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Cyp4f39 −/− マウスにおけるアシルセラミドのほぼ完全な消失

2. ω 水酸化脂質による皮膚バリア形成機構の解明

2.2. 結果

2.2.4. Cyp4f39 −/− マウスにおけるアシルセラミドのほぼ完全な消失

コントロールマウスと Cyp4f39−/−マウスにおける脂質組成の変化を明らかと するために,胎生 18.5日で帝王切開により摘出した個体から表皮を剥離し,脂 質抽出ののちに,順相TLCによる分離と銅リン酸試薬による呈色を行った。そ の結果,コントロールマウスにみられるアシルセラミドおよびアシルグルコシ ルセラミドを含むバンドがCyp4f39−/−マウスでは消失していた(図13A)。一方,

超長鎖 FA を構造中に含むセラミドおよびグルコシルセラミドのバンドについ ては,コントロールマウスと比較してCyp4f39−/−マウスで濃く検出された。

本研究ではさらに,アシルセラミドの分子種ごとの詳細な定量分析を行うた めに,表皮から抽出した脂質を LC-MS/MSを用いて測定した。その結果,コン トロールマウスにおいては,C30–34 の飽和型および C32–36 の一価不飽和型の

ω-OH FAを有するアシルセラミドが検出され,C34:1タイプが最も多くみられた

(図13B,左図)。また飽和タイプでは,C26およびC28の分子種は非常に少な く,一価不飽和タイプではいずれの鎖長の分子種とも検出限界以下であった。さ らに,同じ測定をCyp4f39−/−マウスについても行った結果,すべての分子種で著 しい減少が確認され,総量ではコントロールマウスの約1.5%であった(図13B, 右図)。この結果から,Cyp4f39−/−マウス表皮ではアシルセラミドの大部分が消失 していることが確認され,Cyp4f39がアシルセラミド生合成に関わる唯一の脂肪 酸ω水酸化酵素であることが明らかとなった。

2.2.5. Cyp4f39−/−マウスにおける ω-OH セラミドの減少と超長鎖 FA 含有セラミ ドの増加

アシルセラミド生合成経路においてアシルセラミドは,前駆体であるω-OHセ ラミドの ω 末端へのリノール酸付加によって産生される。Cyp4f39 による脂肪 酸 ω 水酸化は,ω-OH 超長鎖セラミド合成に必要であり,その合成不全がアシ ルセラミド消失の要因であることが予想された。そこで,マウス表皮における ω-OHセラミド量についてLC-MS/MSを用いた定量を行った。その結果,コントロ ールマウスにおいてはアシルセラミドと同様に C30–34 の飽和型および C32–36 の一価不飽和型の ω-OH FA 有する ω-OH セラミドが検出された(図 14A)。一 方,同じ測定を Cyp4f39−/−マウスについても行った結果,顕著な減少がみられ,

総ω-OHセラミド量はコントロールマウスの約 5.4%であった。したがって,ア シルセラミドの前駆体であるω-OHセラミドの生合成過程においても,Cyp4f39 がほぼ唯一の脂肪酸ω水酸化酵素として機能していることが示された。

ω-OHセラミドのように水酸化FAを構成中に含むセラミドは水酸化セラミド と呼ばれ,ω-OHセラミドの他,FAの 2 位に水酸基をもつ α-OH セラミドが存 在する。α-OHセラミドについてもLC-MS/MSによる定量を行った結果,コント

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13. Cyp4f39−/−マウスにおけるアシルセラミドの消失

胎生18.5日のコントロールマウス(Cyp4f39+/+マウス, n=3)とCyp4f39−/−マウス

(n=3)の表皮から脂質を抽出し, TLC による分離と銅リン酸試薬による検出

(A)および, LC-MS/MSによるアシルセラミドの定量(B)を行った。Bの左 のグラフはアシルセラミド分子種ごとの定量値を示し,横軸はアシルセラミド の構造中のω-OH FAの鎖長と不飽和度を示す。右のグラフは検出されたアシル セラミドの総量を示す。定量値は平均値±標準偏差を示し,Student’s t-検定によ って有意差を求めた。**P< 0.01; nd, not detected

ロールマウスにおいてC16–28の飽和型α-OHセラミドが検出された(図14B)。

一方のCyp4f39−/−マウスにおいても,コントロールマウスで検出されたすべての

α-OH セラミド分子種で減少や増加はみられなかった。この結果は,α-OH セラ ミドの合成にCyp4f39が関与しないことを示すとともに,ω-OHセラミドの消失 に対する代償機構として,α-OHセラミドが増加するような機構は存在しないこ とを示している。

順相TLCによる表皮脂質の分離分析によって,Cyp4f39−/−マウスにおいて超長

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14. Cyp4f39−/−マウスにおけるω-OHセラミドのほぼ完全な消失

胎生18.5日のコントロールマウス(Cyp4f39+/+マウス, n=3)とCyp4f39−/−マウス

(n=3)の表皮から脂質を抽出し,LC-MS/MSを用いてω-OHセラミド(A), α-OHセラミド(B),セラミド(C)の定量を行った。AとBの左のグラフおよび Cのグラフは各セラミドの分子種ごとの定量値を示し,横軸はFAの鎖長と不飽 和度を示す。AとBの右のグラフは検出された各セラミド分子種の総量を示す。

A–Cのグラフの上に,各セラミドクラスの構造式を示す。定量値は平均値±標準 偏差を示し,Student’s t-検定によって有意差を求めた。*P<0.05; **P< 0.01

鎖 FAを構造中に有するセラミドが増加していることが示された(図13A)。そ こで,非水酸化セラミドについても LC-MS/MS による定量を行った結果,コン トロールマウスでは C16–36 の飽和型および一価不飽和型の非水酸化セラミド 分子種が検出された(図14C)。飽和型と一価不飽和型を比較すると,総量では 飽和型の方が多く,一価不飽和型の約8 倍であった。鎖長については C26 の分 子種が最も多く検出された。Cyp4f39−/−マウスについても同じ測定を行った結果,

C22–28の飽和型およびC26とC28の一価不飽和型の分子種では,コントロール

マウスと比較して有意な減少が確認された。その一方で,コントロールマウスで

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はほとんど検出されなかったC32–36 の飽和型および C34 と C36 の一価不飽和 型の分子種について,コントロールマウスよりも増加していることが明らかと なった。C30を超す鎖長の非水酸化セラミドのCyp4f39−/−マウスにおける増加は,

通常はω-OHセラミドの合成に使用される超長鎖 FAが,Cyp4f39 が欠損してい ることで ω 水酸化を受けずに,直接,セラミド合成酵素による長鎖塩基との縮 合に用いられたことを示唆している。