第 3 章 観測結果 22
4.3 本研究で得られた HF レーダーのエコーの特異性について
イベント1の観測で得られたような明瞭な電離圏電場Pc3-4脈動の観測例というのは、これまでに報告され ていない。また、本研究では、2002年から2003年にかけて計7回の特別観測を行っているが、本論文で報告 している2例を除いた5例では、そのほとんどが地上反射波であるか、もしくはエコーが得られていなかった。
そのため、本観測で得られたPc3-4脈動が、HFレーダーによって観測される電離圏電場脈動の中で、特異な 現象であるかどうかを議論することは難しい。また、観測例が少ないため、このような明瞭なPc3-4脈動のエ コーが、どの程度の頻度で観測される現象なのかを知ることは難しい。
そこで、CUTLASSレーダーによってしばしば行われている高時間分解能観測のデータを使用して、Pc3-4脈
動が地上で観測されている時間帯におけるHFレーダーの観測データを使用して、地上磁力計で観測される古
典的なPc3-4脈動が、HFレーダーによってどのような電離圏電場変動として観測されるのかを調べた。
CUTLASSレーダーによる高時間分解能観測は、本観測のような衛星との同時観測ではないが、IMAGEの
Lonyearbyen(LYR)上空を狙ったIceland Eastレーダーのビーム5番とFinlandレーダーのビーム9番によっ て行われており、積分時間は6秒となっている。これは、ステレオモードのチャンネル2を利用したもので、
通常のコモンモードと同時に行われている。2002年に行われた高時間分解能観測は94例あり、観測を行って いる時間帯は様々である。この中で、一般的にPc3-4脈動が頻繁に観測されると考えられている0600MLTから
1800MLTまでの昼側領域で観測を行っているのは38例であった。この38例のうち、地上磁場観測点における
磁場データで確認したところ、古典的なPc3-4脈動は19例確認された。この19例についてHFレーダーで観測 され電離圏エコーとIMAGEで観測された磁場データを調べた結果、全ての例において、地上でPc3-4脈動が 観測されている領域上空からのエコーは、全く得られていないか、もしくは地上反射波であることがわかった。
図4.20は2002年5月19日に行われた高時間分解能観測の例である。左側にFinlandレーダーのビーム9で得
NAL LYR HOR HOP BJN SOR KEV TRO MAS AND KIL IVA ABK LEK MUO LOZ KIR SOD PEL RVK OUJ HAN DOB NUR UPS TAR
06:00 06:30 07:00 07:30 08:00
TIME [UT]
2002/5/29
IMAGE Magnetometer chain component
X comp. 5.0 nT/div
SUPERDARN PARAMETER PLOT
Hankasalmi: vel 29 May 2002
-800 0 800
Velocity (ms-1)
Ground Scatter 0600 0620 0640 0700 0720 0740 00
UT 0
15 30 45 60 75
Range gate
Beam 9 0600 (149) to 0800 (149)
図4.20:地上で明瞭なPc3脈動が観測されている期間の、Finaldレーダーの高時間分解能観測例。
左側がFinlandレーダーの特別観測ビーム9、右側がIMAGE磁力計によって得られた Pc3-4脈動
られたドップラー速度を、右側にIMAGE磁力計で得られた磁場変動を示している。0600UT〜0800UTで明瞭
なPc3-4脈動が地上IMAGE磁力計の複数の観測点で観測されているのが確認できる。しかしながら、Finland
レーダーでは、Pc3-4脈動を観測している複数の観測点の上空である、レンジ20付近からのエコーがほとんど
例においても同様の結果が得られている。また、本観測で得られているような明瞭な電離圏電場のPc3-4脈動 は、38例中ひとつも確認されなかった。
このため、イベント1で得られた明瞭なPc3-4脈動は、HFレーダーの観測条件が整った下でPc3-4脈動が 発生しているという、稀な観測例であった可能性を示唆している。