第 2 章 Fe-C 合金めっき
2.2 Fe-C 合金めっき皮膜の作製方法および物性評価
作製に用いためっき浴組成および電析条件を表2.1に示
表2.1 Fe-C合金めっき作製条件
component concentration(mol/dm3) Iron(II) sulfate heptahydrate 1.26
Iron(II) chloride tetrahydrate 0.40
Ammonium chloride 0.75
Citric acid monohydrate 0.0167 L(+)‐Ascorbic acid 0.0068
Additive appropriate amount
Bath Temp. 50 ~ 60 ℃
pH 1.5 ~ 2.0
Anode Iron (SPCC)
agitation Filtration & pump Current density 50 mA/cm2
基材に アルミニウム板(A2017)を用いた めっき浴 硫酸鉄および塩化鉄の混合 浴 あ 、浴中の Fe2+の酸化を防止 ために L(+)-アスコルビン酸を用いてい 一 般的 鉄めっき Fe3+の増加に伴い浴中に電着効率の低下、析出皮膜の内部応力 の上昇が生 ため、管理として硫酸 を用いて pH を下 て、鉄粉 を溶 こ とによ 以下の反応を生 さ 、Fe2+への還元を行う
Fe3++Fe→2Fe2+ (式2.1)
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し しこの方法 pH を下 ために添加さ た硫酸 によ 溶液の 度が上 昇 こと、めっき液中の鉄イ ンの電析消費量に対し Fe3+の還元反応によ 溶解し た鉄イ ンが多いと、め っき液中の 総鉄イ ン量が増え、めっき液を部分的に捨て希 釈 必 要 が 生 、そ の ほ の 添 加 剤 と バ ラン ス を と こ と が 非 常 に し い 問 題 が あ
L(+)-アスコル ビン酸を 用いた浴 、上記の よう 問題が生 い代 わ に、劣化
したアス コ ルビ ン 酸分 解 物が浴 に蓄 積 さ てし まう 蓄 積 さ た分 解物 めっ き皮膜 中に共析し、皮膜中の炭素濃度を増加さ 、皮膜を脆くしてしまう そのため活性炭
を用いて連続濾過し、過剰 L(+)-アスコルビン酸およびその分解物を除去 こと が必要と
また、基材をアルミニウムとした場合、めっき皮膜が付きまわ い部分 があ と めっき浴中に 微量 あ がアルミニウムが溶解・蓄積し、不良の原因と その ため、アルミニウムの影響を無視 き よう添加剤を加えてい
2.2.1皮膜組成 2.2.1.1実験方法
基材にA2017材を用い、2.2項の表2.1 示した作製条件によ 作製した
2.2.1.2評価方法
めっ き皮 膜厚 さ 断 し、エポ シ 樹脂 に埋 め込 後 、研磨を 行 い金 属顕 微鏡を 用いて断面皮膜厚さを測定した
皮膜中の炭素量の測定に JIS G-1211 鉄および鋼-炭素定量法を用いた
めっき皮膜の構造解析 XRD( ク、RINT2100) を用いて、Cu 管球、走査範 20
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~100 °、走査速度4 °/minにて測定を行った 結晶子サイ の算出に Scherrer式を用いた
2.2.1.3結果
図 2.1 に Fe-C 合金めっき皮膜の断面観察結果を示 写真 断面研磨後硝酸 (d=1.42)をエタノールに15:100 混合さ た溶液( イタール用液)に5~10 sec浸漬 後の の あ めっき皮膜 アルミニウム基材 皮膜表面方向に緻密 柱状結晶 を してい ことが観察さ た
表 2.2 に皮膜中の炭素量測定結果を示 めっき皮膜中の炭素量 0.12 % あ った
図2.2にFe-C合金めっき皮膜のX線回折結果を示 Fe-C合金めっき皮膜 結
表2.2 Fe-C合金めっき皮膜中の炭素量
質量分率 0.12%(m/m)
図2.1 Fe-C合金めっき皮膜組織
Al基板
Fe-C皮膜
10μm
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晶質 あ 、Iron (1,1,0)および Iron(2,1,1)に対応 鋭い ークが検出さ た 結晶 子サイ Iron(2,1,1)の ークを用いて計算した結果、約175 Å(17.5 nm) あった
2.2.1.4考察
図 2.3 に鉄炭素系平衡状態図を示 皮膜中の炭素含有量 、Fe-C 合金めっき 皮膜の構造 α相+Fe3C(セ ンタイト)の混合組織と考え
セ ンタイト 斜方晶の構造を持ち、鉄に ま た中央に炭素が位置 ビッ ー ス硬さが約 1340 HVと硬質 あ Fe-C合金めっき皮膜構造が S15C の構造組織と 近似 と ば、その皮膜硬さ ブ ネル硬さ 111~149(B.H.N)と と思わ
焼き入 焼き戻しを行ったS15CK 143~235(B.H.N) あ
3) 0
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
20 40 60 80 100
強度(cps)
2θ deg Iron (1,1,0)
Iron (2,1,1)
図2.2 Fe-C合金めっき皮膜X線回折波形
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ブ ネル硬さ(B.H.N)とビッ ース硬さ(HV) い 性的押込み試験によ 硬さ測
定結果 、ブ ネル硬さ 球 子、ビッ ース硬さ 角錐型の 子が用い
5)
ブ ネル硬さ 、硬球 子を平滑 試料表面に、一定の荷重 垂直方向に押し付け 図2.3 Fe-C系平衡状態図
4)
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所定の荷重を、15秒 いし30秒 けた後、荷重と 子を取 除き、生 た永久く みの直径を測定 ブ ネル硬さ(B.H.N) 、荷重 W(kg)と丸みを有 く み表面
積の比 表さ ここ D(mm)を球の直径、d(mm)をく み直径と ば、
B.H.N = 2W / πD2[1-√{1-(d/D)2}] (式2.2)
多くの場合、B.H.N え た試料に固有の値 と 、直径と荷重の大きさによ 変化 物理学的原理に従えば、く み大きさが小さくて 、幾何学的に相似形状 あ ば、そ の硬さ値 同 あ ことが期待さ こ が事実 あ こと 、以 下のように示 ことが き 仮に直径 D1 の球によ 、直径 d1 のく みが生 、直径 D2の球によ 、直径d2のく みを生 場合、両者のく み形状が相似形状 あ ば、
即ちく み角度 φ が同 あ ば、両者の硬さ値 同 と (図 2.4 参照)こ d1/D1 = d2/D2と ときに成 立
図2.4 異 直径の球 子によ 相似形状のく み
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一方、ビッ ース硬さ試験法 1925年英国のR. SmithおよびG. Sandland両氏に よって発表さ た の あって、 めの内 主に研究に適用さ ていた 特に表面 硬化処理を行った窒化鋼のよう 特殊材料の研究に役立った、その後広く一般工業 方 面 に 利 用 さ に い た 、 工 業 試 験 に 採 用 さ よ う に っ た 日 本 JIS Z22446、7)にビッ ース硬さ試験法の詳細が規定さ てい
そ の特 徴の一 、均質 材料 に対し て 、加え 荷 重の 大 小に無 関係に一 定の値の たさが得 こと、また他の一 の特徴 、最 軟 い材料 最 硬 い材料にいた ま を連続して同一尺度 たさが計 こと あ
ビッ ース硬さHV 単位 付け い) 、対角面θ=136 °の イヤモン 正四角 い 子を用い、試験面にく みを けたときの荷重 F N)と、く みの対角線長さの平均 d
mm) 求めたく みの表面積S(mm2)と 、
HV=0.102F
S=0.102
2Fsin 2
d2 =0.1891 d2
F
(式2.3) 算出 値 あ 図2.5にビッ ース 子の形状を示
ブ ネル硬さ、ビッ ース硬さ の押込み硬さ試験 、基本的に 供試材の弾性 限や、降伏応力の測定 あ
図2.5 ビッ ース 子の形状 θ
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降伏と 、金属 材料に 応力を加え て いくと あ わ 現象 あ 引 張試験に お け 応力- み線図の例を図2.6に示
図2.6引張試験におけ 応力- み線図の模式例
図2.6 応力が点2に至 と み 大きく のに対し、引張応力 下降 こ の時金属材料 降伏したという 点 2 に至 ま の変形 弾性変形 あ 、荷重を除 荷 ば形状 回復 降伏後 塑性変形に 除荷して 弾性変形分(点2ま の変形)以上 戻 ことが い この点2に至 ま の直線部分の傾き ヤング率に相
み(mm) or 伸び(%) 引張応力荷重(kgf/cm2 ) (kgf) (MPa)
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当 ヤング率 結晶の原子間距離の変化に対 抵 と考え ことが き、原子 間の凝集力が弾性的性質を決め
ま 原子間距離が小さいほ 原子同士の結合が強いこと 、ヤング率が高く 降伏し く 言い換え と格子間距離が小さいほ 硬さ値 高く といえ
し し実際に 、金属材料が変形に要 力 原子間の結合力 理論的に計算 さ 力 よ 小 さ い こ 、 外 力 等 に よ っ て 、 結 晶 中 に 含 ま 線 状 の 結 晶 欠 陥 (転位)近傍の原子が再配置さ ことによって転位の位置が移動し、材料が変形 ため あ よって、金属の硬さ 、転位の動きや さが決めてい
線状の結晶欠陥が二次元的に連続した のが面欠陥 あ 、結晶粒界、結晶表面 がそ に含ま 結晶の単位体積中に存在 転位線の全長が転位密度 あ
、転位密度が増加 と転位同士の相互作用が大きく 、転位 動きにくく
8)
Fe-C合金めっき皮膜の析出結晶粒径 、17 nmと一般的 鋼材と比較して著しく微 細 あ 例えば、S15Cの組織を見 と、950 ℃ 2時間保持後、炉冷した組織 平 均フ ライト粒径が17 µm、 あ 、写真 いが未熱処理の組織 約16 µm あ このことによ 、ほ 同一組成 あ S15Cと比較し、Fe-C合金めっき皮膜のよう 微細
組織 、皮 膜硬 さが 高く、皮膜 の機械 的特 性に影響を え と考 え そのた め、次項よ 機械的特性として、皮膜硬さ、摩 擦摩耗特性を評価し、同時に熱処理に よ 影響に いて 検討した
2.2.2皮膜の硬さと熱処理の影響
2.2.2.1実験方法
基板にA2017材を用い、2.2項の表2.1 示した作製条件によ 作製した
熱処理条件 、窒素雰 気中 炉内温度200 ℃、400 ℃、500 ℃、および処理時
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間 0.5時間また 5時間とした
2.2.2.2評価方法
皮膜硬さの測定に 微小硬さ試験機(ア シ:HM-102)を用いて荷重0.025 kgf 子を打ち込み、対角長さを測定し硬さに換算した
皮膜の残留応力測定に X線残留応力測定装置(理学電機:PSF-2M)を用いた X 線源としてCr管球を用い、管電 30 kV、管電流10 mAとした 入射角 0 °、15 °、 30 °、45 °とした 測定面 (2.1.1)を用いた 照射面積 4×4 mm2とした
2.2.2.3結果
図2.7にFe-C合金めっき皮膜の皮膜硬さを示 また、熱処理によ 皮膜への硬さ の影響を調査 目的 200 ℃、400 ℃、500 ℃(N2雰 気) 30 minおよび300 min 加熱処理したのちの皮膜硬さ 合わ て示 皮膜硬さ およそ 550 HV あ 、加 熱処理を施して 皮膜硬さの大き 低下 見 った
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300 400 500 600 700 800
0 100 200 300 400 500 600
硬さ(HV)