関数空間
L
1 に属する関数f(x)
のノルムを|| f || = || f ||
1=
Z| f (x) | dx (4.16)
で定義するとき、
L
1 はノルム空間である。この空間での零要素0
は殆どいたるところで0
であ る関数である(
定理2.5 (
節2.3)
参照)
。[三角不等式の導出]f(x)と g(x)がL1に属するとき、
||f+g||= Z
|f(x) +g(x)|dx≤ Z
|f(x)|dx+ Z
|g(x)|dx=||f||+||g||
が成り立つ。 2
節
1.2
において、空間 Rn の点集合A
についていくつかの言葉の定義をした。ここでノルム 空間に関して、その言葉はそのまま使えることに注意する。ノルム空間E
の要素a ∈ E
のまわ りの半径δ
の開球B(a, δ)
は|| x − a || < δ
を満たすx ∈ E
の集合であり、空間E
の部分集合A
の要素の列{ x
k}
∞k=1 にたいし、x
が存在して、k→∞
lim || x
k− x || = 0 (4.17)
が成り立つとき、その列は
x
に収束し、x
はA
の集積点である。補助定理4.3 {xk}∞k=1 が xに収束するとき、||x||<∞、||x||= limk→∞||xk|| が成り立つ。
[証明] ||x|| < ∞ は、||xk−x|| < ǫ のとき、||x|| ≤ ||xk||+||x−xk|| < ||xk||+ǫ による。
||x||= limk→∞||xk||は、そのとき、| ||x|| − ||xk|| | ≤ ||x−xk||< ǫによる。 2
Cauchy
列も同様に定義される。すなわち、{ x
n}
∞n=1 は、任意のǫ > 0
にたいしてN ∈
N が 存在して、n ∈
N,m ∈
N,n > N , m > N
のとき、| a
n− a
m| < ǫ
が成り立つときに、Cauchy
列 である。収束列はCauchy
列であることは、数列の場合と同様に証明されるが、Cauchy
列がその 空間の要素に収束することは保証されない。ノルム空間
E
は、そのCauchy
列がすべてE
の要素に収束するとき、完備(complete)
であ るといい、その空間は Banach 空間といわれる。ノルムが内積で定義されているとき、
Banach
空間は Hilbert 空間といわれる。数列空間
l
1, l
∞, l
p,
関数空間C , L
1 はBanach
空間であり、数列空間l
2 はHilbert
空間であ ることを次節で示す。4.2. BANACH 空間 とHILBERT空間の例
49
定理 4. 1p
はp > 1
の実数であるとする。数列空間l
1,l
∞,l
p はBanach
空間であり、数列空間l
2 はHilbert
空間である。また、n
次元ベクトル空間はノルムを(4.7)
の||
x||
1 または||
x||
∞ と して、または(4.8)
の||
x||
p としてBanach
空間であり、ノルムを(4.7)
の||
x||
としてHilbert
空 間である。[lp の完備性の証明]証明は 2つのステップから成る。ǫは任意の正数とする。
[ステップ 1] この空間の Cauchy 列 {u(n)}∞n=1 を考える。u(n) = (u(n)1 , u(n)2 , ...) とすると、
N ∈Nが存在して、n > N,l > N のとき、任意のk∈Nにたいして
|u(n)k −u(l)k | ≤(
∞
X
k=1
|u(n)k −u(l)k |p)1/p=||u(n)−u(l)||< ǫ (4.18) であるから、数の列{u(n)k }∞n=1 はCauchy列である。したがって、それは収束する。その極限 値をuk とすると、u= (u1, u2, ...)が定まる。
[ステップ2]ここで、u(n)→u,u∈lpを示す。N はステップ1のものとする。任意のK∈N にたいし、n > N のとき、
(
K
X
k=1
|u(n)k −uk|p)1/p<2ǫ (4.19)
となることが下に示される。これにより、
||u(n)−u||<2ǫ (4.20)
が成り立つ。これは、u(n)−u∈lp, u=u(n)+u−u(n)∈lp であり、u(n)→uを示す。 2 [(4.19)の導出]L∈N を、l > Lのとき 1≤k≤K にたいし|u(l)k −uk|< ǫ/K1/p となるよ うに選ぶ。n > N,l > N,l > Lのとき、
(
K
X
k=1
|u(n)k −uk|p)1/p ≤ (
K
X
k=1
|u(n)k −u(l)k |p)1/p+ (
K
X
k=1
|u(l)k −uk|p)1/p <2ǫ (4.21) が成り立つ。ここで、真ん中の第1項は||u(n)−u(l)||< ǫより小さいことを用いた。 2 [l2,l1 の完備性の証明]上の証明でp= 2, p= 1 と置けばよい。 2 [l∞の完備性の証明]この場合には、(4.18)の真ん中の項をsup1≤k<∞|u(n)k −u(l)k |で、(4.19) で、左の項をsup1≤k≤K|u(n)k −uk| で置き換え、(4.19) の導出でも同様な置き換えを行い、
ǫ/K1/p を ǫにすればよい。(4.19)に対応する式が任意のK∈Nで成り立つので、その式か ら||u(n)−u||∞<2ǫが結論される。 2 定理 4. 2 関数空間
C (e)
は、それに属する関数f (x)
のノルムを|| f || = || f ||
∞= sup
x∈e| f (x) |
と してBanach
空間であり、関数空間C
n(e)
は、その要素f (x)
のノルムを|| f || = sup
0≤k≤n|| f
(k)||
∞として
Banach
空間である。[C(e)が Banach空間であることの証明]
{fl(x)}∞l=1 が Cauchy列であるとする。任意のǫ > 0 にたいして、N ∈N が存在して、
l > N,m > N のとき、すべてのxで
|fl(x)−fm(x)| ≤ ||fl−fm||< ǫ (4.22) であるから、すべてのxで数列{fl(x)}∞l=1はCauchy列であり、収束する。極限値をf(x)と する。
このとき、補助定理 1. 9によりすべてのxで
|fl(x)−f(x)|<2ǫ (4.23)
が成り立つので、連続関数fl(x)は f(x)に一様収束する。したがって、定理1.5 (節 1.4)に より、f(x)は連続である。このとき、||fl(x)−f(x)||<2ǫ となるので、fl(x)−f(x)∈ C(e) となり、f(x) =fl(x) +f(x)−fl(x)∈ C(e)となる。補助定理4. 3 により||f||<∞が示さ
れる。 2
[Cn(e)がBanach 空間であることの証明へのヒント]上の空間C(e)にたいする証明で、ノル
ム||fl−fm||,||fl||, ||f||はそのままとし、関数fl(x),fm(x),f(x)をすべてfl(k)(x),fm(k)(x), f(k)(x)で置き換える。[ヒント終わり]
定理 4. 3 関数空間
L
1 に属する関数f (x)
のノルムを|| f || = || f ||
1=
R| f (x) | dx
で定義すると き、L
1 はBanach
空間である。[完備性の証明]{fn(x)} が Cauchy列であるとする。正整数m1, m2, ... をm1< m2 < ...で あり、n > mk のとき
||fn−fmk||<2−k (4.24)
となるように選ぶ。このとき、
Z
|fmk+1(x)−fmk(x)|dx=||fmk+1−fmk||<2−k (4.25) となる。したがって、
X∞
k=1
Z
|fmk+1(x)−fmk(x)|dx≤1 (4.26)
となり、Leviの定理の系(節 2.2)により、級数 fm1(x) +
∞
X
k=1
(fmk+1(x)−fmk(x))
は可積分関数にa.e.で収束する。これは、関数列{fmk(x)}∞k=1 がa.e. で収束する可積分関数 の存在を保証する。その関数をf(x)と書くと、それはL1 に属する。ここで、可積分関数の 列{fmk(x)−f(x)}∞k=1にLebesgueの定理の拡張を適用して||fmk−f|| →0が示される。次 に、任意のǫ >0 にたいして、r を2−r< ǫ/2 であり、||fmr−f||< ǫ/2 となるように選ぶ。
このとき、n > mrで
||fn−f|| ≤ ||fn−fmr||+||fmr −f||< ǫ
となる。これは||fn−f|| →0を示す。 2 上で||f||∞, ||f||1 という記号を用いた。これは||f||p = [R
|f(x)|pdx]1/p とする記号である。
ここで、f(x) は p > p1 のとき |f(x)|p が有界な可測集合 eで可積分であるような連続関数 であるとする。このとき、p→ ∞で ||f||p は||f||∞= supx∈e|f(x)| になることを確かめる。
M = supx∈e|f(x)|とする。任意のǫ >0にたいして |f(x)|> M−ǫである点の測度が δで あるとすると、
||f||p≤M m(e)1/p, ||f||p>(M −ǫ)δ1/p
となる。ここで、p→ ∞とするとM−ǫ≤ ||f||∞≤M となるので、ǫ→0として||f||∞=M を得る。