[証明の準備]f(x)がx > Rおよびx <−Rで0に等しく、C(R)に属するときの証明を行う。
このとき、f(x)は一様連続であるから、任意の ǫ >0 にたいしδ >0が存在して 0< r < δ を満たす任意のr にたいし, |f(x+r)−f(x)|<p
ǫ/(2R)となる。したがって、(4.38) が成
り立つ。 2
[証明]与えられたǫ >0にたいし、R >0をR∞
R |f(x)|2dx+R−R
−∞|f(x)|2dx < ǫ/18となるよう に選ぶ。さらに、C(R)の関数g(x)を、x > Rおよびx <−Rで0に等しく、||f−g||2< ǫ/9 となるように選ぶ。x∈Rの関数fr(x),gr(x)をfr(x) =f(r+x),gr(x) =g(r+x)とする。
証明の準備により、δを 0< r < δのとき||gr−g||2< ǫ/9となるように選ぶことができるの で、このとき、
||fr−f|| ≤ ||fr−gr||+||gr−g||+||g−f||<2ǫ1/2/3 +ǫ1/2/3 =ǫ1/2 (4.39) となる。すなわち、||fr−f||2< ǫとなる。 2
4.4. 合成関数
55
[証明]f(x)が階段関数{φn(x)}の非減少列の極限であり、g(t)が正値(非負値)のL1(R)の 関数である場合の証明をする。ここで、g(x)を、正値(非負値)の連続関数ψ(x)で||g−ψ||1= R∞−∞|g(x)−ψ(x)|dx が小さくなるように近似する。このとき、
hn(x) = Z ∞
−∞
φn(y)g(x−y)dy, h∗n(x) = Z ∞
−∞
φn(y)ψ(x−y)dy (4.44)
とすると、いずれもxの連続関数となる。証明の準備のg(x)をψ(x)とすると、(4.43) によ り、有限区間(a, b)にたいし
Z b a
h∗n(x)dx≤ ||φn||1||ψ||1≤ ||f||1(||g||1+||ψ−g||1) (4.45) が得られる。Cn= supy∈(−∞,∞)|φn(y)|と置くと、(4.44)により|hn(x)−h∗n(x)| ≤Cn||g−ψ||1
が成り立ち、
Z b a
hn(x)dx− Z b
a
h∗n(x)dx
≤(b−a)Cn||g−ψ||1 (4.46)
となる。||g−ψ||1は任意に小さく取れるので、(4.45)と(4.46)から(4.44)で定義されるhn(x)
にたいし(4.43) が、任意の(a, b)にたいして得られる。
ここで、証明の準備の(4.43)以下の議論を適用して証明を終える。 2 定理 4. 9
f (x)
とg(x)
はR で局所可積分であり、次の3
つの条件のいずれかを満たすとする。(1) f (x)
またはg(x)
がコンパクトな台をもつ。(2) f (x)
とg(x)
がともに左側で有界な台をもつ。(3) f (x)
とg(x)
がともに右側で有界な台をもつ。このとき、
(4.40)
で与えられる合成関数h(x)
はR で局所可積分である。すなわち、その関 数h(x)
は任意の有限区間(a, b)
で可積分である。さらに、h(x)
は、条件(1), (2), (3)
に応じ、コンパクトな台、左側で有界な台、右側で有界な台をもつ。
[条件(1)の場合の証明] 有限区間(a, b)でのh(x)にたいし、定理4.8の証明に従う。f(x)の 台が有限区間[c, d]であるとするときには、(4.44)の被積分関数のg(x−y)が0 でない範囲 はa≤x≤b, c≤y≤d, a−d≤x−y≤b−c のみである。したがって、(4.43)で ||g||1 を Rb−c
a−d|g(x)|dxとした式が得られる。また、g(x)の台が有限区間[c, d]であるとするときには、
||f||1 をRb−c
a−d|f(x)|dxとした式が得られる。
これからは、証明の準備の(4.43)以下で、hn(x),h(x),φn(x)g(x−y)を、それぞれに区 間 (a, b)の特性関数χ(a,b)(x) を掛けたもので置き換えることにより、h(x) を (4.40) として
h(x)χ(a,b)(x)が可積分であることが示される。 2
[条件(2)の場合の証明] f(x),g(x)の台がそれぞれ[cf,∞), [cg,∞)であるとする。このとき f(y)g(x−y)が 0でない範囲はa≤x≤b, cf ≤y,cg ≤x−y ≤b−cf, y≤b−cg のみであ る。したがって、(4.43)で||f||1を Rb−cg
cf |f(x)|dx とし、||g||1 をRb−cf
cg |g(x)|dx とした式が
得られる。以下は、前の証明と同様である。 2
次の例でガンマ関数Γ(z)とHeaviside の階段関数 u(x) を用いる。Γ(z)はRez >0 の複
素数zにたいしEulerの積分表示
Γ(z) = Z ∞
0
tz−1e−tdt (4.47)
で与えられる。u(x)は x∈Rの関数で u(x) =
1, x >0,
0, x≤0 (4.48)
である。なお、任意の関数f(x)にたいし、x≤0のときf(x)u(x) = 0 とする。
例 4. 4.2 f(x)u(x−a) が R で局所可積分であるとき、正の実数 q にたいして、q 次の Riemann-Liouville非整数回積分(fractional integral) aDR−qf(x)が、x > a にたいして
aDR−qf(x) = 1 Γ(q)
Z x a
(x−y)q−1f(y)dy (4.49)
で定義される。右辺は Γ(q)1 xq−1u(x)とf(x)u(x−a)の合成関数である。定理4.9 (条件(2))によ り、この積分は局所可積分である。また、正の実数pにたいして、p次のRiemann-Liouville非 整数回微分(fractional derivative)aDRpf(x)が、x > aにたいしてaDRpf(x) = dxdmmaDpR−mf(x) で定義される。ここで、m はpより小さくない最小の整数である。
例 4. 4.3 例 4.4.2で α >−1,f(x) = Γ(α)1 (x−a)α−1 と置くとp∈R にたいし
aDRpf(x) = 1
Γ(α−p)(x−a)α−p−1 (4.50)
[証明] 積分にさいして、すなわちp=−q <0 のとき、(4.49) の右辺に上記f(x)を代入し、
積分変数 y をt = yx−−aa として、ベータ関数 B(p, q) についての次の公式を用いる。p, q が Rep >0, Req >0の複素数のとき
B(p, q) = Z 1
0
tp−1(1−t)q−1dt=Γ(p)Γ(q)
Γ(p+q) (4.51)
整数回微分にさいし、ガンマ関数の漸化式Γ(z+ 1) =zΓ(z)を用いる。 2
5
Fourier 級数、直交多項式
5.1 基底、完全正規直交系
線形空間
E
の可算個の要素の集合{ f
n}
は、その任意の有限個の一次結合が0となるのは係数 のすべてが0のときに限られるときに、一次独立(linearly independent)
であるという。そうでな いときに、一次従属(linearly dependent)
であるという。例 5. 1.1 E は l1, l2, l∞ のいずれかであるとする。n∈N にたいし、e(n) ∈ E が、そのn 番目の成分が1であり、それ以外の成分はすべて 0であるものとして与えられているとする。
すなわち、e(1)= (1,0,0,0,· · ·),e(2)= (0,1,0,0,· · ·),e(3)= (0,0,1,0,· · ·),· · · とする。この とき、E の要素の列{e(n)}∞n=1 は一次独立である。
[証明]最初のK 個の一次結合は
x1e(1)+x2e(2)+· · ·+xKe(K)= (x1, x2,· · ·, xK,0,0,· · ·)
と表される。これが0 ならば、右辺からx1=x2=· · ·=xK= 0 となり、係数のすべてが0
となる。 2
集合
A
の部分集合A
0 が可算個の要素からなり、それがA
で稠密であるとする。このような 部分集合A
0 が存在するような集合A
を可分(separable)
であるという。例 5. 1.2 n次元ベクトル空間Rn と Cn は、その要素xのノルム||x||を (4.7)のいずれと しても、可分なノルム空間である。
[証明へのヒント] E が Rn であるとする。このとき、E の要素x={xk}nk=1 で xk がすべて 有理数であるものの集合が可算集合であり、E で稠密であることを確かめればよい。[ヒント終 わり]
例 5. 1.3 数列空間l1,l2 は、いずれも可分なノルム空間である。
[証明]E は l1, l2 のいずれかであるとする。K ∈N とし、E の要素 x={xk}∞k=1 でk≤K の xk がすべて有理数であり、k > K のxk がすべて0 であるものの集合をAK とする。節 1.1の例1.1.2と定理1.1により集合AK は可算集合であり、定理1.1 (節 1.1)により、その 可算個の和集合∪∞K=1AK も可算集合である。以下で、この和集合 がE で稠密であることを 確かめる。
E の任意の要素を x={xk}∞k=1 とする。任意の ǫ >0 にたいして、K∈N とE の要素 y={yk}∞k=1を、k≤Kでyk=xk となり、k > Kでyk= 0となり、しかも、||y−x||< ǫ/2 なるように選ぶ。次に、AK の要素z={zk}∞k=1 を、k≤K で|zk−xk|< ǫ/(2K)となるよ うに選ぶと、||z−x|| ≤ ||z−y||+||y−x||< ǫとなる。 2
57
ノルム空間
E
の可算個の一次独立な要素の集合{ f
n}
は、E
の任意の要素がその一次結合によ り表されるときに、基底(basis,
複数はbases)
であるという。例 5. 1.4 E はl1,l2 のいずれかであるとする。例 5.1.1で与えられた要素の列{e(n)}∞n=1 は E の基底である。
[証明]E の任意の要素x={xk}∞k=1 は x=
∞
X
k=1
xke(k)
と表される。 2
{fn}∞n=1がノルム空間E の基底であるとする。級数P∞
n=1anfn がE の要素f に収束すると き、この級数P∞
n=1anfn を f の {fn}∞n=1による展開といい、an を展開係数という。
この節の以下の部分では、
Hilbert
空間H
に属する一次独立な要素の可算無限個の列{ f
n}
∞n=1が存在する場合を考える。
Hilbert
空間H
の要素の列{ f
n}
∞n=1 が、条件(f
n, f
m) = 0, n 6 = m (5.1)
を満たすときに直交系
(orthogonal system)
であるという。この条件を直交条件(orthogonal
con-dition)
という。それは、条件(f
n, f
m) = δ
nm(5.2)
を満たすときに正規直交系
(orthonormal system)
であるという。この条件を正規直交条件(or-thonormal condition)
という。ここでm ∈
Zのとき、δ
nm はn = m
のときに1
となり、それ 以外では0
であるn ∈
Z の関数で、Kronecker
のデルタ(Kronecker’s delta)
と呼ばれる。等式δ
nm= δ
mn が成り立つ。{ f
n}
∞n=1 が直交系であるが、正規直交系でないときには、e
n= f
n|| f
n|| (5.3)
とすると、
{ e
n}
∞n=1 は正規直交系になる。ここで、1/ || f
n||
を正規化定数という。例 5. 1.5 n ∈ N にたいし fn(x) = sinnx とする。この関数の集合 {fn}∞n=1 は L2(−π, π) の直交系である。区間(−π, π) で ||fn||=√
π であるから、{√1πsinnx}∞n=1 は正規直交系で ある。
例 5. 1.6 n∈N にたいしfn(x)を fn(x) =χ[n,n+1)(x) =
1, n≤x < n+ 1
0, otherwise (5.4)
とする。この関数の集合{fn(x)}∞n=1 はL2(R)の正規直交系である。
5.1. 基底、完全正規直交系
59
定理 5. 1{ f
n}
∞n=1 はHilbert
空間H
の正規直交系であるとする。級数 P∞n=1c
nf
n がH
の要素f
に収束するときには、係数c
n はc
n= (f, f
n) (5.5)
で与えられる。その級数が
f
に収束するか否かにかかわらず、不等式∞
X
n=1
| (f, f
n) |
2≤ || f ||
2(5.6)
が成り立つ。
不等式
(5.6)
をBessel の不等式(Bessel’s inequality)
という。この不等式により(5.5)
で与 えられる係数c
n の列{ c
n}
∞n=1 は数列空間l
2 に属し、lim
n→∞c
n= 0
が成り立つ。[(5.5)の導出]級数P∞
n=1cnfnのn=N の項までの部分和PN
n=1cnfn をgN で表すと、それ はf に収束するので、N → ∞で||gN−f|| →0となる。Schwarzの不等式(節4.1)により
|(gN −f, fn)| ≤ ||gN −f|| × ||fn||
が成り立つ。N → ∞で右辺は0、したがって左辺も0となる。したがって、cn= limN→∞(gN, fn) =
(f, fn)が得られる。 2
[(5.6)の導出]cn = (f, fn)とすると、
0≤ ||f−
N
X
n=1
cnfn||2= (f−
N
X
n=1
cnfn, f−
N
X
n=1
cnfn) =||f||2−
N
X
n=1
|cn|2 となり、したがって、
N
X
n=1
|cn|2≤ ||f||2
となる。このとき、左辺の級数は収束し、(5.6)が成り立つ。 2 定理 5. 2 任意の正整数
N
にたいし、正規直交系{ f
n}
Nn=1 の一次結合 PNn=1a
nf
n の中で|| f −
PNn=1
a
nf
n||
を最小にする{ a
n}
はa
n= c
n= (f, f
n)
で与えられる。[証明]cn = (f, fn)とすると、
||f−
N
X
n=1
anfn||2 = ||f||2−
N
X
n=1
[an(fn, f) + ¯an(f, fn)] +
N
X
n=1
|an|2
= ||f|| −
N
X
n=1
|cn|2+
N
X
n=1
|cn−an|2
となる。これは、an=cn のときに最小になる。 2
f
1, f
2, ..., f
N の一次結合で表される要素の集合をf
1, f
2, ..., f
N が張る空間という。これをV
N とするとき、{ f
n}
∞n=1 が正規直交系ならば、PNn=1c
nf
n はf
のV
N への正射影である。すなわち、(
N
X
n=1
c
nf
n, f −
N
X
n=1
c
nf
n) = 0 (5.7)
が成り立つ。
ノルム空間
E
の要素の列{ f
n}
∞n=1 は、E
の任意の要素f
に収束する級数 P∞n=1a
nf
n が存在 するときに、完全(complete)
であるという。定理 5. 3
{ f
n}
∞n=1 がHilbert
空間H
の完全正規直交系であるとき、H
の任意の要素f
にたいしc
n= (f, f
n)
を係数とする級数P∞n=1c
nf
n はf
に収束し、等式X∞ n=1
| (f, f
n) |
2= || f ||
2(5.8)
が成り立つ。さらに、
f ∈ H
,g ∈ H
ならば、X∞
n=1
(f, f
n)(f
n, g) = (f, g) (5.9)
が成り立つ。
等式
(5.8)
を Parsevalの等式という。[証明] (5.9)を証明する。{fn}∞n=1は完全であるから、f,gに収束する級数P∞
n=1cnfn,P∞ n=1dnfn
が存在する。定理5.1により、このとき、cn = (f, fn),dn= (g, fn)となり、Schwarzの不等 式により
|(f−
N
X
n=1
cnfn, g−
N
X
n=1
dnfn)| = |(f, g)−
N
X
n=1
cndn|
≤ ||f−
N
X
n=1
cnfn|| ||g−
N
X
n=1
dnfn|| →0, N → ∞ となる。これから(5.9)が従う。(5.8)は(5.9)で gを f として得られる。 2 {fn}∞n=1がHilbert空間Hの完全正規直交系であるとき、Hの要素f にたいしcn= (f, fn) を係数とする級数P∞
n=1cnfn がf の {fn}∞n=1 による展開であり、cn が展開係数である。こ のときの展開は、またFourier級数といい、展開係数は、また Fourier係数という。
L2 では、完全正規直交系 {fn(x)}∞n=1 による関数 f(x) ∈ L2 の展開 (Fourier 級数) は P∞
n=1(f, fn)fn(x)となる。この級数は f(x)に平均収束する。
定理 5.3 の系 1
{ f
n}
∞n=1 がHilbert
空間H
の完全正規直交系であるとき、すべてのf
nに直交するH
の要素 は零要素0
のみである。[証明] (5.8)より明らか。||f|| 6= 0ならば(f, fn)6= 0となるn∈N が存在する。 2 定理 5.3 の系 2
Hilbert
空間H
は、完全正規直交系が存在するときには可分である。[証明へのヒント]定理5.3により、完全正規直交系が存在するときには、任意の要素f は、そ
の完全正規直交系による展開の極限に等しく、(5.8)により展開係数は l2 に属する。例5.1.3 によりl2は可分である。[証明へのヒント終わり]
5.2. FOURIER級数