第 3 章 観測結果 22
3.2.4 地上磁場
ここでは、加熱領域からのエコーが観測された1330UTから1400UTを中心に磁場データを見ていく。本イ ベントではEISCATヒーターに近い磁場観測点を対象にし、2002年11月からTromsoに設置されたWEED磁 力計と、IMAGE、SAMNETの解析を行った。各観測点の位置関係は図3.53に示したとおりである。
3.2.4.1 WEED ( Wave Excitation Experimental Diagnostic )
WEED(Wave Excitation Experimental Diagnostic)は2002年11月ごろからEISCATヒーターのあるTromso に設置されたInduction Magnetometerである。サンプリング周期は10.0005Hzである。図3.56はFinlandレー
ダーとIceland Eastレーダーの両レーダーで電離圏電場脈動が観測された1300UT〜1400UTの磁場変動を表し
たものである。データは20.1秒毎の移動平均によって平滑化され、3秒ごとに再サンプリングしている。この
-0.05 0 0.05
-0.05 0 0.05
13:00 13:10 13:20 13:30 13:40 13:50 14:00
TIME [UT]
Weed data comparison smoothing 20.1s
dH/Dt [nT/sec]dD/Dt [nT/sec]
図3.56:2003 年 2 月17 日 1300UT か ら1400UT に Wave Excitation Experimental Diagnostic
(WEED)で 得 ら れ た 磁 場H,D成 分 の 時 系 列 デ ー タ。デ ー タ は20.1秒 ご と の 移 動 平 均 によって平滑化され、3秒ごとにリサンプリングされている。
図において、両成分で周期的な変動を見ることができるが、振幅が非常に小さいことがわかる。図3.57は次数 20のBurg法を用いた1330UT〜1400UTにおける周波数スペクトルである。灰色の帯はFinlandレーダー観測
10-4 10-3 10-2 10-1
0.001 0.01 0.1
Frequency [Hz]
WEED magnetometer at Tromso Power spectrum
PSD [(nT/sec)2 /Hz]
H D
図3.57:次数20のBurg法で求められた、1330UTから1400UTにWEED磁力計で観測された磁 場のパワースペクトル。
されたPc3-4脈動の周波数である13.1mHz〜16.4mHzの周波数帯を示している。H成分において、Iceland East レーダーで観測されたPc5脈動の周期である4mHz〜5mHz付近にわずかにスペクトルピークを見ることがで きる。また、D成分では24mHzに明瞭なスペクトルピークを見ることができる。しかし、Finlandレーダーで 観測されたPc3-4脈動と同じ周波数のスペクトルピークは見ることができない。
このことから、WEEDではFinlandレーダーで観測されたPc3-4脈動と同じ周波数をもつ脈動は観測してい なかったが、Iceland Eastレーダーで観測されたPc5脈動と同じ周波数を持つ脈動が観測していることがわかっ た。また、D成分に24mHzの脈動を観測していることがわかった。
3.2.4.2 IMAGE 磁場観測チェーン
図3.58はIMAGEによって取得された1300UT〜1400UTでの磁場変動を表したものである。1338UT付近か らX成分に周期3分程度の明瞭な脈動があるのがわかる。これはIceland Eastレーダーで4.5mHzの脈動が観測 され始めた時間と一致する。しかしながら、それ以外の脈動成分は両成分においてこの図から見ることができ ない。図3.59は図3.28と同様に次数10のBurg法を用いた1330UT〜1400UTにおける周波数スペクトルであ る。灰色の帯はFinlandレーダーで見ることのできた13.1mHz〜16.4mHzのPc3-4脈動の周波数帯を示してい る。この図から、EISCATヒーターのあるTromso(TRO)からは明瞭なスペクトルピークは見ることはできな いが、Kevo(KEV)、Abisko(ABK)のX成分にFinlandレーダーで観測されたPc3-4脈動とほぼ同じ周波数 のスペクトルピークを見ることができる。このスペクトルピークは両観測点とも、およそ16.3mHzであった。
NAL LYR HOR HOP BJN SOR KEV TRO MAS AND KIL IVA ABK LEK MUO SOD PEL RVK HAN DOB NUR UPS TAR
13:00 13:10 13:20 13:30 13:40 13:50 14:00 TIME [UT]
IMAGE Magnetometer data
X comp. 10.0 nT/div
13:00 13:10 13:20 13:30 13:40 13:50 14:00 TIME [UT]
Y comp. 10.0 nT/div
図3.58:2003年2月17日1300UTから1400UTに、IMAGE磁場観測チェーンによって得られた 地磁気X,Y成分の時系列プロット。上から順に磁気緯度の高い観測点から低い観測点を 表している。縦軸は磁場強度、横軸は時間を表している。
これら二つの観測点はEISCATヒーターに近い観測点であるが、Finlandレーダーで観測されたPc3-4脈動は 南北方向の振動であり、対応する地上の脈動はY成分(東西成分)に現れると考えられることから、これらの 二つの観測点で観測された脈動はFinlandレーダーで観測された脈動とは異なるものであると考えられる。ま た、KEVより低緯度の観測点では17mHz〜20mHz付近にスペクトルピークを持つ脈動を観測していることが わかった。さらに、SORを境にして高緯度では1.5〜2.1mHzのスペクトルピークが、低緯度側では3.2mHz〜
4.3mHzのスペクトルピークを見ることができる。この低緯度側のスペクトルピークの周波数は、Iceland East
レーダーで観測されたPc5脈動の周波数と一致する。D成分においては、やはり低緯度側で17mhz〜20mHzの スペクトルピークを見ることができる。また、ほぼ全ての観測点において2mHz〜3mHzのスペクトルピーク があることがわかった。
以上のことから、IMAGEによる磁場観測では、加熱領域の直下であるTROを含むすべての観測点において、
Finlandレーダーによって観測されたPc3-4脈動と同じ13.1mHz〜16.4mHzの周期をもつ脈動は、観測されてい ないことがわかった。さらに、Iceland Eastレーダーで観測されたPc5脈動と同じ4.5mHzの脈動がSORより 低緯度側の観測点のH成分で観測されていることがわかった。また、H成分ではSORより高緯度側で1.5mHz
〜2.1mHzの、D成分では2mHz〜3mHzのスペクトルピークをもつ脈動が観測されていることがわかった。
0.001 0.01 0.1
NAL LYR HOR HOP BJN
SOR TRO AND
KEV MAS KIL LEK ABK
IVA SOD PEL RVK
Frequency [Hz]
IMAGE Power spectrum 17/Feb/2003 FPE=12
NAL LYR
HOR HOP
BJN
SOR
TRO AND KEV MAS
KIL
LEK
ABK IVA SOD
PEL RVK
0.001 0.01 0.1
X-Comp. Y-Comp.
PSD [(log ((nT) /Hz))/div.]2 10
図3.59:次数10のBurg法によって得られたIMAGE磁場観測チェーンの各観測点における磁場 のパワースペクトル。左がX成分、右がY成分となっている。時間幅は1330UTから 1400UTまでとなっている。灰色の帯はFinland HFレーダーで得られたスペクトルピー
クの周波数である13.1mHz〜16.4mHzを表している。
3.2.4.3 SAMNET 磁場観測チェーン
図3.60は各ステーションで得られた1300UT〜1400UTまでの磁場変動を高緯度から低緯度まで示したもの である。IMAGE同様に磁場の変動からはFinlandレーダー、Iceland Eastレーダーで得られたような周期の変 動を見ることはできないが、KILのH成分で周期3分程度の変動を見ることができる。
図3.61は次数15のBurg法を用いた1330UT〜1400UTにおける周波数スペクトルであり、灰色の帯はFinland レーダーで見ることのできた13mHz〜16mHzの周波数帯を示している。この図において、BORのH成分と
KIL
HAN
NOR
BOR
CRK
YOR
13:10 13:30 13:50
SAMNET Magnetometer chain magnetic data
TIME [UT]
13:10 13:30 13:50
20 [nT/div]
TIME [UT]
図3.60:2003年2月17日1300UTから1400UTにSAMET磁場観測チェーンによって得られた 地磁気H,D成分の時系列プロット。上から順に磁気緯度の高い観測点から低い観測点を 表している。縦軸は磁場強度、横軸は時間を表している。
0.001 0.01 0.1 Frequency [Hz]
SAMNET 17/Feb/2003 H-comp. FPE=15
0.001 0.01 0.1 Frequency [Hz]
KIL
HAN
NOR
BOR
CRK
YOR
KIL
HAN
NOR
BOR
CRK
YOR
H-Comp. D-Comp.
PSD [(log ((nT) /Hz))/div.]2 10
図3.61:次数15のBurg法によって得られたSAMET磁場観測チェーンの各観測点における磁場 のパワースペクトル。左がH成分、右がD成分となっている。時間幅は0440UTから 0510UTまでとなっている。灰色の帯はIceland East HFレーダーで得られたスペクトル
ピークの周波数である16.4mHz〜19.7mHzを表している。
Crooktree(CRK)、York(YOR)のD成分に13mHz〜16mHzのスペクトルピークを見ることができる。しか しながら、これらの観測点はIMAGEのKEVやABKのような加熱領域に近いステーションではない。また、
KILのH成分では4.5mHzの、KIL、CRKのD成分ではそれぞれ2mHzと3mHzのスペクトルピークを見るこ とができる。
以上のことから、SAMNETによる磁場観測では、Finlandレーダーによって観測されたPc3-4脈動と同じ周 期をもつ脈動が3つの観測点で観測されていることがわかった。さらに、2mHz〜4mHzのスペクトルピークを 持つような脈動を観測している観測点もあることがわかった。