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Falcon 1 のコスト分析

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4. SpaceX の Falcon

4.6 Falcon 1 のコスト分析

ットと衛星の結合振動対策として振動減衰装置を追加装備することで解決 し て い る 。 こ の 装 置 は Pegasus や Minotaur-I で 採 用 実 績 の あ る CSA Engineering (2008 年 5月に Moog に買収される)の SoftRideを採用して いる。この改良の後、2009年7月14日にマレーシアのRazakSAT(韓国の

SaTReC Initiative社製)を搭載して初商業打上に成功している。

また、第1段の回収が実施されたかは明らかにはされていない。SpaceX は、「Flight 5 is a better shot, but I think on Flight 6 it's highly likely we'll recover

the first stage.」としており、1段回収は元々計画されておらず、6号機で実

施予定と見られる。

企画・開発から設計、製造・生産、出荷後のサポートやメンテナンス、生 産・販売の打ち切りまで、製品にかかわるすべての過程を包括的に管理す るシステムである。NX は、CAD や CAMなどを統合したソフトウェアで ある。(図4-36)このシステムは ATKも採用している。また、SpaceX社 はSiemens PLM Softwareと、PLMに関して広範な専門性を有する認定プラ チナ・ビジネス・パートナーである Saratech社のサポートを受ける契約を 結んでいる。NASA の COTS(商業軌道輸送サービス)計画のコンペで勝

利した SpaceXは、2010年に予定されているスペースシャトル退役後の就

航の空白を埋めるため、コスト効率に優れた打ち上げロケットを納品する 必要があり、強力でダイナミックな設計基盤を提供してくれる PLM ソリ ューションを必要としていた。NXの高度な設計/シミュレーション技術、

それを堅牢なバックボーンのTeamcenterが支え、さらにSaratech社の広範 な業界専門性が加わったことがシーメンス PLM ソフトウェアを最適なベ ンダーとして選択した理由である。

図4-36 Teamcenter 2007のBOM管理画面(http://monoist.atmarkit.co.jp/)

(2) ロケットシステム

SpaceXは、Falcon 1ロケットの材料調達、設計方針、製造プロセスにお

けるコスト低減策として、下記を挙げている。

・推進薬が全段同じ(LOX/RP1)

・低コスト推進薬

・シンプルなエンジン

・他のステージと材料を共通化

・米国道路交通法の制限内に収める

・共通のバルクヘッド設計を用い、燃料タンクの構造強度要求を低減

推進薬は、入手性・コスト・取扱性の良い LOX/RP1 を採用し、材料 面では比較的コストの安いアルミ合金(2014 アルミ合金など)を採用し ている。Falcon 1 では外板・タンク・フェアリングはアルミ合金であり、

複合材に比べて質量は増えるが、コスト面では有利となる。Falcon 1e で はアルミリチウム合金への変更とフェアリングの複合材料化を進めてお り、将来的にはコスト増が見込まれるが、業界最安値は確保できる。

ロケット構造は、モノコック構造を採用し、加工しやすいアルミ合金を 用いて‘絞り加工’や‘曲げ加工’によってアイソグリッドのように手間 の掛からない構造を行っている。

エンジンは、量産体制を構築するため、Falcon 1の1段とFalcon 9 の1 段、2段目に共通エンジン(Merlin-1C)を採用し、1基/2週間のペースで 組み立て、量産化効果によるコスト低減を図っている。Merlin Cエンジン は、ターボポンプから発生する液圧や排気ガスを活用して姿勢制御(TVC やロール制御)を行う設計とされている。

(3) 輸送

工場から射場(Kwajalein 島)への輸送は、ロケットを塩害や湿度によ るダメージから守るため、加熱・収縮するビニール材で梱包(図4-37)し て密封し、打上前作業の際にも利用できる架台へ載せられる。架台に乗せ られたロケットはさらに、エンジン付近のみがボックス収納される。これ は直射日光による劣化等を防ぐためと見られ、基本的にロケットは形状を 晒したまま輸送される。このロケットを搭載した架台は、そのままトラッ

ク(図4-38)、貨物機(C-17、C-5など)、コンテナ船へ搭載(図4-39)

できる仕様となっており、クレーンによる移動へ対応できるよう、フック が取り付けられている。Falcon 9も含めて、路上輸送時に大型貨物による 交通規制及び通行許可申請の煩雑さを避けるため、直径 3.6m以内で輸送 できるようロケット形状を設定している。Falcon 1は直径 1.7mと車両走 行基準内のため、輸送時の道路封鎖や、警察車両による先導によってコス トが上昇しないようにし、路上輸送は通常のコンテナ輸送トラックのサイ ズと同等で、輸送車両は一般のドライバーで対応可能であり、特別な道路 通過許可証は必要ないと見られる。

出荷されたロケットは即応型運用による航空機輸送ではない船舶輸送 の場合は、日中、一般道を走行して港湾施設へ輸送され、米国本土からア ジア方面へ向かう定期便のコンテナ貨物船に混載される。一般の貨物輸送 船の輸送コストは1コンテナあたり通常 50 万円~100 万円と言われてお り、Falcon 1 の輸送費も数十万円~百数十万円程度と推測される。また

Falcon 1コンテナの搭載方式は「上部にコンテナを載せないオントップ扱

い」として輸送していると見られる。

よって SpaceXは簡易包装とコンテナサイズによる汎用トラック利用に

より、一般道路を特殊申請なしで走行できる上に、輸送船も混載型の定期 貨物船を利用することでコスト削減している。輸送において特別なことを しないことがコスト低減に繋がっているものと考えられ、SpaceXでは「従 来の特殊輸送車、道路封鎖、チャーター船輸送と比較してコストが最大 10分の1になる」としている。

図4-37 ロケットの梱包(SpaceX)

図4-38 トラック輸送(SpaceX)

図4-39 コンテナ貨物船へ混載(SpaceX)

(4) 射場及び打ち上げ作業

SpaceX のKwajalein環礁のOmelek島射場システムは、シンプルな設計 コンセプトである。まず、ロケットの打上前インテグレーションはロケッ トを横倒しした(出荷時と同じ姿勢のまま)状態でインテグレーションを 行う。多くのロケットは直立させて打上準備作業を行う方式を採用してい るため、インテグレーション施設(図4-40)が高コスト化する傾向がある

が、Falconは水平(横倒し)方式のため、インテグレーション施設建設費

を低コスト化できるとし、組み立て後に射点へ移動し直立させている。(図 4-41)また、ロケットと衛星クリーンルームを同一の建物内に集約し、コ ンパクトに纏めることでコスト低減を図っている。また、この施設も機密 性を確保したプレハブ式の建築物であり、投資コストの低い施設である。

打上運用においても、打上期間を短縮することによる人件費抑制(コス トダウン)を狙っている。従来の液体ロケットは射場搬入から打上まで1

ヶ月以上であるが、SpaceXでは18日間で行う打上オペレーションを行う ことでコスト削減を進めている。

加えて、発射台設備も‘架台’と‘燃料を供給するパイプ塔’は必要最 小限のシンプル設計にし、さらに液体酸素(LOX)とケロシン(RP1)貯 蔵タンクも、移動可能なモバイルタンクとなっている。また、打上管制に 使用する運用システムは、Kwajalein島に以前あった施設を改修しSpaceX

Mission Control Centerとして使用している。設備は移動可能なコンテナハ

ウスを利用して持ち込み、建設費の投資を削減している。

また、打上時の関係者移動を最小限に抑えるために、ロサンゼルス本社 コンテナ・コマンドセンタを設けてKwajaleinへの作業者を限定している。

図4-40 インテグレーション施設(右上建家)(SpaceX)

図4-41 ロケットの射点への移動及び直立(SpaceX)

(6) その他

米国では終身雇用主義ではなく、給与至上主義が進んでいるが、SpaceX では低コスト化を実現している理由の1つとして、社員に株式取得権を持 たせており、自身が会社の経営者であるという「オーナー・メンタリティ ー」を持たせている。また、工場内の製造ライン横にカフェテリアスペー スを用意し、自由な利用を許容している。

ロケット低コスト化を達成するには、低コスト化への技術戦略を立てて 成立させる条件の他に、法的・政策的障害を考慮に入れる必要がある。ロ ケット事業を民間で行うには、FAAから審査を受けて打上認可(許可証)

を得る必要がある。その認可条件には事故発生時における賠償責任対策及 び飛行安全措置というFAA基準をクリアする必要がある。ロケットは例え 民間であれ、宇宙条約の観点から打上失敗時に他国へ損害を与えれば、打 上国が一義的に責任を負うことになることから、民間打ち上げ事業者は政 府から厳しい審査を受けることになる。SpaceX では、Kwajalein 射場から 打ち上げるFalcon 1には破壊装置を装備していない。異常発生時は推力中 断のみで行うことがFAA審査によって許されている。これは、周囲が海上 で人工密集地域がなく、第三者へ損害を与える可能性が米国本土より圧倒 的に低いことから許可を得られたと見られ、一方でケネディ宇宙センタか ら打ち上げるFalcon 9は、大型であることもありUSAFの指導により破壊 装置が装備されている。

損害賠償に関する金額も、Kwajalein射場は小島で周囲に人口密集地域が なく、射場付近や飛行中に事故が発生しても、周囲へ損害を与える可能性 が低いことから、事故発生時の『米国政府への償還額』と『第三者賠償責 任額』が、他のロケットと比較し低く押さえられていると思われる。(表 4-4)さらに、Kwajalein 射場は他の衛星打上ロケット射場がなく他の衛星 打ち上げとの時期の干渉がない。(Pegasusが航空機の発着場所の一つとし て利用)一方でケネディ宇宙センタやバンデンバーグ射場は、政府衛星の 打上が優先されるため、他のロケットの打上スケジュールと干渉し、顧客 の要求に応えられないケースも発生する。

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