4. SpaceX の Falcon
4.2 SpaceX の Falcon 計画
4.2.5 アビオ二クス
Falcon のアビオニクスは以下の様な基準に基づき設計・製作されており、
2段タンクドームの上部へ集中して搭載(図4-15)されている。
z JPL-D-8545 Rev. D (EEE Derating Standard)
z NASA-STD-8739 (harnesses, soldering, staking etc.) z IPC-2221 (Printed circuits)
z IPC-2222 (Printed circuits) z IPC-6011 (Printed circuits) z IPC-6012 (Printed circuits)
z IPC-A-610 Class III (Printed circuits) z IPC-CC-830 (Printed circuits)
z GSFC Supplement S-312-P003 (Printed circuits)
Falconロケットのアビオニクス、および構成を図4-16、図4-17に示す。ア
ビオニクスの機能は従来と同様であるが、さまざまな部分にFPGAを搭載す ることにより、低コスト化、小型化を実現していると考えられる。小型のコ ンピュータであるため、コンピュータを複数搭載することが容易である。ま た、一つ一つのコンピュータが高機能であるために、多くの機能を実現して いる。例えばエンジンに搭載されたコンピュータは、エンジンのモニタ、点 火などの制御のみならず、破壊系の機能を取り込んでいる。また、データ通 信やセンサとのインタフェースの機能に同じ型の組み込みボードを使用して おり、共通化が可能となっている。このように民生部品を使用し、新しい設 計思想で小型ロケット用のアビオニクスを作る技術が小型化に効果的である と考えられる。
また、民生品を使用し高機能で複雑化したシステムの検証には、閉ループ シミュレータを使用する等、信頼性の確保にも進んだ技術が見られる。
次の3点について説明する。
・エンジンコンピュータとフライトコンピュータの3重冗長
・リレーボードによる共通化
・ハードウェア閉ループシミュレータ
(1) エンジンコンピュータとフライトコンピュータの3重冗長
Falcon9計画では1段目に液体エンジン(Merlin 1c)が9個搭載される計 画であるが、エンジン1機毎にそれぞれFPGAを持ち、2段目に搭載され たフライトコンピュータが、それらのエンジンコンピュータを統合する。
FPGA(Field Programmable Gate Array)はユーザが独自の論理回路を書き 込むことの出来るゲートアレイ(プログラマブルロジックデバイス)で、
何度も書き換えられる特徴がある。特定用途のための集積回路を設計する よりコストが低く、書き換え可能であるため設計、検証に便利である。
フライトコンピュータには、Intelプロセッサi486の組み込みコンピュー タが使用され、フライトコンピュータと IMU は冗長を搭載している。
Falcon5 で計画されていたアビオニクスブロック図を図 4-18に示す。なお、
Falcon5は現在では開発が見送られている形態であるが、1段目にMerlin 1c
エンジンを 5 機搭載した中型ロケットとして一時計画されていたものであ る。
それぞれのエンジンコンピュータは、エンジン始動と、異常時の停止、
計測データの収集転送を行う。異常時の停止とは、それぞれのエンジンコ ンピュータが計測値の異常を検出した場合に、液体エンジンの燃焼をスト ップするというものである。これによって1段目指令破壊系が独立して存 在しないため、アビオニクスの構成はシンプルで、小型軽量となる。
複数あるエンジンコンピュータのデータ入出力は Ethernet で行われて
いる。Ethenetはオフィスや家庭のコンピュータネットワークで最も使用さ
れる LAN 規格であり、この使用により、配線数やコネクタの数を削減し ていると考えられる。
(2) リレーボードによる共通化
Falconロケットでは、フライトコンピュータからのコマンドの中継や、
フライトコンピュータへのデータ送信など、さまざまな機能を全て同じ型 の組込みコンピュータで行い、コンポーネントを共通化している。このコ ンピュータをリレーボードと呼んでいる。これを図4-19に示す。
リレーボードは以下の機能を有するものである。
・ ペイロードの分離コマンド
・ IMUからのデータ収集
・ 圧力制御装置へのコマンド
・ アナログセンサデータの取得
・ バルブ、分離機構への点火駆動
(3) ハードウェア閉ループシミュレータ
Falconロケットのフライトコンピュータは、閉ループシミュレータでソ
フトウェア検証を行っている(図4-20)。閉ループシミュレータではシミ ュレーションしたロケットの運動に対するセンサ信号やフライトコンピュ ータのコマンドに応じたアクチュエータの応答信号等を模擬し、地上から 目的軌道までのシミュレーションを行う。高層の風、突風、遷音速の衝撃 等でもソフトウェアが機体をコントロールできるかを見る。
図4-15 Falcon 1の2段上部に搭載されてアビオニクス4)
図4-16 Falconのアビオニクス 3)
図4-17 Falcon1 Avionics Architecture6)
図4-18 FalconV Avionics Architecture7)
図4-19 Relay boards, shock mounts and flight computer4)
図4-20 Hardware in the loop simulator4) Flight computer Relay boards