REC
にはさまざまな属性情報が含まれている(表6)。証書の発行年月日や種別のほか、自
然エネルギーの種類、発電設備の所在地、発電年月日などの情報である。RECは電力の消費者 が自然エネルギーを利用していることを証明する手段として使うことができる。米国では政府 のほかに、送電事業者やNGO(非政府組織)などが REC
の利用を促進している。表 6:米国の自然エネルギー証書に記載する属性情報
発行年月日 証書種別 トラッキングシステムID
自然エネルギーの種類 自然エネルギー発電設備の所在地
設備容量 プロジェクト名 プロジェクト開始年月日
発電年月日 証書ID 接続先の電力会社 証書あるいはRPSの適格性 自然エネルギーによるCO2排出係数
注:証書を発行する市場によって属性情報の項目は異なる。
出典:US EPA「Renewable Energy Certificates」
米国の電力市場において
REC
を認証する方法は2
種類ある。1つは証書トラッキングシステ ム、もう1
つは契約トラッキング手法である。証書トラッキングシステムは自然エネルギーで発電した電力の情報を
1000kWh
ごとに電子 的なデータベースに登録する仕組みだ。発電事業者が自然エネルギーの電力を送配電網に供給 したことを証明するために、コンピュータシステムでREC
を発行する。自動的に証書を発行 して、電力市場の参加者がインターネットを通じて証書の情報にアクセスできる。自然エネル ギーの電力を取引する望ましい手法として、米国の多くの州で普及している(地図11)。
地図 11:自然エネルギー証書のトラッキングシステム(2015年5月時点)
注:アラスカ州とハワイ州には公式のトラッキングシステムは存在しない。
出典:ETNNA「Renewable Energy Certificate Tracking Systems in North America」
一方の契約トラッキング手法は以前から広く使われてきたもので、自然エネルギーの所有権 を発電事業者から電力の消費者まで追跡することが可能だ。発電事業者が第三者機関の監査に 基づいて、消費者に対して契約書などで自然エネルギーの所有権を移転する。通常はメーター で計測した発電データが証明に使われる。自然エネルギーの電力が持つ環境価値を第三者機関 が認証する仕組みである。
電力の利用者にとっては、自然エネルギーの電力を低いコストで調達することが重要になっ ている。利用者自身で自然エネルギーの発電プロジェクトを実施するケースも少なくない。あ るいは発電事業者と
PPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)を結んで自然エネル
ギーの電力を購入することも有効な方法だ。米国では自然エネルギーの電力を
2
通りの方法で調達できる。1つは州が設定したRPS
に よって、電力の供給者は一定以上の自然エネルギーの電力を提供する義務がある。このため電 力の利用者は州内のRPS
の達成状況に伴って、自動的に自然エネルギーの比率を高めることが できる。もう1つの方法は電力の利用者が自主的に自然エネルギーの電力を調達する。自主的 な方法で電力を購入すれば、RPSに関係なく自然エネルギーの電力を増やすことが可能にな る。電力の供給者が購入する
REC
の価格はRPS
の目標設定や関連する罰則の影響を受けやす く、州による差が大きい。2017年8
月の時点で、風力発電が活発でRPS
を達成しやすいテキ サスのREC
の価格はゼロに近い水準だ。対照的にRPS
の達成にREC
を必要とする北東部の4
州(コネチカット、ニューハンプシャー、マサチューセッツ、ロードアイランド)では2
セン ト/kWh前後の価格になっている。一方で電力の利用者が自主的に購入する
REC
は需要と供給の関係で価格形成が進んでい く。風力発電の電力を安価に調達できるテキサスやオクラホマでは、利用者向けのREC
の価 格は極めて安い。このほかの州を含む全米の平均でも、電力の利用者を対象にしたREC
の価 格は0.2
セント/kWh以下の水準で推移している。第
3
章:自然エネルギーを推進する企業と地域1.電気事業者
発電事業者や小売事業者は風力・太陽光による新たなビジネスモデルを導入し始めた。自然エネルギーを主 体にした料金プランや、地域を対象にした太陽光プログラムも増えてきた。
米国の風力・太陽光発電事業者で圧倒的なナンバーワンは、大手電力会社の
NextEra Energy
である(図26)。火力や原子力を含めて約 4500
万kW
の発電設備を所有している中で、風力 は1236
万kW、太陽光は 216
万kW
に達して、両方を合わせると30%を超えた。米国全体の
風力・太陽光発電の設備容量の約10%を占める規模だ。
図 26:米国の風力・太陽光発電事業者の設備容量(2017年)
注:発電設備の所有権比率に応じて計算 出典:発電事業者のアニュアルレポート(2017年)
それに続く
2
番手のBerkshire Hathaway Energy
はグループ全体で約3000
万kW
の発電設備 を所有するうち、風力は652
万kW、太陽光は 153
万kW
で、両方を合わせた比率が30%に近
づいてきた。このほかに発電設備の規模では
Southern Company
とDuke Energy
の2
社が大きい。それぞ れ4700
万kW
と5200
万kW
の発電設備を所有しているが、現在のところ風力・太陽光の比率 はSouthern
で8%、Duke
で6%にとどまっている。とはいえ両社は風力・太陽光の発電設備
を急速に増やしている。特にSouthern
は最近の2
年間で買収によって太陽光を3
倍に拡大し て、米国でも有数の太陽光発電事業者になった。米国内では欧州の電力会社も風力・太陽光の拡大に貢献している。スペインの
Iberdrola
は2017
年末の時点で風力・太陽光を合わせて600
万kW
以上の発電設備を米国で運営している。ポルトガルの
EDP Renovaveis
は500
万kW
以上、ドイツのE.ON
とフランスのEDF EN
が約300
万kW
に達した。イタリアのEnel
も約200
万kW
の風力・太陽光発電設備を運営する。欧州の電力会社は米国内に火力や原子力の発電設備をほとんど所有していないため、コスト 競争力の高い風力と太陽光に投資しやすい利点がある。同様のことは日本の電力会社にもあて はまる。しかし現在のところ東京電力グループが関連会社のユーラスエナジーを通じて
50
万kW(出資比率で換算すると 20
万kW)の風力・太陽光発電設備を展開している程度だ。海外
の発電事業者による参入機会は今後も米国内で期待できる。
一方で電力を販売する小売事業者も、自然エネルギーを活用した革新的なビジネスモデルを 展開し始めた。自然エネルギー主体の電力プランを提供するほか、地域を対象にした太陽光プ ログラム、消費者の電力使用量を最適化するサービスなどを拡大中だ。
米国では自然エネルギーの電力を販売する方法は主に
3
通りある。1つ目は電力市場が自由 化されている州で可能だ。電力の利用者は小売事業者から、自然エネルギー主体の「グリーン 電力プラン(Green Pricing)」を購入できる。この方法による電力の販売量は2016
年に160
億kWh
に達し、利用者数は200
万にのぼった。特に人気が高いのは、テキサスの風力発電を 組み合わせたプランだ。2
つ目の方法として、電力市場が自由化されていない州でもグリーン電力プランがある。契 約している電力会社に追加料金を支払って自然エネルギー主体の電力を購入できる。現在では 数多くの電力会社が家庭向けと法人向けにグリーン電力プランを提供している。電力会社は自 社の発電所を含めて自然エネルギーの電力を調達して、顧客には購入した電力に相当する証書(REC)を付与するのが一般的である。
電力会社によるグリーン電力プランの販売量は
2016
年で80
億kWh、利用者数は 80
万に拡 大した。このプランの追加料金は家庭向け・法人向けともに全米の平均で2
セント/kWh程度 だ。代表的な例はカリフォルニアの大手電力会社SCE
が提供する「Green Rates」である。サービス地域内にある家庭や企業であれば、太陽光発電の電力を
50%あるいは 100%の割合で
購入できる。追加料金は約2
セント/kWhから約5
セント/kWhの範囲で、いつでもペナル ティなしで解約できる。3
つ目の方法は電力会社と結ぶ「自然エネルギー電力契約(Renewable Contract)」であ る。電力会社が新しい発電所から自然エネルギーの電力を調達して販売するケースが多い。利 用者は電力会社と個別に相対契約を結ぶか、「Green Tariff(グリーン料金)」と呼ぶ特別料 金を支払うか、2通りの契約方法がある。この契約方法は最近になって始まったもので、電力の使用量が多い大手の企業が主な対象に なる。グリーン電力プランと比べると、いくつかの点で違いがある。まず契約によって、どの ような自然エネルギーの発電設備から電力の供給を受けるか特定できる。利用者・電力会社・
発電事業者の
3
者間で長期契約を結ぶのが通常のパターンだ。契約を通じて利用可能な電力の 規模(容量)も保証される。2017
年6
月の時点では、全米で少なくとも12
件の発電プロジェクトに対して相対契約が結 ばれた。代表的な事例には、MidAmerican Energy(Berkshire Hathaway Energyの子会社)が40
万kW
の風力発電プロジェクトや、Dominion Virginia PowerがAmazon Web Services
と締結した8
万kW
の太陽光発電プロジェクトがある。もう
1
つの契約方法であるGreen Tariff
は、複数の利用者が同じ条件で自然エネルギーの電 力を調達できるスキームである。これまでに10
社以上の電力会社が12
州で提供している。た だし契約内容(購入電力量など)によって大口の利用者に限るものが多い。2017年6
月の時点 では100
万kW
近い電力がGreen Tariff
で供給された。その中で最大の契約量になっているの は、NV Energyがネバダで提供している「Green Energy Rider」である。太陽光発電による45
万kW
の電力を供給する。さまざまな方法を通じて自然エネルギーの電力を購入する利用者の数は、2010年の約
180
万 から2016
年には280
万を超えた。利用者のニーズが高まったことで、販売量は6
年間で70%
も伸びている(図