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6. 考察

6.8. 本研究の限界点

本研究において留意すべき限界点は4点ある。1点⽬は、脳構造に対する遺伝・環境 交互作⽤を検討する研究としてはサンプルサイズが⽐較的⼩さいことである。この種 の研究では500以上のサンプルが必要であるという⾒⽅もあるため27)、今後はより⼤

規模なプロジェクトとして、精神障害リスクや脳に対する遺伝要因と規範的な養育の 交互作⽤効果を検討していく必要がある。

2点⽬は、本研究が⾏動指標のデータを持たないことである。本研究は脳構造とい う中間表現型に対するrs1360780と⺟親の受容性の交互作⽤効果を明らかにしたが、

⾏動上のうつ病傾向やストレス耐性といった表現型に対する効果は不明である。その ため、⺟親の受容性によるC/C群とTアレルキャリア群の視床と⼤脳基底核の灰⽩質 体積の差がどのような⾏動上の精神障害リスクの基盤となるかを⽰すことができな い。今後は脳構造を媒介因⼦として、rs1360780と⺟親の受容性の交互作⽤が⾏動に 与える効果を検討する必要がある。

3点⽬は、養育に関するデータが不⼗分であることである。受容性の低い⺟親のも とで⼦どもが虐待を受けている可能性があるが、本研究では対象者の被虐待経験のデ ータを持たないため、虐待の有無を確かめ、その影響を解析から除外することができ ない。また、本研究は⺟親の受容性という養育の⼀側⾯のみを扱っているが、実際の 養育には過保護さ、厳しさ、⽗親の養育態度など、様々な要因が複雑に絡み合う。本 研究で⽤いた尺度を、⺟⼦関係のポジティブな側⾯を表す3項⽬(「⼦どものよいと ころを、褒めるようにしている」「この⼦のことを、誇りに思う」「この⼦と話してい ると楽しい」)とネガティブな側⾯を表す2項⽬(「この⼦の⽋点ばかりが⽬につく(逆 転項⽬)」「⼦どもが何を考えているのか、ほとんど分からない(逆転項⽬)」)に分け ることで、⺟親の受容性の多⾯性を加味した解析を⾏うことも理論上は可能である。

しかしながら項⽬数が減少することで尺度の信頼性が損なわれるため、妥当な結果を 得られない可能性がある。したがって今後の研究では、養育に関わるあらゆる要因を 総合的に評価した指標を作り、遺伝要因との交互作⽤の検討に⽤いることが必要であ

る。

4点⽬は、本研究が横断研究であるために、rs1360780と⺟親の受容性の⻑期的な効 果が不明な点である。⼩児期・⻘年期の⺟親の受容性とrs1360780の遺伝⼦型の交互 作⽤が発達期を過ぎた後の脳構造にどのような差異をもたらすか、縦断研究による検 討が必要である。

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