第 5 章 ダイオードのモデル化とパラメータ解析
5.4 回路モデルのパラメータの算出
前節にて回路モデルの作成を行った。そこで、実測に基づき実際に設計で用いるための
SPICEモデルのパラメータを算出する。モデルパラメータを導出するための実測値には、
4章で試作した半絶縁性のSiC基板上に形成したGaNショットキーダイオードを用いる。
またこの中でも表面に 50[nm]エッチングをしたデバイスを用いる。このデバイスを用い た理由として、DC の順方向特性において、順方向に大電流を流しても往復で値が異なる ヒステリシス特性やリーク電流の増大のような劣化がほとんど見られないことや、場所に よる特性のばらつきが少ないためである。つまり特性変動や、ばらつきが少ないことでよ り実測を正確に再現できるモデルパラメータが算出できると考えたからである。
5.4.1 寄生抵抗 RF の検討
寄生抵抗RFはn-GaN層の横方向のアクセス抵抗Raとオーミック金属とのコンタクト 抵抗Rcから算出される。4章試作しデバイスのシート抵抗とコンタクト抵抗の値を用いて 導出する。4章の表4-4からシート抵抗Rsは70[Ω]、コンタクト抵抗の実測値Rmcは0.1[Ω
mm]である。実装用ワンフィンガーのメサ部分の寸法は 24[μm]であるのでその半分であ
る12[μm]を電流が進む距離lとする。実装用のフィンガー1本当たりの電極幅wは100[μ m]であるので、横方向のアクセス抵抗Raは以下のように算出される。
] [ 4 . 100 8
70 × 12 = Ω
=
= w
Rs l
Ra
(5.1) またコンタクト抵抗Rcは、オーミック電極幅wを100[μm]としたとき、] [ 100 1 100 = Ω
=
= w
Rc Rmc
(5.2) となる。実際のオーミック電極のサイズはこれで数倍であることこれの数倍であることか ら、コンタクト抵抗の影響はほとんどないと考えられる。また、ワンフィンガー当たり、二つの電極があるので、これらの合計値の半分になるので、寄生抵抗RFは、
] [ 7 . 2 4
1 4 . 8
2 = + = Ω
= Ra + Rc
RF
(5.3) となる。n-GaN層の直列抵抗RSに加えて、ワンフィンガーで寄生抵抗RF分だけの損失 が生じることになる。寄生抵抗 RFの大部分はアクセス抵抗Raが占めている。アクセス 抵抗の大部分は、n+GaN 層の抵抗によるものであるため、エピ設計においてできること は、不純物濃度をなるべく上げて、厚くすることである。しかし、これらは結晶成長技術 に大きく依存するものであるため、現状はこれ以上寄生抵抗RFを下げることはできない。5.4.2 試作デバイスの SPICE パラメータ
提案した等価回路モデルと試作したダイオードの電流電圧特性の比較を行う。実測にパ ラメータフィッティングさせて、実測の電流電圧特性の再現を行う。表5-1に今回の試作 ダイオードの実装構造の SPICE パラメータを示す。比較のために京都大学の研究機関が レクテナでの使用に検討しているSiのショットキーダイオード(型番HSMS282B)とサフ ァイア基板での 1 次試作のものの SPICEパラメータも記載した。ここでの寄生抵抗 RF
の値は、5.4.1で導出した値を用いる。ここでフィッティングする実装構造の元データの順
方向特性は、図4.20と同様のものを用いた。逆方向の電流電圧特性は非線形特性を示し、
フィッティングとよく合わないので、10[V]付近の電流値を用いて、リーク抵抗RPを算出 したリーク抵抗の値は 1×107[Ω]とした。AC 特性のパラメータについては円形ショット キーを用いたC-V測定の実測値から算出した値を用いた。また5フィンガー、10フィン ガーの値は、1フィンガーの値から計算した値である。図5.8に1次試作と2次試作での 代表的な特性について比較したものを示す。図で凡例の添え字1のものが1次試作の代表 的な値であり、2のものが2次試作の代表的な値である。図に示す通り、1次試作はダイ オードモデルでうまくフィッティングができない。これはas-grown の状態でデバイスを 作成してあるため表面状態が悪く、酸化膜が形成されていることや、界面が帯電している と考えられる。それに比べて2次試作のものは、表面をエッチングしてあるので、立ち上 がり電圧が低く、フィッティングも正確にできる。2 次試作にて 5V 付近から電流電圧特 性が鈍っているのは、大電流による自己発熱による影響であると考えられる。これらの結 果から、また1次試作と2次試作では、直列抵抗RSと寄生抵抗RFの和であるON抵抗
が10[Ω]以上低い。これは元々のシート抵抗が低いこと、SiC基板であることも要因であ
るが、主には表面エッチングによる改善であると考えられる。2次試作の直列抵抗 RS の 値は約6Ωであった。これは面積を1フィンガーとし、距離を1μm、不純物濃度を2.2×
1017とした時の移動度は約 240[cm2V-1s-1]と計算され、理論値よりは小さいが妥当な値で あるといえる。これらの結果から回路モデルは妥当であり、正確に特性を再現できること がわかった。1 フィンガーでの合計の抵抗は約 10[Ω]であるので、10 フィンガーでは約 1[Ω]となり、接合容量は2[pF]である。この程度の容量であれば、RF/DC変換効率にも大 きな影響を及ぼさない範囲であり良好な値であるといえる。しかし、1 フィンガー構造も 容量は小さく、高効率の可能性はある。
パラメータ Si 1次試作 1フィンガー 5フィンガー 10フィンガー
Is[A] 22n 0.02f 1n 5n 10n
Rs[Ω] 6 6.3 5.9 1.1 0.59
N 1.08 1.8 1.8 1.8 1.8
TT[s] 0 0 0 0 0
Cjo[F] 0.7p 0.2p 0.22p 1.1p 2.2p
Vj[V] 0.65 1.1 1.1 1 1
Bv[V] 15 40 50 50 50
RF[Ω] 16 4.7 0.8 0.47
RP[Ω] 1×107 1×107 0.2×107 1×106
CP[F] 0 40f 40f 40f 40f
表5-2試作デバイスのSPICEパラメータ
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45
0 2 4 6 8
voltage[V]
cur rent [A ]
Experiment2 Simulated2 Experiment_1 Simulated_1
図5.11 電流電圧特性の実験値と理論値の比較