6-1 妥当性
本事業は、以下の理由から妥当性が高いと判断される。
(1) 「ブ」国側の開発政策との整合性
「ブ」国では、近年急増する気象災害と GLOF災害に対応するために、2011年に経済省 エネルギー局内の一部署であった気象水文サービス部を、気象水文サービス局(DHMS)に 格上げし、また、早期警報を含めた流域監視体制の強化を目的として、DHMS内にNWFFWC を 設 置 す る な ど 、 気 象 洪 水 予 警 報 体 制 の 強 化 を 図 っ て い る 。 ま た 、 兵 庫 行 動 計 画 枠 組
2005-2015 に基づいて作成された「ブ」国の自然災害リスク管理枠組(NDRMF、2006)で
は、早期警報システム対策が最優先課題の一つとして位置付けられている。さらに、GNH 委員会によれば、現在ドラフト中の第11期5カ年計画(2013-2018)でも、防災分野への取 り組みが強化され、16 の国家主要成果の一つとして「災害に耐えうる危機管理の主流化」
が明記される予定である。これらのことから、本事業の取組内容は「ブ」国における防災政 策強化の方向性と合致している。
(2) 我が国の援助政策との整合性
JICA では、本事業の先行プロジェクトとして、日本科学振興機構との共同プロジェクト として「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水(GLOF)に関する研究プロジェクト」
(SATREPS)を2009年~2012年に実施したが、同プロジェクトはJICAの事業展開計画に おける「南東アジア広域支援」として実施したものである。さらに、本事業は、気候変動適 応策・緩和策を推進するという日本の政策にも合致する。
(3) 手段としての適切性
「ブ」国では、国連機関等の協力は資金援助が中心であるが、日本の協力は技術移転を 含めた関係機関の能力強化に関する支援が中心であると評価されている。本事業においても、
協力内容は洪水予警報能力の強化に関する技術支援を中心とするものであり、「ブ」国側の 期待は非常に高く、「ブ」国の水防災セクターにおける日本の技術の優位性はより高まると 思われる。
また、他の援助機関のうち、UNDPは次期プロジェクトにおいて「ブ」国の気象水文観測 網の強化を計画中であり、本事業が取り組むNWFFWCの洪水等の予警報能力強化活動と連 携することで、相互に相乗効果が期待される。
6-2 有効性
本事業は、以下の理由から有効性が見込まれる。
(1) プロジェクト目標の内容
プロジェクト目標が示す内容は、「ブ」国の防災分野の政策大綱とも言えるNDRMFにお ける最重要課題の一つである早期警報システムの構築に合致するものであり、本事業の実施
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が「ブ」国の防災政策上有効であることを示している。また、指標として早期警報及び避難 訓練の実施が設定されており、導入機材や作業手順書が有効に機能するかを評価する上で適 切な指標設定となっている。
(2) 因果関係
本事業では、まず、中央レベルでのキャパシティ・デベロップメントとしてNWFFWCの 能力強化に取り組み(成果 1)、また、地方レベルでのキャパシティ・デベロップメントと して、パイロット活動地域を2流域設定し、同流域へのEWSの導入(成果 2)とステーク ホルダーを取り込んだ緊急対応能力の強化(成果3)を図っており、プロジェクト目標の達 成に必要不可欠なものが適切に設定されている。また、プロジェクト目標達成のための外部 条件として、「C/P機関職員が継続して業務続ける」ことが設定されているが、「ブ」国では、
近年の行政機構の改編に伴い人事異動が決して少なくないことから、本事業実施期間中、同 条件をモニタリングする必要がある。
6-3 効率性
本事業は、以下の理由から本事業実施の効率性は高いと判断される。
(1) アウトプットの内容
本事業では、NWFFWC の予警報システム(成果 1)及び早期警報システム(成果 2)の 導入がアウトプットに設定されているが、それらのシステムが確実に稼働し、活用されるか を評価する指標が設定されており、同指標は的確である。
(2) 因果関係
本事業のC/P機関は、先行プロジェクトSATREPSにも参加しており、本事業の内容をよ く理解している。また、設定されている3つの成果について、「ブ」国側の主たるC/P機関
は、成果1はDHMS、成果2はDGM、成果3はDDMとなっており、また、全体調整はDMHS
が担当する実施体制であり、活動に重複がないことから効率的な活動が見込まれる。
また、UNDPの次期プロジェクトとの連携を図るため、NWFFWCに導入予定の統合シス テム及び早期警報システムの仕様については、本事業開始の早い段階において概略のデザイ ンを DHMS 側に提示し、UNDP導入資機材の基礎資料となるよう配慮する予定であり、相 互に相乗効果が期待される。
(3) タイミング
本事業で導入予定の機材の調達・搬入については、活動計画(PO)で十分な配慮がなさ れているが、機材搬入の遅れは事業全体の実施計画に影響を及ぼすことから、効率性の維持 に留意する必要がある。また、「ブ」国では、5月~9月が雨季に当たり。この間、特に地方 道路の状態は劣悪であり、サイトへのアクセスも妨げられる可能性が高いことにも留意する 必要がある
6-4 インパクト
本事業は、以下の理由から正の影響が期待できる。
(1) 上位目標の内容
プロジェクト目標は、早期警報システムを用いた GLOF 及び洪水に対する対応能力の強 化を対象2流域におけるパイロット活動を通して目指すのに対し、上位目標はその対応能力 が「ブ」国全体で強化されることを目指すものであり、本事業が取り組もうとする方向性を 明確に示している。また、これは、第11次5カ年計画(2013-2018)で示される防災政策強 化の方向性とも合致している。
(2) 波及効果
本事業の実施により、DHMS の洪水の予警報能力が向上すると共に、気象予報システム が改善され、広く「ブ」国民の生活改善にも貢献することが期待される。
また、パイロット活動地域での活動の成果として早期警報システムの操作・管理マニュ アルの他、洪水緊急対応の SOP が作成されることから、そうしたマニュアル、作業手順書 を見本として、他の地域独自のものが作成・活用されることが期待される。
6-5 持続性
本事業の持続性は、以下の通り期待される。
(1) 政策・制度面
現在、防災国家法案が国会で審議中である。また、現在ドラフト中の第11次5カ年計画
(2013-2018)では、防災分野への取り組み強化が16の国家主要成果の一つとして明記され る予定であり、防災対策、特に、洪水予警報能力の強化に向けて政策面での整備が進んでい ることから、本事業の持続性は高いと判断される。
(2) 組織・財政面
2011 年に経済省エネルギー局内の一部署であった気象水文サービス部を、気象水文サー ビス局(DHMS)に格上げするとともに、DHMS内にNWFFWCを設置した。本事業は、同
NWFFWCの能力強化を成果の一つとするものであることから、組織面での持続性は高いと
言える。なお、DHMSは、第11次5カ年計画(2013-2018)の中で、本事業そのものを主要 事業として予算計画を立てているが、援助機関からの支援(無償資金協力を含む)を含めた ものであり、財政面での持続性は必ずしも担保されているとは言えない。
(3) 技術面
DHMSは、既に、UNDPのプロジェクト(2008-2012)でEWSをプナツァン川流域に導入 し運用を開始している。また、NWFFWCでは、既に、観測データの収集、気象予測等の活 動に着手していることから、本事業での技術移転活動に十分に対応できる技術水準にあると 判断される。
6-6 結論
本事業は、「ブ」国の開発政策、開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、また計 画の適切性が認められることから、実施の意義は高い。