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CUTLASS Finland レーダー

第 3 章 観測結果 22

3.2.2 SuperDARN

3.2.2.1 CUTLASS Finland レーダー

3.2.2.1.1 エコーパワー、ドップラー速度、スペクトル幅

図3.37,3.38,3.39はそれぞれ1300UT〜1400UTにFinlandレーダーの特別観測ビームであるビーム4から6で 得られた、エコーパワー、ドップラー速度、スペクトル幅のRTIプロットである。本観測で期待される電離圏 エコーは、図3.36に示したように、EISCATによる加熱領域、すなわちTromso上空と考えられ、Finlandレー ダーではビーム4,5,6のレンジ30付近が相当する。図3.37,3.38,3.39の縦軸は、各ビームとも加熱領域だと 考えられる領域を含むレンジ25からレンジ50となっている。

エコーパワーの観測結果 図3.37においてカラーバーは0dBから30dBまでを30等分割してエコーパワーを 表している。ビーム4、5において電離圏加熱が始まった1300UTから継続的にエコーがあり、さらに1330UT からエコー強度が強くなっているのがわかる。また、ビーム6ではほとんどエコーが得られていないことから、

SUPERDARN PARAMETER PLOT

Hankasalmi: pwr_l 17 Feb 2003

0 30

Power (dB)

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

1300 (048) to 1400 (048)

1300 1310 1320 1330 1340 1350 1400

1300 1310 1320 1330 1340 1350 1400

UT Beam 4

Beam 6 Beam 5

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

図3.37:20032171300UT1400TUFinland HFレーダーの特別観測ビームで得られた エコーパワーのRTIプロット。上から順にビーム4、ビーム5、ビーム6を表している。

横軸は時間で1300UTから1400UTまでの時間帯を表している。縦軸はレンジを表して おり、レンジ25からレンジ50までとなっている。

加熱領域からはずれていると考えられる。

ドップラー速度の観測結果 図3.38においてカラーバーは-300m/sから300m/sを50等分割して速度を表し ている。ビーム4、5において、エコーパワーの上昇が見られた1330UT付近から、レンジ30〜35付近で明瞭 な周期的変動が見られる。この変動はイベント1と比較すると振幅の小さい変動であるが、加熱領域であると 考えられるレンジ29〜34付近でおよそ1時間近くに渡り見ることができる。また、この周期的変動はビーム 6でも少ないながら見ることができる。

SUPERDARN PARAMETER PLOT

Hankasalmi: vel 17 Feb 2003

-300 0 300

Velocity (ms -1)

Ground Scatter 25

30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

1300 (048) to 1400 (048)

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

1300 1310 1320 1330 1340 1350 1400

UT

1300 1310 1320 1330 1340 1350 1400

Beam 4

Beam 5

Beam 6

図3.38:20032171300UT1400TUFinland HFレーダーの特別観測ビームで得られた ドップラー速度のRTIプロット。

スペクトル幅の観測結果 図3.39においてカラーバーは0m/sから200m/sまでを20等分割してスペクトル幅 を表している。エコーパワーの上昇が見えた1330UT付近で高いスペクトル幅が観測されているが、イベント 1に比べ全体的に低い値となっている。これらの3つの観測値から1320UT付近から1400UTに観測されたエ

コーは、EISCATヒーターの加熱による電離圏電子密度擾乱の上昇によって照らし出された電離圏電場脈動を

観測したものであると考えられるため、この時間帯におけるドップラー速度変動の詳細な解析を行う。

SUPERDARN PARAMETER PLOT

Hankasalmi: width_l 17 Feb 2003

0 200

Width (ms -1)

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

1300 (048) to 1400 (048)

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

25 30 35 40 45 50

Range gate

1300 1310 1320 1330 1340 1350 1400

UT

1300 1310 1320 1330 1340 1350 1400

UT Beam 4

Beam 5

Beam 6

図3.39:20032171300UT1400TUFinland HFレーダーの特別観測ビームで得られた スペクトル幅のRTIプロット。

3.2.2.1.2 脈動現象の周波数

図3.40はビーム4、5のRTIプロットで1330UTから1400UTまでを表したものである。縦軸はレンジ25か らレンジ40までとなっている。カラーバーは−300m/s0m/sを40等分割して速度を表しており、レーダー から遠ざかる方向のみになっていることに注意してもらいたい。この図から、周期的な速度変動を見ることが できる。

また、図3.41は同時間帯におけるレンジ30から32までの速度変動を示したものである。この図からも

1340UT付近に周期的な速度変動を見ることができる。これらの速度変動はレンジ29から34までのすべての

レンジで見ることができる。ここで、図3.40において、1340UT付近を境に縦縞構造の傾き、すなわちレンジ 間の位相差が変わっていることが見て取れる。このため、1330UTから1340UTまでと、1340UTから1350UT までに分けて、それぞれに対して周波数解析を行った。

図3.42は上段にビーム4、下段にビーム5のレンジ30から32のスペクトルを表したもので、左側が1330UT

〜1340UT、右側が1340UT〜1350UTのスペクトルになっている。各図において色はそれぞれのレンジ番号を、

括弧内の数字はピーク周波数を示している。どのスペクトルにおいても15mHz付近に明瞭なスペクトルピー

SUPERDARN PARAMETER PLOT

Hankasalmi: vel 17 Feb 2003

-300 0

Velocity (ms -1)

Ground Scatter

26 28 30 32 34 36 38 40

Range gate

26 28 30 32 34 36 38 40

Range gate

Beam 4 1330 (048) to 1400 (048)

1330 1335 1340 1345 1350 1355 1400

UT

26 28 30 32 34 36 38 40

Range gate

1330 1335 1340 1345 1350 1355 1400

UT

26 28 30 32 34 36 38 40

Range gate

Beam 5 1330 (048) to 1400 (048)

図3.40:Finland HFレーダーの特別観測ビーム4(上)とビーム5(下)におけるドップラー速度 RTIプロット。時間幅は1330UT1400UT、縦軸はレンジ25からレンジ40となって いる。

SUPERDARN PARAMETER PLOT

Hankasalmi: vel

17 Feb 2003

Beam 4, ranges 30 31 32

Velocity [10 (m/s)/div.]

Beam 5, ranges 30 31 32

1330 1335 1340 1345 1350 1355 1400

TIME [UT]

Velocity [10 (m/s)/div.]

図3.41:Finland HFレーダーの特別観測ビーム4(上)とビーム5(下)におけるドップラー速度 の時系列データ。それぞれ、レンジ30からレンジ32までを下から順に表している。横軸

は時間で1330UTから1400UTまでの時間帯を表している。縦軸は速度を表している。

クを持ち、観測された現象がPc3-4脈動に分類されることがわかった。

102 103 104 105 106

Beam 4

rng 30 (14.0mHz) rng 31 (14.7mHz) rng 32 (14.4mHz)

rng 30 (16.0mHz) rng 31 (16.4mHz) rng 32 (15.0mHz)

0.001 0.01 0.1

rng 30 (15.3mHz) rng 31 (14.7mHz) rng 32 (13.1mHz)

0.001 0.01 0.1

Finland HF radar Beam 4,5 Feb. 17, 2003, FPE=8

rng 30 (15.4mHz) rng 31 (15.7mHz) rng 32 (16.0mHz)

Beam 5

Frequency [Hz]

102 103 104 105 106

102 103 104 105 106

102 103 104 105 106

0.001 0.01 0.1 0.001 0.01 0.1

1330UT - 1340UT 1340UT - 1350UT

1340UT - 1350UT 1330UT - 1340UT

PSD [(m/s) /Hz]2 PSD [(m/s) /Hz]2

図3.42:Finland HFレーダーの特別観測ビーム4(上)とビーム5(下)におけるレンジ30からレ ンジ32までのドップラー速度のパワースペクトル。左側が1330UTから1340UTまで、

右側が1340UTから1350UTまでの時間帯のパワースペクトルとなっている。

3.2.2.1.3 波数および伝播方向

次に、この脈動の波数および伝播方向について求める。ここで、本イベントでは隣り合う二本のビームで明 瞭な脈動を観測しているため、イベント1と同様にTonegawa and Sato [1987]の方法を用いることによって、レ ンジ間の比較とビーム間の比較から磁気緯度・磁気経度方向の波数を得ることができる。表3.3は周期的な変動 が観測されたレンジの磁気緯度・磁気経度である。図3.43(a)は次数8のAkaike法によって算出した、ビーム4 におけるレンジ31に対するコヒーレンスを上段に、位相を下段に表している。また左側は1330UT〜1340UT のコヒーレンスと位相を、右側は1340UT〜1350UTのコヒーレンスと位相を表している。図3.43(b)は同様の 形式でビーム5について表したものである。この図から、どちらのビーム、どちらの時間帯においてもコヒー レンスが非常によいことがわかる。位相について見てみると、1330UT〜1340UTではレンジが低いほう、すな

表3.3: Finlandレーダーのレンジ30〜32までの磁気緯度・磁気経度 ビーム4 ビーム5

レンジ番号 磁気緯度 磁気経度 磁気緯度 磁気経度

30 66.33 102.36 66.49 103.40

31 66.46 102.30 66.62 103.37

32 66.59 102.25 66.75 103.39

わち低緯度側が遅れ、1340UT〜1350UTではレンジの高いほう、すなわち高緯度側が遅れている。これは、図 3.40で見ることのできた位相の変化を示しており、1340UT頃を境に位相が反転していることがわかった。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

30 31 32 30 31 32

-60 -30 0 30 60

30 31 32 30 31 32

Finland radar Coherency and Phase among range gate

Beam 4 Coherency Phase [degree]

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-60 -30 0 30 60

Range gate number

(a) 1330UT1340UT

30 31 32 30 31 32

30 31 32

Range gate number

30 31 32

Beam 5

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-60 -30 0 30 60

Coherency Phase [degree]

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-60 -30 0 30 60

Finland radar Coherency and Phase among range gate

(b) 1340UT1350UT

図3.43:Finland HFレーダーの特別観測ビーム4のレンジ31に対するレンジ30からレンジ32 でコヒーレンス(上)と位相(下)

図3.44はビーム4に対するビーム5の同レンジにおけるコヒーレンスと位相である。全てのレンジにおいて 高いコヒーレンスがあり、位相が正であるのがわかる。これは、全てのレンジにおいて東側(ビーム5)の位 相が進んでいることを示している。

以上のような関係から、波数を算出する。ここでは、ビーム4のレンジ30とレンジ31、ビーム5のレンジ 30の3点を用いて波数の計算を行った。

図3.43(a)と図3.44から、1330UT〜1340UTにおけるビーム4のレンジ31に対するレンジ30の位相はおよ そ−28、ビーム4のレンジ31に対するビーム5のレンジ31の位相差はおよそ80であることがわかる。表 3.3に示されている各レンジの磁気緯度、磁気経度と式3.1から、以下のような連立方程式が成り立つ。

−28 = (kx,ky){(66.46,102.30)−(66.33,102.36)} (3.2)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

30 31 32

CoherencyPhase [degree]

1330UT - 1340UT 1340UT - 1350UT

16 mHz

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

30 31 32

16 mHz

0 30 60 90 120 150 180

30 31 32

Finland coherency and phase among beam4 and beam5

16 mHz

0 30 60 90 120 150 180

30 31 32

16 mHz

Range gate number

図3.44:Finland HFレーダーの特別観測ビーム4に対するビーム5のコヒーレンス(上)と位 相(位)。それぞれ、等緯度レンジに同士による比較となっている。左側が1330UTから 1340UTまで、右側が1340UTから1350UTまでの時間帯のCoherenceと位相を表してい

る。横軸は比較したそれぞれのレンジを表し、上段がレンジ4、下段がレンジ5となって いる。

上記の式から、磁気緯度方向、磁気経度方向の波数は、それぞれ−265と−109となる。ここで負の波数は磁気 緯度方向では低緯度側の位相が遅れていることを示し、磁気経度方向では西側の位相が遅れていることを示す ことから、1330UT〜1340UTでは低緯度側の位相が遅れ、西側に伝播するPc3-4脈動であることがわかった。

次に1340UT〜1350UTにおける波数を計算する。図3.43(b)と図3.44から、ビーム4のレンジ30とレンジ 31の位相差はおよそ13、ビーム4のレンジ30とビーム5のレンジ30の位相差は70であることがわかる。

これらの位相差から以下の式が成り立つ。

17 = (kx,ky){(66.46,102.30)−(66.33,102.36)} (3.3) 70 = (kx,ky){(66.46,102.30)−(66.62,103.37)}

上記の式から、磁気緯度方向、磁気経度方向の波数は、それぞれ107と−51となる。このため、1340UT〜

1350UTでは、高緯度側の位相が遅れ、西側に伝播するPc3-4脈動であることがわかった。

その他のレンジの組み合わせにおいてもほぼ同様の結果が得られ、磁気緯度方向、磁気経度方向のどちらに おいても高い波数を持つ脈動であることがわかった。