討している親の教育権に基づく個人教育情報の開示請求については、親の教育 権が子どもに対して包括的な自然権である上に承役的な権利である由をもって、
利益相反行為とならず、常に行使可能であると解される。
(1) 箕面市においては、箕面市個人情報保護条例に基づき1991年2月
25日に幼稚園・小学校・中学校の指導要録の開示請求がなされた。こ の開示請求に対し箕面市教育委員会は当初部分開示をしたのであるが、その後、異議申し立てに対する箕面市個人情報保護審査会の答申に沿っ
て、最終的には1992年6月12日全面開示という経過を辿ったもの
である。 教育情報の開示を求める市民の会 r箕面市指導要録開示請求の記録』 (教育情報の開示を求める市民の会1992年) 2頁
(2) 教育情報の開示を求める市民の会・前掲55頁
(3) 教育情報の開示を求める市民の会・前掲47頁
(4) 八尾坂 修 「アメリカにおける教育に関する情報公開の現状と対応」
『教職研修総合特集No.106情報公開読本i (教育開発研究所19
第IV音「9 親の教育権に基づく個人教育
情報開示請求のまとめ(結論)と 今後の重力向
15 親の教育権に基づく個人教育情報開示請求のまとめ(結論)
既に述べたように情報化社会の急激な進展に伴い、近年一般行政情報の公開 (開示)と共に教育情報の公開(開示)が大きな社会問題となってきた。特に
情報公開(開示)に関する条例等を有する地方自治体において、その傾向が顕
著である。
従来その教育情報の公開(開示)請求に当たっては、新しく確認された権利 である知る権利やプライバシー権に依拠してなされるのが通例であった。しか し、この知る権利やプライバシー権に拠る公開(開示)請求にあっては、その 権利の内在的制約や教育的配慮等教育に特殊な制約があり、全面公開(開示)
に至ることが困難な状況を呈している。
そこで、この論文においては、親の教育権を土台にし、その歴史的考察から スタートして親の教育権の権利性を深く掘り下げた上で、従来の情報公開(開 示)請求で依拠してきた知る権利やプライバシー権をも取り込んだ新しい概念 の構築を模索しながら、教育における個人情報の開示請求の在り方を考察して きたのである。
まず、親の教育権は、自然的な生活共同体(家族)維持のため種族保存の本 能に基づく必然的な要素である子どもの教育に端を発し、親子という自然的血 縁関係に基づく人間の根元的な権利に属しているものと考えることができるの であった。さらに、この権利は始源的・前国家的・不可譲の人間に固有な権利 であることが自然法思想の中から導き出され得る(即ち、自然権だと解されて いる)のであった。また、わが国の憲法は、西欧諸国の近代憲法の系譜をひき、
自然法思想の影響を強く受けているのであるから、親の教育権は憲法上基本的 人権として当然保障されているのであった。しかも、この親の教育権の憲法上 の基本権としての位置づけは、憲法秩序の基底に位置し(憲法上の根元的基本 権)、憲法上優先的な保障を受けている(憲法的自由)と考えられるのであっ た。個別基本権iとしては、他の基本権iと異なって複合的且っ包括的な性質や承
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役性等を併せ有するものと考えられるのであった。
こうした親の教育権に権利実行性をも持たせるために、学説や判例理論で要 求されている個別化・明確化・具体化の手だてとして近年新しく確認され、ま た、今まで実務で依拠してきた権利である知る権利や、プライバシー権によっ て限定を加え、親の教育権iに内在する知る権利乃至は親の教育権に内在するプ ライバシー権という概念構成を図ったのである。
さらに開示請求権については、開示請求権が親の教育権(親の教育権に内在 する知る権利・プライバシー一一 me)と表裏一体を成す制度的保障と考えられるの であった。
さて、この論文では、親の教育権に基づくならば、子どもの指導要録や内申 書等の個人教育情報の開示請求が全面的に認められてしかるべきであろうと仮 説を設定し、その検証を進めてきたのである。そこで、その結論であるが、親 の教育権に内在する知る権利乃至は親の教育権に内在するプライバシー権とい
う概念構成を図り、開示請求権が親の教育権の制度的保障と考えられるので、
親の教育権に基づき個人教育情報を開示請求することが可能であると思量され る。つまり、親の教育権が深く掘り下げられた概念でならば、概ね仮説は検証 されたものと考えられる。
さらに、児童の権利に関する条約等昨今の国際的な動向も、このことを可能 にする状況にあると思われる。
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16 今後の動向
地方自治体の個人情報保護条例等の個人情報保護制度のわが国における発展
の過程を辿るならば、①プライバシー権の認識・制度化提唱の時期(1950 年代〜1970年代中葉)、②個人情報保護制度の提唱と実現の時期(198
0年代以降)、③個人情報保護制度の運用の時期(1980年代前半〜今日)
の3つの時期に分けることができるcv。そして、③の時期に当たる昨今では 個人教育情報の開示を求める流れは、最早抗しがたいものが見られる。箕面市 や川崎市の卒業生に対する指導要録開示請求については全面開示が決定されて いるところである。しかし、多くの自治体においては今なお全面開示に至らず、
部分開示や非開示処分になっているケースが多数見られることも否定できない 事実である。この論文でも取り挙げた高槻市のように、個人情報保護審査会は 全面開示の答申をなすも、教育委員会は再度部分開示の処分をなし、現在訴訟 の場で司法的解決が図られようとしている。
このような全面開示に至らないケースに共通していると考えられることは、
一般的な行政情報と異なって学校の教育情報の特殊性を根拠に、条例上の開示 原則に対して例外鼠取り扱いをなそうとするものである。
そこで、従来の知る権利やプライバシー権に換えて、これまで述べてきた親 の教育権を土台にして、開示請求の方途を探る必要がある。そうしてそれは子 どもの学習権に根拠づけられ、それを保障するものでなければならない。親の 教育権に内在する知る権利やプライバシー権に基づく個人教育情報の実務によ
る開示請求の事例の積み重ねが侯たれ、この権利概念を基本的人権の一部とし て尊重する社会的合意の形成に向けて努力を傾ける必要があると思われる。
さらに、個人情報保護の問題は国際的な動向をも考慮にいれなければならな い時期にきている。アメリカや、ドイツ等欧米諸国の整備された個人情報保護 法システムや児童の権利に関する条約の教育に関する情報開示条項は言うに及 ばず、欧州連合(EU)で検討されているといわれる個人情報保護のレベルを 世界的に合わせようとする個人情報保護司令提案(2)の行方にも考慮を払う必 要があろう。
ところで、本考察を進めるに当たって感じたことは、わが国においては、親 の教育権に関するトータルな先行文献が極めて限られているということである。
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