HFC-134aおよび HFO-1234ze(E)に比して明らかに低い.低圧冷媒である HFO-1234ze(Z)

0.2 0.4 0.6 0.8 1

5 10 15 20 25 30

0 Vapor quality, x [ - ] HTC [kW m-2K-1]

Evaporation

at 30 oC, 200 kg m-2s-1, 10 kW m-2 R134a

R1234ze(E) R1234ze(Z) Mori et al. (2002)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Liquid quality, 1-x [ - ]

Condensation

at 65 oC, 200 kg m-2s-1, 10 kW m-2

Cavallini et al. (2009) R134a R1234ze(E) R1234ze(Z)

0.2 0.4 0.6 0.8 1

5 10 15 20 25 30

0 Vapor quality, x [ - ] Pressure gradientP/Z [kPa m-1] Evaporation

at 30 oC, 200 kg m-2s-1, 10 kW m-2 R134a

R1234ze(E) R1234ze(Z) Kubota et al. (2001)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Liquid quality, 1-x [ - ]

Condensation

at 65 oC, 200 kg m-2s-1, 10 kW m-2

Yonemoto-Koyama (2007) R134a R1234ze(E) R1234ze(Z)

の,本実験条件範囲内での換算圧力 p*は 0.02~0.15 と低いため,表面張力は他の冷媒に比して大きく,これと バランスを保つために離脱気泡径は大きくなり,より高い過熱度が必要になるからであると考えられる.

図 4.12(a)から(c)にHFC-134a,HFO-1234ze(E)およびHFO-1234ze(Z)の飽和温度 20 °C,熱流束 15 kW/m2,図 12(d)にHFO-1234ze(Z)の飽和温度 40 °C,熱流束 15 kW/m2の核沸騰様相を示す.図4.12(c)よりHFO-1234ze(Z)の 気泡径は同条件の他の冷媒(図 4.12(a)および(b))に比して大きいことがわかる.一方,発泡点密度をみると,

HFO-1234ze(Z)の発泡点密度は他の 2冷媒に比して小さいことがわかる.Gaertner-Westwater(1960)は,離脱気

泡直径が大きくなると発泡点密度は減少することを報告している.このようには発泡点密度が減少することも HFO-1234ze(Z)のプール沸騰熱伝達率が低いことの一因であると考えられる.

( )a R134a Tsat = 20 °C qwall = 15 kW/m2

( )b R1234ze(E) Tsat = 20 °C qwall = 15 kW/m2

( )c R1234ze(Z) Tsat = 20 °C qwall = 15 kW/m2

( )d R1234ze(Z) Tsat = 40 °C qwall = 15 kW/m2 図4.12 R134a,R1234ze(E)およびHFO- 1234ze(Z)の核沸騰様相

0.5 1 5 10

1 2 3 4 5

Tsat–Twall [K]

 [kW m–2 K–1 ]

Tsat = 20 °C Tsat = 30 °C Tsat = 35 °C Tsat = 40 °C

40 °C 20 °C

Nusselt Theory

(a) R134a

0.5 1 5 10

Tsat–Twall [K]

Tsat = 20 °C Tsat = 30 °C Tsat = 40 °C Tsat = 50 °C

(b) R1234ze(E)

0.5 1 5 10

Tsat–Twall [K]

Tsat = 20 °C Tsat = 30 °C Tsat = 40 °C Tsat = 50 °C Tsat = 60 °C

(c) R1234ze(Z)

0.1 0.5 1 5 10 50100 0.1

0.5 1 5 10 50

qwall [kW m–2]

 [kW m–2 K–1 ]

Tsat = 10 °C Tsat = 20 °C Tsat = 30 °C Tsat = 40 °C

(a) R134a

0.1 0.5 1 5 10 50100 qwall [kW m–2]

Tsat = 5 °C Tsat = 10 °C Tsat = 20 °C Tsat = 30 °C Tsat = 40 °C Tsat = 50 °C Stephan–Abdelsalam

5 °C 50 °C

(b) R1234ze(E)

0.1 0.5 1 5 10 50100 qwall [kW m–2]

(C) R1234ze(Z) Tsat = 5 °C Tsat = 10 °C Tsat = 20 °C Tsat = 30 °C Tsat = 40 °C Tsat = 50 °C Tsat = 60 °C

図4.10 管外凝縮熱伝達率

図4.11 管外沸騰熱伝達率

4.2.4 HFO-1234ze(Z)のサイクル特性

低GWP冷媒として注目されているHFO-1234ze(E)およびHFO-1234ze(Z)をヒートポンプに用いる場合の適切 な熱源温度条件を見出すための,ドロップイン試験と数値解析を行った.

表 1 に示す熱源温度条件で,対向流式熱交換器,密閉式圧縮機および電子膨張弁で構成された水熱源ヒート ポ ン プ を 用 い て ド ロッ プ イ ン 試 験 を 試 み た . こ の 条 件 の 下,HFO-1234ze(E),HFO-1234ze(Z)お よ び

HFO-1234ze(E)に5 mass% HFC-32を添加した混合冷媒について,高温側熱源水温度が50から75 °CでのCOPを比較

した.

図 4.13 にドロップイン試験の結果を示す.図より,本条件では,HFO-1234ze(Z)に比して,HFO-1234ze(E)が COPおよび加熱能力が高いことが分かる.さらに,HFO-1234ze(E)にHFC-32を5 mass% 添加することによって,

COP,加熱能力のいずれも改善できることが分かる.なお,図より加熱能力が低い場合は HFO-1234ze(Z)の

COP は高い値をとるが,加熱能力の増加とともに COP は急激に低下する.このことは,HFO-1234ze(Z)は凝縮 器熱源温度がより高温の場合の作動媒体として適していることを示唆している.

図 4.14は,ドロップイン試験では確認できなかった凝縮温度 75 °C以上における不可逆損失の内訳と,COP に関する数値解析結果である.まず,加熱能力 1.8 kWにおける実験結果と解析で求めた HFO-1234ze(E)および

HFO-1234ze(Z)の COP

がよく一致していることから,解析方法の妥当性が確認できる.また,これは,HFO-1234ze(Z)の圧縮機内の損失や圧力損失に起因する不可逆損失が HFO-1234ze(E)に比して著しく大きいことが分

かる.この条件では,HFO-1234ze(Z)の体積能力が小さく,同じ加熱能力を維持するためには,体積循環量を増 やさなければならず,圧力損失に起因する不可逆損失が著しく増加するためである.しかし,凝縮温度が105,

125 °C と上昇するに従い,この不可逆損失が大きく低減できるため,HFO-1234ze(Z)の COP は向上する.した

がって,HFO-1234ze(E)の臨界点である 109 °C 以上での利用が見込まれるような機器に対して,HFO-1234ze(Z) は有望な候補冷媒になり得る.

図4.13 ドロップイン試験の結果 図4.14 数値解析の結果

(凝縮温度の上昇に伴うHFO-1234ze(Z)の 不可逆損失およびCOPの変化)