培養液交換にて CEP を除去し、その後の細 胞分画の変化を観察した。CEP(1μg/ml)
を除去したことにより、24 時間後には G1期の 図 3 HSC4 細胞の増殖に及ぼすCEPの影響
HSC4 細胞を播種後24 時間ごとにシャーレあたり の細胞数を測定した。
図 4 播種後の HSC4 細胞の細胞分画の変化 HSC4 細胞を播種後 24 時間ごとにエタノール 固定後 PI にて染色後フローサイトメーターにて 得られた DNA ヒストグラムから細胞分画を算 出した。
細胞が減少し、S 期細胞の分画が増加してい た。その後、細胞の分画は一定な状態に戻っ た。
5 CEP(5μg)添加後の細胞分画の変化 図7は、CEP(5μg)添加後の細胞分画の変 化を示す。CEP の添加後には G1期が急激に 増 加 し、 処 理 後 3 日 に は 79% に 達 し た。
S 期細胞、G2期細胞の分画は減少した。
図 6 CEP(1μg/ml)除去後のHSC4 細胞の 細胞分画の変化 比例増殖中の HSC4 細胞を CEP(1μg/ml)で 5 日 間処理し、処理後 24 時間ごとの細胞分画を求めた。
図 7 CEP(5μg/ml)添加後の HSC4 細胞の細胞分画の変化 HSC4 細胞を播種後 2 日目に CEP(5μg/ml)を 添加後 24 時間ごとの細胞分画を求めた。
考 察
セファランチン(CEP)の薬理作用として 細胞膜の安定化に作用したり、細胞膜に存在 する酵素の阻害や多剤耐性細胞の薬剤排泄ポ ンプの阻害等が報告されている。しかしなが ら、この薬剤を持続的に投与することによる 細胞動態に対する影響は明確ではない。
比例増殖中の HSC4 細胞の増殖は CEP を 添加すると5μg/ml の濃度では 1 日後から抑 制され、また、CEP(1μg/ ml)の処理でも細 胞増殖が徐々に抑制され、添加後 4 日には増 殖は見られなくなった(図 3)。したがって、
CEP は細胞増殖を抑制する作用があること が明らかとなった。
CEP は細胞増殖を抑制する作用が見られ ることから、細胞分画のどの時期に作用する のかを検討した。G1、S、G2/M の分画はコ ントロールではほぼ同じ割合であるが(図 4)、 CEP(5μg/ml)で は、 添 加 後 急 激 に S 期、
G2/M 期細胞の分画が減少をし、投与後 3 日 目には79%にも達した(図 7)。CEP(1μg/ml)
図 5 CEP(1μg/ml)添加後の HSC4 細胞の細胞分画の変化 HSC4 細胞を播種後 48 時間に CEP(1μg/ml)
添加後 24 時間ごとに細胞を固定後フローサイト メーターにて細胞分画を求めた。
Section Ⅳ一般演題・示説 では比較的ゆっくりとG1期分画が増加し、S、
G2/M 期分画が減少した(図 5)。このことは、
この薬剤により、細胞の周期移行に必要な反 応(遺伝子の発現)がこの薬剤で阻害され、
進行が G1期で止まり、G1期に集積すること を示している。
薬剤を培養液から取り除くと、24 時間後 には 2 倍以上の細胞数となり(図 3)、G1期 に集まっていた細胞は急速に S 期、G2 /M 期 に進行したことを示している。CEP を取り除い た後の細胞の増殖曲線部分から倍加時間を求 めると 16.8 時間となり S 期、 G2/M 期の時間 が同じであるとすると、16.8 時間から S 期、
G2/M 期の時間を差し引くと、細胞は DNA 合成 1.3 時間前に停止していたことになる(図 8)。 したがって、DNA 合成約 1.3 時間前に発 現する代謝(遺伝子)を明確にすることによ り CEP の作用機構がより明確になると考え られる。
要 旨
ヒト口腔癌 HSC4 細胞を使用し、細胞動態 に対するビスコクラウリン型アルカロイド
(セファランチン)(CEP)の作用を検討した。
1 比例増殖中の細胞は倍加時間 36 時間で、
その細胞周期分画はほぼ一定であり、G1 期 18.5 時 間、 S 期 12.4 時 間、G2/M 期 3.1 時 間であった。
2 比例増殖中の細胞に CEP を添加し、細胞 増殖に及ぼす影響を観察した。CEP(1μg)
では細胞増殖がゆっくりと CEP(5μg)で は急激に抑制された。
3 CEP(1μg)の抑制を解除すると 24 時間 後には 2 倍以上に細胞が増殖することが 観察された。
4 比例増殖中の細胞に CEP(1μg)を添加し 細胞周期の分画の変化を観察した。CEP を添加すると G1期分画はゆっくりと増加 し、S 期、G2 /M 期が減少した。
5 比例増殖中の細胞に CEP(5μg)を添加す ると G1期分画が急激に増加し、 S 期、 G2/ M 期が減少した。
以上のことから H S C 4 細胞への CEP の作 用起点について考察した。
図 8 セファランチンの細胞動態に及ぼす作用機点 HSC4 細胞の倍加時間は36 時間であるが、セファ ランチンを投与すると DNA 合成前 1.3 時間の G1 期に集積する。
Section Ⅳ一般演題・示説
Section Ⅳ 一般演題・示説
大分大学医学部 麻酔科学講座
日下淳也、萩原 聡、古賀寛教、長谷川 輝、岩坂日出男、野口隆之
3)腎虚血再還流障害に対するセファランチンの有効性の検討
急性腎障害は、集中治療領域において頻繁 に認められる病態の一つであるが、原因の 代表的なものとして、腎虚血再還流障害が挙 げられる。一方セファランチンは、タマサキ ツヅラフジから抽出したアルカロイドである が、最近の研究から、膜の安定化や抗アレル ギー作用など様々な作用を有することが証明 されている。今回我々は、セファランチン投 与により、腎虚血再還流障害を抑制できるか 否かを検討したので報告する。
雄性 Wistar 系ラットを使用。無作為にセ ファランチン (10mg/kg) または生理食塩水を 皮下注射した後、全身麻酔下に右腎を摘出し、
左腎動・静脈を 60 分間クランプしモデルを 作成した。再還流 24 時間後に犠死させ、血 液検査にてBUN,Crの測定を行った。さらに、
再還流 24 時間後の組織学的変化を HE 並び に電子顕微鏡を使用して検討した。また、脂 質が活性酸素種(ROS)により障害されるこ とで生じ、虚血再還流障害時の ROS の指標 として有用である組織中マロンジアルデヒド
(MDA)の測定も併せて行った。
腎虚血再還流障害に伴うBUN , C r の上昇
はセファランチン投与群で有意に抑制され た。また、腎虚血再還流障害による腎組織の 出血や尿細管細胞の脱落、ミトコンドリア膨 化等の破壊性変化がセファランチン投与群で 抑制された。さらに、腎虚血再還流障害によ り上昇した MDA をセファランチン投与群で は有意に抑制できた。また、セファランチン 投与群で、ミトコンドリアの形態学的変化や 組織中 MDA の割合が抑制されていたことか ら、セファランチンが ROS の抑制を介して 腎虚血再還流を抑制する機序が示唆された。
今回の研究により、腎虚血再還流のメカニ ズムとして、ROS の関与が示唆された。また、
セファランチンは腎虚血再還流障害の改善効 果があることが示された。以上のことから、
セファランチンは虚血再還流障害における病 態改善の新たな薬剤となるかもしれない。
※詳細につきましては J Surg Res. 2010 Feb 11. Kusaka J, Hagiwara S, Hasegawa A, Kudo K, Koga H, Noguchi T: Cepharanthine Improves Renal Ischemia-reperfusion Injury in Rats. をご参照ください。
Section Ⅳ一般演題・示説
Section Ⅳ 一般演題・示説
山口大学大学院医学系研究科 情報解析医学系専攻 病理形態学分野1)、 山口大学医学部附属病院 総合診療医学2)、山口大学名誉教授3)
崔 丹1)、河野裕夫1)、小野咲弥子2)、石原得博3)
4)血小板減少モデルマウスにおけるセファランチンの効果
はじめに
末梢血中の血小板減少の機序に関しては 1)血小板生成の阻害、 2)血小板破壊の亢進、
3)血小板分布の異常が知られている1)。 動物実験では抗血小板抗体をマウスなどに 一回注射すると、数時間で血小板が急激に減 少し、血小板数はほぼ 0 となるという事実が すでに知られている。
近 年、 タ マ サ キ ツ ヅ ラ フ ジ(Stephania Cepharantha Hayata)から抽出されたビスコ
クラウリン型アルカロイド製剤セファランチ ン(Cepharanthin、以下 Cephと略する。化研 生薬)の大量投与で ITP 患者や再生不良性貧 血の患者の血小板を増加することが報告され ている2~4)。
今回、マウス血小板減少症モデルを用いて Cepharanthin の効果を検討した。
材料および方法
1.動物
7 ~ 8 週齢 ICRメスのマウス、体重 25~30g。
1 群のマウスは10 匹とした。NZ whiteウサギ、
体重 2.5kg を用いた。
2.ウサギ抗マウス血小板抗血清の作成 健常の 8 週齢のマウス 10 匹より血小板を 回収し(1 回免疫で 1 匹ウサギの使用量 )、
PBS で 混 ぜ 懸 濁 液 を 作 り、1:1 の 割 合 で adjuvant complete freund (DIFCO)アジュ バントと混ぜ、エマルジョンにした。最終回 免疫の 2 週間後、ネンブタールの麻酔下で心 臓からウサギの全採血を行い、分離した血清 を抗血小板抗血清(APS)として次の実験に 使用した。
3.APS の投与によるマウス血小板減少効 果の検討
グループA:各濃度(0.2 ml, 0.1 ml, 0.05 ml)の APS をそれぞれのマウスの腹腔内に1回投 与後、経時的に血小板の変化を観察した。
4.血小板減少マウスにおける Ceph の効果 グループ B:Ceph 0.1mg, 0.5mg, 2.0mg を それぞれ腹腔内に 1 日 1 回、3 週間連続投与 を行い、血小板数の変化を検討した。
グループ C:Ceph 0.5 mg を連日腹腔内に 1 週間予備投与後、0.1 ml APSを1 回腹腔内に 投与し、その後Ceph 0.5 mgを継続に投与した。
グループ D:Ceph 0.5 mg を連日腹腔内に 1 週間予備投与後、0.1 ml APS を1回腹腔内 に投与し、翌日より0.005 ml より毎日 0.005 ml ずつ増量して APS を連日投与した。併せて Ceph 0.5 mg を連続3週間投与した。対照と して 0.1 ml APS のみを上記スケジュールで マウスに投与した。
グループ D を除き各群の対象として健常 マウスに 0.1 ml の正常ウサギの血清を腹腔内 に投与した。
APS または Ceph 投与前、投与後 4 時間、
24 時間および 3、 4、 5、 7、 9、 12、 14、 17、 21 日に眼底静脈叢から採血し、血小板数をカウ ントした。
結 果
1. 各濃度の APS 投与による血小板の経時的