第3章 物体操作における再帰的結合の進化シミュレーション
3.3 物体操作の進化シミュレーションの結果と分析
3.3.4 F III :可能な限り多様な製作
図 3.9構成要素の種類数と最大構成要素数ごとの
再帰的結合を使用するエージェントの割合(FII,200試行の平均,10,000世代目)
図 3.10各結合を使用するエージェントの割合と適応度の世代変移
(FIII,200試行の平均)
図 3.11各結合を使用するエージェントの割合と適応度の世代変移
(FIII,1試行)
反復的結合の経路はある製作物の要素列に対して正順の結合のみであるのに対し て,再帰的結合は逆順の結合や途中から逆順の結合,途中から正順の結合,正順と逆 順が混ざった結合など,様々な経路を許す.この性質により,再帰的結合のほうがあ る製作物の製作経路から別の製作物の製作経路を派生させる進化が起こりやすい.例 えば図3.12に実線の矢印で示すように,ABABABという製作物が適応度を持ち,ある 世代のエージェントが既にBABABという製作物を作れる場合,次世代以降でABABAB に繋がる 3 つの遺伝子が反転される必要があるが,この変異は反復的結合で一から
ABABABを作る場合よりも必要な遺伝子数が少ない44.再帰的結合のもう一つの適応
性は,新奇な製作物への変異距離の短縮による製作物の多様化であると言える.今回 はGAによって状態遷移規則を制御しているが,これが学習のアルゴリズムであって も,獲得しなければならない遷移規則の数が同じであれば結果は同じになると予想さ れる.
図 3.12再帰的結合による遷移規則に対応する変異距離の短縮
44 むろんこれは極端な例であり,反復的結合でABAやABABが既に作れる場合はこの限りで はないが,このような遺伝子の変異距離を総合的に見たとき,ある製作経路から派生する経路の 数は反復的結合よりも再帰的結合のほうが多いため,新たな製作物を作りやすいと言える.
図 3.13 は,適応度関数 FIIIにおいて10,000 世代目の再帰的結合を使うエージェン トの割合である.FIIと同じく,FIIIでも再帰的結合の製作経路は組合せ空間のサイズ に依存し,製作物の最大構成要素数lが増えると再帰的結合の出現率が増加する.こ れは事前に獲得した組み合わせの製作物から,その組み合わせを含む製作物へと製作 手法を流用できる経路が増えるためである.また,製作物の構成要素の種類数kが増 えても再帰的結合は使われやすくなる.これは製作物の種類の増加に伴い再帰的結合 による製作経路も増加するためである.ただし,組み合わせ空間が広くなりすぎると 製作経路が形成されにくくなり,再帰的結合を使うエージェントが現れにくくなる45.
図 3.13構成要素の種類数と最大構成要素数ごとの 再帰的結合を使用するエージェントの割合
45 十分な世代数でシミュレーションするか,突然変異率を上げれば現れる.
(FIII,200試行の平均,10,000世代目)