図3. 44 屈曲性試験後のGZO薄膜のクラックSEM画像
3.6.2 PET基板の表面改質層とGZO薄膜屈曲性の関係
表3.2および図3.14に示したPET基板を用いて表面改質層とGZO薄膜屈曲性の関係 を調べた。直径15 mmの丸棒を用いてGZO薄膜面を内側(引張曲げ方向)にして30 秒間保持してその前後でのシート抵抗値変化を図3.45に示した。GZO 薄膜の膜厚が厚 くなるにつれて、シート抵抗値の変化が大きいことがわかる。さらに表面改質層の種類 によってもシート抵抗値変化率の違いがあることも明らかになった。図中のサンプルC
(青色シンボル)の表面粗さRMS値は21 nmと最も大きな値であるがGZO薄膜の屈曲 性に対しては最も優れた特性を示した。特にGZO薄膜厚120 nmでは、他サンプルと比 較して顕著に優れた屈曲性を示している。XRD測定から算出したグレインサイズと屈曲 性の関係を考えると、GZO薄膜厚120 nmにおいて、サンプルCが最小のグレインサイ ズであり、グレインサイズが小さいことが屈曲性に優れていると推察できる。前節では 成膜プロセス中における熱収縮が GZO 薄膜の屈曲性に与える影響を議論した。結果と して成膜プロセス中の温度が低温の場合に、グレインサイズが小さくなり熱応力とグレ インサイズの効果の2つを示したと推察する。本節では、成膜条件による温度負荷は同 じであり、PET基板の表面改質層のみが異なる。表面改質層とGZO薄膜界面の密着力 も考慮しなければならないが、グレインサイズと屈曲性の関係を示した。
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図3. 45 PET表面改質層とGZO薄膜の屈曲性の関係
第3章
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3.7 結言
直流アーク放電イオンプレーティング法(反応性プラズマ蒸着法)にてフレキシブル 樹脂上に金属酸化物の透明導電膜を100 ℃以下の低温で成膜することに成功した。イン ジウムを全く含まない金属酸化物での材料設計を行い、金属酸化物の電気特性として、
フレキシブル基板上で、比抵抗5.0 x 10-4 ohm · cm、可視光領域における全光線透過率が 88 %以上の透明導電膜を形成することができた。また金属酸化物とフレキシブル基板の 界面近傍における結晶構造の観察もFIB法により、試料薄片化を行い、透過型電子顕微 鏡観察画像および電子線回折像の撮影にも成功した。更にフレキシブル基板の屈曲性に ついても限界曲率直径を調べることで、曲げによってシート抵抗値の変化がない曲率直
径はφ=30 mm以上であることを示した。フレキシブル表示媒体や光電変換デバイスへの
応用も期待できるフレキシブル透明導電基板の可能性を示した。
(1) PET基板、PEN基板上にGa2O3添加量4 wt%GZO薄膜を85 ºC以下のプロセス温度 で成膜できるプロセスパラメーターを見出した。
(2) PEN基板上にGZO膜厚100 nmにて、比抵抗5.0 x 10-4 ohm • cmの透明導電膜の 成膜に成功した
(3) 表面改質層の粗さの異なるサンプル上に GZO を成膜した場合の結晶構造解析、電 気特性、光学特性について詳細なデータを得ることができた。
(4) PEN基板上に成膜したGZO薄膜のグレインサイズと成膜回数の関係を明らかにし た。成膜回数を複数回実施する、多層成膜方法の成膜条件を最適化した。更に多層 成膜サンプルの屈曲性についても検討を行った。曲率直径φ=30 mm以上ではシート 抵抗値はほぼ変化しないこと、およびGZOの曲げ方向における差異を確認した。
(5) PET基板上にはGZO膜厚120 nmにて、比抵抗4.8 x 10-4 ohm · cmの透明導電膜の成 膜に成功した。PET基板上に表面状態の異なる表面改質層を設けることができ、表 面改質層がGZO薄膜に及ぼす影響を示した。
第3章
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第 4 章
DC マグネトロンスパッタ法を 用いた GZO および
In,Ga – doped ZnO (GZO:In) 成膜とその構造解析および
電気・光学特性
第4章
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4.1 緒言
本章では、DCマグネトロンスパッタ法により、ドーパント成分としてGa、Inを取り 上げその電気・光学特性を議論した。マグネトロンスパッタ法によるGZOやAl-doped
ZnO (AZO) 薄膜の報告例は数多くあるが、ドーパントを2種類以上添加した系での報
告例は極めて少ない。第5章で解説する酸化亜鉛の湿熱環境下での電気特性安定性を議 論するために、本章は、その基本となるGZOおよびGZO:In薄膜の特性について以下の 項目に着目して報告する。
・GZO薄膜のGa濃度依存によるGZO薄膜特性
・ガラス、PET表面改質層とGZO薄膜特性
・ガラス基板上GZO:In薄膜のドーパント成分In濃度とGZO:In薄膜特性の関係
4.2 DCマグネトロンスパッタ法およびターゲット材料
本研究論文で用いたDCマグネトロンスパッタ装置外観を図4.1に示した。本研究論 文で使用したターゲットはすべてGa2O3, In2O3, ZnOを成分とするセラミック焼結体を用 いた(図4.2)。
Deposition Chamber
Deposition Chamber 図4. 1 DCマグネトロンスパッタ装置の外観
第4章
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図4. 2 GZOターゲット外観例(Ga2O3 5.7 wt.% GZOの場合)
表4. 1 マグネトロンスパッタ法の成膜パラメーター