第 6 章 組織の構造的・プロセス特性と組織の創造的能力
コミュニケーションと組織統合 0. 762 -0.477 戦略的リストラクチャリング 0.866 0.110
アウトソーシング 0.596 0.578
固有値 5.416 1.456
寄与率 60.175 16.175
累積寄与率 60.175 76.35
* 値は主成分負荷量。絶対値0.3以上のものを太字にしてある。
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型的パターンを軸とする平面に位置付けることができるということである。各サンプルに ついて「補完的組織化」成分の主成分得点、「費用削減型フラット化」の主成分得点を算出 し、「補完的組織化」を横軸、「費用削減型フラット化」を縦軸として散布図を描くと、サ ンプルにおいてどのような組織化パターンが形成されているのかを理解することができる。
すなわち大別して、「補完的組織化」の程度が高く「費用削減型フラット化」の程度は低い という組織化パターン、他方「費用削減型フラット化」の程度が高く、それゆえ当然「補 完的組織化」の程度は低いという組織化パターンが見出される。次に問題となるのは、こ うした「補完的組織化」パターンと「費用削減型フラット化」パターンがそれぞれ組織の 創造的能力や創造的成果とどのような関係にあるかという点である。これについても散布 図から確認しておくこととする。
図6-4 組織化パターンの散布図
(筆者作成)
(2)組織化パターンと主観的創造的活動および主観的創造的成果の関係
さて、「補完的組織化」の主成分得点を横軸とし、主観的創造的活動ならびに主観的創造 的成果の値を縦軸とする散布図から、「補完的組織化」と主観的創造的活動、主観的創造的 成果との間には積極的な関係が存在することを理解できる。これは組織化形態間の補完的 関係が組織としての創造的活動や創造的成果の実現に資するという仮説的認識を支持する 結果である。
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また、「費用削減型フラット化」と主観的創造的活動及び主観的創造的成果との関係につ いての散布図からもこの仮説的認識に対する支持的な事実が見て取れる。散布図から、「費 用削減型フラット化」と主観的創造的活動ならびに主観的創造的成果との間には否定的な 関係が見られることが明らかである。
費用削減型フラット化」とは、その主成分の因子の構成からもわかるとおり、階層削減、
アウトソーシング、ダウンサイジングは行われているものの、IT 投資やコミュニケーショ ン維持や組織統合といった組織化は行われていない状態であり、「補完的組織化」において 存在する組織化形態間の補完的関係が形成されていない状態であると考えられる。そうし た「費用削減型フラット化」が主観的創造的活動や主観的創造的成果と否定的な関係にあ るということから、やはり組織化形態間の補完的関係が重要であるという認識が改めて強 められるのである。
図6-5 「補完的組織化」と主観的創造的活動との関係
(筆者作成)
図6-6 「費用削減型フラット化」と主観的創造的活動との関係
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(筆者作成)
図6-7 「補完的組織化」と主観的創造的成果との関係
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(筆者作成)
図6-8 「費用削減型フラット化」と主観的創造的成果との関係
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(筆者作成)
さらに、主成分分析から得られた二つの組織化パターンと主観的創造的活動ならびに主 観的創造的成果との関係について若干異なる観点から散布図を用いて確認しておきたい。
先に指摘したように、サンプルが所属する組織化の状態は、「補完的組織化」と「費用削 減フラット化」を軸とする平面にプロットすることができる。従って、そうした平面上に 主観的創造的成果ならびに主観的創造的活動の高群と低群がどのように分布しているかを 見ることで、主観的創造的活動と主観的創造的成果とこれらの組織化パターンとの関係を より明確に理解できると考えられる。
散布図を描いてみると、主観的創造的活動についても、主観的創造的成果についても、「補 完的組織化」の度合いが高く「費用削減型フラット化」の度合いが低い領域に高群が分布 しており、反面「補完的組織化」の度合いが低く「費用削減型フラット化」の度合いが高 い領域に低群が分布していることがわかる。従って、主観的創造的活動や主観的創造的成 果において高いと認識されている組織においては、「補完的組織化」が実現されており、組 織化形態間にそうした補完的関係が実現されていない「費用削減型フラット化」が進めら れている組織はそうした創造的能力や創造的成果において低いと認識されていると考えら れる。したがって、主観的創造的活動や主観的創造的成果の高い組織、いわば「創造的組 織」のデザインにおいては「補完的組織化」の実現が必要となると考えられる。
図6-9 主観的創造的活動高群と低群の組織化パターン分布
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(筆者作成)
図6-10 主観的創造的成果高群と低群の組織化パターン分布
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(筆者作成)
さて、ここまでの分析から本研究の探索的仮説 2 の一部については支持されたと考えて よい。組織として創造的活動や創造的成果の実現を促進する組織の構造的特性ならびにプ ロセス特性の間には相互補完性が存在し、そうした補完性は「補完的組織化」パターンと して現れている。さらに組織化形態間のそうした補完性による効果は組織としての創造的 活動および創造的成果の実現に対して積極的な作用を及ぼしていることが明らかにされた のである。
そのうえで、さらに明らかにされるべき問題は、こうした「補完的組織化」による補完 性の効果は、各組織化形態の個別作用と比較してそれを凌ぐほどのものであるかどうかと いう点である。
Ⅳ.組織化形態の補完性効果の検証
1.主観的創造的活動に対する組織化形態の補完性効果
組織化形態の補完性効果の検証は、主成分分析から得られた組織化形態の二つのパター ン、「補完的組織化」ならびに「費用削減型フラット化」が主観的創造的活動ならびに主観 的創造的成果という従属変数に対してどのような効果を有するかを検証するとともに、個
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別の組織化形態の作用とこうした組織化パターンの有する作用との比較を通じて検証され る。まず、主観的創造的活動を従属変数として補完性効果を検証する。
検証は、第 5 章と同様重回帰分析によって行われた。独立変数として、各組織化形態お よび「補完的組織化」の主成分得点と「費用削減型フラット化」の主成分得点を投入した。
従属変数は、主観的創造的活動及び主観的創造的成果である。独立変数と従属変数の相関 関係は表に示すとおりである。
表6-8 各組織化形態変数と主観的創造的活動及び主観的創造的成果の相関関係
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(筆者作成)
また、分析にあたっては第 5 章と同様、統制変数として業種、従業員規模、所属部門、
管理職か否か、性別を投入した。管理職か否かによって組織化の実態に対する認識が異な ることもあり得るため、その影響を統制するために管理職か否かをダミー変数として投入 している。
分析を行った回帰式は、統制変数のみのモデルに加え、モデル 1 が業務的分権化を除く
主観的創造 的活動主観的創 造的成果階層削減業務的分 権化戦略的分 権化プロジェクト 型組織化ダウンサ イジングIT投資コミュニケーショ ンと組織統合戦略的リストラ クチャリングアウトソー シング補完的組 織化 主観的創造的成果.904** 階層削減.227**.306** 業務的分権化.584**.535**.448** 戦略的分権化.576**.565**.583**.859** プロジェクト型組織化.561**.520**.455**.687**.691** ダウンサイジング.217**.290**.748**.444**.526**.394** IT投資.624**.602**.407**.704**.698**.716**.320** コミュニケーションと組織統合.561**.504**.401**.728**.721**.639**.276**.736** 戦略的リストラクチャリング.477**.473**.649**.611**.707**.661**.568**.675**.624** アウトソーシング.172*.207**.559**.381**.480**.368**.548**.290**.191*.589** 補完的組織化.586**.581**.729**.850**.904**.809**.662**.806**.777**.867**.599** 費用削減型フラット化-.341**-.227**.473**-.284**-0.139-.244**.561**-.393**-.472**0.092.550**-0.024 ** p < .01, * p < .05 N=154
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各組織化変数と投入したモデル、モデル 2 が戦略的分権化を除く各組織化変数を投入した モデル、モデル3が組織化パターンを投入したモデルである。モデル1および 2において それぞれ業務的分権化、戦略的分権化を除外しているのは、これらは相互に強く関係する 組織化形態であるため多重共線性の問題が生じることが懸念されたためである。そのうえ で統制変数のみ、モデル1、モデル2、モデル3のVIFの値を検討したところ、いずれも最 大の値で10未満であったため、多重共線性の問題は回避できていると判断した。
では分析結果について検討する。統制変数の影響は第 5 章の結果と同様である。まず、
モデル1の結果からみると、各組織化変数の影響については、戦略的分権化が5%有意水準 で主観的創造的活動に対して積極的な影響を及ぼしているほか、IT 投資も同様に積極的な 影響を及ぼしている。そのほかの組織化形態は、個別的作用としては主観的創造的活動に 対して有意な影響を及ぼしているとは言えない。ただ、有意ではないものの、階層削減な らびにアウトソーシングの標準編回帰係数の符号は負であり、これらの組織化形態は個別 的作用としては主観的創造的活動に対して否定的に作用している可能性がある。
同様に、モデル2の結果について検討すると、業務的分権化とIT投資が主観的創造的活 動に対して積極的に作用していることがわかる。ここでも階層削減とアウトソーシングの 符号は負であった。
モデル 1と 2 の分析結果から、個別の組織化形態としては、戦略的分権化、業務的分権 化、IT投資は主観的創造的活動に対して積極的な影響を及ぼすと考えられる。IT投資につ いては、WhittingtonとPettigrewらの分析においても、企業業績に対して積極的に作用して いるという結果が得られていた。本研究は、彼らの分析とは従属変数が異なるものの、今 日の企業の業績が当該企業の創造的な能力や創造的な成果に依存するところが大きいとす ると、本研究の分析結果はWhittingtonとPettigrewらの結果と整合的であるといえるかもし れない。
また、戦略的分権化ならびに業務的分権化が個別の組織化形態として主観的創造的活動 に対して積極的に作用するという本研究の分析結果は、第2章で検討したHage and Aiken
(1967)、Aiken and Hage(1971)、Damanpour(1991)といった先行研究の知見と整合的で ある。IT 投資の作用については組織における創造性研究においては論じられていないもの の、本研究の分析結果からIT投資は組織における創造的活動の促進という点で重要な効果 を及ぼすということが明らかである。こうした結果から、組織としての創造性の発揮や創 造的活動の促進のために、IT 投資を促進するとともに、戦略的、業務的分権化を進めるこ とは有効であると考えられる。
なお、その他の組織化形態、プロジェクト型組織化、ダウンサイジング、コミュニケー ションと組織統合、戦略的リストラクチャリングは個別の組織化形態としては主観的創造 的活動に対して有意な影響を及ぼしているとは言えない。したがって、創造的な組織ある いは革新的な企業となるために、こうした組織化形態を個別に導入しても、期待される効 果が得られるとは言い難い。