1) 設計計画の基盤となった事項
福岡県へのヒアリング調査によると、標準となる仮設住宅プラン は事前に準備されており、災害発生後、これをベースに熊本県での 事例を参考に一部仕様の変更を行ったとのことである。具体的には、
断熱材や開口部の仕様、外構計画で改善が行われた。
集会所については、研究室の主宰者である末廣は、熊本県のくまも とアートポリス事業注 3)のアドバイザーとして活動しており、平成 28 年熊本地震の時にも仮設団地内の木造集会所の設計に関わった。そ
注 3) くまもとアートポリスとは、デザイ ン的に優れた建築・都市の創造を通 じて地域の活性化を行う、国際的に 注目される熊本県の事業である。
の経験を活かし、熊本で建設された集会所と同等以上の性能基準で 設計することとした。また、熊本地震の際に、建築学生による仮設 住宅環境改善運動「KASEI プロジェクト」注 4)を立ち上げ、集会所を 拠点としてボランティア活動を行っている。それらの活動の経験か ら、外から見て内部の様子がわかった方が気軽に集会所に入りやす いという考えがあり、南側に開口部の大きな設計とした。また、林 田団地の集会所には、大きなオープン型のキッチンを設置した。キッ チンのように特定の使い方を示すものがあれば、使い手にとって集 会所の役割がわかりやすいだろうと判断した為である。
2) 建物の仕様
集会所の建物の構造部材、主な仕上げを表 6-3、6-4 に示す。集会 所の仕様であるが、断熱材や構造部材などは仮設住宅に準じた仕様 となっている。法に基づく応急仮設住宅の供与期間は原則 2 年となっ ており、今回は基本的に、供与期間終了後は解体、原形復旧する予 定となっている。そのため、仮設住宅と同様に一般的な木杭による 基礎が採用されている。軸組工法でプレカットを使用するため、構 造部材には、一般流通材である 3.5 寸角を基本とした木材を使用した。
3) 工事費について
福岡県へのヒアリング調査によると、仮設住宅の工事費は戸当た り約 750 万円とのことである。これは、リース契約であるため解体 費が含まれた金額である。熊本の木造仮設住宅は約 800 万円で、買 取契約であるため解体費は含まれていない。災害の規模が大きいと 建設物価は上昇するため単純な比較はできないが、両者では戸当た りの金額には大きな差はなく、解体費の差があった。
集会所の工事費は 20 万円 /㎡で、林田団地 (60㎡ ) が約 1,200 万円、
東峰村団地 (40㎡ ) が約 800 万円となっている。これは2年間のリー ス費、2年後の解体費を入れた金額である。外構費は含まれていない。
当初は、集会所の面積を増やすのではなく妻側に下屋を延ばすこ とによって、屋内外を一体的に利用できるように計画していた ( 図
注 4) KASEI(Kyushu Architecture S t u d e n t S u p p o r t e r s f o r Environmental Improvement ) プ ロジェクトは、被災地に建設された 仮設住宅地の環境改善活動を行い、
居住者に安らぎのある住環境と、そ れら一連の活動を通じて豊かなコ ミュニティを築くことに「加勢(か せい)すること」を目標としている。
九州・山口の大学の研究室を単位と したチームで、各仮設住宅の支援活 動を実施し、居住者と協力しながら 活動している。
鴨居:杉25x180加工
パイプ扇100φ 平面位置は目打ち板芯
DH1900
杉板
内壁:EP塗装(半艶)
PB12.5 目透し貼り 軒樋:着色ガルバリウム鋼板
鼻先:杉40x90 軒裏:耐水合板t24表し
▽FL+2460
床:杉板本実t15 自然塗料 針葉樹合板 t24
杉105x105@910
ポリスチレンフォーム3種b t50
断熱材受金物
便所 木製建具WD2
外壁:杉板t15x180w 目打板21x36貼 胴縁:杉20x35@455 パネリード止め 断熱材:グラスウール10K t=100 (防湿層付)
梁:杉 105 210@2730 棟木:杉 105 150
天井:耐水合板t24表し 登り梁:杉 105 150@910
引き寄せボルトM12 座刳り部埋め木
棟木換気
内壁:EP塗装 PBt12.5 先端部平葺き
唐草 桁:杉 105 270
配線・配管スペース FIXガラスFL5 コーキング留め 上部溝加工12x18
下部杉押縁10x15見切:12x25 軒先通気金物:鋼板製12.5x50
FIXガラス FL5 コーキング留め
屋根:着色ガルバリウム鋼板 t0.4 立平葺 針葉樹合板 t=12
竪垂木 30x45@455 アスファルトルーフィング22kg 断熱材:ポリスチレンフォーム3種b t45 垂木:杉60x90@455
下地:耐水合板t24
鼻先:杉40x90 軒先通気金物 鋼板製12.5x50 エアコン(設備工事)
背板補強(建築工事)
アルミサッシ住宅用既製品 (半外付テラスタイプ)
建物下クラッシャランt50敷込
束:杉 105 105
鎖樋:鋼板製x2カ所 1137.5
サッシ内法 h=1800 DH1900
2265
3715
軒高 FL+2475 365
265
50 370
5 10
カーテンレール
アルミVレール(ブラウン)
板間
FL(GL+315) 設計GL 0 315
外壁:杉板t15x180w グラスウール10K t=100 屋根:着色ガルバリウム鋼板 t0.4 立平葺 針葉樹合板 t=12
竪垂木 杉30x45@455 アスファルトルーフィング22kg ポリスチレンフォーム3種b t45 垂木 杉60x90@455
耐水合板 t24
基礎:杉杭90φ L=1,000 ACQ 加圧K4
910 910 910 910 910 910
A B C D E F G H
682.5 図 6-1. 矩計図 (S=1:40)
表 6-4. 主な仕上げ 表 6-3. 構造部材表
の復興を考えるコミュニティ拠点として、入居者以外の多くの人の 利用を見込んだためである注 2)。しかし、コスト縮減等、経済的な配 慮から断念せざるを得なかった。
他にも、屋内外のベンチや木合板部の塗装、東峰村団地では畳敷 が中止となった。また、大きな減額にならないと思われたが、ウォシュ レット付きトイレや IH コンロ、ペアガラスについても、ガスコンロ、
シングルガラスに変更した。
4) 配置計画について
林田団地では、当初計画された仮設住宅は 40 戸であったが、集会 所の見積調整期間中に 8 戸増設されることが決まり、駐車場や集会 所の設置場所が移動されることとなった。集会所は初め、南西側に 大きな開口面を取っていたが、開口面を南東側に向けて回転し、移 動することとなった(図 6-3)。配置が変わったものの、動線や設備 機器置場など、設計計画に大きな問題は起こらなかった。
一方で、頓田団地での集会所の建設は、設計時には決まっていな かったが、後に東峰村団地と同じものを反転して設置することとなっ た。しかし、個別に設計計画を行っていないため、不要な出入口が 付いてしまい無駄のある計画となった。仮設住宅は短期間で整備し
注 5) 大谷芽生 ( 作成時、九州大学工学部建 築学科所属 ) 作成
図 6-2. 設計変更前の集会所イメージ注 5)