第 4 章 Fe-Ni-W 合金めっき
4.4 Fe-Ni-W 李
12)
有機ホスホン酸浴 のFe-Ni-W合金めっき膜の構造と特製に いて報 告してい こ によ と、そ ま に得 たNi-W合金めっき皮膜 めっきまま ビ ッ ース硬さが550-650 HV あ 、硬質化のために 熱処理を行う必要があ Fe-W 合金めっき皮膜 高硬度、高耐食性を示 が、得 た皮膜 薄く、光沢性に乏しい として、両方の特性を併 持 Fe-Ni-W合金めっき皮膜の作製を試みてい Feの 含有量が多く とアモルフ ス化しや いこと、W 含有量が増え と皮膜硬さが増し、
W含有量30~40 wt%の皮膜 ビッ ース硬さ700~800 HVを得てい
Vasu 13) 、 ロ ン酸塩浴を用いてW含有量11~48 wt%の皮膜を得てい また、
Singh14) 、クエン酸塩浴 Fe-Ni-W合金膜の作製を検討してい が、そ の報
告中 合金膜の構造および物性に いて 論 てい い Donten 、 Fe-Ni-W合金めっき皮膜 外観の良い、ビッ ース硬さ1040 HVのFe-Ni-W合金め っき皮膜を得てい また、パルス電解法を用い ことによ 平滑性と均一性を改善し てい
我々 Fe-W及びNi-W合金めっき皮膜の両方の特性(高硬度、高耐食性)を併 持 可能性のあ Fe-Ni-W合金めっき皮膜に着目した
過去の研究を調査 と、タングステンの持 特徴 、耐熱材料としての開発が多 く、基材に融点の低いアルミニウムを用いてい 例 ほと 見 い また、タング ステン含有量 多く 50 wt%以下 あ
本研究 、基材にアルミニウムを採用し、500 ℃以下の温度域 の皮膜構造、硬 さ、耐摩耗性、耐食性 を調査し、アルミニウム合金製金型への表面硬化、耐摩耗
125
性付 、鉄系合金めっきの耐食性向上を目的と ことを特徴としてい
また、鉄系合金めっき皮膜の最大の特徴 あ 鉄鋼系の表面熱処理との 500℃以下 におけ 複合処理の可能性に いて 検討を行った
126
4.5 Fe-Ni-W合金めっき皮膜の作製方法検討
実験に用いたFe-Ni-W合金めっき浴 、金属イ ン供給源として、硫酸鉄(Ⅱ)六水 和物、硫酸ニッ ル六水和物、タングステン酸三 ト ウム二水和物を用いた pH 緩 衝材としてホウ酸を用いた 錯化剤としてクエン酸一水和物およびクエン酸三 ト ウ ム二水和物を用いた 水にタングステン三酸 ト ウム二水和物を溶 とアル 性 を示し、そこに硫酸鉄(Ⅱ)六水和物を添加 と水酸化鉄を生成し、沈殿 恐 が あ そこ 、水酸化鉄の生成を防止 目的 、所定の濃度のクエン酸一水和物水
溶液(pH4)に硫酸鉄(Ⅱ)六水和物、硫酸ニッ ル六水和物を溶解し 液とした タング
ステン三酸 ト ウム二 水和物に いて 、タングステン酸が酸性環 境下 沈殿を 起こ ため、クエン酸三 ト ウム二水和物を溶 した中性の液を用い 溶解し②液とし た 液を グネテ ックスターラー 撹拌し が ②液を徐々に加え所定の容量とし めっき浴とした タングステン酸及び水酸化鉄の沈殿 認め った
4.5.1 電流密度と皮膜組成の関係
4.5.1.1作製方法
Fe-Ni-W合金めっき皮膜 電気化学測定システム( 斗電工社製 HZ-5000)を
用いて定電流電解法にて作製し、各電流密度 作製しためっき皮膜の表面モル フ ー、元素組成を調査した 電解液 表4.2に示したように、硫酸第一 鉄七水和物[FeSO4・7H2O] 10 g/dm3、硫酸 ッ ル六水和物[NiSO4・6H2O] 22 g/dm3、タン ステン酸ナト ウム 水和物[Na3WO4・2H2O] 40 g/dm3、 ウ酸 [H3BO3] 10 g/dm3、クエン酸水和物[H3Cit・H2O] 5 g/dm3、クエン酸ナト ウム 水和物[Na3Cit・2H2O] 55 g/dm3を用いた 成膜時の電流密度 10~60 mA/cm2、
浴温 75℃とし、pH7~8の一定に保った
127
表4.2 Fe-Ni-W合金めっき浴組成及び作業条件
組成及び項目 化学式 濃度及び条件
硫酸第一鉄七水和物 [FeSO4・7H2O] 10 g/dm3(0.036 mol/dm3) 硫酸ニッ ル六水和物 [NiSO4・6H2O] 22 g/dm3(0.084 mol/dm3) タングステン酸 ト ウム二水和物 [Na3WO4・2H2O] 40 g/dm3(0.12 mol/dm3)
ホウ酸 [H3BO3] 10 g/dm3(0.162 mol/dm3)
クエン酸水和物 [H3Cit・H2O] 5 g/dm3(0.024 mol/dm3) クエン酸 ト ウム二水和物 [Na3Cit・2H2O] 55 g/dm3(0.187 mol/dm3)
電流密度 10~60 mA/cm2
浴温 75 ℃
pH 7~8
cathode アルミニウム電極 A2017P(表面積1×1 cm2)
anode ステン ス電極 SUS304
作用極 、W ン ート前処理を施したアル ウム電極( A2017P、表面積
1×1 cm2)を用い、陽極 めっき浴が合金浴 あ こと 、電解とと に浴中の金属
成分の変化を極力抑制 ため、不溶性陽極としてステン ス板 SUS304)を用いた 作製しためっき皮膜 FE-SEM(日立社製 S-4500)によ 表面形状の観察を行 い、EDX(堀場製作所製 EMAX-5770W)によ めっき皮膜中のFe,Ni,Wの含有率
を求めた また XRD(X 線回折)によ 、試料の結晶構造解析を行った 分析に
ク社製X線回折装置(RINT2100)を用いた 走査範 20~100 °、走査速度 4 °/secにて評価を行った
128
4.5.1.2電流密度と皮膜組成の関係実験結果
Fe-Ni-W合金めっき皮膜のSEM-EDX分析結果
図 4.4 にそ の 電解電流密度 めっき した Fe-Ni-W 合金め っき皮膜の EDXの結果を示す
図4.4 Fe-Ni-W合金めっき皮膜における電流密度と組成比の関係
らの結果から電流密度 増加するほ 、Feの含有率 低下し、Ni,Wの含
有率 増加する と 分かった Fe-Ni-W 合金めっきの低電流密度にお
いて 異常共析型と呼 、貴 Ni イ ン く電気化学的に卑 Fe イ ン 優 的に共析する現象 見ら る しかし、電流密度増加によってFe電析
限界に近 く Ni 電析 増加し、そのNi 析出増加に伴い誘導共析型のW 電 析 増 加 し た た め と 考 え ら る
15)
っ と W 含 有 率 高 い の 50
mA/cm2 電気めっきした時 ある 、EDXによる分析 分かった
129
図4.5にそ の電解電流密度 めっきした Fe-Ni-W 合金めっき皮膜SEM 像を示す
図4.5に示すように25 mA/cm2以上の皮膜 クラック 発生している 分か った また、各電流密度のFe-Ni-W皮膜 、非晶質(アモルフ ス)状の構造をし ている 分かる 図4.5から 電流密度 増加していくほ 、面積あた のク ラックの密度 多く っていく 分かる 電流密度 高く るのに伴い、皮 膜内部の残留応力 大きく クラックの数また幅 大きく っていくと考え ら る
(a)
(d) (c)
(b)
図 各電流密度のFe-Ni-Wめっき表面SEM像
図4.5 各電流密度のFe-Ni-W合金めっき皮膜の表面SEM像 (a)10 mA/cm2,(b)25 mA/cm2,(c)50 mA/cm2,(d)60 mA/cm2.
130
Fe-Ni-W合金めっき皮膜のXRD分析結果
図 4.6 にそ の電解電流密度 めっ きした Fe-Ni-W 合金 めっき皮膜の XRDパターンを示す すべてのXRDパターン Al基板の ークまたFe-Ni(110) のブ ード ーク 存在している 分かる Scherrer式から求めたそ
の結晶子サイ 10 mA/cm2 1.98 nm、25 mA/cm2 1.68 nm、50 mA/cm2
1.76 nm、60 mA/cm2 1.77 nm った そ のめっき皮膜 アモルフ ス構
造に近い微結晶構造を形成していると判断 きる
図4.6 各電流密度から得ら た皮膜のX線回折図形 Iron-Nickel(110)
Al
Al
Al
Al
10 mA/cm2 25 mA/cm2 50 mA/cm2 60 mA/cm2
131
4.5.1.3まとめ
今回の実験結果から、XRDパターンよ Al基板上へのFe-Ni-W合金めっき皮 膜 アモルフ ス構造に近い と 示さ た の特性 、粒界という不均一 性を消し、高い耐食性を狙う上 有利 あると考えら る
16) SEM・EDXから
電解電流密度によってFe、Ni、W含有率 変動し、そ に伴い面積あた の クラックの数 変わる と 分かった そ の皮膜の元素組成 変 わ 、そ に関連し皮膜の硬度、内部応力 変動する とに起因した のと考 えら る
4.5.2 Fe-Ni-W合金めっき皮膜特性の撹拌速度依存性評価
4.5.2.1作製方法
Fe-Ni-W合金めっき皮膜 電気化学測定システム( 斗電工、HZ-5000)を用い、
実験条件として対極に ステン ス電極(SUS316)、作用極にAl合金(A2017、表
面積1×1 cm2)を使用した Al合金の前処理としてW ン ート処理を行った
めっき時の電位を測定するため、参照電極に Ag/AgCl飽和KCl電極を使用し た
電解条件 、定電流電解によって電流密度 50 mA/cm2 膜厚 約10 μmに
るように60 minめっきを行った 浴温75℃、めっき浴の量500 ml、撹拌速度
0~600 rpm、撹拌子サイ 1.5 cm、 行った pH 電解前7.42~7.51、電解後 6.89~7.14と電解前後 わ かに低下した
め っ き 浴 組 成 、 表 4.2 に 示 し た 浴 を 用 い た 作 製 し た め っ き 皮 膜
FE-SEM/EDX(日立、S-4500)によ 表面形状の観察及びめっき皮膜中の元素含有
率を求めた
132
4.5.2.2 結果と考察
各撹拌速度 のめっき時の電位変化
図4.7に各撹拌速度 のめっき時の電位変化を示す 前処理を施したAl 基板 をめっき浴に浸漬させ、試料の自然電位を測定する自然電位測定、本測定に入 る前に自然電位測定 の結果を保 初期電位保持、実験条件に応 た電流を 加する本測定の3 の段階 電位及び電流 制御さ る -0.4~-0.6 Vの領域 自然電位、-1.2~-1.3 Vの領域 実験条件に応 た電流 基板に る析出電 位と る そ を比較すると0 rpm 撹拌による溶液の対流 いため電 位 安定せ 、自然電位の測定時間 長く った また、各撹拌速度 の自然 電位の差 前処理したAl基板の表面状態の違いによる影響と考えら る 析出 電位 各撹拌速度 の差 見ら 、全て時間の経過と共にわ かに貴側にシ フトし、電位 収束した めっき皮膜 形成さ た によ 、前処理後の表面 状態の違いによる影響の差 小さく ったため一定の電位に ったと考えら る
図4.7 各撹拌速度 のめっき時の電位変化
133
Fe-Ni-W合金めっき皮膜のSEM-EDX分析結果
図4.8に各撹拌速度 めっきしたFe-Ni-W合金めっき皮膜のSEM像を示す 0 rpm 表面に均一性 く、300、450 rpm 一部粒状の粒子成長と平滑
表面 得ら た 600 rpm めっき皮膜 基板から 離してしまい、成膜さ
ていた部分のSEM像 イク クラックの広 確認出来た
0 rpm 300 rpm
図 各撹拌速度 のFe-Ni-W合金めっき皮膜のSEM像 450 rpm 600 rpm
図4.8
134
図4.9に各撹拌速度 めっきしたFe-Ni-W合金めっき皮膜のEDXの結果を示 す
測定元素Fe、Ni、W 含有率に大き 差 かった そ 図4.10に測定 元素にO元素を加えた各撹拌速度 めっきしたFe-Ni-W合金めっき皮膜のEDX の結果を示す
図4.9 各撹拌速度 のFe-Ni-W合金めっき皮膜のEDX組
図4.10 各撹拌速度 のFe-Ni-W合金めっき皮膜のEDX組成(O元素あ )
135
O元素の含有率 各撹拌速度 異 、 離した600 rpm 金属元素 酸化 物の状態と っている割合 高い と 分かった また、Ni、W 含有率に着目
すると300 rpm 最 高い値と った
4.5.2.3 まとめ
今回の結果よ 、撹拌速度に対して電位及び組成に規則性のある影響 い から、めっき時の電極反応 拡散 速 く陰極表面の電子移動 速と っていると考えら る 0 rpm 電位の安定性に問題 あ 、めっき浴温度の 均一化・基板表面 発生する水素 スの 離の影響 無視出来 く るため妥 当 あると言え い 600 rpm 撹拌速度 高す るため、安定した成膜
き かった 350、450 rpm ら 均一 めっき皮膜を得ら ている 本
研究のテー の一 ある耐食性の点から考えると、耐食性の向上に寄 する
Ni、Wの含有率 高い300 rpmの撹拌速度 実験条件として妥当 あると考え
ら る
4.5.3 めっき浴中のFe2+イ ンの酸化防止方法検討
4.5.3.1 実験方法
Feめっきを施す際に代表的 還元 あるL-アスコルビン酸、アスコルビン 酸ナト ウム(以下、アスコルビン酸Na)を用いて表4.3に示した基本と る
Fe-Ni-W合金めっき浴を改良した
L-アスコルビン酸、アスコルビン酸Naの濃度等 過去の研究
17)
を参考に決定 した 新規に考えた酸化防止浴組成を表4.4に示す