第 2 章 Fe-C 合金めっき
処理時間 0. 5h 処理時間 5.0h
84
300 400 500 600 700 800
0 100 200 300 400 500 600
硬さ(HV)
熱処理温度 ℃
図 2.7 硬さと熱処理の関係 ( 鉄めっき )
85
340
78.4
-325.4
-480.2 340
43.1
-297.9
-446.8 -600
-400 -200 0 200 400 600
0 100 200 300 400 500 600
応力値 (M P a )
温度 ℃
図 2.8 熱処理 鉄めっき残留応力に及ぼす 影響
処理時間 0.5h 処理時間 5.0h
線形 ( 処理時間 0.5h) 線形 ( 処理時間 5.0h)
2.2.2.4考察
Fe-C合金めっき皮膜 結晶質 あ 、皮膜中に炭素を含有 めっきままの皮膜
硬さ 約500~700 HV あ 、熱処理を加えて 硬さの低下 見 った Fe-C
二元合金系におけ 再結晶温度以下の加熱 あ 、熱処理後の結晶粒径に大き 差 出 いと思わ 200 ℃以下の熱処理に伴う応力降下 、水素脱離に伴う のと 考え 200 ℃付近 皮膜の内部応力が 縮応力 引っ張 応力に移行した の 、素材 あ アルミニウムの変形によ 影響と考え
ま 皮膜硬さの要因が、結晶格子間に水素が侵入 ことによ 、結晶格子の み(内部応力)によ の ば、水素が脱離 温度(約220 ℃)以上に加熱 こ と 、内部応力の低下に伴い 硬さの低下がみ あ 加温によ 皮膜中の 応力の減少 見 てい こと 、結晶格子間の水素の脱離 確実と考え
よって、Fe-C 合金めっき皮膜 一般的 鋼材と比較し著しく硬いの 、析出時の結
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晶粒径が一般的 鋼材と比較し著しく微細 ことに由来してい と考え
アルミニウムの融点が約660 ℃ あ こと 、摺動部材として500 ℃以上 の使用 考え く、500 ℃以下の熱処理 硬さの変化が見 いFe-C合金めっき皮膜 の性質 、エンジ ン用 ストンや射出成型金型 、加温を伴う部材に 対して有利 性質 あ
2.2.3摩擦摩耗特性と熱処理の影響
2.2.3.1実験方法
基板にA2017材を用い、2.2項の表2.1 示した作製条件によ 作製した
2.2.3.2評価方法
摩擦摩耗特性の評価に摩擦摩耗試験機( エンテック:SEM-Ⅲ-F)を用いた 回転 試験片にA2017(φ60 mm×t5 mm)にあ めめっきを約20 μm施した のを用い、
固定試験片に 、工業製品の多く 鉄鋼材料 あ ことを考慮し、鉄鋼材料の代表と して調質したS45C(φ5 mm×L8 mm)を用いた 滑 速度を0.25~4.0 m/sの範 変化
さ た 面間接触 0.195 MPa一定とした 試験距離 1000 mとした 室温にて無
潤滑下 試験を行った 摩耗量の測定に 表面粗さ試験機(小坂研究所:SE-3500)を 用い、 痕の断面形状を8 所測定し体積に換算し求めた
2.2.3.3結果及び考察
摩擦特性
摩擦摩耗試験の条件として、潤滑下(WET) 行う 、非潤滑下(DRY) 行う を選 択 必要があ めっきままの皮膜の摩擦摩耗特性に いて 、他の金属皮膜との 比較を前提として試験を行った そのため、使用 潤滑油と金属皮膜との相性を考
87
慮 除外 ため、非潤滑下(DRY) の試験を選択した 図2.9にFe-C合金めっき 皮膜の滑 速度と摩擦係数および摩擦距離との関係を示
滑 速度2.0 m/s以下の速度域 、試験終了(滑 距離1000 m時点)ま の摩擦係 数の平均値をと 、図2.9にまとめた 滑 速度4.0 m/s 、滑 距離約380 m時点 摩擦係数の急激 上昇が確認さ 、摩擦摩耗試験機の安全機構によ 試験が停止さ
たため、その時点ま の摩擦係数の平均値を示してい
図2.9によ と、摩擦係数 滑 速度0.5 m/s 最 低く、その後速度の上昇に伴っ
て滑 速度2.0 m/sま 平均摩擦係数の上昇がみ た 摩耗機構 摩耗粉の色
判断 と、摩耗粉が茶褐色 あったこと 酸化摩耗と判断 き
摩耗特性
対象としてFe-Cめっき皮膜の他に、無電解Ni-Pめっき皮膜、Fe-P合金めっき皮膜 (市販鉄めっき液)、S45C、S55C、SUS304 を同条件 試験し比較を行った 用いた試 験片の表面硬さを表2.3に示
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
摩擦距離(m)
摩擦係数
滑り速度(ms-1)
図2.9 Fe-C合金めっき皮膜の滑り速度-摩擦係数の関係(DRY) 摩擦距離
摩擦係数
88
表2.3 各試験片の表面硬さ 表面硬さ 荷重(kg) HV Fe-C 0.025 541.2 Fe-P 0.025 494.2 Al 0.025 150.0 S45C 1.000 235.0 S55C 1.000 250.0 SUS304 1.000 290.0
Ni-P 0.025 400
Fe-C,Fe-P,Ni-P合金めっき 、めっきまま 約400~550 HVの硬さを示した また鉄系 材料として選択したS45C,S55C,SUS304 、約200~300 HVの硬さ値を示した
次に図 2.10~2.14 に各々の材料の滑 速度と試験距離、摩擦係数の平均値を示
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 1 2 3 4
摩擦距離(m)
摩擦係数
滑 速度(ms-1)
図2.10 Fe-P合金めっき皮膜の滑 速度-摩擦係数の関係(DRY) 摩擦係数
摩擦距離
89
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 1 2 3 4
摩擦距離(m)
摩擦係数
滑り速度(ms-1)
図2.11 S45Cの滑り速度-摩擦係数の関係(DRY) 摩擦距離
摩擦係数
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 1 2 3 4
摩擦距離(m)
摩擦係数
滑り速度(ms-1)
図2.12 S55Cの滑り速度-摩擦係数の関係(DRY) 摩擦距離
摩擦係数
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 1 2 3 4
摩擦距離(m)
摩擦係数
滑り速度(ms-1)
図2.13 SUS304の滑り速度-摩擦係数の関係(DRY) 摩擦距離
摩擦係数
90
Fe-C合金めっきを鉄系材料 あ S45C,S55C と比較 と、低速度域 の摩 擦距離が改善さ てい Fe-C合金めっきの摩擦係数 、S45Cの摩擦係数と比較
と、S45C のほうが摩擦係数が低く ってい こ S45C 摩耗によ 生 た摩 耗粉(酸化鉄)が凝着を抑制 こと 摩擦係数を低く抑えてい が、Fe-C 合金めっき
摩耗粉が摩擦界面に介在 こと 激しくアブ シブ摩耗したためと考え
S55C S45C同様の傾向がみ た Niを含有 SUS304 、Fe-C合金めっ き皮膜と比較して摩擦係数が高い傾向がみ た こ 基材中のNiが固定試験片 側に凝着したためと考え 、その結果試験距離 短く ってい
めっき皮膜 あ Fe-P,Ni-PとFe-Cを比較 と、ま Fe-P Fe-Cと比較して摩 擦距離 低 速度 域 Fe-C 合 金 めっき 皮 膜のほうがよ 良 った が、高速 域 Fe-P合金めっき皮膜のほうがよ 長距離皮膜を維持 きてい Ni-P 合金めっき皮膜
、い の速度域において Fe-C合金めっき皮膜と比較して摩擦距離 同等 改善が見 、摩擦係数に いて Fe-C 合金めっき皮膜と同等 よ 高い結果と った こ 、摩擦熱の発生に伴いPを含 皮膜 、Fe3PやNi3Pを形成し、皮膜の 硬質化が摩擦熱によ さ たため、耐摩耗性を高めてい と考え
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 1 2 3 4
摩擦距離(m)
摩擦係数
滑り速度(ms-1)
図2.14 Ni-Pの滑り速度-摩擦係数の関係(DRY) 摩擦距離
摩擦係数
91
次に、図2.15に回転試験片の各滑 速度におけ 摩耗量を比 た のを示
図2.15よ 試験材料中 硬いFe-C合金めっき皮膜が摩耗量が最 少 く、次い Fe-P、Ni-Pと硬さの 摩耗量が少 い結果と った
図2.16に固定試験片の各滑 速度におけ 摩耗量を比 た のを示 1.00E-07
1.00E-06 1.00E-05 1.00E-04 1.00E-03
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
摩耗量(mm3/kgf・mm)
滑り速度(m/s)
図2.15 各回転試験片の滑り速度-比摩耗量図(DRY) S55C
SUS304 S45C
Ni-P
Fe-C Fe-P
92
固定試験片側 、材料中にニッ ルが含ま Ni-P、SUS304 摩耗量が イ スと 、固定試験片への凝着が認め た Fe-C 合金めっきにおけ 滑 速度 4.0 m/s において摩耗量が イ スと ってい の 、試験終了時に回転試験片の Fe-C 合金めっき皮膜が完全に脱落し、基材 あ アルミニウムが露出していたこと 、基 材のアルミニウムが固定試験片に融着した のと考え S45C や S55C 固定 試験片側に 損耗が見 たが、Fe-P合金めっき ほと 損耗 確認 き っ た Fe-C 合金めっきにおいて 滑 速度 4.0 m/s 例外として、そ 以下の速度域
損耗 確認 き った
この結果 鉄を主 と 組成を 持 材 料 酸化摩耗 によ 発生 した摩耗粉(酸 化鉄)が固定試験片への凝着を抑制 傾向にあ ことが分 酸化鉄を主体と
摩耗粉 硬質 あ ため、摩耗界面に介在 ことによ アブ シブ摩耗を引き起こ アブ シブ摩耗に対 対策として有効 のが硬質化 あ 、鉄系合金めっきの 耐摩耗性を高め ために 、皮膜の硬質化が有効 あ と考え
-2.50E-05 -2.00E-05 -1.50E-05 -1.00E-05 -5.00E-06 0.00E+00 5.00E-06 1.00E-05 1.50E-05 2.00E-05
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
摩耗量(mm3/kgf・mm)
滑り速度(m/s)
図2.16 各固定試験片の滑り速度-比摩耗量図(DRY) S45C
S55C
Fe-C
SUS304 Ni-P
Fe-P
93
2.3 まとめ
微細 組織を持 Fe-C合金めっき皮膜 、析出時の硬さ 約500~700 HV あ 、 熱 処 理 によ 硬 さ低 下が み い 特 性を 持 摩 耗 機 構 酸 化 摩耗 が 主 あ と 思わ 、摩耗粉 あ 酸化鉄粉が凝着抑制効果を持ち、ニッ ル と比較して耐摩 耗性に優 てい
この性質に着目しFe-C合金めっき皮膜 、自動二輪用エンジンの ストンに採用さ た実績があ また、Fe-C 合金めっきを用いた、アルミニウム合金製射出成型用金 型 、従来試作金型として用い てきた金型の問題点を改善し、量産用金型とし て用 い こと が出 来 き 、ま 採用 件数 少 い が実 際 の量 産用 金型に 採用 さ て い
。
し し、めっき皮膜が錆を発生 問題があ 、耐食性の改善が必要 あ
94 第2章参考文献
1) 竹内栄一、及川 渉、善林智範、宅見 章;素形材、Vol.46、No.12(2005) 2) 表面技術便覧;表面技術協会、日刊工業新聞社、p228(1998)
3) 金属データブック;日本金属学会編、丸善p.138(2004)
4)二元合金状態図集;長崎誠三、平林眞、アグネ技術センター、p294(2001)
5) The Hardness of Metals;Daivd Tabor(山本 訳)、山本科学工具研究社 p.3~(2006) 6)JIS Z2244, ビッ ース硬さ試験-試験法, 沢武男, 金属の硬さ試験法, ーム社(1958) 7)(社)表面技術協会;表面技術便覧、日刊工業新聞社(1988)
8) 古原 忠; 木県産業技術センター主催、平成 8年度第1回材料技術交流会講演資料(2016)