第1章における早期落葉の実態調査ならびに第3章・第3節における梅雨期の湛水・多湿が,早期落葉に及ぼ す影響についての調査から,梅雨期における早期落葉にほ葉脈黄変菓の発生がみられたい その葉脈黄変棄は案内 のNおよびP含量の低いことを認めた.
本章では,梅雨期における葉脈黄変菓の発生と,基部葉における菓内要素含量との関係を検討し,とくに.葉脈 黄変葉における要素成分の特徴を明らかにする,
第1節 葉脈黄変葉の発生と葉内成分の変化
水田転換園におけるCampbell sEarlyについて,結果枝の菓位別案内成分の時期的変化,ならびに葉脈黄変実 における案内要素成分を,健全葉との比較において−明らかにしようとした
第1項 葉位別葉内成分の時期的変化
水田転換のCampbe11 sEarly園で,梅雨期落葉の多い園と,落葉の少ない比較的健全な園について,梅雨期か ら梅雨明け期にわたる間の,結果枝の薬位別案内要素含量の時期的変化を−調査した
Ⅰ調査材料および方法 1970年5月末から7月の間,大川郡志度町幸田地区の水田転換のCampbell sEarly園で,常習的に梅雨期の落
葉が多い園(高橋教一・氏園)と比較的落葉の少ない健全園(高橋忠氏園)を選び,5月30日からほぼ20日ごと に,結果枝の第2,4,6,8,10節位葉をそれぞれの固から任意に採棄し,葉内の5要素含義(N,P,K,Ca,
Mg)および微量要素含量(M血,Fe,Ctl,Zn)を分析・比較したい菓分析は5要素についてほ第3章の場合と同様 な方法により,微量要素についてほ原子吸光法によった
ⅠⅠ調査結果
結果枝の菜位別菓内成分の時期的変化を,常習的落葉園について調査した結果ほ,第35表のとおりである.ま た,落葉の少ない健全園について調査した結果ほ,第36表のとおりであるい
すなわち,これを基部第2,4節葉のいわゆる基部菓についてみると,N含量は両固樹ともに5〜6月,6〜7 月へと季節が進むにつれて減少するが,その傾向は健全園にくらべて,常習落莫園において強い.
P含量についても,Nの場合とやや似た傾向があるが,健全園ではその変化が少ないのに対して,常習落葉園 では急に減少している.X含量はN,Pと同じような傾向がみられ常習落葉園におけるK含量は,健全園にく らべて全般的に少ない.CaおよびMg含量については,両園の間に目立った差異は認められず,むしろ常習落葉 園のほうが高いく−らいである.
微量要素のうちMn,FeおよびZn含量においてほ,両者間にはっきりした差異はみられないが,Cu含量につ
ー40−
第35表 常習的落薬園の菓位別彙内妻索含量の時期的変化 (乾物中:高橋教一氏園;1970年)
N P K Ca Mg Mn Fe Cu Zn
% % % % % ppm ppm ppm ppm
5 第2節薬 2.972 0..351 0小944 1561 0‖419 482 472 21 213 月 4 3458 0.367 1.076 1005 0.294 314 359 21 145 30 6 早‖406 0.376 1.374 1 013 0‖224 322 264 18 121 日 8 3小330 0.246 1.846 0.608 0.145 89 161 21 92
10
6
2 1小912 0.238 0.798 2..315 0.486 506 689 48 252 2.234 0.219 0.509 1,377 0.300 321 345 32 155
2.654 0.236 0.752 1.102 0.281 134 345 32 150
8 2.926 0‖268 0‖807 1け103 0‖232 89 288 21 144
日 10 3176 0い320 1.492 1.108 0257 117 259 23 148
7
2 1038 0,19(〜 0.786 2172 0.309 497 848 677 287 1394 0い173 0..434 1小588 0.173 152 681 450 196 1.592 0。.179 0..709 1132 0.181 149 515 355 132
8 1.852 0い204 1い223 1 128 0.177 122 509 285 130
日 10 2‖076 0.206 1.444 1.031 0.175 106 483 288 140
注:7月7日(台風2号の後)に,4−6式ボルドー・液を散布
第36表 健全園の菓位別菓内要素含量の時期的変化 (乾物中:高橋忠氏園;1970年)
N P K Ca Mg Mn Fe Cu Zn
% % % % % ppm ppm ppm ppm
5 第2節菓 2‖350 0け465 1‖634 1,.89き 0.330 552 605 27 −160 月 4 3..124 0.355 1.917 1..484 0.292 249 474 27 124 30 6 3.356 0325 2 212 1.139 0い238 204 258 28 106 日 8 3.560 0‖404ノ 2‖211 0..840 0.254 84 237 30 103 10 3..276 0.511 2り440 0小804 0‖316 79 238 41 136
6
2 1.706 0‖431 1u547 2.284 0.331 556 578 23 187 2小172 0い222 1け340 1い726 0.290 271 384 35 162
2。570 0.274 1.642 1.276 0.394 254
339 34 119日 8
3小126 0.296 1..438 1..223 0.310 222 337 47 185 B 10 2.864 0303 1‖342 0.954 0い256 105 376 35 1207
2 1小211 0。429 1198 1。.954 0.274 543 627 35 234 1.588 0い267 1.132 1‖864 0い248 244 582 46 177 1.918 0‖259 1=156 1.498 0‖190 235 538 61 150
日 8
2306 0−238 1..142 1..342 0.196 156 414 48 144 10 2.318 0.250 1.182 1.208 0‥220 104 572 55 175 いてははっきりした差が認めらわた・、Cu含量の変化状態で,常習落葉園における7月10日分析のCu含量がきわ めて高いのは,当園において7月7日にボルドー液の散布を行なった影響によるものであろう.このような菓内要素含量のうち,とくに第2,4節菓におけるP含量とCu含量の時期的変化を要約・比較す ると,第22図のとおりで,両園の間における傾向の差異が明らかに認められる
ちなみに,両調査園における地表土と地表下15cm部位の土壌について,N/5KCI置換性C11含量を分析した ところ,第37表に示すように常習落葉園の土壌からは,健全園の土壌よりも多くの置換性Ctlが溶出された.
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30/V 22/Ⅵ 10/Ⅶ 30/V 22/Ⅵ 10/Ⅶ
第22図 結果枝基部の第2・4節葉におけるP含量とCu含量の時期的変化(水田転換園:1970年)
第37表 ブドウ園土壌中のN/5KCI置換性Cu含量の比較 (乾土中:1970年)
1 日 間 溶 出 3 日 間 溶 出 6 日 間 溶 出
地 表 士 10以下ppm 10以下ppm 10 ppm
健 全 園 地表下15cm土 12 10 10以下
地 表 土 10以下 10 10以下
常習落薬園 地表下15c皿土 28 16 12
なお,本調査に際して常習落葉園でほ,7月上旬に結果枝基部に葉脈黄変菓の発現を認めた
ⅠⅠⅠ考 察
7■ドゥ樹の生育にともなう養分吸収の経過について,広保(1961)(20)ほBlackqueenの成木で,生育時期と無 機成分との関係を調査している.これによると案内のN含量は生育時期の進むにつれて少なくなり,Pおよび Mgは9月終わりごろまで次第に減少し以後は変らないが,Pをもっとも多く要する時期は,菓の繁茂する7月ご
ろまでであるとしている.さらにK含量は時期による変化はあまりないが,7〜8月ごろわずかに減少の傾向を 示し,その後ほ変らないとし,Caは生育時期の進むにつれて多くなることを認めている
細井・遠藤(1955)(27)はDelawareの着果樹について,新しょう上の各節位における案内成分の変化を調べ,7 月中旬において着果の影響が現われるのは,果房の着生節位から上位の7〜8節位間の棄であるとしている.ま た,前田(1969)(79)ほ主要果樹の集中要素含量の判定基準を示しているが,それによればDelawareの7月上旬な いし8月上旬の採取業で,二MnおよびCu の菓中含量が適量とみなされる範軌も Mnで30〜60jppm,Cuで
8〜15ppmであるとしている.
−42 −
このような2,3の報賃と本調査の結果をくらべた場合に,5要素の案内成分の時期的変化の傾向は大同小異 で大差ほみられないい しかし,微量要素の含量ほ本調査の両園ともに全体に多く,なかでもMn,Cuの含量が目 立って高い、このことは高橋ら(1969)(128)が述べているように,土壌中のCu含量との関係が深く,その記述によ ると普通の土壌では全Cuが70〜200ppm,0.05N−KCI置換性Cuが0。5〜1Oppmであるとしている、さらに Cuを含む土壌が,梅雨期に入って降雨や過湿によって土壌が還元状態になると,土壌中において酸化状態で比較
的安定していたFe+3,Cu+2,Mn+2,Zn+2などが還元されて易溶化し,それらが植物体内に過剰吸収されることが あるとしている.したがって.,このようなことから本調査の常習落葉園でほ,とくにN/5KCI置換性C11が多く 溶出されたものと理解され そわが比較的容易に吸収されたものと思われる
要するに本調査の結果からして,基部菓内における要素成分の時期的変化ほ,両園ともにその傾向は似ている が,常習落葉園においてほ生育時期の進むにつれて,健全固よりもN,P含量の減少程度が大きく,Cu含量が増 加する傾向みられた.このことは第3章・第3節における湛水実験および多湿17■ドゥ園の黄変葉の分析結果(第 32衰)および後述の葉脈黄変葉の案内成分(第38表)と密接な関係にあるものと思われる
Ⅳ 摘 要
水田転換のCampbell sEarly園の梅雨期における常習的な落莫園について,結果枝基部菓の菓内要素含量の時 期的変化を明らかにするため,梅雨期前から梅雨期にかけて菓位別にその状態を調査した
(1)基部菓内のNおよびP含量ほ,生育時期の進むにつれて減少するが,その傾向は常習落葉園において強 く,常習落葉園の各節菓のK含量は,健全園にくらべてやや少なかった.
(2)両園ともに各節位葉内の微量要素含量は一・般よりも高いが,とくに常習落葉固では時期の進むにつれて,
葉内のCu含靂の高くなる憤向があり,ボルトー液の散布後ほいちじるしく高くなった
(3)両園の土壌中におけるN/5KCI置換性Cu量を調べたところ,健全園土壌よりも常習落薬園のほうが多 かった.このことほ常習落葉園における基部菓内のCu含義を多くすることに関係あるものと思われる.
第2項 葉脈黄変葉の棄内要素成分
梅雨期における早期落葉のおもな兆候である葉脈黄変菓について,案内要素成分を検討し,その特徴を明らか にした
Ⅰ 調査材料および方法
1968年および1969年の6〜7月の間,大川郡志度 町幸田地区において,水田転換のCampbell sEarly 園(高橋教一億園)に発生した葉脈黄変菓について,
葉内5要素含量と微量要素含量を分析し,健全樹およ び健全葉のそれと比較した.分析方法は前項の場合と 同様の方法によったが,とくに試料の採取,調製は,
第23図のように区分した場合がある
ⅠⅠ調査結果
1968年の調査において,同一周内の健全樹から健全
第23図
左上全集の分析試料 右…葉柄・葉脈部の分析試料
−43一
葉を・,葉脈黄変菓発生樹から葉脈の黄変した菓の,いずれも結果枝基部菓を採り,それらの案内5要素含量を比
較すると,第38表のとおりである
第38表 葉脈黄変菓発生園における基部葉内の5要素含量 (乾物中:1968年7月20日)
N P K Ca Mg 健 全 樹・健 全 菓 2.164% 0.202% 1365% 1.て23% 0.240%
葉脈黄変菓発生樹・黄変菓 1.697 0156 1.784 1.559 0。277
すなわち,葉脈黄変菓発生樹の基部菓(黄変菓)においてほ,NおよびP含量が目立って低いことが認められ
た
さらに1969年の調査において,前と同じ園で葉脈黄変菓の発生した樹の健全菓と葉脈黄変稟について,全集内
(葉柄,菓身を含めたもの)の5要素および微量要素含量を分析した結果ほ・第39表のとおりである…また,葉 柄・葉脈部と葉肉部に分けた試料について分析した結果ほ,第40表のとおりである・
第39表 葉脈黄変菓の案内5要素および微量要素含量(乾物中:1969年6月25日)
N P K Ca Mg Mn Fe Cu Zn
健 全 菓 2.04% 0.187% 1.35% 1179% 035% 323ppm 195ppm 152ppm 80ppm
A
樹 葉脈黄変菓 1。56 0.087 1.00 1‖70 042 290 235 372
79 健 全 菓 2 28 0.116 1.05 1.63 0け43 243 330 230 66B
樹 葉脈黄変菓 1.68 0い098 0.90 1.90 0.45 269 282 350
64第40表 葉柄・葉脈部と葉肉部の要素含量の比較(乾物中:1969年6月25日)
N P K Ca Mg Mn Fe Cu Zn
健 全 菓 126% 0.187% 1‥70% 1.88% 080% 208ppm 200ppm 172ppm 107ppm
葉柄・葉脈部 葉脈黄変菓 0.95 0.135 1.65 1‖80 0,73 221 222 345
52 健 全 菓 235 0.159 1。.00 1.80 0‖32 263 340 265 90葉 肉 部 葉脈黄変菓 1.79 0‖120 0い90 1‖70 029 207 295 380
80 すなわち,葉脈黄変葉はとくにN,PおよびK含量が低く,微量要素のうちではCu含量がいちしるしく高い ことが認められた.これらの要素含量を葉柄・葉脈部と葉肉部とを比較すると,Nは葉肉部において差が大きく,PおよびCuは葉柄・葉脈部において明らかな差がみられた.
ⅠⅠⅠ考 察
葉脈黄変菓が梅雨期ごろの黄変菓のうちでもっとも多く,それが園地の過湿またほ地下水位の過高閲に発生の 多くみられたことほ,すでに第1章において明らかである.また,これと同じ徴侯を示す葉脈黄変菓は,第3章・
第3節の湛水実験において再現したい さきに梅雨期の多湿ブドウ園に発生した葉脈黄変菓における5要素含量の 分析で,NおよびP含量が少ないことを認めたが,菓内の要素含量の変化をみる場合に,佐藤(1959)(116)による と葉柄内の変化がもっともよくその傾向を示すものとされ,とくにブドウではN・P,K,Ca,Mg,Mn,Feは 葉柄の含量が,B,Cu,Znなどは菓身の含量が,それぞれその傾向をよく現わすといわれている・・本実験の場合に