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本研究では、介護開始前から介護終了後までの介護プロセスと心理的プロセスを分析し たが、介護を終えた人が3人であったため介護終了後の心理的状態の可能性が十分明らか になったとは言いがたい。また、研究参加者の居住地が都市近郊の2県3市に限定されて おり、地域による偏りが生じている可能性も否めない。

第5節 結語

本研究で以下のことが明らかになった。

1)在宅で母を介護する息子介護者は介護の始まりから母の看取り、さらには母が居ない 生活を送るまでの介護プロセスを経験する。それぞれの過程で抱きやすい心理状態とそれ に関連する事柄を示すことができた。

2)息子介護者が心理的に追い込まれる事柄として、介護者の年齢・性別など基本属性が 関与しているものもあるが、介護開始時の生活変化の大きさや情報の乏しさ、介護者を取 り巻く周囲のサポートの少なさが大きく影響している。

3)息子介護者の追い込まれた心理状態を解きほぐすには、介護者が現状を客観的に受け 止め、介護を肯定的に捉えることができるよう、介護者の持つ資源や能力を的確に把握し、

それに応じた支援を行うことが重要である。

そこで、支援者は介護者の心理状態を見極めて、周囲の状況と合わせてアセスメントし、

介護サービスとインフォーマルサポートを合わせてコーディネートする必要がある。その ためには地域の当事者組織や地区組織活動などの社会資源を把握することも不可欠である。

また、介護を行うことによる介護者の生活変化を最小限に抑えられるよう働きながら介護 を行える体制づくりと、他の家族員からの援助が見込まれない家庭への互助的な生活支援 サービスの構築が急務である。さらに、親を介護することについて介護前から見通しを持 つことができるよう就業している人にも行き届く情報発信が望まれる。

第6節 小括

第3章における研究の目的は、母を在宅で介護する息子介護者の心理状態について介護

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の過程に沿って分析し、心理状態に関連する事柄を明らかにすることである。在宅で母を 介護したことのある息子

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人に半構造化面接を実施し、M-GTAを用いて分析した。そ の際、分析焦点者を「母親を介護している息子」とし、分析テーマを「母親を介護する息 子が自分の生活の中に介護を定着させていくプロセス」と設定した。データ収集は 2016 年 7 月から 2018 年 2 月にかけて行った。

結果、生成された概念数は 37 で、カテゴリー数は 16 であった。概念及びカテゴリーを 介護の経過に沿って配置し、介護プロセスと心理的プロセスに分けてそれぞれ分析した。

介護プロセスは次のとおりであった。息子介護者は<母の状態の変化>により介護を開 始し<介護者の生活が変化する>。そして、母の介護に合わせて<自らの介護リズムを形 成する>よう介護サービスの活用やインフォーマルサポートのコーディネートなどを行う。

同時に介護経験を積み重ねることにより<介護力が高まる>。このように介護前は別の生 活を営んでいた母と息子が介護を通して、相互に影響しながら一定のリズムを作り上げ、

<介護が生活に組み込まれる>。母の状態はADLの低下や認知症の進行など常に変化し うる可能性を含んでいるものの、<介護が生活に組み込まれる>なかで、多少の変化であ れば対応できるようになる。しかし、母の急激な状態変化が起こると、<介護リズムの乱 れ>が生じる。その際には改めて<介護が生活に組み込まれる>ように介護サービスや周 囲のサポートを得ながら生活リズムを調整する。そして、介護は<母を看取る>ことで終 わりを迎え、その後は<母が居ない生活を送る>ことになる。

また、心理的プロセスとしては次の結果が得られた。母を介護する息子は、介護前から 自分やきょうだいの状況、親の言動などにより<自分への介護期待を察する>。そして母 の状態の変化により介護者の生活に何らかの変化が生じたときに<介護の始まりを自覚す る>。その際、母の状態の変化や自分の生活の変化などの<現状にとまどう>が、介護が 生活に組み込まれるなかで<現状を客観的に受け止める>ことができるようになる。さら に、介護の終焉では<母の人生の最期を熟慮する>。そして、息子介護者は介護終了後も なお肯定的感情と否定的感情という<介護を終えてからの両価的感情>を抱いている。こ のような心理的プロセスのなかで、息子介護者はあらゆる時期において<追い込まれた心 理状態>に陥る危険性を抱えている。一方、自らの<介護の積極的意味づけ>を行うこと ができれば介護を前向きに捉えることができる。

息子介護者が心理的に追い込まれる事柄として、介護開始時の生活変化の大きさや情報 の乏しさ、介護者を取り巻く周囲のサポートの少なさが大きく影響していることや、息子

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介護者の追い込まれた心理状態を解きほぐすために、介護者が現状を客観的に受け止めら れるような支援が重要であることが示された。

文献

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木下康仁(2007)ライブ講義M-GTA 実践的質的研究法.弘文堂.

木下康仁(2009)質的研究と記述の厚み─M-GTA・事例・エスノグラフィー.弘文 堂,48-129.

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