第3章
69
図3. 17 PET基板表面粗さとGZO薄膜の格子定数lcの関係
0 30 60 90 120 150
3.225 3.230 3.235 3.240 3.245
G : 0.26 nm A : 0.78 nm B : 10.0 nm C : 21.0 nm D : 12.0 nm
a-axis lattice parameter /Å
第3章
70
0 30 60 90 120 150
47.35 47.40 47.45 47.50 47.55 47.60 47.65
G : 0.26 nm A : 0.78 nm B : 10.0 nm C : 21.0 nm D : 12.0 nm
Volume of the unit cell / Å 3
GZO thickness / nm
図3. 19 PET基板表面粗さとGZO薄膜のユニット体積の関係
図3. 20 PET基板表面粗さとGZO薄膜グレインサイズの関係
第3章
71 3.4 GZO薄膜の電気特性
3.4.1 成膜プロセスパラメーターと電気特性の関係
電気特性の初期評価として、ガラス基板上でのGZO薄膜をHall効果測定機(東朋 テクノロジー株式会社製 HL5500PC)を行いて、Van der Pauw法に従いHall移動度、
キャリア濃度、比抵抗、シート抵抗値を求めた。アーク放電流を150 A、酸素流量15 sccm、
GZO膜厚100 nm に固定し、アルゴン流量に対しての電気特性結果を図3.21、図3.22 に
示した。図3.21からアルゴン流量が100~300 sccmの範囲においては、Hall移動度は15 cm2/V・secでほぼ一定の値であり、キャリア濃度はアルゴン流量100、150 sccmではほ
ぼ同じ1.2 x 1020 cm-3程度の値をとり、アルゴン流量200 sccm以上では低下する傾向を示
した。アルゴン流量が少ない場合は、飛来粒子自身が持っているエネルギーが大きく基 板表面近傍の温度が高くなることを 3.2節で述べた。電気特性の結果から、本研究論文 ではアルゴン流量を200 sccmが適切であると考え、以降アルゴン流量を200 sccmとし た。さらにアーク放電流150 A、アルゴン流量200 sccm、GZO薄膜を100 nmと固定し た時の、酸素流量と電気特性の結果を図3.23、図3.24に示した。図3.23から酸素流量に 対してHall移動度やキャリア濃度が大きく異なることがわかった。酸素流量が0 sccmの 時は、キャリア濃度が2.4 x1022 cm-3まで大きくなり、金属光沢を有する膜であり、Hall
移動度は2.3 cm2/Vsec程度を示した。キャリア濃度は酸素流量が増えるにつれて小さく
なる傾向を示した。またHall移動度は酸素流量が増えるにつれて大きくなり、酸素流量
が14 ~ 16 sccm時で最大になり、酸素流量がそれ以上になると小さくなる傾向を示した
(図3.25)。このことは、酸素量が少ない場合は酸素欠損によるキャリアが過多になりキ ャリア濃度が大きくなり金属的な振る舞いになっている。ある一定量の酸素が入ること によって、適度なキャリア濃度まで減少して、同時にHall移動度が大きくなり、酸素量 が過多になると、結晶構造が乱れて粒界散乱の寄与が高まり結果としてHall移動度が小 さくなると推察した。図3.26に酸素流量とXRDの(002)、(100)回折ピーク強度をプ ロット示した。酸素流量15 ~ 20 sccm付近で強度が最も大きくなっている。
第3章
72
50 100 150 200 250 300 350
10 12 14 16 18
20 Hall effect mobility
Carrier concentration
Flow rate of argon / sccm
Hall effect mobility / cm
2 /Vs
6 8 10 12 14
Carrier concentration / 102
0 cm
-3
図3. 21 ガラス基板上のGZO薄膜成膜工程でのアルゴン流量とHall移動度および
キャリア密度の関係 (アーク放電流150 A、酸素流量15 sccm、 GZO膜厚100 nm)
第3章
73
図3. 22 ガラス基板上のGZO薄膜成膜工程でのアルゴン流量と比抵抗および
シート抵抗値の関係 (アーク放電流150 A、酸素流量15 sccm、 GZO膜厚100 nm)
第3章
74
0 10 20 30 40 50 60
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
Hall effect mobility Carrier concentration
Flow rate of oxygen / sccm
Hall effect mobility / cm
2 /Vs
0 5 10 15 20 25
Carrier concentration / 1020 cm-3
図3. 23 ガラス基板上のGZO薄膜成膜工程での酸素流量とHall移動度および
キャリア濃度の関係 (アーク放電流150 A、アルゴン流量200 sccm、 GZO膜厚100 nm)
0 10 20 30 40 50
100 400 500
600 Sheet resistance
Resistivity
Flow rate of oxygen / sccm
Sheet resistance / ohm/sq.
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000
Resistivity / mohmcm
図3. 24 ガラス基板上のGZO薄膜成膜工程での酸素流量と比抵抗および
シート抵抗値の関係 (アーク放電流150 A、アルゴン流量200 sccm、 GZO膜厚100 nm)
第3章
75
10 15 20 25
0 5 10 15 20
25 Hall effect mobility
Carrier concentration
O2 /sccm
Hall effect mobility / cm
2 /Vs
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Carrier concentration / 1020 cm-3
図3. 25 ガラス基板上のGZO薄膜成膜工程での酸素流量と比抵抗および
シート抵抗値の関係(アーク放電流150 A、アルゴン流量200 sccm、 GZO膜厚100 nm)
第3章
76
0 10 20 30 40 50
0 500 1000 1500 2000 2500
<002>
<100>
Intensity / counts
O2 / sccm
図3. 26 ガラス基板上のGZO薄膜成膜工程での酸素流量と(002)および(100)回折 ピーク強度の関係(アーク放電流150 A、アルゴン流量200 sccm、
GZO膜厚100 nm)
(002)ピークのロッキングカーブを測定しようと試みたが、ベースラインが不安定で解 析に至らなかった。酸素過多が極端な状態(例えば50 sccm)になると、GZO薄膜はc 軸に成長しているが、配向(チルト)するような状態が顕著にあらわれ、その結果ホー ル移動度が小さくなると推測できる。RPDではGZO薄膜に対して酸素の影響が大きく、
構造、電気特性に大きく関与していることを示した。3.5節では酸素流量と光学特性の関 係を述べる。以降本章では、成膜条件を以下に示す数値として評価した。
<GZO成膜条件の最適化条件>
アーク放電流:150 A 酸素流量:15 sccm アルゴン流量:200 sccm
第3章
77
3.4.2 ポリエチレンナフタレート(PEN)基板を用いた場合
前述のガラス基板で最適化した成膜条件にて、PEN基材上に100 nm膜厚のGZOを成 膜した。成膜回数を1、2、3回と多層化することにより、電気特性値の相違を確認した。
図3.27の横軸には基板温度を、縦軸にはシート抵抗値および比抵抗を示している。同様 に図3.28の横軸には基板温度、縦軸にはHall移動度とキャリア濃度を示している。