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エピ構造の検討と設計

ドキュメント内 Microsoft Word - 修士論文.doc (ページ 34-39)

第3章 ダイオードの設計と作成プロセスの検討

3.1 エピ構造の検討と設計

今回レクテナに用いる整流ダイオードはショットキーダイオードを用いる。これは、PN 接合ダイオードでは少数キャリアの蓄積による影響が大きく高速動作に適さないこと、順 方向バイアス時に生じる拡散容量成分による効率減少の影響が懸念されるためである。ま たダイオードのエピ基板の設計を行うためには、使用周波数、逆方向破壊耐圧、順方向最 大電流値を定める必要がある。まずレクテナで想定される入力電力に対して、必要な耐圧 を決定する必要がある。今回の設計目標値を表3-1に示した、入力RF電力100Wでの大 電力レクテナで使用されることを想定した場合、ダイオード単体に必要な耐圧は理論値で

78V、実際の回路シミュレーションでは 250V程度が必要であるという報告がある。また

最大順方向電流値も問題であるが、これに関しては、理論値 4A、シミュレーションでは 2A程度であるという報告がなされている。今回は初めての試作なので目標耐圧100V、順 方向最大電流2A を目標値として設計を行う。また、2章で述べたように、抵抗と容量は 効率に大きく影響するために耐圧100Vを満たしつつ寄生抵抗、寄生容量をなるべく小さ くするようなダイオード構造の設計をする。

目標値 使用周波数[GHz] 2.45 逆方向破壊耐圧[V] 100 順方向最大電流値[A] 2

電流電圧特性について設計目標値を達成するためにピ基板には以下のような条件が考え られる。

(1)耐圧100V程度に耐えられるエピ厚、不純物濃度 表3-1 ダイオード設計目標値

(2)低抵抗、低寄生容量であること (3)基板が放熱性に優れていること

よって今回使用するデバイス構造を図3.1に示す。図に示すように、半絶縁性基板上に 低抵抗のn+-GaN層, 高抵抗のn--GaN層のエピタキシャル成長させた構造である。n-GaN 層が耐圧を決定する層である。(1) について耐圧を決定するための不純物濃度エピ厚の決 め方については後述するが、基本方針としては、寄生抵抗を下げるためには耐圧100Vを 保ちつつ、エピ厚をなるべく薄く、不純物濃度を高くすることが求められる。また(2)につ いて、なるべく寄生抵抗を小さくしたいので、基板とショットキー金属接触層の間に低抵 抗のn+-GaNのドリフト層を設けた。こうすることでエピ基板全体のシート抵抗が減少す るため、寄生抵抗を減少させることができる。ドリフト層は厚い方がいいが、現状のプロ セス条件では1~2μm程度が限界であると思われる。基板は寄生容量を低減するために半 絶縁性基板を用いてある。半絶縁性基板上に GaN をエピタキシャル成長させる場合、通 常サファイアもしくはシリコンカーバイド(SiC)基板を用いる。今回、プロセスの条件 出しや測定試験には安価で購入できるサファイア基板を用いるが、実装用のデバイスには、

SiC 基板を用いる。サファイア基板上に GaN をエピタキシャル成長させるためには格子 定数の違いを緩和するためのバッファ層が必要となるため基板が厚くなることや、実用上 放熱性が悪いことなどがある。SiC 基板を用いると、基板と GaN との格子定数がマッチ ングするため、バッファ層が必要ないためエピ層を薄くできることや、結晶性の向上など の利点がある。結晶欠陥が少なくなると、格子定数の違いにより生じる貫通転移などの結 晶欠陥に起因する逆方向リーク電流を抑制できることや、エピ基板の歩留まりの向上も考 えられる。(3)の条件に関してSiC基板は、1章の表1-1に示したように、熱伝導率が高い ために放熱性に優れているため適しているためである。2 章にも示したようにレクテナ用 の整流ダイオードでは、容量を 10-13~10-12[F]程度に抑えたいことから、ショットキー電 極と半導体との接合面積をなるべく小さくする必要がある。接合面積を小さくした場合、

基板での発熱がRFDC変換効率に関して問題となるといった研究報告がある[1]。 GaNシ ョットキーダイオードに関しても、電流電圧特性の動作温度依存性に関する研究報告によ ると、温度上昇により逆方向ゲートリーク電流の上昇や、ON 電流の減少などが報告され ている[2]。そのためこの論文報告においては温度依存性に関しては測定していないが、今 後研究すべき課題の一つでもある。

3.1.1 エピの厚さ、不純物濃度の設計

GaNの絶縁破壊電界EBは1章の表1-1より3.3×106(V/cm)である。そのため、逆方向 電圧VBに相当する逆方向電圧を加えた際に、ショットキー電極と半導体の接合部の電界E がGaNの絶縁破壊電界EBになり、かつ接合部から伸びた空乏層がn--GaN層とn+-GaN 層の境界にちょうど達するようにn--GaN 層厚さと濃度を決定する。そのため、まず理論 耐圧の式を導き出す。そして、理論耐圧で100Vより少し余裕を持たせる不純物濃度を決 定する。その決定した不純物濃度で、逆方向バイアス100Vを印加したとき必要なエピの 厚さを決定する。またダイオードの電界とエピ厚さ(空乏層)の関係を図3.2に示した。

電界は電極から、基板への方向のみにかかるとし、一次元構造で近似してポアソンの方程 式を解く。n 形半導体のショットキー接触の場合、イオン化したドナーによる正の空間電 荷が電界に関与する。一次元構造を考えると、ポアソン方程式は次のようになる[3]。

( )

0 2

2

ε ε

ρ dx

s

x V

d = −

(3.1)

ただし、xは金属と半導体の界面を原点とする。εs、ε0はそれぞれ真空の誘電率、半導 体内の比誘電率である。ドナーが完全にイオン化していると、空乏層内では

( N n )

q

d

ρ =

(3.2)

となり、空乏層の外では電荷中性条件が成り立ち、ρ=0である。空乏層端のごく近傍の空 乏層内では、導電帯にわずかの電子が存在している。したがって、図 9.5(a)で示すように

LT-n

+

-GaN (低抵抗層) µ

半絶縁性基板 (SiC, サファイア )

バッファ層 ( サファイア基板時 ) n

-

-GaN (高抵抗層)

図3.1デバイスの構造

カソード電極

アノード電極

空間電荷の分布は空乏層端でわずかになだらかになる。しかし、電子密度nがマクスウェ ル・ボルツマン分布に従う場合、q(Vd-V(x))≫kTであれば、近似的にn≪Ndとでき

qN

d

ρ ≈

(3.3) とおける。

式(3.1)を解くに当たっての境界条件を

( )

0 =0

V (3.4)

( )

W V V

dx V dV

d W

x

=

=

=

,   

0 (3.5)

とする。ここで、W は空乏層端の座標であり、式(3.5)では、空乏層にのみ電界がかかり、

空乏層端での電界は0としている。これを用いて式(3.1)の両辺を積分すると、

( ) ( )

) (

0

x dx W

x x dV

E

s

=

= ε ε

ρ

(3.6)

( ) ( )

2

2qN 0 W x V

V x V

s d

d − − −

=

ε ε

(3.7)

を得る。また空乏層幅Wは

(

V V

)

W qN d

d

s

= 2

ε ε

0

(3.8)

式(3.6),式(3.8)から空乏層内での最大電界Ebは、x=0の時得られ

(

V V

)

W N

Eb qN d

s d s

d = −

=

0 0

2

ε ε ε

ε

(3.9)

上式においてV =−Vbとおき、Vb >>Vdとして変形すると、絶縁破壊耐圧 Vb が得られ る。

0 2

2 Eb

Vb qN

d s

ε

=

ε

(3.10)

この式に絶縁破壊電界 Eb、誘電率、不純物濃度を代入すると、必要耐圧が得られる。

今回絶縁破壊電界の計算値を少し低めに見積もり 2×106とした。絶縁破壊電界を 3.3×106 とした場合は理論耐圧300V程度である。大電力レクテナに必要な耐圧は100~300[V]で あるので、不純物濃度の1×1017[1/cm3]という値は目標耐圧に対して妥当な値であるといえ る。不純物濃度を 1×1017[1/cm3]と定めたので次は必要なエピ厚を求める必要がある。式 (3.8)に定めた不純物濃度と表 3-2 のパラメータを代入する。

d

b V

V >> とし逆方向バイアス

を100Vの時の空乏層幅は、約1μmであった。よって、n--GaN層の厚さは約1 μmと定め る。

設計値 計算値 絶縁破壊耐圧(V/cm) 2×106 逆方向破壊耐圧[V] 100

GaNの比誘電率 10 不純物濃度[1/cm3] 1×1017 真空の誘電率[F/m] 8.85×10-14 n-GaN層厚さ[ μm] 1

電荷 1.6×10-19

表3-2 エピ基板の設計用パラメータと計算値

電界

基板方向厚さ x 空乏層幅

ショットキー接合部 EB

n

GaN 層 n

+

-GaN 層 金属

傾き ε

d

qN

耐圧(面積)

電界

基板方向厚さ x 空乏層幅

ショットキー接合部 EB

n

GaN 層 n

+

-GaN 層 金属

傾き ε

d

qN

耐圧(面積)

図3.2 ダイオードの電界分布(縦軸電界、横軸エピの厚さ)

また式(3.10)変形すると、

0 2

2 Eb

N

d

ε qVb

s

ε

=

(3.11) が成り立つ。空乏層幅Wなので、ダイオードは絶縁破壊を起こすときに、金属半導体境界 での電界は絶縁破壊電界Ebに等しい。

式(3.9)と、式(3.11)から、

Eb Eb Vb W qN

d

s 0 2

=

=

ε ε

(3.12) 順方向バイアス時に n-層での空乏層幅が半導体層にくらべて十分小さいとき、オン抵抗 Ronは、以下のように表される。

E S V S

E Vb E q

qVb S

qN R W

b n s

b b

b n s n

d on

4 1 2

2

3 0

2 2

0

μ ε ε μ

ε ε

μ = =

=

(3.13)

μ

nは電子の移動度、Sは電極の面積である。

式(3.13)から、オン抵抗は絶縁破壊耐圧Vbの2乗に比例して大きくなることがわかる。よ って必要以上に理論耐圧を上げるような、エピの厚さ、不純物濃度を設定してしまうと、

RF/DC変換効率を減少させる原因となる。

ドキュメント内 Microsoft Word - 修士論文.doc (ページ 34-39)