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C/C 群と T アレルキャリア群における⺟親の受容性と灰⽩質体積の相関の⽅向性の相違に

6. 考察

6.4. C/C 群と T アレルキャリア群における⺟親の受容性と灰⽩質体積の相関の⽅向性の相違に

本研究で確認された視床と⼤脳基底核の灰⽩質体積に対するrs1360780と⺟親の受 容性の交互作⽤はdisordinal interaction(ある群の独⽴変数と従属変数の相関と、もう

⼀⽅の群の独⽴変数と従属変数の相関が異なる⽅向を⽰すタイプの交互作⽤)であっ た。すなわち、C/C群の場合は⺟親の受容性が⾼いほど当該領域の灰⽩質体積が⼩さ いのに対し、Tアレルキャリア群の場合は⺟親の受容性が⾼いほど当該領域の灰⽩質 体積が⼤きかった。この結果と類似したdisordinal interactionを⽰す知⾒として、Rabl et al. (2014)132)が参照される。Rablらは精神障害リスクに関与する遺伝⼦多型である カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ遺伝⼦のrs4680とセロトニントランスポー

ター遺伝⼦の5-HTTLPRがストレスフルなライフイベントとの交互作⽤によって海

⾺の体積に与える効果を検討した。その結果、精神障害リスクが低いとされるメジャ ーアレル(rs4680のValアレル・5-HTTLPRのLongアレル)を持つ群ではストレスフ ルな経験が多いほど海⾺体積が⼤きくなり、精神障害リスクが⾼いとされるマイナー アレル(rs4680のMetアレル・5-HTTLPRのShortアレル)を持つ群ではストレスフル な経験が多いほど海⾺体積が⼩さいことが明らかとなった。

このようなdisordinal interactionが⽣じる⽣物学的なメカニズムを説明することは 現時点では困難である。しかし著者は、先⾏研究の主張をもとに、本研究で得られた disordinal interactionについて⼆つのメカニズムの可能性を推定している。⼀点⽬は、

ポジティブな養育が影響する神経発達過程がrs1360780の遺伝⼦型によって異なる可 能性である。Sheikh et al. (2014)133)は、幼児の脳構造に対するポジティブな養育とコ ルチゾールレベルの交互作⽤を検討した。その結果、3歳時点でのコルチゾールレベ ルが⾼かった群では6歳時点での前帯状⽪質のFAとポジティブな養育が負相関を⽰

した⼀⽅で、コルチゾールレベルが低かった群では同領域のFAとポジティブな養育 が正相関を⽰した。この結果からSheikhらは、ポジティブな養育が発達期の脳構造に 与える効果は⽣まれ持ったHPA系の機能性によって異なるのではないかという仮説 を提唱している。この仮説に則れば、本研究のC/CとTアレルキャリアは、⺟親の受 容性が充分でない状況下において⽰す神経発達過程が異なるのではないかと推察さ れる。たとえばC/Cであれば、⺟親の受容性が不⼗分な場合にシナプスの刈り込みが 阻害されることで視床や⼤脳基底核の灰⽩質体積が⼤きくなるのかもしれない。⼀⽅

Tアレルキャリアであれば、⺟親の受容性が不⼗分な場合にシナプス新⽣が阻害され ることで当該領域の灰⽩質体積が⼩さくなるのかもしれない。⼆点⽬は、FKBP51が 神経発達に与える効果がrs1360780の遺伝⼦型によって異なる可能性である。

Fkbp5

ノックアウトマウスを⽤いた近年の研究により、FKBP51がシナプス可塑性と⻑期増 強に関与する可能性が報告されている134)。この報告によると、

Fkbp5

ノックアウトマ ウスでは、興奮性シナプスの活動低下、グルタミン酸受容体の発現量減少、海⾺のγ アミノ酪酸の増加が⾒られる134)。rs1360780のTアレルは、ストレスから回復する段 階ではコルチゾールレベルが⾼いが、ストレスを受けていない平常状態でのコルチゾ ールレベルはCアレルと差がないことが明らかにされている135)。したがって、⺟親の 受容性が⾼い状況では、Tアレルのコルチゾールレベルが適正に維持されやすいと⾔

える。TアレルはFKBP51の発現量が多いこと97)と総合すると、ストレスの少ない環境 下では、コルチゾールレベルはTアレルの神経発達に影響しないが、FKBP51がシナ プスの増⼤を促進する可能性が考えられる。⼀⽅のCアレルはFKBP51の発現量が過 剰ではないため、FKBP51がシナプスの発達に顕著な影響を及ぼさない可能性も考え られる。

以上より、ポジティブな養育とFKBP51が神経発達に与える効果の相違が、

rs1360780の遺伝⼦型によって⺟親の受容性と視床や⼤脳基底核の灰⽩質体積の相関 の⽅向性が異なることの背景として考えられる。もっとも、本研究によってこのよう な神経発達過程の相違を確かめることは不可能であり、上述の説明は憶測の域を脱し ていない。rs1360780とポジティブな養育の交互作⽤が脳構造に与える効果について

の神経・分⼦メカニズムを明らかにするためには、更なる研究の発展が必要である。

6.5. 有意区間における T アレルキャリア群と C/C 群の灰⽩質体積の差に関する考

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