(5) 結城忠「親の教育権と学校教育(11)」季刊教育法第98号 (1994年) 43頁
(6) 奥平・前掲71頁
(7) 実施機関(教育委員会)側の弁明書に対する、1991年2月18日
付反論書において、このようにプライバシー権についてのかなり深く突 っ込んだ主張が見られる。またそこでは、児童の権利に関する条約やア メリカや西ドイツ等のプライバシー権にも言及している。教育情報開示弁護団・前掲41頁
(8) 1991年6月20日大阪地方裁判所に提訴(いわゆる「高槻市内申
書裁判」)、ここでは最高裁学テ判決の理論を取入れている。教育情報開示弁護団・前掲109頁
(9) 結城忠 「親の教育権と学校教育(12)」季刊教育法第98号 (1994年) 50:頁
(10) 教育情報開示弁護団・前掲42頁
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14 指導要録開示請求例にみる親の教育権
ここではわが国で初めて指導要録の全面開示がなされた箕面市の指導要録の 開示請求のケース(1>を取り上げ、親の教育権の理論に基づく開示請求がどの ような位置づけを持っているのか、存在意義を検討したい。指導要録は内申書 とは目的や機能が異なるのであるが、開示請求においてはほぼ同じ内容が問題 とされてきているので、ここでは前節の内申書開示請求例で考察した事項を除 き、親の教育権について言及し示唆していると思われる限りで考察を加えたい。
さて、教育評価は、本人はもとより、親に対しても開示されるべきであると することについて、箕面市個人情報保護審査会の答申は、 「今日の学校教育は、
児童・生徒等の人品的成長をうながせるような学習の権利を充足させる重大な 責務を負っている。このような観点からすると、学校における教育評価は、本 人はもとより、教育についての第一次的責任を負っている親に対しても開示さ れてこそ、本人の乱闘的成長とその指導に役立つものというべきである」〔2)
と述べている。このことは、子どもの教育を受ける権利を学習権説に置き、そ の学習権に対応し、充足をはかり得るものとして親の教育権を措定しているも のと解する。即ち子どもの学習権を保障する親の教育権に基づく開示請求なら ば、全面的に開示可能という示唆を与えていると取れる。さらに、意義申立て 人は、異議申立の理由の中で「指導要録が対外的証明の資料の原簿としての性 格を有し利用されるものであるから、その記載事項に自己情報コントロール権 が及ぶ」(3)ものであり、プライバシー権が認められるとする。審査会答申も このことを追認していると取れる箇所がみられる。また、親の教育権の中に基 本的な要素として親の知る権利という概念が含まれているとすると、この親の 知る権利に対応して学校・行政側には個人情報等について開示する義務が存在 すると考えられる。
蛇足ながら、これについてはアメリカの Family Educational Rights and Privacy Act(Buckley amendment) が、参考にされてよいと思える。例えば、
「学生または親の自己または自己の子どもの教育記録へのアクセスを認めてい る。… …親・学生が教育記録を閲覧・審査して、不正確もしくは学生のプラ イバシーを侵害する記録を見出した場合には、記録の内容について訂正・削除 を求める権利、記録内容について説明を受ける聴聞権が与えられるjc4)こと
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になっている。また、学生が受験しようとする他校の正当な利害を持つ教育機 関の当局者は親の同意なくして教育記録にアクセスできるとされている。ただ しその場合、 「受験しようとする学生の親または学生は教育機関が受験校に教 育記録を移送することの通知をあらかじめ受け、また希望すれば教育記録の写 しを受け取り、しかも教育記録内容に疑問がある場合には、聴聞の機会を持つ ことが条件とされている。このことは、親または学生が教育記録を受験校に送 付する前に、開示される教育記録への記載内容について正確さを求め、その結 果、場合によって訂正・削除する権利が認められている」(5)という。親の教 育権に内在するプライバシー権が法律レベルで具体化されていると考えられる。
以上の箕面市の指導要録開示請求のケースから、少なくとも親の教育権とそ れから導かれるところの知る権利乃至はプライバシー権を構滅する契機は存在 しているものと思われる。
なお、開示請求に当たって、子どもの意思に反する親の情報開示請求等親と 子どもの利益が相反する情報開示請求の場合にはどちらの意思を優先させるか という調整の問題が出来することが考えられる。このことは、子どもの人権制 限に関する問題と置き換えることができる。子どもの人権の特殊性に基づく人 権制限が、どの場合に、いかなる理由により許容されるかという一般的な問題 とし次の2つの問題に分けて考えることができる。まず、一つは子どもの人権 主体たる地位それ自体の制限である。入権主体たる地位の制限は、子どもの人 権主体を前提とする以上、憲法が明文で特別に規定している場合を除き、常に 合理的理由を要し、しかも目的を達成するための必要最小限度にとどまるべき である。とりわけ、思想・良心・表現の自由等の市民的自由は、原則的に全て の人間に備わっていると考えるべきであるから、子どもであることを理由に制 限することは違憲性の推定が働き、原則的に認められず、内在的制約のみが許 されるといえる。もう一一一しつは子どもの人権行使にともなう制限であり、子ども が人権を行使するに当たり、いかなる場合に、どの年齢まで親の権限による制 限を受けざるを得ないのか、つまり子どもの自己決定権と親の判断権とを衡量 し、調整する基準が必要である。親は子どもが意思能力に欠けており、人権行 使についての自己決定がなし得ない場合に限り、子どもの代わりにその権利内 容を判断し、自ら決定し行使することが許容される(6}と解される。ここで二
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討している親の教育権に基づく個人教育情報の開示請求については、親の教育 権が子どもに対して包括的な自然権である上に承役的な権利である由をもって、
利益相反行為とならず、常に行使可能であると解される。
(1) 箕面市においては、箕面市個人情報保護条例に基づき1991年2月
25日に幼稚園・小学校・中学校の指導要録の開示請求がなされた。こ の開示請求に対し箕面市教育委員会は当初部分開示をしたのであるが、その後、異議申し立てに対する箕面市個人情報保護審査会の答申に沿っ
て、最終的には1992年6月12日全面開示という経過を辿ったもの
である。 教育情報の開示を求める市民の会 r箕面市指導要録開示請求の記録』 (教育情報の開示を求める市民の会1992年) 2頁
(2) 教育情報の開示を求める市民の会・前掲55頁
(3) 教育情報の開示を求める市民の会・前掲47頁
(4) 八尾坂 修 「アメリカにおける教育に関する情報公開の現状と対応」