3-1 DHMS の組織及び人員体制
DHMS は、経済産業省エネルギー局内の一部署(Division)であったが、2011 年の組織改編に より、水文気象局として独立して機能することとなった。局下には、計画調整・研究部(Planning Coodination and Research Division:PCRD)、水文部(Hydrology Division:HD)、気象部(Meteorology Division:MD)、雪氷部(Snow & Glacier Division:SGD)の4部署が設置されている(図 3-1 参照)。
また、局への格上げに伴って、新たに国家気象水文予警報センター(NWFFWC)が設置された。
詳細計画策定調査時点では、HD及び MDのスタッフが兼任して運営しており、専属のスタッフ は任命されていない。また、SGDも局格上げ後に新設された部署であり、主に氷河収支に関する 研究やモニタリングを担当するが、調査委計画策定調査時点では専属スタッフは不在である。
Flood Warning Sectionは、主としてインドへの洪水予警報を担う部署であり、実質的にはHDから
は独立して機能している。
DHMS は、国内の地方観測施設に 1~3 名の常駐職員を配置しているが、これらの観測所に対 する技術的サポートはDHMS本部の専門員(Specialist)が出張ベースで対応している状況にある。
DHMS は、こうした技術サポートを担う機関として、国内3 カ所に地方局(Regional Office)を 設置する予定である。
図 3-1 DHMS 組織図
第10次5カ年計画(2008~2013年)では、DHMSには155名の職員の配置が予定されており、
現状では142名となっている(表 3-1参照)。
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また、DHMSの年間予算は、政府予算及びプロジェクトベースの外部ファンドを含めて年間約 150 万 US ドルとなっている。予算は年々増加しているが、今年度はインドルピーの外貨準備高 の枯渇の影響を受け、すべての省庁において財政が悪化している状況にある。
表 3-1 DHMS 職員数(第 10 次 5 カ年計画)
部署 計画 2012年現在
執行部 3 3
計画調整・研究部(PCRD) 10 7
水文部(HD) 15 14
気象部(MD) 17 15
雪氷部(SGD) 0 4
地方スタッフ 103 99
その他 3 4
合計 155 142
表 3-2 DHMS 予算実績
Fiscal Year Amount (Nu.) million Amount (USD.) million
2009-2010 71.424 1.428 2010-2011 77.707 1.554 2011-2012 78.300 1.566 2012-2013 68.391 1.368
(注)DHMSにより実施されたプロジェクト予算を含む(「ブ」国の年度は7月~翌 年6月)
3-2 国家計画の中の DHMS の取り組み 3-2-1 第 10 次 5 カ年計画
第10次5カ年計画(2008~2013年)のDHMSのプログラム・フレームワークでは、表 3-3 に示す5項目の成果が明記されている。主な内容は、水文気象観測ネットワークの充実と各セ クターへの情報提供、GLOF リスク軽減のための早期警報システムの導入、ならびにそのため の能力強化である。したがって、本事業は、当該フレームワークに沿った形で要請されたもの と言える。
表 3-3 第 10 次 5 カ年計画におけるフレームワーク
Impact Outcome Output
水 文 気 象 サ ー ビ ス や、洪水予警報に関 する体制強化
国 内 関 係 機 関 及 び 国 際 機 関 と の 協 力 体制の強化
全 国 の 水 文 気 象 観 測 ネ ッ ト ワ ー ク の 確立
水文・気象、河川土砂サンプリング 地震等の観測所の新設
主要河川におけるGLOFリスクの軽減 プ ナ カ-ワ ン デ ィ 渓 谷 へ の 早 期 警 報 システムの導入
信 頼 性 の 高 い 水 文 気 象 デ ー タ の 各 セ クターへの提供
水文気象情報のための統合中央デー タベースの構築
国家レベルの洪水予警報能力の向上 地方局及び NWFFWC の設立、早期 警報システムの開発
洪水予警報フレームワークの強化と 職員の能力向上
国内、地域及び国際機関等との協力体 制の強化
協力に関する合意締結 研究活動、研究論文
3-2-2 第 11 次 5 カ年計画ドラフト
第11次5カ年計画(2013~2018年)は、ドラフトが2012年8月にGNH委員会に提出され ており、修正作業を受け、同12月にドラフト完成の予定である。現時点でのDHMSのプログ ラム・フレームワークは、表 3-4のようになっている。
本ドラフトでは、水文セクション及び気象セクションからそれぞれプログラムが提示されて いる。第 10 次 5 カ年計画からは大きな変更はないが、政策制度面やデータブック整備など、
行政サービスとしての水文気象分野の充実が強調されている。
表 3-4 第 11 次 5 カ年計画ドラフト
プログラム1:水資源管理、洪水及びGLOF早期警報システム改善のための水文ネットワーク強化 Output Outlay (M Nu) Funding (Plan)
1. 水文観測ネットワーク及び施設整備 75.80 UNDP/GEF
2. 洪水警報ネットワーク及び施設整備 57.84 GoI
3. 土砂サンプリングネットワーク整備 15.25 RGoB
4. GLOF早期警報システムの導入・運用 150.20 JICA、UNDP/GEF
5. 水文モデル及び氷河収支モニタリング能力向上 11.05 NORAD
6. 水文データブック及び研究論文の出版 1.00 RGoB
7. 水文気象セクターの能力向上 32.00 NORAD
プログラム2:気象ネットワーク強化、及び気象・気候情報サービスの改善
Output Outlay (M Nu) Funding (Plan)
1. 水文気象サービスに関する政策立案と承認 20.00 RGoB
2. 気象観測ネットワーク及び施設整備 290.60 UNDP/GEF
3. 気象モデルの導入 64.50 Donor/RGoB
4. 水文気象情報のための統合中央データベース開発 12.00 Donor/RGoB
5. 水文気象サービスの促進 8.00 RGoB
6. 国家、地域及び国際機関との協力体制の強化 15.00 Donor (RGoB) 7. 気象データブック及び研究論文の出版 6.50 Donor (RGoB)
(注)GoI:Government of India, NORAD: Norwegian Agency for Development Cooperation
3-3 水文気象観測体制
2012年10月現在において、DHMSは「ブ」国全土に26の水文観測所と95の気象観測所を運 営している。また、2010 年以降、ドナー支援等により、NWFFWC へのリアルタイム転送式の自 記観測施設として、6基の自動水位観測システム(AWLS)と11基の自動気象観測システム(AWS)
を運用している(詳細は後述)。
また、それ以外に、主としてインドへの洪水予警報のための15カ所のFlood Warning Station(平 均2名の職員とラジオ無線による通信ネットワーク)、及びUNDP/GEFプロジェクトにより導入 されたプナツァン川の早期警報システムが存在する。表 3-5にDHMSが運用する水文気象観測 所の一覧を示す。
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表 3-5 DHMS が運用する水文気象観測所 Output 箇所数 備考 1. 水文観測ネットワーク
Principal Station 16 ケーブルシステムによる低・高水流量測定 Secondary Station 10 低水流量のみ浮子法による流量測定 AWLS with real time data 6 水位観測、NWFFWCへの自動転送 2. 気象観測ネットワーク
Class A Met Station 20 気温、湿度、風向・風速、降水量、蒸発量、地温 Class C Met Station 75 気温、湿度、降水量
AWS with real time data 11 NWFFWCへの自動転送 AWS 13 Wind Mast 10
3. 洪水警報ネットワーク
Flood Warning Station 15 主としてインドへの洪水予警報用の施設
GLOF EWS 1 UNDP/GEFプロジェクトにてプナツァン川に導入 出典:DHMS提供データ
3-3-1 水文観測体制
DHMSが現在運用している水文観測所(流量観測所)は、Principal Station:16カ所、Secondary
Station:10カ所の計26カ所である(これ以外に、後述する自動監視の水位計が計6基)。水文
観測所では平均2名が観測所に常駐する。図 3-2に国内の水文観測所の位置図を示す。
水位観測の頻度は9:00AMと3:00PMの1日2回であるが、増水時には適宜観測頻度を上げ、
洪水時には毎時の測定を実施している。なお、後述するように、2009年5月に襲来したサイク ロン・アイラにおいても、観測頻度を上げ毎時測定を実施したが、多くの観測所でゲージ目盛 を超過したため、最大水位が記録されていない。
流量(流速)観測は、原則として月2回であるが、下流で水力発電所工事が実施されている マンデ川では週1回の頻度で実施され、水力発電プロジェクトに対し、水文情報の提供を行っ ている。Principal Station ではケーブル式の流速計を備えており高水流量観測を行っており、
Secondary Station では浮子法による低水流量観測のみとなっている。また、土砂濃度測定のた
めのサンプリングを毎日実施している。
なお、これらのデータは通常期は、月に一回、土砂サンプルとともにティンプーのDHMSに 送付されており、増水期には必要に応じてFAX等で転送している。
収集されたデータは、HD でスタンドアローンの水文データベースである HYDATA(英国 National Environment Research Councilにより開発)で管理されており、2009年には過去水文デ ータを取りまとめたデータブックを出版している。
図 3-2 水文観測所位置図
出典:DHMS資料
3-3-2 気象観測体制
気象観測所は、Class Aの観測所が20カ所、Class Cの観測所が75カ所、その他AWSが24 カ所設置(うち11はNWFFWCへの自動転送)されている。表 3-6に各観測所の観測項目及 び観測頻度を、図 3-3に気象観測所位置図を示す。
各気象観測所には専用の事務所はなく、観測員(原則1名)が定時に測定に来る。データシ ートに取りまとめ、月1回の頻度でティンプーの DHMSに送付される。なお、AWSのデータ は、GSM携帯電話通信回線を通じて 30分(通信間隔は設定可)おきに更新され、また、観測 員が毎月ロガーのデータ回収を行っている。
表 3-6 気象観測所の観測項目
分類 観測項目 観測頻度
Class A 気温、湿度、風向・風速、降水量、蒸発量、地温 9:00AM、3:00PM
Class C 気温、湿度、降水量 9:00AM AWS 気温、湿度、風向・風葬、降水量、気圧、日射量 30min置きに転送
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図 3-3 気象観測所位置図
出典:DHMS資料
3-4 気象予報・予警報体制
「ブ」国における気象予報は、農業森林省農業気象局により運営されてきたが、2008 年より DHMSに移管されている。MDのWeather Forecasting Unit(予報官:1名、予報技術員:3名)が 一斑編成で実施。原則として翌日予報のみを3:00PMに新聞社、TV局等に発表している。
気象予報は、様々なリソースを活用しながら統合的に評価しており、現時点で主に活用されて いるのは、2007 年にJICAシニアボランティアが支援した気温予測(インド気象局からダウンロ ードしたメテオグラムや、国内観測所の計測値を利用して国内21カ所の気温を予測)と、オース トリア等により開発された MetGIS(米国環境予測センターが提供する Global Forecast System:
GFSや、Weather Research and Forecasting:WRF等のメソ気象モデルを活用した気象情報システム)
である。
またそれ以外に、インド気象局(IMD)やタイ気象局(TMD)からインターネット経由で気象 図を入手するとともに、インドの気象衛星 Kalpana の画像等をダウンロードして気象予報のため の情報源としている。現在DHMSには、WMOが推進するGTS(Global Telecommunication System)
は導入されていないため、インターネットが唯一の外部からの気象情報の入手手段となっている。
このため、データ取得に数時間を要し、気象予報の迅速な発信の弊害となっている。
なお、内務文化省の防災局 DDM やその他の関係省庁に対して、気象予報や洪水予警報を発す るための規定やマニュアルはなく、サイクロンや異常気象時には、個人携帯電話宛てに問い合わ せが殺到するなど、一元的な情報管理体制が整備されていない状況にある。