• 検索結果がありません。

8 保存展示環境の整備

ドキュメント内 表紙AAA (ページ 76-79)

1F

地下

中2F

2F 3F

エントランス

吹抜け

…データロガー

…空調機 収蔵庫

保存のあり方について検討する まで踏襲されてきた。

2005( 平 成17)年より衣 裳 博物館ではIPMを導入し、日常 管理、温湿度の測定、環境調査 を実施し、博物館の環境のモニ タリングを実施している。これら の活動を受け、資料を取り巻く 環境の見直しを行ってきてい る。2007(平 成19)年には、開 館 以来展示され続けてきた衣裳を ケースから出し、マネキンからの 脱衣を行うなど、資料保存へ向 けての積極的な活動も始まりつ つある。

8―2―1.温湿度のモニタリング

①測定計器:データロガー

(オンセット社 HOBO、Veriteq社Spectrum2000)

②測定箇所:衣裳博物館本館の外(屋上)、1・中2・2・3階、

地下室に各1台ずつ配置した(図32)。

③測定方法:30分おきに継続して測定

④測定結果:図33(5)・34参照

博物館において、資料と人(来館者)の双方にとって適切である 温湿度の設定を行うことが望ましい。そこで、本館の温湿度の設定 について検討を行った。

資料に対しては、IIC(国際文化財保存学会)や ICOM(国際博 物館会議)、ICROM(文化財保存修復研究国際センター)では染 織品を保存するための温度と相対湿度(以下湿度)の条件として 温度を20℃、湿度を55〜65%とすることを推奨している。染織品を 多く占める衣裳博物館の温湿度の設定にあたり、これらの推奨値と 収蔵資料に使用されている素材に影響を与えない温湿度を比較 検討し、温度を15〜20℃、湿度を50〜55%の範囲内に収めること を目標とした。

一方、人が快適と感じる環境についてドイツ連邦規格(6)(DIN 1946年 Teil2:Zone comfort)では、温度を22〜26℃、湿度を30〜

65%としている。

両者の温湿度の幅の違いをどのように考えるのか、またこれらの 写真145 開館時の展示の様子(1957)

図33 温湿度の測定結果(本館①)

図32 本館データロガー配置図 図34 温湿度の測定結果(本館②)

70

1F

地下

2F 3F

2 42

35 35 35

10 11

12

4

1 5 41

7

13 14 363636 38

37

39

40 20 60

21 23

24 25

22 19

18 15

16 17

33 26

34

27

29 28 30 32

31

…空中浮遊菌採集地点 収蔵庫 中2F

数字…昆虫相トラップ配置場所    (0〜42・60)

設定値を検討するために、まずは温湿度のモニタリングを実施し、

現状の把握に努めた。1年間のモニタリングを通じて得られたこと は、衣裳博物館本館では夏期と冬期の空調機使用時において展 示室内が低湿になっている(図33の7〜8月、1〜2月を参照)

ことである。

このことは、衣裳博物館本館が外気の影響を受けやすい構造で あること、また設置されている空調機が温度と湿度を同時にコント ロールすることはできないことに起因すると考えられる。低湿度であ るからといって単純に加湿することは、カビを発生させる原因ともな りかねない。現段階で資料に与えるリスクが少ない有効な方法は、

博物館をとりまく温度の変化に合わせて空調機をコントロールする ことによって湿度を制御することが考えられる。

そのため、先述した来館者のアメニティ(7)を考慮した温度に空 調機を設定することは、時によっては展示室の低湿化を招く直接的 な原因となり、安定した環境を保つことができなくなる恐れがある。

今後も温湿度モニタリングの必要性は高く、細かな環境の変化 に適切に対応できるよう努めなくてはならないが、空調機への対応 だけでなく、そのほかの要素も検討を行う必要があると考えた。

2010年3月からの展示を控え、館内の気密性を上げること に着目した。本館1階は天井高が約4m あるため、気密性が低 く、かつ外扉に直接つながっている空間である。特に1階と中2階

の展示空間が同一であるため、外気の影響を1階と中2階は直 接受けてきた。そこで、2009年4月にエントランス部分に内扉をつ け、展示空間とエントランス空間を分けた。このことにより、館内の 気密性が上がり、不安定だった1・中2階の温湿度が改修前よりも 安定するようになった(図34)。また、ケースの利用など展示手法と 組み合わせることによって、より安定した環境を資料に与えることが できるということも分かった(8)

8―2―2.有害生物調査

1) 2007年6月27日〜7月27日(30日間)

①調査箇所:本館地下室〜3階(図35―1〜42参照)

②調査方法:粘着トラップ(歩行性昆虫用)定点配置(42箇所)に よる捕獲調査

③調査結果:チャタテムシ(3階)、カマドウマ類(地下・機械室)を 確認

2) 2008年7月2日〜8月4日(33日間)

①調査箇所:本館地下室〜3階(図35―0〜42参照)

②調査方法:粘着トラップ(歩行性昆虫用)定点配置(43箇所)に よる捕獲調査

③調査結果:チャタテムシ、カマドウマ類、ワラジムシ、ダンゴムシ

(地下・機械室)を確認

3) 2009年5月26日〜6月26日(31日間)

①調査箇所:本館地下室〜3階(図35参照)

②調査方法:粘着トラップ(歩行性昆虫用)定点配置(45箇所)に よる捕獲調査

③調査結果:チャタテムシ、カマドウマ、トビムシ(地下・機械室)を 確認

8―2―3.空中浮遊真菌・粉塵調査

①調 査 日:2007年6月27日

②調査箇所:本館1〜3階の各階中央(図35参照)

③調査方法:エアーサンプラー使用による真菌数測定 パーティクルカウンター使用による浮遊粉塵測定 使用培地:YM 培地(培養条件:25℃、5〜7日間)

調査結果:特に問題はない。数値上では2・3階に比べると 1・中2階のほうが清浄度が落ちていることが分かる。

1 階は直 接エントランスに通じていること、また 中2階は建物の構造上、1階と空間を共にしてい るためと考えられる(表5・6参照)。

図35 トラップ配置・空中浮遊菌採集地点図(本館)

71

検査ポイント 1回目 2回目 3回目 平均

1階 1100 880 650 877

2階 1720 1370 1400 1497 中2階(館長室) 410 610 580 533

3階 420 570 340 443

地下 400 720 800 640

検査ポイント コロニー数

真菌 (カビ数+酵母数)

1階 3 (3+0)

2階 1 (1+0)

中2階(館長室) 11 (10+1)

3階 3 (3+0)

地下 1 (1+0)

表5 浮遊真菌コロニー数

表6 浮遊粉塵 (単位5μm:個/ft3)

写真146 杉野学園衣裳博物館分室

8―2―4.照度・紫外線

本館の照度や紫外線については、遮光カーテンが窓全面に かかっているため、直射日光が室内に入ることはない。ここでは主 に各階の照明器具の照度を測定した。

1)対策前(2007年度)

①測定箇所:本館1〜3階の蛍光灯下(150cm の高さ)

②測定結果:主に展示室を中心に計測を行った。

1 階…110〜130lux

中2階…900〜2200lux(調光機能つき)

2 階…400lux 3 階…360lux

エントランス部分については、館内で外光が差し込む唯一の 場所であるため、紫外線の影響を懸念する場所であった。

しかし、資料のある展示室の中央まで直射日光が差し込むと いうことはなかったため、展示室の照明に使用している。蛍光灯に よる紫外線の影響を配慮し、展示室内の蛍光灯は全て紫外線 吸収膜のついた蛍光灯(色温度3000K)に取り替えた。そして、

蛍光灯の使用本数を各フロアーの半分に減らすことにより部屋 全体の照度を下げた。

2)対策後(2008年度以降)

①測定箇所:蛍光灯下、床面より150cm の高さ

②測定結果:主に展示室を中心に計測を行った 1 階…80〜125lux

中2階…250〜440lux(調光機能つき、天井高が低いため)

2 階…160〜260lux 3 階…160〜260lux

ドキュメント内 表紙AAA (ページ 76-79)