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第Ⅱ章 姫浦層群における白亜紀後期サメの歯化石の産出層準とその産状

ⅰ. Cretalamna appendiculata

C. appendiculataについてShimada (2007a)は, USAカンサスの白亜系から産

出したC.appendiculataの全身の化石を調べ,化石の全長を推定した.方法

の1つは, 最も保存のよい最大の椎骨の直径(VD)から全長(TL)を推定する 方法で,この方法には同じネズミザメ目のCretoxyrhina mantelli (Shimada, 1997b) におけるTLと椎体直径(VD)の間の関係が用いられ, C.appendiculata

のTLは,約230cmであると推定した.

別の方法ではC.appendiculataの椎体のサイズが,現生のネズミザメ目に おける椎体と全長の定量的な関係で考察する方法が用いられ, C.

appendiculata の椎骨直径(あるいは半径)のデータを現生ネズミザメ目の

数種の椎骨の直径(VD)[あるいは半径(VR)]から全長を計算する方程式を 使って推定している( Shimada, 2007a, p. 602 Appendix 2).例えばCarcharias taurus のGoldman et al., (2006)の方程式TL=36.8 +10.8・VR にC.

appendiculataの椎骨のデータVD=40mm(あるいはVR=20mm)を代わりに 使えばTL=253cmと推定できる(図10).その結果からC. appendiculata の TL(全長)=2.5~3.8mという結果を得たが, 上記のC.mantelliとの比較から C. appendiculata のTL(全長)=2.3~3.0mと推定した(Shimada,2007a)(図 10).

さらに,サメの歯の大きさからの全長の推定については,双葉層群産のC.

appendiculataについて Shimada et al. (2010)が次の方法で推定している.

歯冠の高さと全長には関連性がある(Shimada, 2005)ことから, カンサス のCretalamna appendiculata の前歯の歯冠高は平均15.5mmで,最大の側歯 の歯冠高は13.5mmである(Shimada,2007a)ことから,双葉層群のNo.55 の前歯(Shimada et al. 2010, p.584, Fig. 2)はカンサスの歯冠高の64.5%なの で推定全長は,1.5~1.9mである. また最大の歯No. 43の側歯(Shimada et al.

2010, p.584, Fig. 2)は歯冠高がカンサスの1.41倍の大きさである.よって推

定全長は3.2~4.2mであるとした. 従って, 双葉層群は全長1.5~4.2mになる

と報告している. このサメの歯の歯冠高と全長との関係を図11に示す.

この Shimada et al. (2010)のサメの歯冠高から全長を推定する方法を姫浦

層群の調査地域のC. appendiculataに応用してみた.具体的には, それぞれ

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図10. 現生のネズミザメ目における出版された脊椎骨のサイズと全長に関連した回帰方程式. それぞれの方程式において VD=40mm, VR=20mmで代用されるCretalamna appendiculata (LACM128126) の推定全長        Shimada (2007a)に加筆 Cretalamna appendiculata (LACM128126) VD VR サメの脊椎骨(椎骨) PCL: Pre-caudal rength 回帰方程式種類 (平均推定全長) Carcharias taurus Alopias vulpinus (511cm)Goldman et al. (2006) Cailliet et al. (1983) Tl= 59.7+13.3・VD 592 Carcharodon carcharias (269cm) Wintner and Cliff (1996) PCL=(VD/ 10 +0.3)/0.02; TL=5.2+1.3・PCL 285 Isurus oxyrinchus (307cm) Ribot-Carballal et al. (2005 ) TL=19.6+13.6 ・VR 332 Lamna ditropis (283cm) Goldman and Musick(2006) PCL=21.0+10.6・VR; TL=15.2+1.15・PCL     283

(312cm)(参考文献) TL=36.8+10.8・VR

推定全長(cm) 253Branstetter and Musick (1994) TL=44.4+16.7・VR      378 31

5100         15202530

CH ( 歯冠高)

 mm

全長︵    

TL  ) m

前歯のCH 側歯のCH ※ 側歯は大きいサイズを使用

(同一個体)

双葉層群

双葉層群 カンサス

カンサス

推定体長の範囲 カンサス 双葉層群 CH (歯冠高) Shimada(2007)に加筆

図 11.  Cretalamna appendiculata  の CH( 歯冠高)と全長の関係 ( カンサス・双葉層群 )

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の場所で産出した歯化石の歯冠高を測定し前歯と側歯に分けてShimada et al.

(2010)の前歯および側歯に基づいてそれぞれ全長の推定を行った.

姫戸公園産の C. appendiculataの歯冠高と全長の関係を図 12に示す. 例え

ば No.19の歯化石は 16.0mmの歯冠高を持つ前歯である(図 43). この大き

さは USA. カンサスからの C. appendiculata 前歯の平均歯冠高 15.5mm の

107.7%である.従って,これを基に推定される全長は 2.4m~3.2mである.

その全長の平均値をプロットしている.測定できた歯化石は前歯2点,側歯 6点である.これによって推定される全長は, 1.1m~3.4mである. No.16から 推定される全長は他の歯化石に比べてこの標本のみ極めて大きく(歯冠高

22.7mm, 推定全長 3.9~4.2m),この群集の特徴を示していると考えられな

いのでグラフからは除外した(図 43).

椚島産の C. appendiculata の歯冠高と全長の関係を図 13に示す.測定でき た歯化石は前歯1点,側歯2点である.これによって推定される全長は2.3m

~4.5m である.No.8 および No.9(図 47)は後歯と考えられるので全長の推 定から除外した.

和田の鼻産の C. appendiculata の歯冠高と全長の関係を図 14 に示す.測定 できた歯化石は前歯4点,側歯4点である. これによって推定される全長は 3.2m~5.0mである.No. 34についてはこの標本のみ, 歯冠高 6.7mmで, 推 定される全長は 1.1m~1.3m と他の標本と比べて極めて小さいのでこの群集 のグラフからは除外した(図 46).また, No.9 は後歯と見られるので除外し た(図 45).

これら3つの産地の C. appendiculata の歯冠高と全長の関係を一緒にして 図 15に示し, 産地ごとのグループとして比較した.これを見ると姫戸公園

産の C. appendiculataが全体的に小型であり, 和田の鼻のグループが非常に

大型であることがわかる. したがって,姫戸公園産の C. appendiculataは若 い個体の群集であると考えられ, 椚島や和田の鼻の C. appendiculataは成体 の群集で沖合に生息していたと考えられる.

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