第4章 ダイオードの電気特性による評価
4.1 サファイア基板上 GaN ショットキーダイオードの特性評価
4.1.1 C-V 測定による評価
C-V 特性は半導体の空乏層容量の電圧依存性を用いて、半導体不純物分布や拡散電位 Vbiを求めるための測定である[1]。ショットキーダイオードに印加させるバイアスVと空 乏層の幅Wの関係はポアソンの方程式から以下のようになる。
d bi
s V V qN
W = 2ε0ε ( − )/
(4.1) ここで、Vbiは拡散電位、Ndは半導体の不純物密度、ε0とεsは真空の誘電率と半導体の比誘 電率である。単位面積あたりの空乏層の容量C は、電圧の微小変化 dV に対する空間電荷 の変化dQで定義される
( )
W dV
W qN d dV
C ≡−dQ =− d =ε0εs
(4.2) すなわち
[ V V ]
N C q
s d bi−
= ε
0ε
2
2 1
(4.3) となり直線の傾きから拡散電位Vbiと不純物密度Ndを求めることができる。
試作したデバイスのC-V特性を図4.1に示す。測定機器にはLCRメータ(旧HP社製、
4284C)を用いた。測定周波数1MHz、印加電圧3~-30Vまで-0.2Vstep、Hold Time 0s、
Delay Time 0.01s、積分時間mediumで行った。TEGの種類や寸法については第3章に 示した通りである。下図に示したのは、用いたTEG パターンは図3.9 の④で示した範囲 の基本構造の、直径200μmの円形ショットキーダイオードを用いた。図中に示したキャパ シタンスの単位は単位面辺辺りの容量に換算してある。
V=0での容量は1.3×10-7[F/cm2]であった。図 4.1より電圧を負に印加すると、キャパ シタンスがなだらかに減少する。20V辺りで容量が大きく減少し、コンダクタンス成分が 上昇した。これは逆方向バイアスが大きくなったことで、リーク電流が増加し、抵抗が小 さく見え、その結果容量が見えなくなったものを思われる。
測定した容量C(F)とコンダクタンスG(S)から位相角θを次式より求めた。
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
= ⎛
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
=
−⎛
−G fC G
C π
θ tan
1ω tan
12
(4.4)θ-V特性を図4.2に示す。-10V程度まで範囲ではθが90°に近い範囲であり単純な抵抗 と容量の並列接続で近似できる。
この範囲で不純物濃度を求め、直線近似から、拡散電位を導出する。しかし、今回のサ ンプルでは不純物分布が一定でないので、上記の計算では正確に求めることができない。
したがって、これより不純物分布が一定でない場合について考える。印加電圧が V から dV
V + まで変化し、この微小なdV の間で空乏化する領域の不純物分布一定、たとえば
Nd(W)とすれば、空間電荷の変化
dQ
は、dW W qN
dQ =
d( )
(4.5) になる。したがってdV はs d s
d s
dW W W qN
dW W W qN
dV dQ
ε ε ε
ε ε
ε
02
0
0
2
) ( )
( = −
−
=
−
=
(4.6)空乏層幅Wは
W
ε
0Cε
s= である。したがって、容量と電圧の変化関係は、
( ) dV
W N C q
d
d
s
( )
/ 2 1
0
0
= − ε ε
(4.7) となる。すなわち、空乏層端における不純物分布Nd(W)が次の式のように与えられる。⎟⎟⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
= −
dV C q d
W N
s
d (1/ )
) 2
( 2
0 0
ε
ε
(4.8)
ここでε0は真空の誘電率、εs(=9.5)はGaNの比誘電率、C0は単位面積あたりのキャパ シタンスである。また、空乏層幅(電極表面からの距離)W を算出し、先程の不純物分布 Nd(W)から図4.1のように、空乏層幅Wに対する不純物分布特性が示される。測定値から 計算した拡散電位は1.1eV、不純物濃度は2~3×1017〔cm-3〕だった。
仕様では1.0×1017〔cm-3〕の設計である。また、V=0 での容量は1.3×10-7〔F/cm2〕で あり理論値とほぼ一致する。また、基本構造以外の MES構造や、面積の違うパターンを 用いて同様の測定行ったが、拡散電位、不純物分布ともにあまり大きな差はなく、平均値 をとると、拡散電位は1.11eV、不純物濃度は2.47×1017〔cm-3〕となった。今回の測定か ら得られた不純物濃度、拡散電位、V=0の時の容量を表4-2に示す。
算出したパラメータ Cjo[F] 1.3×10-7 拡散電位[eV] 1.1 不純物濃度[1/cm3] 2.5×1017
表4-1 C-Vから算出したパラメータ
図4.2 C-V測定(1MHz)
0.0E+00 2.0E-08 4.0E-08 6.0E-08 8.0E-08 1.0E-07 1.2E-07 1.4E-07 1.6E-07 1.8E-07 2.0E-07
-30 -20 -10 0
Voltage(V)
Ca p aci ta nce [F /cm 2]
0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03 0.035 0.04 0.045
S us cept a nce( S )
C G
0.0E+00 2.0E-08 4.0E-08 6.0E-08 8.0E-08 1.0E-07 1.2E-07 1.4E-07 1.6E-07 1.8E-07 2.0E-07
-30 -20 -10 0
Voltage(V)
Ca pa ci ta nce [F /cm 2]
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
位相角θ[ ° ]
C θ
図4.3 θ-V測定
0.0E+00 1.0E+14 2.0E+14 3.0E+14 4.0E+14 5.0E+14 6.0E+14 7.0E+14 8.0E+14
-20 -15 -10 -5 0
Voltage(V)
1/c2
実測
線形近似曲線
図4.5 実測と近似曲線のフィッティング 図4.4 不純物濃度-基板深さの特性