天ヶ瀬ダム貯水池のダムサイト地点では、例年 4~5 月頃に底層の DO が低下し、10 月頃まで下 層で貧酸素水塊が形成されている。これは、発電取水口の位置より下部での水塊の停滞が原因と なっている。平成 18 年(2006 年)~平成 21 年(2009 年)における DO 鉛直分布を図 5.5-22 に、放流 地点(白虹橋)における DO 濃度推移を図 5.5-23 に示す。
出典:5-10 図 5.5-22(1) DO 鉛直分布図(平成 18 年~19 年)
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高 ( m )
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高 ( m )
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高 (m )
平成18年 平成18年
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標 高 (m)
平成19年 平成19年
1月 2月 3月 4月 5月 6月
7月 8月 9月 10月 11月 12月
出典:5-10 図 5.5-22(2) DO 鉛直分布図(平成 20 年~21 年)
0 5 10 15 20
H17.1 H17.7 H18.1 H18.7 H19.1 H19.7 H20.1 H20.7 H21.1 H21.7
D O(mg /L)
流入(本川) 放流(白虹橋) 下流(隠元橋) 環境基準
出典:5-10 図 5.5-23 放流地点(白虹橋)における DO 濃度推移
天ヶ瀬ダムは、平水時に発電取水口(EL.55~60m)から放流されるが、貧酸素水塊は概ね EL.55m 以深で形成されており、貧酸素水放流による下流河川への影響は小さいと考えられる。また、出 水時や予備放流時、並びに渇水時に開門する常用洪水吐きゲートは EL.45~50m に位置するが、ダ ム直下での再曝気効果が得られることから、貧酸素水放流による影響は小さいと考えられる。
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高 ( m )
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高 ( m )
1月 2月 3月 4月 5月 6月
7月 8月 9月 10月 11月 12月
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高( m )
<ダムサイト> <大峰橋>
平成20年 平成20年
30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80
0 5 10 15 20
DO(mg/L)
標高 ( m )
平成21年 平成21年
(2)底質濃度の評価
天ヶ瀬ダムでは、ダムサイト地点と大峰橋地点において底質の分析が実施されている。窒素、
リンは貯水池の下層で貧酸素・無酸素状態になると、底泥から溶出し、それが高濃度になると、ダ ム貯水池の富栄養化にも影響を及ぼす可能性がある。
T-N、T-P、鉄、マンガンの含有量は、大峰橋よりもダムサイトで高くなる傾向にあり、ダムサ イト近傍では有機物・栄養塩類等の堆積が進行しているものと考えられる(図 5.3-32 参照)。
鉄・マンガンが底泥から溶出し、高濃度の状況でダムから放流された場合、酸化による赤水(酸 化鉄)、黒水(二酸化マンガン)が生じる。天ヶ瀬ダムは、平水時には主に発電取水位置(EL.55~60m) から放流されるため、ダム放流の鉄・マンガン濃度を推定するため、ダムサイト左岸の EL.55m から取水している宇治浄水場原水の鉄・マンガンの分析結果を整理した。その結果を図 5.5-24 に示す。
近 10 ヶ年(平成 12 年(2000 年)以降)において、鉄・マンガンいずれも、経年的に減少傾向にあ るが、平成 18 年(2006 年)から平成 21 年(2009 年)においては概ね横ばいである。
宇治浄水場原水 鉄(Fe) 年平均推移
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
S40 S45 S50 S55 S60 H2 H7 H12 H17
鉄 ( Fe) (mg/L)
宇治浄水場原水 マンガン(Mn) 年平均推移
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20
S40 S45 S50 S55 S60 H2 H7 H12 H17
マン ガン( M n ) (m g/L)
図 5.5-24 宇治浄水場原水の鉄・マンガン分析結果 出典:宇治浄水場提供データ
(3)底泥溶出負荷のポテンシャル評価(参考)
天ヶ瀬ダムは回転率が大きい流れダムであることから、水温躍層が形成されにくいダム貯水池 に位置づけられるが、水深の深いダムサイト近傍では底層で DO が無くなる貧酸素水塊が形成され ている。底層で貧酸素化すると、底泥に堆積していた栄養塩類が溶出し、ダム貯水池水質に影響 を及ぼす可能性がある。
そこで、底泥溶出が貯水池への流入負荷に対してどれだけ影響を及ぼしているのかについて推 定することを試みる。貯水池水質は河川からの流入負荷と底泥からの溶出負荷の影響を受けるこ とから、ここでは、流入負荷量に対して、底泥溶出負荷がどのくらいの割合を占めているのかを、
T-P を対象にして評価した。
底泥溶出負荷の寄与量は、「底泥溶出負荷量/流入負荷量」で算定し、この数値が大きいほど、
底泥溶出負荷の寄与量が大きいことになる。
流入負荷量の推定 (L-Q式より) 底泥溶出負荷量の推定 (底層T-P増加速度より)
底泥溶出負荷の寄与量算定 (= 底泥溶出負荷量/流入負荷量)
第一段階として、近年において底層の T-P 濃度が高い平成 19 年(2007 年)を一例として、T-P の溶出速度を概略的に算定した。その結果を図 5.5-25 に示す。平成 19 年(2007 年)7 月 26 日の T-P 濃度 0.034mg/L(DO 濃度は 7.2mg/L)、同 10 月 3 日の T-P 濃度 0.334mg/L(DO 濃度は 0.1mg/L) であることから、69 日の間に T-P 濃度が増加した速度を溶出速度として、0.0043mg/L/日と算出 した(なお、溶出した物質が底泥直上から上方へ拡散・希釈されるケースも考えられるので、実際 にはこの溶出速度よりも大きい可能性もある)。