葉脈黄変菓の発生は,第3章および第4章で述べたように,菓内のP含量の減少かCu含量の過剰によるもの と認められるい この葉脈黄変葉ほ小林・許ら(1969)(5253)が,ボルト液のCu害としているものと思われる・本 章でほ,これらの観点からCuが葉脈黄変菓の発現と,梅雨期の早期落葉に及ほす影響を観察した
第1節 葉脈黄変葉の発現に及ぼすCu溶液の影響
新しょう基部菓における葉脈の黄変に及ぼすCuの影響をみるために,Campbell sEarlyの新しょう切枝およ びさし木苗を用いて,硫酸銅溶液の水耕実験を行なった
第1項 硫酸銅溶液に挿した切枝での観察
新しょう切枝を硫酸銅溶液に挿し入れて,葉脈の変色状態を観察したが,事前にリン酸−カリ(KH2PO4)溶液 を吸収させた場合と,そうでない場合の葉脈の変色状態を比較観察した.さらに硫酸銅溶液の濃度別の影響なら びに菓内のP含畳との関係をみた
Ⅰ 実験材料および方法
(1)Cuによる葉脈の変色状態の観察
1969年9月10日にCampbell sEarlyの新しょうを切り取り,それを0.2%硫酸銅液,04%リン酸一・カリ液お よび水(イオン交換水)に挿し,2日後および4日後に,葉脈の変色状態を観察した.
(2)リン酸−カリ液を吸収させた後に硫酸銅溶液に挿した場合の,葉脈の変色状態の観察
前項と同様に切枝をとり,前処理として2日間,水(イオン交換水うぉよび0.4%リン酸−・カリ液に挿したのち,
後処理として0.2%硫酸銅液に挿し,2日間Cuを吸収させて,葉脈の変色状態を比較した
(3)硫酸銅溶液に挿し葉面を湿潤状態にした場合の,葉脈の変色状態の観察
前と同様に採取した切枝を,0.1%硫酸銅液に挿し,菓面を朝・夕散水によって湿潤状態にした区と,室内で自
然放任の下において菓面を乾燥状態にしたままの区を設け,2日間Cuを吸い上げさせて,葉脈の変色状態を観察
した.
(4)案内のP含量および微量要素含量の分析
前(1),(2)の試料につき,処理2日後および4日後に,葉内のP含量をバナトモリブデン比色法,微量要素(Mn,
Fe,Cu,Zn)含量を原子吸光法によって分析比較した、
(5)硫酸マンガン溶液に挿した切枝との比較
1970年9月15日にCampbell sEar・1yの新しょう切枝をとり,英数を6枚ずつとし,02%硫酸銅液を対照とし て,0.2%硫酸マンガン液に挿し,3日後に葉脈の変色状態を比較した
ⅠⅠ実験結果
(1)Cuによる葉脈の変色状態
−60一
新しょう切枝を0.2%硫酸銅液に挿したものでは,2日後,4日後ともに第32図のように,各菓の葉脈が紫褐 色またほ黒褐色に変わり,とくに基部菓でほ全案身が暗褐色になり,はなほだしく萎ちょうした.
これに対して,水に挿したものと0.4%リン酸−Lカリ液に挿したものでほ,まったく異状を認めなかった.
(2)リソ酸一・カリ液を吸収させた後に硫酸銅溶液に挿した場合の,葉脈の変色状態
前処理として0.4%リソ酸一カリ液に挿したものと,単に水のみに挿したものを,それぞれ後処理として0.2%
硫酸銅液に挿したところ,水→硫酸銅液の場合にほ,前項(1)の場合と同じように2日目には葉脈が変色しはじめ,
基部薬では全菓身がほなはだしく変色した
しかし,リソ酸−・カリ液→硫酸銅液の場合にほ,第33図のように2日目に.ほなんらの変化もなく,4日日ごろ になって基部稟がわずかに変色した程度で,葉脈の変色は認められなかった.
第32図 硫酸銅掛こ挿入した切枝 の葉脈の変色と基部菓の 状態
(3)硫酸銅溶液に挿し棄面を湿潤状態に.した場合の,
葉脈の変色状態
0.1%硫酸銅液に切枝を挿し,菓面を乾燥状態に保っ たものと,朝・夕菓面を濡した状態のものの,両者にお ける葉脈の変色状態を比較すると,第34図のとおりで ある.すなわち,棄面を湿潤状態にしたものでほ,菓面が つねに乾いた状態においたものにくらべて,葉脈の変色 がやや早く現われ,その程度もより進んだことが認めら
れた.
(4)菓内のPおよび微量要素含量
前(1)の実験において,硫酸銅溶液,リソ酸一カリ溶液
帯お園リソ酸−・カリ液→硫酸銅
液に挿した場合における 葉脈の変色状態
第別図 硫酸銅溶液に挿し,葉面を乾燥状態 と湿潤状態にした場合の葉脈の変色 状態の比較(処理2日目)
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および水に挿した切枝の実について,菓内のPおよび微量要素含量を分析した結果は,第53蓑のとおりである 第53真 水耕の処理日数と菓内のPおよび微量要素含量
P Mn Fe Cu Zn 水 0‖297% 64ppm 254ppm 95 ppm 90ppm
2日間 0い4%リソ酸一・カリ液 0.459
96 285 73 98処理 0い2%硫 酸 銅 液 0‥230 85 295 785 93
水 71 250 170 123
4日間 処理 0.319 0い4%リン酸−カリ液 0.674
79 235 108 910…2%硫 酸 銅 液 0.275 110 245 2040 103 すなわら,0.4%リン酸一カリ液に挿したものでほ,菓内のP含量が高く,Cu含量が少なかった… これに対し て0.2%硫酸銅液に挿したものでは,Cu含量がいちしるしく高かった.
つぎに前(2)の実験において,水→02%硫酸銅液および0。4%リン酸−カリ液→0山2%硫酸銅液に挿したものの 棄について,菓内のP含量と微量要素含量を分析した結果は,第54表のとおりである
第54表 処理液の変更と菓内のPおよび微量要素含義
P Mn Fe Cu Zn
0‖253%
ppm ppm ppm ppm
水→0.2% 硫 酸 銅 液 69 240 1080 120
0い4%リソ酸一・カリ液→
0い2%硫酸銅液 0.576 83 215 955 115 すなわち,前処理として04%リン酸−・カリ液に挿し,
Pを先きに吸収させておいたものを,後処理として0 2%硫酸銅液に挿したものでは,薬内のP含量ほ高くな るが,C11含量は多くならないことを認めた
(5)硫酸マンガン溶液に挿した切枝との比較 0.2%硫酸銅液と0.2%硫酸マンガン液に,それぞれ切 枝を挿し葉脈の変色状態を比較したところ第35図に示 すとおりであったい すなわち,硫酸銅溶液に挿したもの では,明らかに前(1)の実験と同様な葉脈の変色が認めら れたい これに対して硫酸マンガン溶液に挿したものでほ,
まったく菓に異状を認めなかった
第35図 硫酸銅溶液および硫酸マンカソ溶液 に挿した切枝の葉脈変色状態の比較
(1970年9月)
lIl考 察
Cuは植物の生育に必要な元素(42・457990′128・145)とされており,植物体内の酸化・還元をつかさどる酵素の構成 分(11312い45〉とな・っている.また,Cuが植物に宥害であるということは,硫酸銅が除草剤や殺藻剤(101さ0)として使 用されていることや,銅鉱山付近の鉱毒地土壌のCu過剰症(2633,79′90)があげられるい さらにCuが農業上重要な
ことは,ボルドー液をはじめCtlを原料とした多くの殺菌剤(10・130,143)として使用されていることである.しかし,
近時,果樹栽培においてCuの過剰症(11)をほじめ,ボルトー液のCu害(525899・120〜124125) などについて注目されて いる.
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ボルトー液および銅製剤などのCuほ,水に不溶性の形である(10108130′143)が ,植物体上では植物の分泌する CO2,重機酸,空中のCO2,降雨・水滴などによって,可溶性のCuを一道離し,それが組織・細胞中に浸透して薬
害を生ずるく52,99120〜124′125・143) … なお,これに関する報告や記述によると,ボルトー液の散布された薬や新しょう
に現われるCu害の散候く90′108・120・121・125)ほ.,果樹の種類,発育状態(とくに葉齢),被害の程度によって異なる1 すなわち,菓面でほ葉脈間に黒色の斑点を生ずるもの(カキ,7ドゥ),紫褐色または紫斑を生ずるもの(モモ,
ナシ),また,兼脈が黒褐変するもの(ナン)なとがあげられているい 筆者(1964)(60)がビニール被覆栽培のブド ウ園で観察したものでは,薬面に紫褐色の不正形な斑点であったが,本実験において■7トウの新しょう切枝を硫 酸銅溶液に挿した場合に,葉脈が紫褐色ないし黒褐色に変色したことほ,島村(1969)(120・121)が観察したナンのCu 害における葉脈の黒褐変と煩似するものと思われるまた,切枝を硫酸銅溶液に挿し菓面を湿潤状態にした場合 に,葉脈の変色が早くその程度が進んだことほ,菓面の水分蒸発によって菓面蒸散を促進し,枝の切口より多量 の硫酸銅液を案内に吸収した結果てあろうと思わわる.
リソ酸一カリ溶液を先きに吸収させ,後に硫酸銅溶液に挿した切枝において,葉脈の変色状態がはなはだ軽微 であったことは,すでに第4章で述べたように,案内のP含義とCu含量との相対関係からみて,PがCuの吸収 を抑制したためであると考え.られる.この点ほ前田(1969)(79)が述べているように,Cuの吸収を悪くする要素と
してCa,N,Fe,PなどがあげられCuの吸収や体内移動を助けている要素としてK,Mm,Znなどがあげられ ていることからして推察にかたくないい さらに新しょう切枝の供試料について,後処理の実験後に案内のPと教 義要素含量を分析した結果よりみても,たしかに先きにリン酸一・カリ液に挿したものでほ,菓内のP含量が高く Cu食品が低かったことからも証明づけられよう.
新しょう切枝を硫酸マンカン溶液に挿した実験ほ,第4章・第3節の実験において,湛水処理区における基部 案内のMn含量が高くなったこと,ならびにMm過剰が温州ミカンの異常落葉の原因であるく13・303283,142)とされ ていることに対するCuとの比較である,この実験において,硫酸マンガン溶液に挿したものでは,菓になんらの 異状を認めなかったのほ,Mnの濃度が低すぎたのか,Mnが切枝に吸収されなかったのか,種々の疑問が考えら れるにしても,硫酸銅溶液との対比において行なった実験であり,おそらくMnほ葉脈の変色を起こさせるもの ではないという見解が正しいものと思われるい
以上のように,Cu溶液を枝の切口から吸収させた場合にほ,菓面からCuが浸入した場合とは異なり,その薬 害散候として葉脈を変色させることが認められ,′ほなはだしい場合にほ基部棄を変色・枯死・落葉させるもので
あることも認められた.なお,Pが先行吸収されたときには,Cuの吸収を抑え.,葉脈の変色を・現わさないことが 認められた.
Ⅳ 摘 要
Campbell s Earlyの新しょう切枝を硫酸銅溶液に挿し,Cuの吸収によるCu害傲候としての葉脈の変色状態 と,リソ酸一カリ溶液を先行吸収させた場合のCu害の発生状態を観察した.
(1)02%硫酸銅液に挿したものでは,葉脈が紫褐色または黒褐色に変わり,基部菓は暗褐色を呈し,萎ちょう・
枯死した‖
(2)硫酸銅溶液に挿して葉面を湿潤にしたものでは,葉脈の変色が早く,その程度もより進んだ‖
(3)リソ酸−・カリ液を先行吸収させたのち,硫酸銅液に挿したものでほ,基部菓の−L部がわずかに変色したに すぎなかったい
(4)0.2%硫酸マンガン液に挿したものでは,まったく菓に異状を認めなかったり